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色を司りし者  作者: 彩 豊
第ニ章 魔の国での日常、将来に鉄黒が差し込む夢
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6-2-1(第471話) ホットケーキ祭り~開催~

 魔王と入浴してからだろうか。変な夢を見るようになった。

 夢の詳細な内容は覚えていないが、後悔するぞ、とか、世界が終わるぞ、とか言われていたような気がする。

(どうして後悔するのか、世界が終わるのか、まったく分からないんだよな)

 変な夢ばかり見るせいか、後悔する原因、世界が終わる原因を色々考えてしまい、最近睡眠不足気味だ。

(それに反して・・・、)

 俺は街を見る。その街は、いつも以上に賑やかで、落ち着きがない。

(無理もないか)

 今日は、祭りがある。

 みんな、この祭りの為に色々準備をし、楽しみにしてきたのだ。浮足立つのも無理はないだろう。

「お兄ちゃん、楽しみだねー♪」

 ルリはとても楽しみにしているのか、ルンルンとスキップしている。

「そんなに楽しみなのか?」

「あったりまえだよ!なっていったって、今日はホットケーキ祭りなんだよ!楽しみー♪」

 そう。

 お祭りはお祭りでも、今日はホットケーキ祭りである。

(ホットケーキ祭り、か)

 俺も最初聞いた時はどんなことをする祭りなのか分からなかった。なので、祭りの主催者である、魔王に聞いてみた。

 その結果、

「簡単に言うと、誰が最も美味しいホットケーキを作ることが出来るのかを決める祭りだ」

 とのことだった。

(魔王から話を聞く限り、祭りじゃなくて大会なんじゃないか?)

 なんてことを考えた時もあったが、そんな些細な事は気にするだけ無駄だと判断し、思考を放棄した。

「ちなみにアヤトは、審査する側だから強制参加だぞ?」

 そんなことを言われてしまった。

(俺が参加拒否したらどうする気だったのだろうか?)

 そんなことを考えていたら、その考えを読み取ったのか、

「ちなみに参加を拒むようなら、この国の民は悲しむだろうな。あーあ。あーあ」

 と、分かりやすい脅しを受け、俺は祭りに参加することにした。

(俺自身、このホットケーキがどういう祭りがどういうものか見てみたかったからいいけどさ)

 さて、どんな祭りなのか見てみるか。


 祭りには様々な人が参加していた。

(農家に商人・・・あの人は執事か?それにあのメイド、王城で働いているメイドじゃないか!?)

 どうやら参加する人に制限はかかっていないようだ。あらゆる人が参加出来るイベント、いい催しだな。

「それでは、この祭りの審査員を紹介いたします。まずは・・・、」

 そう言い、次々と審査員が紹介された。

 紹介されたのだが・・・、

(・・・誰?その隣の人も誰だ?その隣の人も知・・・らないな)

 まったく知らない人達だった。

 人の話を盗み聞・・・聞こえてきた話の内容によると、料理人から一般市民まで色んな職種の人を審査員に起用し、多くの人が美味しいと納得した人を予選通過させるみたいだ。

 ちなみに、この祭りには予選があり、その予選を通過する必要がある。

 予選がある理由として、参加する人数があまりにも多すぎる為、人数を絞るために予選をとりおこなうことになったのだとか。

 予選の参加者はやはりというべきか、ほとんど知らない人だった。俺、この国で交流なんて持っていないからな。これもボッチによる弊害か!?

(よくみたらリーフ達がいる!!??)

 まさかこの祭りにリーフ達が参戦しているとは!

 いや、当然といえば当然か。

 何せリーフ達は、ホットケーキが大好きだからな。そのホットケーキの祭りとくれば、参加しない方が不自然、というものか。

(・・・おいおい、リーフ達だけでなく、モミジも参加しているのかよ)

 モミジの性格上、参加しないと勝手に思い込んでいたのだが、どうやら俺の考えは間違っていたようだ。やはりモミジもホットケーキが大好きだからな。この祭りに参加したかったのだろうな。

「そういえばルリはこの祭りに参加しなくていいのか?」

 てっきり、ホットケーキ大好きなルリのことだから、ルリも祭りに参加するものだと思っていたのだが。

「う~ん・・・。ルリは作るより食べたいから♪」

 そう言いながら、ルリはホットケーキを食べる。

「・・・そうか」

 俺はこれ以上何も言わず、ルリの隣を陣取ることに決めた。

(さて、最終審査の俺の出番まで時間あるし、ルリと時間を潰しているか)

 そう思っていたら、

「あ!?ホットケーキマスター!ここにいたのですか!?」

 誰かが俺の腕を掴む。

(・・・この人、誰?)

 掴んだ者が誰なのか、今の俺にはまったく心当たりがない。まさか、こんなところで人さらいか!?

(そんなわけないか)

 俺のことをホットケーキマスター、なんて呼ぶ奴だ。おそらく、この祭り関連で何k俺に用があるのだろう。

 だが俺自身、まったく記憶にないぞ?最終審査するくらいしか話を聞かされていなかったはず。

「こちらです!急ぎますよ!」

「え?あ、ちょ!?」

「お兄ちゃん?どこか行くの?ルリも行くー♪」

 俺は誰か分からない人に腕を引っ張られることになった。

 引っ張られてこられた場所は、とある厨房だ。野外に設置されているからか、周囲の目が気になる。

「まさかここで作れ、と?」

「ここにいるみなさん、ホットケーキマスターが作るホットケーキを一目見たいそうなのです。なので、ここで一枚だけでも焼いてくれませんか?」

「いきなりそう言われてもな・・・、」

 俺はルリに視線を送る。これからルリと共に行動するのだ。俺の一意見だけで決めていいのか分からなかったので、ルリの意見を聞く。

「ルリのことは気にしなくていいよ~。ルリ、お兄ちゃんが作ったホットケーキ、食べているから」

 そう言いながらルリは、アイテムブレスレットからホットケーキを取り出し、飲食を再開した。本当、ルリは食べる事大好きだよな。

「分かった。一枚焼けばいいんだな?」

「!?はい!!」

 連れてきた人は目を輝かせながら肯定した。

「ではここで特別に、このホットケーキの生みの親、ホットケーキマスターことアヤトさんにホットケーキを作ってもらいましょう!お願いします!」

 ここでみんなの視線が俺に集中する。

(何度か経験しているのだが、何度経験しても、この視線の雨に慣れる事はなさそうだな)

