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色を司りし者  作者: 彩 豊
第ニ章 魔の国での日常、将来に鉄黒が差し込む夢
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6-2-5(第475話) 夢の中での話し合い

 俺は今、寝ている。

 寝ているはずなのにどうして俺の意識ははっきりしているのだろう?

「まさか、俺の内なる獣が覚醒して・・・、」

 ・・・夢の中とはいえ、俺はなんて馬鹿なことを考えているのだろうか。俺は精神病の類にかかっているのかもしれないな。一度精神科医に診てもらって病状を詳細に聞いて・・・、

「あなたは中二病です、と正面から言われたら嫌だな」

「・・・お主はさっきから何を言っておるのだ?」

「!!!???」

 だ、誰だ!?ここは俺の夢の中のはずだぞ!!??俺以外いるはずないのにどうしているんだ!!!???

「それは、我が神だからだ!」

「・・・そうか。うん、分かった」

 こいつはきっと、頭がおかしい類の者だろう。もしくは、俺の別人格か。

(こんな別人格、嫌だなー)

 自分のことを神だと誇張するあたり、相当昔の俺を基盤として別人格を形成しているのだろう。最近の俺はここまでいたい子ではなかったはず、うん。

「・・・お主、先ほどから我のことを愚弄し過ぎではないか?」

「・・・いや、そんなことはないと思うぞ?」

 というか、俺は口に出してこいつを罵ったことはなかったはずだ。まぁ、今もこうして心の中で色々思っているが。

「・・・もしかしなくても、お主の考えごとが全て我に筒抜けだということを忘れておるな?」

「・・・なんだと?」

 そういうことならさきほどの発言も納得がいく。というか、そうでなければオカルトの類だ。

「・・・話が進まぬから、話を進めてもよいか?」

「・・・別にしたいのならすればいいんじゃないか?」

 一体何を話したいのだろうか?

 は!?まさか、ここは俺の夢の中だから、俺の昔の痴態を晒し、悦に浸ろうというのか!?性格が悪いったらありゃしないな!

「・・・話をしよう。我が話したいのはヌル一族のことだ」

「ヌル、だと!?」

 ヌルというのはもしかしなくても、メイキンジャーやパラサイダーのヌルか!?

「うむ。そのヌルだ」

「どうしてお前がヌルを・・・て、当然か」

 この夢は俺の夢なのだ。セントミアさんのことを知っていてもおかしくないだろう。

「そのことについて知らせておきたいことがあるのだが、その前に確認したいことがある。まずはこの言葉を聞いて欲しい」

「この言葉?」

「カラトムーア・・・今回は発音出来たが、聞こえたか?」

「あ、ああ」

 カラトムーア?聞いたことない言葉だな。だがどこかで聞いたことあるような、ないような・・・?

(カラトムーア・・・カラト、ムーア・・・ん?)

 そういえば聞いたこと、あるかもしれないな。確か黄の国でザッハから聞いた記憶がある。

(だが、確か言われた言葉は・・・、)

 カラト、ムーア、ムーガ、神色の4つだったはず。カラトムーアとは一体何だ?

「その疑問に答えるため、まずは私自身の名を明かそう」

 明かすも何も、もう一人の俺なのだから、アヤト、じゃないのか?

「残念ながらお主の推測は間違っておる」

「じゃあなんだよ?もしかしてアヤト、中二モード!とか?」

 そんな痛々しいフォルムチェンジはごめんだ。ないと思いたいが、絶対ないとは言い切れない気がしたので、確認の意味を込めて質問する。

「そんなわけがないだろう」

 すぐに目の前の者は俺を呆れた眼差しで見る。そこまで呆れなくてもいいじゃないか。

「私はカラトムーア。お主が今いる世界で神をやっている者だ」

 ・・・。

「やはり中二じゃないか」

 自分のことを神と名乗る者に碌な奴なんていない。ソースは俺だ。


 昔、俺が中二病にかかり、親の目の前で痛い発言をしたところ、

「・・・彩人、急にどうしたの?頭でも打った?なら急いで病院に・・・いえ、これほど重症だと一秒でもお医者さんに診てもらった方がいいから救急車を呼びましょう!」

 なんて事態になってしまったので、恥ずかしがりながら事の経緯を話したら、

「・・・良かった。ついに彩人にも、心から楽しいと思える遊びを見つけたのね。でもその遊び、一人じゃあ退屈でしょう?私もやるわ!」

 といい、母親も参戦した時は見ていられなかった。

 もちろん、俺のためにわざと痛い発言をしてくれていたことは分かる。分かるのだが、自身の発言を客観的に見てしまった結果、

(俺、やば)

