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色を司りし者  作者: 彩 豊
第ニ章 魔の国での日常、将来に鉄黒が差し込む夢
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6-2-3(第473話) ホットケーキ祭り~本選前~

 本選。

 それは、予選を通過した10名のみが参加出来、美味しいホットケーキを作ることが出来る優秀な者達の集まりだ。

 その集まりの中に、リーフ、イブ、クロミル、モミジの4人がいる。

「みんな、頑張れー」

 そして、本選に出場出来なかった1人、クリムが力なく4人を応援する。

(自分だけ本選に出られなくなったからって、そこまでガッカリするのか?)

 ・・・ガッカリ、するか。

 例えば、高校受験で俺だけ不合格になり、俺以外の同級生が合格になったら、それもうひどくガッカリし、落ち込むこと間違いなしだろう。そんな体験を今、クリムはしているのか。それは確かに辛いと思う。

(ま、俺の場合、高校入試の結果を聞いてくる友人なんて、一人もいなかったけどな!)

 ・・・い、いいんだ!今の俺にはクリム達がいるからな!うん、気にしたら負けだ!!

 自分の辛い過去を思い出し、少し鬱気味になってしまった。後でモミジあたりに慰めてもらおうかな。

 ・・・さて、そろそろ現実に戻るか。

「ところで、本選はどんなことをするんだ?」

 予選では、選手自身が自由にホットケーキを作っていたが、本選でも同じように、選手自身が自由にホットケーキを作り、審査していくのだろうか?

「・・・本選は、ジャムやハチミツ等の付け合わせを作らず、ホットケーキ単体の味のみを競うそうです」

「へぇ」

 もし先に付け合わせを禁止されていたら、クリムも本繊に出場出来たかもしれないな。まぁ、もしもの話をしたところで今が変わるわけじゃないが。

(ちなみに、他の6人は一体誰なのだろうか?)

 本選に出場している10人の内、4人はよく知っているのだが、6人はよく知らないな。

「クリム、本選に出場する6人について知っていることがあれば教えてくれないか?」

「・・・あくまで人づてに聞いた話ですが、それでも構わないのであれば話す事は出来ますが、それでも聞きますか?」

「ああ、頼む」

「それでは話しますね」

 クリムの話を聞き、簡単だが6人の事は分かった。

 まず1人目と2人目だが、夫婦で本選出場を決めたらしい。その夫婦は、ホットケーキを主軸とした食事処を、二人で経営しているらしい。

(なるほど。現役で今もホットケーキを作り続けているから、美味しいホットケーキを作ることが出来たのか。納得だな)

 料理人として生活している人が本気で作ったホットケーキか。一度食べてみたいものだ。

 そして3人目だが、父親、母親、子供2人計4人の一般家庭の主婦らしい。

(子供に何度もホットケーキを作った事で、料理の腕が上達したのか)

 俺が地球にいた時、俺の母親は俺の為に、何度も何度も美味しい料理を作ってくれたな。・・・一度、おふくろの味を感じられる料理が食べたいな。

 4人目は、男性の料理人、とのことだ。

 この男性は、どこかの食事処で働いているシェフで、かなり料理が上手らしい。

(見た目は・・・かなりイケメンだな。イケメンで料理が出来るとか、ムカつく!)

 ・・・少し、世界を創った神に激しい憎悪を抱いてしまった。

 まったく!なんで神は容姿と料理という二物をあのイケメン野郎に与えてしまったのだろうか!俺にも友達、という物を与えられたら地球での生活は・・・!?

(いや、友達は与えられる物じゃないか)

 友達は自分で作る物だ。神に与えられて得る物じゃないか。

 さて、気を取り直して5人目と6人目なのだが・・・見覚えがあった。

(あれ?この人、どこかで会ったことがあるような・・・?)