 俺は視線の雨のプレッシャーにビビリながら、俺はホットケーキをいつも通り作った。

(いつも作る時、こんな視線はないからな。なんか作り辛いな・・・)

 だが、いつもと作る料理は変わらない。なので俺は出来るだけ気にしないように、視線を感じないように意識しながら料理を作る。

「おぉーーー!流石はホットケーキマスター!流れるように厨房を動いています!しかも、普通ならきっちり計量するところで、ホットケーキマスターは目分量で作っていきます!凄いです!」

 それは凄い、と言えるのか?俺はただ、いちいち計量するのが面倒だからしないだけなのだが。それに、この量も本当に正確なのか分からないし。本当になんとなくというか、感覚に従っているだけなんだよな。

「ちなみにホットケーキマスター、計量していない理由はもしかして、計量しなくても見た目と感覚で正確な量が分かるから、ですか?」

「・・・まぁ、そんなところだ」

 俺は少し罪悪感を抱きながらも、司会進行をしている者に答える。

「流石はホットケーキマスターです!この領域にまで達すると、視るだけで正確な量が分かるようです!・・・計量してみても?」

「え?それは・・・、」

 と、悩んでいたら、司会進行をしている者が勝手に、材料を分けて入れていたボウルを測量器の上に置いてしまった。

(これで見当違いな量だったらどうしよう?)

 今作っているホットケーキは一枚分なので、一枚作るのに必要な材料だけ使っているつもりだ。間違っていないといいが・・・。

「!?さ、流石はホットケーキマスター!目分量で寸分の狂いもありません!見事な観察眼です!みなさん、ホットケーキマスターに拍手!」

 この司会の言葉を皮切りに、続々と拍手の音が鳴り始める。

(きっと、司会の人が気を利かせてくれたのだろう)

 俺は心の中で司会の人に感謝をし、ホットケーキを完成させた。

「こ、これが、ホットケーキマスターが作ったホットケーキ・・・!」

 なんだろう。

 俺はただ、普通にホットケーキを焼いただけなのだが、そこまで作ったホットケーキを見られるとなんだか恥ずかしいな。失敗して焦がしていないから大丈夫だと思うのだが・・・。

「では、ここにいるみなさんを代表して、一口、いただかせてもらいます」

 そう言いながら、司会はどこからかフォークを取り出し、一口分を切ってから口に運び、中に入れた。

「・・・」

 ・・・。

 ・・・?

「おい、味の感想・・・!?」

 司会の人に味の感想を聞こうとしたら、

「まさかこれほどの味とは・・・生きていて、よかった」

 泣いていた。

 そして、

「まじかよ」

「ホットケーキマスターのホットケーキは、人を感動させるほどの美味ってことか!?」

「ホットケーキマスターというか、ホットケーキ神だ!」

「・・・あのホットケーキ、いくら払えば食えるんだ?」

「俺、十万払うから一口!一口でいいから食べさせてくれ!」

 俺のホットケーキを一口でも食べたいと懇願してくる人が続出し始めた。

(これ、どうやったら収まるんだ?)

 この騒ぎ、誰がどのようにして鎮めるのだろう?原因である俺がなんとかすべきだろうが、なんとかする方法が思いつかないな。

 そう悩んでいたら、

「それじゃあ、残りいただくね~♪」

「「「!!!???」」」

「ん~~~♪美味しい~~~!!!」

 ルリが解決してくれた。

 俺がさきほど作ったホットケーキを食べる、という荒業で。

(これで暴動でも起きたらどうしよう?・・・とりあえず実力行使出来るよう、戦闘準備しておくか)

 暴動が起きる可能性も踏まえ、俺は戦闘準備をする。たかがホットケーキ一枚だが、その一枚に十万円払おうとした者がいたのだ。何があってもおかしくないかもしれない。

「やっぱ、お兄ちゃんのホットケーキ、最高~~~♪♪♪」

(こんな時に味の感想を言っている場合か?)

 ルリに心の中で突っ込んでいたら、

「・・・なぁ、あの笑顔、見たか?」

「ああ。あの笑顔は、ホットケーキマスターが作った笑顔だ」

「だよな。あの笑顔をホットケーキマスターが・・・本当に凄い人だよ」

 ・・・何故か分からないが、暴動は起きなさそうだ。

 もしかしたら、ルリの笑顔には人の心を静める不思議な力があるのかもしれない。

「そ、それではみなさん!みなさんも、このような素敵な笑顔にさせるホットケーキが作れるよう、張り切っていきましょう!」

「「「はい!!!」」」

 こうして、ホットケーキ祭りが始まった。

次回予告

『6-2-2(第472話) ホットケーキ祭り~予選~』

 ホットケーキ祭りがいよいよ開催された。

 まず行われたのは予選。その予選を突破した者達だけが、本選出場をもぎ取ることが出来る。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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