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色を司りし者  作者: 彩 豊
第ニ章 魔の国での日常、将来に鉄黒が差し込む夢
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6-2-6(第476話) 最悪の戦いの再来

「う。う、嘘だろ!!??」

 そんなやばい奴がこの世界に・・・いるな。

「セントミア・ヌルさんが仕掛けてきたのか?」

 俺はまったく知らないぞ?

「無理もない。奴はまだ戦いを仕掛けるとは一言も宣言していないからな」

「ならどうしてそんなことが分かるんだ?」

 セントミアさんとテレパシーでもして繋がっているのか?それとも、双子の以心伝心的な何かで分かった、とか?

「我は神、だからな。この世界に直接干渉出来ずとも、視る事は出来るからな。あの者の動向くらい、お主に伝えることくらい訳ないわ」

「・・・ちなみに、今セントミアさんは何をしているんだ?」

 この世界に喧嘩を売ろうとしているんだ。何か準備をしているに違いない。

「それは・・・!?」

 !?な、なんだ!!??急に空気が変わったぞ!?

「・・・この空気、ついにここまで来たか。セントミア・ヌル」

「!?」

 今こいつ、セントミア・ヌルさんの名を言ったのか!?

「やはり分かってしまうか」

「!?」

 突如、誰もいなかった空間に黒い渦が出現する。この渦、まるでブラックホールだな。その渦の中から、突如何者かが現れる。

(この雰囲気、前にも味わった気がするな)

 それにさきほどのカラトムーアの発言。間違いなくセントミアさんだ!

「無魔法を使ってこやつの夢の中に侵入してきたか」

「貴様と話すことなどない。私の家族を殺した屑に話すことはない。用事があるのは君だ」

 この感覚、間違いない。セントミアさんのものだ。セントミアさんが俺の方を向いた瞬間、背中から大量の冷や汗が流れ始める。

「やっと、やっと終わらせることが出来るよ」

「な、何がだ?」

 俺は、いつ殺されてもおかしくないような恐怖に晒されながら、セントミアさんに質問する。

「この腐った世界を、だよ」

「「!!??」」

 この発言、どう考えてもこの世界を憎んでいるよな。憎んでいる理由は・・・。

「この世界は腐っている。力を持っているというだけで、世界はその者を排除しようとする。君にも経験があるはずだよ」

「・・・そうだな」

 カラトムーアの話を信じると、力を持った者は周囲の者から恐れられ、排除される。地球でも似たようなこと、いじめをされたから気持ちは分かる。

(白の国でも、ジャルベ達キメルムは迫害されていた。緑の国では、モミジが森災として扱われ、ボロボロになっていたよな)

 その面を考慮すると、確かにこの世界はとても息苦しい。

「でもそれは、世界が腐っているんじゃなくて、腐っている人がいるだけなんだよ。世界そのものが腐っているわけじゃ、ない」

 俺は自身の意見をセントミアさんに伝える。

「・・・そうか。つまり、私と君の考えに相違がある。そういうことだね」

「!?あ、ああ」

 セントミアさんの言葉に圧があるのか、体が恐怖で震える。

「ならその考えを貫き通すと言い。私は自身の考えを貫き通す為、このまま世界を終わらせるよ」

 セントミアさん、本気だ。

「君が正しいというのならいくらでも正しいと言えばいい。だが、どれほど言葉を重ねたって、行動を伴わなければ意味が無い」

 セントミアさんは、俺とカラトムーアを交互に見る。

「私はこれから、全六か国に大量の魔獣をけしかける。もちろん、信じる信じないは任せよう。だがいずれ、お前ら屑は滅ぼすからな。覚悟しとけよ、私達を見捨てた屑共が」

「「!!!???」」

 セントミアさんの確固たる意志・・・いや、殺意か。絶対なる意思を感じた後、セントミアさんはどこかに消えてしまった。

(一体どうやって消えたのだろうか?やはり無魔法で強制的に夢から目を覚ましたのだろうか?)

 まぁ、今はそんなことを考えている場合ではないのだが。

「・・・セントミアさん、本気、だったな」

 自称とは言え、神に喧嘩を売ったのだ。相当な覚悟がないと出来ない所業だろう。

「そう、だな。これも、カラトムーガの子孫だからこそ・・・いや、私達が今まで見なかった濁りだ」

「濁り、か」

 きっと俺だって、他の人がいじめられているところを見て見ぬふりしていたかもしれない。地球での俺は自分のことで手一杯だったので、見捨てていたのかどうかなんて分からないし、確かめようがない。そういう曖昧な記憶がカラトムーアにもあり、後悔しているのだろう。

「なら、今のお前に出来る事をして、あいつを止め、救えばいい」

「!?だが、そんなことが可能なのか!?」

「さあな。出来ないかもしれないし、無理かもしれないし、あの人を殺さなくてはならなくなるかもしれない」

「・・・お主、全部悪い方向に考えていないかね?」

「それくらいのことを考えて言葉にしてくれってことだ」

 さて、これからどうすべきか。

(セントミアさんの言葉を嘘と断定し、何も行動しない、という案があるが、それはあまりにも短絡的過ぎる)

 あれほどの迫力をぶつけてきたのだ。ハッタリ、という可能性は捨てるべきだろう。

 ということは、

(なんらかの方法で魔獣をそれぞれの国にぶつけてくる!)

 だが、どれくらいの規模をぶつけてくるのだろうか?

