6-1-21(第469話) 誰もいない丘で
みんなでホットケーキを食べた後、ルリ達はお風呂で入浴タイムである。
年頃且つエロに興味津々な男の子なら、覗きをするかもしれない。
(ま、俺はそんなことしないけどな)
俺は普段からリーフ達の裸を見る機会があるからな。入浴中の女性を見るのも大変素敵かもしれないが、本人の同意なしにするわけにはいかないからな。
え?どうしてリーフ達の裸を見る機会があるのかって?
それは・・・な・い・しょ♪
・・・。
ここに誰もいなくてよかった。
危うく俺はいたい人だと認定されるところだった。
「さて、行くか」
俺は、みんなが入浴している浴場を後にし、ある場所に向かった。
歩き続けて十数分。
「・・・ここにするか」
俺は少しひらけた丘のような場所に来ていた。ここには墓・・・はないな。
俺は大きめの石を複数持ってきて、簡単に積み重ねる。
「後は苗字を書いて・・・完成だな」
・・・なんだか見た目が墓みたいになってしまったが、まぁ気にしないでおこう。
「ここで簡単に報告させてもらうよ」
俺は実の両親に報告していく。
・赤の国で、クリムという王女と仲良くなり、旅の仲間になってくれたこと
・青の国で、色欲に溺れた国で王族と戦い、色欲から解放したこと
・緑の国で、赤の国で仲間となったリーフ達とエルフ達と共に、ふざけた習慣をぶっ壊したこと
・黄の国で、その日暮らしの三姉妹と出逢い、その兄の最強冒険者と戦ったこと
・白の国で、キメルムという、人間と魔獣が混ざった種族と戦い、自立出来るよう手助けしたこと
・魔の国で、王族だけでなく、旅の仲間とも戦ったこと
「この世界に来てから俺、戦ってばかりだな・・・、」
地球にいた時の俺はここまで好戦的ではなかったと思うんだけどな。この世界の俺と地球のいた時の俺とでは、性格が変わったのだろうか。
「後、旅の仲間についても話すよ」
・クリムは赤の国の王女で、肉体をよく鍛え、勉強が苦手で、辛い物好きな女の子であること
・イブは魔の国の王女で、運動はあまり好まず、食べることが大好きな女の子であること
・リーフはエルフ且つギルドの受付嬢で、眠るのが大好きだけどみんなの姉、という感じでみんなを引っ張ってくれる素敵な女性であること
・ルリはヒュドラという魔獣で、食べることが大好きな、純粋で無邪気な女の子であること
・モミジはドライヤドで、いつもみんなのことを心配してくれて、決して人を貶さない優しい心を持った女の子であること、
・レンカは魔道具だが心を持っており、いつも長距離移動の時にはお世話になっていて、時には俺の態度や行動に酷評するものの、心配してくれている女の子?であること
「・・・こんなところかな」
本当はもっともっと言いたいことはあるが、これ以上は出来ない。これ以上話すとなると、何を話すか考えるための時間が欲しくなるな。
「後はそうだな・・・、」
次はいつ話そうかな・・・。
(昼に話しかけていると、石に話しかける変人、と扱われるかもしれないから、早朝とか深夜に話すか)
となると、次はどんな話題にするか、だな。
「・・・そうだな。今度は、俺が今まで出会ってきた仲間、家族と思えるくらい大切な人を紹介するよ」
今頭の中でイメージするだけでも、クリム、イブ、リーフ、ルリ、クロミル、モミジ、レンカが思いつくな。
後、魔王夫妻やヤヤ、ユユ、ヨヨもか。
「話題はまだまだ尽きなさそうだから、次を楽しみにしてくれ」
そう言い、俺は微笑む。
「それじゃあ、お休み」
俺は、もう顔が見えない両親に向けて祈った後、石を崩す。
「いつか、ちゃんと何か建てて、それに報告するよ」
墓、とは違うからな。何と言えばいいのだろうか・・・。
「報連相石・・・うん、これにしよう」
俺は今、もう会えない自身の両親にこれまでの活動報告、相談をした。連絡は・・・まぁ、今後の予定が決まっていないからしていないな。だが、今後の予定が決まったらする予定だ。