 最初は俺の気のせいかと思ったが、リーフの言葉を聞いて納得した。

「あの二人は確か・・・イブ達がいる王城で勤めているメイド長と執事長だったはずです」

 なるほど。あの二人、イブ達が住んでいる王城に勤めていたのか。どうりで見覚えがあったのか。

(そういえば、あの王城に勤めているメイドや執事達の何人かのおしに負けて、ホットケーキの作り方を教えていたっけか)

 その中にあの2人もいたようないなかったような・・・?

(いずれも、リーフ達にとって、かなりの強敵になりそうだな)

 リーフ達は大丈夫なのだろうか。

 少し、話を聞いてみるか。


「問題ありません」

「…ん。誰が相手でもいつも通り料理するだけ」

「ご主人様の教えを守り、最高のホットケーキを作るだけです」

「後でアヤトさん達にも食べてもらいたいから、多めに作りますね」

 どうやら全員、緊張している様子はなさそうだ。

 個人的には、モミジが緊張のあまりオロオロしているのかと思ったが、違ったらしい。もっと人を見る目、養わないとな。

「…昨日ぶりだな」

「同じく、ですわ」

「・・・どうして魔王夫妻がここにいるんだ?」

 突然魔王夫妻が出てきた。

「私達もこの祭りに参加したいのだよ」

「私達の場合、ホットケーキを作る側ではなく、見る側、食べる側、ですけど」

 俺達が魔王夫妻と話していると、

「すごい・・・、」

「ホットケーキマスターほどのホットケーキを作ることが出来るようになると、魔王様方と話が出来るのか・・・、」

「でも、ホットケーキマスターが作るホットケーキって、人を感動させるほどの美味しさよ?」

「私達に作ることが出来るのかしら?」

「きっと頑張れば出来るわ!だってあの人を見て!あの人、確か近所に住んでいた・・・、」

 そんな会話が聞こえてきた。

(あの人って、この本選に出場予定の主婦のことを言っているよな?)

 料理を本業としていない人もこの本選に出場出来ると証明出来たからな。これで他の主婦や、様々な職種の人達も一層ホットケーキ作りに熱が入るだろう。

「さて、それではこれから本選を始めたいと思います。本選への出場を決めた方々は壇上におあがりください」

 司会者の言葉に続き、本選出場者が続々と壇上に上がっていく。その本選出場者の中に、リーフ達が含まれている。

「それでは、一人一人に意気込みを聞いてみたいと思います」

 どうやらこれから、本選出場を決めた10人に1人ずつインタビューするらしい。

(大丈夫だろうか?)

 特にモミジだ。モミジは普段からオロオロしているからな。こういった場面でも情緒不安定になりそうで見ているこっちが心配になる。

(俺の場合、公衆の面前でインタビューされる機会なんてなかったけどな!)

 ・・・なんかもう、帰りたくなくなってしまった。早く家に帰って塞ぎこみたい。

「まずはこの方・・・、」

 こうして、司会者のインタビューが始まった。

 1人目、2人目の料理人の夫婦は、

「私の料理人の全誇りをかけて、今の私に出来る、最高のホットケーキを作ってみせます!」

「俺も、妻と同じ料理人として最高で、そして妻に誇れるホットケーキを作ってみせるよ」

「あなた・・・、」

 ・・・ひとまず、リア充は粉々に滅べばいいと思う。

 取り敢えず、これだけは言いたい!

(人前でイチャつくんじゃねぇよ!)