 魔獣の数は?

 魔獣の強さは?

 そもそも、どんな魔獣をぶつけるつもりなんだ?

 そして、いつ、魔獣を国にぶつけるつもりなんだ?

(これは、調査した方がよさそうだな)

 だが、どうやって調査しよう?

 調査しようにも、どこをどう調査すればいい?

 魔獣達の異常な動きを見つけることが出来れば分かるか?

(いや、そもそも魔獣の普通な行動ってなんだよ。)

 俺、魔獣の習性やら習慣やら生息地諸々知らないぞ。冒険者で多少魔獣の知識はあるが、これまで戦った魔獣プラスアルファくらいしか把握出来ていない。

(う~ん・・・)

 俺が色々悩んでいたら、

「・・・すまない」

 急にカラトムーアが謝ってきた。

「急にどうした?」

「・・・本来、お主にこの戦いを巻き込ませるべきではなかったのだ。何せお主は、この世界の住人ではない。それ故・・・、」

「何言ってんだ?」

 俺はカラトムーアの言葉を途中で遮る。

「俺だって、もう立派なこの世界の住人だ。俺に出来る事ならしていくつもりさ」

 俺にだって出来ない事はあるからな。それはしないつもりだ。

(例えばそうだな・・・友達を作る、友達と遊ぶ、友達と・・・もう嫌だ!)

 急に生きていくのが辛くなった。早く死にたい。

 ・・・さて。現実逃避はこれくらいにしておくか。

「今の俺に出来る事・・・、」

 まず、セントミアさんの言った事が本当か確かめる必要があるな。

 さきほどの口ぶりからして、本当の線が濃厚だろう。

 だが、セントミアさんがハッタリをかました可能性がまったくない、ということはないからな。

(全六か国に仕掛けるということは、今いる魔の国だけ調べるわけにはいかない。他の五か国も調べる必要がある)

 他の国に行く方法も検討する必要があるな。今までの方法で行くと仮定した場合、かなりの日数がかかってしまう。なので、今まで通り牛車で向かう方法は駄目だ。もっと早く移動出来る手段を考えないと・・・。

(【六色気】を使って移動すれば行ける・・・のか?)

 正直、瞬間速度だけなら出るとは思う。

 だが、国と国の間にはかなりの距離がある。その長距離を移動し続けられるだけのスタミナがあるのか?

(移動手段に調査方法、本当、考えることだらけだな)

 だが、やらなきゃな。

(こんなこと、おいそれと話し、手伝ってもらうわけにはいかないから、一人でやるしかなさそうだ)

 今から・・・は、流石に無理か。

(明日から・・・いや、今日からか?)

 寝ているから時間が分からないので、日を跨いでいるのかどうか分からん。

(どちらにしろ、頑張ろう)

 というわけで、今後の調査の為に頑張るとしよう。

 それじゃあまず、この夢から醒めるとするか。



 彩人が自身の夢からいなくなった後。

「・・・そこに隠れているのは分かっているから出てくるがいい。さもなければ、無理矢理にでも姿を出させるぞ?」

「!?」

 カラトムーアの言葉の後、カラトムーアから少し離れた場所から植物が現れ始め、大きな花が咲く。その花の中からモミジが現れる。

「あの、えと、盗み聞くつもりはなかったんですけど、聞こえて来てしまって・・・、」

「別にきにせんでよい。我も失念していたのだから」

「ですが、ここはどこしょう?それにさっきのお話は一体・・・?」

 カラトムーアは、さきほどの話を改めてモミジに伝える。

「・・・話の内容は大体分かりましたが、どうして私がアヤトさんの夢の中にいるのでしょう?」

「おそらく、お主がやつに寄生したことで、やつの夢の中に入ることが出来たのだろう」

「それで私がアヤトさんの夢の中に入ることが出来たのですか」

 モミジはカラトムーアから聞いた話について考える。

「これからアヤトさんはどうするつもりなのでしょう?」

「正確に何をするかは我にも分からん。だが、解決する為に動くのは間違いないだろう」

「私にも何か、出来る事はないでしょうか?」

「そうだな・・・」

 カラトムーアはモミジの質問に悩み、答えを導き出す。

「もし奴がこの世界の為に何かしようとしたなら、協力してやってほしい。それと、暴走したら止めてほしい」

「えと・・・ひとまず、頭をお上げください」

 モミジの言葉を素直に聞き、カラトムーアは下げた頭を上げる。

「私にとってアヤトさんはとても大切な人で、助けてくれた恩人です。そのアヤトさんが困っているのなら、私は全力で助けます!」

 モミジはカラトムーアに自身の意思を伝える。

「・・・奴は幸せだな。こんなにも想ってくれる人がいるのだから。いや、この場合は魔獣か」

「えと・・・ありがとうございます?」

 モミジは褒められているのか分からず、返事の語尾に疑問の感情を付与してしまう。

「わざわざ言わんでよい。それより奴の事、任せるぞ」

「はい」

 こうしてモミジはカラトムーアと話をし、夢から醒める。

(絶対、アヤトさんを助けて、アヤトさんの力になります!)

次回予告

『6-2-7(第477話) 最悪な戦いに備えて~移動手段~』

 カラトムーアから突如宣告された最悪の戦いの再来。

 その最悪の戦いが本当に起こるかどうか確認する為、各国に行くための移動手段について考える。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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