6-2-8(第478話) 最悪な戦いに備えて~調査手段~
魔獣といっても、様々な魔獣がいる。
(俺が知っている魔獣だけでもゴブリン、賢猿、ドライヤド等々、かなりの種類がいるんだよな)
それらの魔獣全ての特徴、傾向を把握するのにどれほどの時間が必要になるのやら。
(絶望的だな)
それに、俺が知っている魔獣だってほんの一部。俺が知らない魔獣だってこの世界にはいるはず。本当、どの魔獣が六か国に向かっているのか判断出来るのだろうか?
(いっそ、魔獣という魔獣を全て狩る、という行動はどうだろうか?)
駄目だ。狩る必要のない魔獣も狩ることになってしまい、無駄な労力がかかるし、こちらに協力的な魔獣も狩ってしまう可能性だって零じゃない。
(こちらに協力的な魔獣を選別しつつ、こちらを襲おうとする魔獣だけを狩る)
何十年も同じ地域にいたらそこまで簡単に選別出来るかもしれない。長い時間をかけてその土地の風習、慣習を体感する。そんな悠長な時間など今の俺にはない。
(とりあえず、今持っている魔獣に関する本を読み漁り、出来るだけ魔獣に関する知識を蓄えよう)
それと、冒険者ギルドに向かい、不足している魔獣の知識を補完していけばいける・・・のか?
(駄目だ。考えているだけだとらちが明かないな)
ひとまず、冒険者ギルドに行って情報を得よう。
(本を読み漁るのは後でも出来る。だが、冒険者ギルドでの用事を後回しにした場合、冒険者達から話が聞けなくなる!)
夜に活動する冒険者はほとんどいないからな。基本、朝に依頼を受注し、昼は依頼をこなし、夜に依頼の完了報告。
(・・・あれ?)
もしかして、今の時間に行くより、少し時間を空けてから冒険者ギルドに行った方が色々有益なんじゃ・・・?
(いや、何も冒険者だけが情報を持っているわけじゃない)
冒険者で受付をしている人だって有益な情報を持っているはず。
「レンカ、モミジ、俺はちょっと出かけてくる」
「だ、大丈夫ですか?あまり遠くに行ってしまうと・・・、」
確かにモミジの言う通り、あまり遠くに行ってしまうと、モミジの【強制寄生】の効果が無くなってしまい、俺の命が危険に晒されてしまうからな。そのことを気にかけてくれたのだろう。
「大丈夫だ。冒険者ギルドに行くだけだから。町から出るつもりはない」
「そ、そうですか。なら私がついて行かなくても大丈夫そうですね」
「ああ。モミジはそのままレンカの手伝いを頼む」
「はい」
さて、冒険者ギルドでどんな情報が得られるかな。
少し歩き、俺は冒険者ギルドに到着した。
(少し来るのが遅かったな)
冒険者がほとんどいなかった。依頼もほとんどないな。掲示板に依頼書らしき紙もどきが2枚しかないな。受付嬢の方は・・・一嵐過ぎてホッと一息ついている感じだな。まぁ、つかの間の休憩を楽しんでいるところ申し訳ないが質問するか。
質問の結果、
(俺、コミュ障だから見知らぬ人に質問とか易々出来ねー!)
俺は内心、とても困っていた。その理由は、俺のコミュ障である。
(質問があるのだから普通に話しかければいいのに、どうして俺はこんな簡単な事が出来ないのだろう)
こういう時、俺のこれまでの生活の枷がここで活きてくるとはな。もちろん悪い意味で、なのだが。
(いつもはどうやって話しかけていたのだろうか?)
・・・そういえば、いつも相手から話しかけられていた気がする。そうでなくても俺独りで女性に話かけるなんて敷居高過ぎなんじゃないか?こういうなるのだったら、モミジを連れてきてお願いすればよかったな。
「あれ?どうしてアヤトがこんなところにいるのですか?」
「!?この声はリーフか!!??」
「え、ええ。そうですけど、こんな時間にどうしたのですか?依頼を受けたいのであれば申し訳ありませんが、もう大した依頼はありませんよ?」
「いや、今回は依頼を受けに来たんじゃなくて、ちょっと聞きたいことがあって来たんだ」
「?一体何を聞きに来たのですか?」
「実は・・・、」
俺は、魔獣の異変を知る方法について知りたいと、出来るだけフワフワと伝えた。だって、正直に全部伝えたら一大事だし、何より確証がないのに話したくないからだ。
「・・・魔獣の異変を知る方法、ですか。確か今まで何度もこの国に魔獣の大群が襲撃してきた、なんて記載がありました」
「それらは全部、事前に予知していたのか?」
「全部、ではありませんが、ある程度予測をつけていたみたいです」
「つまり、魔獣の異変に気付いていた、と?」
「おそらく、ですが」
「それについて教えてくれないか?」
「もちろん構いませんが、この情報はある程度冒険者として活動している者なら誰でも知っている知識であることを認識しておいてください」
「はい」
要するに俺は勉強不足、ということだな。
「魔獣によって起こる異変は様々です。その中で分かりやすいのは・・・ゴブリンですね」
「ゴブリン?」
「ええ。ゴブリン達は危険を察知すると、群れて逃げる習性があります」
「そうなのか。つまり、ゴブリンが群れで移動している時は、ゴブリンにとって危険な何かが近づいている、という認識でいいということなのか?」
「ええ。付け加えて言うなら、ゴブリンの中にはカラー種も含まれますので、カラー種も群れに紛れていた場合、ゴブリンのカラー種ですら危険を感じる魔獣、例えば・・・竜が近づいている、ということになります」
「そ、そうか」
ゴブリンのカラー種より強い魔獣が竜とか、ゴブリンのカラー種、かなり強くないか?まぁ今はそんなことどうでもいいか。
「ありがとう。為になった」
「他の魔獣でも異変を知る方法はありますが・・・基本的には、群れ単位で移動している場合は注意していた方がいいと思います」
「参考になったよ。ありがとう」
要するに、魔獣が群れ単位で動いていたら、向かっている方向とは逆方向にセントミアさんがいる、と考えてよさそうだな。
「これで聞きたいことは以上ですか?」
「ああ。俺の質問に答えてくれてありがとう」
「力になれたのであればよかったです」
「!?」
リーフの笑顔、綺麗だな。
(この笑顔を守る為にも、魔獣の件の真偽を確かめて、性欲に溺れた日々を過ごしたいものだ)
「・・・何か、ありましたか?」
「?何かってなんだ?」
急にリーフが変な事を言い出してきた。
「何もないのならなんでもありません」
「そうか。それじゃあ」
俺はギルドを後にしようと歩き始める。
「アヤト!」
「?」
急にリーフが声をあげて俺を呼んだ、一体今日はどうしたんだ?
「本当に、何もないのですよね?」
「・・・ああ」
そう。
今はまだ、何も起きていない。
「そう、ですか。気を付けて行ってらっしゃいませ」
「ああ、行ってくる」
さて、これから六か国に行き、魔獣の調査を始めようか。
レンカ達、魔道具の作製は進んでいるのだろうか?
それとも、もう完成させているだろうか?
俺はレンカとモミジの作業風景をイメージしながら城へ向かう。
次回予告
『6-2-9(第479話) 最悪な戦いに備えて~【魔力感知】と植物さん達による調査~』
城に戻った彩人は、モミジを連れて魔の国の外に出る。そして【魔力感知】で魔獣達に異変がないか確認する為、魔獣の群れを探していく。モミジも植物達の力を借りて魔獣の群れを探していくのだが、二人の調査結果に齟齬が生じていることに気づく。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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