「ちゃんとした報連相石を作るから、その時にちゃんとした報告をする。それまで待っていてくれ」
俺は言い直してから、その場を去ろうと後ろを向く。
「!?」
瞬間、後ろ風が吹き、俺の体が押された。
慌てて振り返ると、そこには見慣れた男女がいた。
その男女は、この世界にいるはずのない二人で、俺にとってとても、とても大切な人。
「とうさ・・・!?」
俺が声をかけようとしたら、その二人は一瞬で消えた。
そしてすぐに分かった。
(ああ。幻か)
きっと、俺が両親のことを考えていたから、その姿が幻として見えてしまったのだろう。
もう、会えるはずがないのに。
「大丈夫」
俺は悲しくなったが、その気持ちとは裏腹に、胸が暖かくなる。
なにせ俺にはもう、家族と呼べるくらい、大切な仲間がいるのだから。
もちろん、家族とは会いたい。
けど、会えないから一生孤独、なんてことはない。
「今の俺には、みんながいるから」
そのみんなの中には、これまで旅をしてきた仲間がいる。いずれも大切な仲間だ。
「じゃあな」
今回は軽い紹介だが、いずれ、きちんと報告しよう。
「風呂はもう空いたかね」
さて、入浴準備をするとしよう。流石にもうみんな風呂から出たことだろう。長湯していた時は・・・待てばいいか。
そして俺は、見晴らしがいい小さな丘を後にした。
一方、
「両親、ね」
「…アヤトの両親。会ってみたい」
「そうですね。ですが墓のようなものを作っていましたので、もう生きていないのでしょう」
「寂しい、ですね」
彩人の姿を見ていた者がいた。その者達は、彩人の姿を、言葉を聞いて、それぞれ胸に抱いていた感情を吐露する。
「そう、ですね。出来ることなら、ご主人様のご両親方にもお仕えしたかったのです」
「お兄ちゃんのママとパパかー。どんな美味しい料理が作れるんだろうなー」
「まったく。ルリ殿はいつも料理のことばかりですね。少しは別のことも考えたらどうです?」
「ええ~?ご飯って大事だよ~?ねぇー、モミジお姉ちゃん?」
「そ、そうですね。それにしてもアヤトさんのご両親さん、ですか。一どんな方なのでしょう?」
モミジのふとした質問に、
「きっと鬼だよ、鬼!それはもう怖いこわ~い鬼だよ!」
ルリは自身満々に答える。
「ど、どうしてそんなことが分かるのですか?」
モミジは、ルリがどのようにして答えを導き出したのか、その過程を聞く。
「だって、あの鬼畜なお兄ちゃんだよ!?あの鬼畜は絶対、鬼さんから学んだんだよ!」
ルリの熱弁に、
「「「あ~~~・・・」」」
みんなは納得する。
緑の国での出来事。
白の国での行動。
様々な彩人の行動が、ルリの言葉に説得力を持たせる。
「で、でも!アヤトさん、人間ですよ!?いくらなんでも・・・!?」
モミジの言葉に、レンカは優しく肩を叩く。
「そんなこと、ここにいるみんな分かっていますよ。おそらく、ルリ殿の冗談かと」
「じょ、冗談!?よ、よかったぁ」
モミジはレンカの言葉を信じ、安堵する。
「ですが、アルジンのご両親・・・私も会いたかったですね」
「だよね!?私も会いたかった~」
「…小さい頃のアヤトのこと、聞きたかった」
「あ!私も気になります!」
レンカの言葉に反応しながら、みんな丘を後にする。
そして、誰もいなくなった丘で、こんな言葉が舞った。
“不出来な息子の事、どうかよろしくお願いします”
と。
次回予告
『6-1-22(第470話) 性的に興奮しない混浴』
丘の上で現状報告を終えた後、彩人は湯に浸かる。
浸かっている最中、とある者が浴場に現れ、彩人と共に湯を堪能する。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
感想、評価、ブックマーク等、よろしくお願いいたします。