 というわけで、母親がこれ以上痛い人にならないよう、俺は早々に中二病を克服したのだった。


 そんな経緯があるので、自身を神と呼称している目の前の者に対しても、俺は暖かい目で見守ってやるのだ。

「・・・お主、ことごとく我の話を信用しないな。頼むから信じて欲しいのだが?信じてくれないと話が進まん」

「・・・もしかして、マジ?」

 まさか、本当、なのか?

「俺が自分を神だと自称した時の痛い俺を再現した、じゃなくてか?」

「うむ。というか、その時のお主など知らん」

「それはほら、今俺の夢の中にいるわけだから、俺の過去の記憶を読み取って、そこから再現したんじゃないのか?」

 詳細な原理とか理屈は分からんが。

「してほしいのなら可能だが、やってほしいのか?」

「絶対にしないでくれ」

あの頃の俺を少しでも思い出しただけでも・・・、

「ぐほ!?」

「!?急にどうした!!??吐血しているぞ!?」

「なんでもない。ちょっと過去のことを思い出し、癒えていた古傷が開いただけだ」

「それは大丈夫なのか?」

 大丈夫ではないが気にしないで欲しい。

「・・・それでは話を続けよう」

 ここで神を自称している痛い奴・・・ではないか。カラトムーアは咳払いをする。

「この世界にはかつて、二人の神がいた。いや、二人と言うのはおかしいか。二種類、と言った方が適切か?」

「いや、どっちでもいいわ。要するに、この世界には二人の神がいて、その内の一人がカラトムーア、お前なんだろう?」

「そうだ」

「それで、もう一人の神は誰なんだ?」

「カラトムーガ、という」

「カラトムーガ、か」

 カラトとムーガでカラトムーガ、か。なるほど。

(つまり、カラト、ムーア、ムーガは神の名前の一部だったわけか)

 そして偶然にも、ヤヤ達は神の名の一部を自身の名前に組み込んでしまったと。これ、知られたら結構やばいのでは?

(・・・あれ?じゃあ神色は?)

 神色は神色剣の神色だろうが、それも神の名前と何か関わりがあるんじゃないのか?

「残念だが、神色は我々神の名に直接関係はしていない。だが、我々と関係ならある」

「どういう意味だ?」

 言っている意味が・・・分かった。

 名前じゃなく、別のところで神に関係しているということか。

「お主が持っている神色剣は、神を倒すことが出来るほど強力な剣なのだ」

「へぇ。そんなに凄い剣なのか」

 どうりで手入れを一切していないのに常に綺麗だったり、刃こぼれ一つなかったりしていたわけだ。

「だが、強大な力を使用するのに、ある制約を設ける必要があった。それが何か分かるか?」

「制約?」

 いきなりそんなことを言われてもさっぱり見当が・・・あ!?

(そういえば、誰にも鞘から抜くことが出来なかった、とか言っていたな)

 俺は普通に使う事が出来るからすっかり忘れていたが、他の人は使えないんだっけ?

 つまり、俺にしか使えない制約がある、ということだ。

 俺にしか使えない制約・・・一体どんな制約内容だ?

(みんなになくて、俺にあるもの・・・)

 逆だったら色々思いつくんだけどな。

 逆というのは、みんなはあるけど俺はないもの。

 まずは友達!

 次にコミュニケーション能力!

 そして、この世界の知識!