 ま、俺も言ってはいないんだけどな。心の中で思っただけだし。

 3人目の主婦の方は、

「私の料理を食べて、少しでも多くの方が美味しいと言ってくれたら嬉しいです」

 と、優しい笑顔で言っていた。

 4人目の料理人の人は、

「俺も頑張って美味しいホットケーキを作り、素敵な彼女を作ってみせます」

「きゃー!」

「素敵―!」

「彼女なら私にしてー!」

 その言葉に、多くの女性陣が黄色い声援を送る。

(あのイケメン、彼女がいないのか)

 てっきり彼女がいると思っていたのだが、どうやら彼女はいないらしい。俺の勘違いだったか。個人的には、そのまま一生独り身でいてほしい。

 5人目のメイド長は、

「私にホットケーキを教えて下さったホットケーキマスターの顔に泥を塗らないよう、精一杯作らせていただきます」

 そのメイド長と目が合ったかと思うと、笑顔を向けられ、一礼した。凄い綺麗な所作だな。流石、メイド長だ。

 6人目の執事長は、

「王家に仕える身として、恥じないホットケーキを作る所存です」

 5人目のメイド長と同じく、目が合ってしまった。すると室次長は、俺に優しく微笑み、メイド長と同じような所作を見せてくれた。

(生まれというか、育ちがいいと、あそこまで綺麗な動きが出来るのかね)

 執事長とメイド長の綺麗な所作に俺は感心する。

(さて、)

 これで後は、リーフ、イブ、クロミル、モミジの4人か。

(俺に関する悪い噂を流さないでくれると嬉しいのだが、)

「次に、ホットケーキマスターから直々に教えてもらった1人、リーフさんから一言」

 リーフは何を言うのだろうか。

「アヤトに直接教えてもらった手前、下手なものを作るつもりはありません。みなさんが納得する一品を作ります」

 なんとも頼りがいのある言葉だ。これは期待出来そうだ。

「どうせ、どうせ私はアヤトに教えてもらったにもかかわらず、予選も通過出来ない料理下手ですよーだ」

 ・・・どうやらクリムはいじけてしまったらしい。リーフの言葉が心にささってしまったのだろう。

「・・・大丈夫。人には向き不向き、習得するのに要する時間は人それぞれだから気にするな」

「・・・それ、慰めになっていると思います?」

 なんかクリムから憐れみの視線をもらった気がするが、気のせいと思うようにしよう。

「それでは次に、ホットケーキマスターに仕える牛人族、クロミルさんから一言」

「ご主人様の教えの元、最高のホットケーキを作るだけです」

 なんとも職人気質な返答だ。よ、大将!とか言ってみたい気分だ。

「そして、我が国の王女、イブ様から一言」

「…この国の食文化発展を願って、最高のホットケーキを作る」

 なんとも王女らしい視点だ。食文化の発展なんて考えた事なかったぞ。

「ふん。どうせ自分が美味しいホットケーキが食べたいだけよ。単にあの全身胃袋お化けが言葉を選んだだけよ」

 ・・・どうしよう。王女という観点から見ればそんなことないというのだが、イブの性格を知っているから何も言えないんだよな。

(イブ、ホットケーキや食事が大好きだからな)

 悪いことじゃないから問題ないと思うか。

「そして、ホットケーキマスターからホットケーキ作りを教わった1人、モミジさんから一言」

「えと・・・みなさんが少しでも笑顔になれるような、そんなホットケーキを作り、食べてもらいたいと思います」

 なんとも慈愛に満ちた発言だ。思わず抱きしめてしまいそうだ。

(相変わらずモミジは全ての人に優しいというかなんというか・・・発言が聖女なんだよな)

 もし俺が地球にいた時、モミジも地球にいたら・・・絶対モテていた、だろうな。全ての男に優しくし、惚れられ、告白されまくって・・・、

(いや、やめておこう)

 そんな考えは捨てるべきだ。そんな可能性を考えたところで、今の生活が変化することはないのだから。

「みなさん、ありがとうございます!それではみなさんお待ちかねの・・・、」

 全員が息をのむ。

「それでは本選、始め!」

 予選を通過した10人による本選が始まる。

次回予告

『6-2-4(第474話) ホットケーキ祭り~本選~』

 本選前のインタビューが終わり、それぞれホットケーキを作り始める。

 そしていよいよ、ホットケーキ祭りの優勝者が決まる。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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