 一瞬でこの3つが思いついたのだ。もっと考えれば、もっと出てくるだろう。

 ・・・それにしても、俺ってこの世界でもボッチなんだな。友達が出来ず、ほとんど独りで過ごす。地球にいた時から何も成長していないな。

 おっと。考えが逸れてしまった。考えを戻そう。

 確か、俺だけにあって、みんなにはないもの・・・。

「あ」

 そうだ!俺だけ、赤、青、緑、黄色、白、黒の色魔法に適性があるんだ!きっとそれだな。

「その通りだ」

「よし!」

 俺は正解したことに喜び、思わずガッツポーズをとってしまう。柄にもなくガッツポーズしてしまったので、慌てて冷静になる。

「まぁこれくらい造作もないな。簡単過ぎる」

「・・・もう突っ込まんぞ?突っ込まんからな」

 何故か念を押されてしまった。

「この世界には、どんな者も最低一種類、色魔法に適性がある。だが、その色魔法を使う事が出来るとは限らないのだ。その理由が分かるかね?」

「いや、分からん」

 ナゾナゾの類か?適性があるのなら使えるはずなのにどうして使うことが出来ない?一体どういうことだろうか?

「答えは、魔法を使うのに必要な魔力だ」

「魔力・・・なるほど」

 どんな色魔法でも、発動させるためには魔量が必要だ。どうして気付かなかったのだろうか。

「話が少しずれてしまったな。複数の色魔法に適性を持つ者はかなり少なく、二種類、三種類と、適性を持つ色魔法の種類が多いほど、その人数が少なくなるのだ」

「それじゃあ見たことないけど、4,5,6種類の色魔法に適性がある奴もいるってことか?」

「4,5は・・・いるな。だが、そやつらは全員、魔力量が少なくてうまく活かせていないな。6種類の色魔法に適性を持っている者は・・・いないな」

「ということは俺だけ、ということか」

 俺だけ全色魔法に適性を持っている。なんか優越感を覚えてしまい、顔が緩みそうだ。

「・・・顔を緩ませているところ悪いが、お主に適性がある色魔法は全種類だが、6種類ではないぞ?」1

「・・・え?」

 でも俺、赤、青、緑、黄、白、黒の6種類の色魔法に適性を持っているんだぞ?この6つが色魔法の全てではないのか?

「確かにお主にはその6種類の色魔法に適性があるよう調整したのは我だ。だが、肝心な色魔法を一種類、忘れておるぞ?」

「忘れている?一体何をだ?」

 俺の友達の名前、とか?だが俺には地球でもこの世界でも友達という存在はいなかったはず。

 ・・・急に悲しくなってきたのでふて寝したい。

「・・・急に一人で悲しくなるのはやめんか。そして、忘れていると言ったのは無魔法のことだ」

「無魔法・・・ああ」

 そうか。確かにその色魔法の存在を懸念していたな。

 でも、

「俺にその無魔法の適性ってあるのか?」

 確かヌル一族の奴らは全員使っていた気がする。そいつらと同じ魔法を使えるってことなのか?

「あるぞ。そして、その無魔法とヌル一族に関する話だ」

「無魔法とヌル一族・・・、」

「うむ。我は赤、青、緑、黄、白、黒の6種類の色魔法を司り、有色神と呼ばれていた。それに対してカラトムーガは、無魔法を司っており、無色神と呼ばれていた」

「有色神に無色神、か」

「うむ。その2一人には違いがあった。その違いは、強さと信頼だった」

「強さと信頼・・・どう違うんだ?」

「もちろん説明する。強さに関しては、カラトムーガの方が強く、我の方が弱かった」

「弱かった?6種類の色魔法を使えるのに、か?」

「お主は今まで何度も見てきたはずだ。無魔法を扱う者達の強さを。忘れたとは言わせぬぞ?」

「!?」

 確かにそうだ。あいつらの強さは異常だ。単独での戦いだったらヌル一族が上位独占間違いなしだろう。

「そして信頼だが、カラトムーガより、我の方がみんなに、この世界の住人に信頼されていた。理由は分かるかね?」

「・・・あまりにも他の奴ら、この世界の住民と違うからか?」

 俺のこの返答に、カラトムーアは首を横に振る。

「それはカラトムーガだけでなく我もそうだ。そして私達2人はそれぞれ別の行動をとった。我は無力ゆえにこの世界に生きる者達と協力し、助け合いながら生活した。だが、カラトムーガは違った。この世界の住人から拒絶され、討伐対象となってしまったのだ」

「神、なのにか?」

 神なのに殺すべき相手か。神って普通、崇拝とか尊敬等される存在じゃないのか?

「・・・そこも難しい話なのだが、先ほどの話は神になる前の話で、神になった後は、形式上我とカラトムーガを神としたが、実質我一人のようなものだったよ」

「そうか・・・は!?」

 今こいつ、神になったとか言わなかったか?まさか、

「神って、なれるものなのか!?」

「う~む・・・我も未だに神へ至った道が分からんのだ。だから、我は神になれたが、神になる方法は分からぬ」

「そうか」

 まぁみたところ、全知全能の神ではなさそうだし、神でも知らないことが一つ二つ。十個百個あってもおかしくないか。

「神になる前からずっと我々は対局となるような生活をおくってきた。我は人と人との繋がりを大事にし、カラトムーガは力を大事にしてきた。そして、お互い神になった後、カラトムーガは牙を剥いた」

「牙を剥いた・・・兄妹喧嘩でもしたのか?」

 俺はカラトムーアの言葉に冗談交じりで答える。

「兄妹喧嘩、か。それだったらどれほどよかったことか」

 何故かカラトムーアは頭を抑え始める。

(え?兄妹喧嘩の方がマシだと思える何かが起きたのか?)

 兄妹喧嘩よりやばいこと・・・家族喧嘩か?

「そんな小規模ではない。世界を巻き込んだ兄妹喧嘩だ」

「世界を巻き込んだ兄妹喧嘩、だと?」

 なにそれ?もう聞くのが怖くて聞きたくないのだけど。いっそのこと、もう聞かなくていい?

「駄目だ。お主にはこのことを聞き、その上で行動してもらいからのう」

 駄目だった。それじゃあ仕方がないので聞くとするか。

「カラトムーガの方から私を含めた世界に喧嘩をふっかけてきたのだ」

 なんと言えばいいのだろうか。行動が和解と言えばいいのか、それとも青春していると言えばいいのか。

「そんな一時の子供の過ちみたいな生優しいものではなかったぞ。世界に喧嘩を売ったカラトムーガと世界がどうなったことか・・・、」

「どう、なったんだ?」

 正直、聞いていいものかどうか悩む。が、避けては通れないと思い、聞くことにした。

「結果としては、私達が勝った。だが、勝利したとは思えないほどの被害を生んだよ。まさかあれほどの者を育てていたとは」

「そうか・・・ん?ちょっと待て」

 こいつ今、育てたとか言わなかったか?まさか、神自体が戦ったわけじゃないのか!?

「そうだ。神は直接あの世界に降り、戦うことなど出来ないからな。カラトムーガは自身の感情や、自身と似た境遇の者を見つけたのだ。そしてその者達には、無魔法の適性があった。だからカラトムーガはその者を育て、戦わせたのだ」

「その者がヌル一族、ということか」

 カラトムーガはとんでもない逸材を見つけてきたな。

「あれ?それじゃあお前らはそんなやばい奴を相手にどう勝利したんだ?」

 あのヌル一族を相手にして単独で挑むなんて無謀な真似はしないだろう。

「その通りだ。我らは複数、それもほとんどの戦力を注ぎ込み、ようやく勝利を手にしたのだ」

「まぁ、そうだよな」

 俺でもあんな化け物を独りで倒せるなんて思い上がりはしない。しないのだが、何回も独りで戦った記憶がある。独りで戦っても勝てないことは分かっているのに、本当に俺は学ばない人間だな。

「その最悪の戦いが、再び起きようとしている」

「!!!???」

 カラトムーアのこの言葉が俺にとって信じられなかった。

次回予告

『6-2-6(第476話) 最悪の戦いの再来』

 突如夢の中に現れた神、カラトムーアから告げられたことは、かつて起きた最悪の戦いの再来だった。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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