6-1-20(第468話) 訓練場での戦い~その後~
ルリ達が順調にホットケーキを作っている中、俺はというと、
「おぉ!」
「これが、ホットケーキマスターの動き!」
「目を瞑っていても一切の狂いなく作ることが出来るなんて・・・!」
「凄い!凄過ぎる!」
多くの執事、メイド達に見られながらホットケーキを量産していった。これだけ多くの人に見られながら料理するのって、緊張するな。
だが俺は、考え方を変えることで、この緊張を乗り越える事にした。
それは、目を閉じて料理する事だ。目を閉じれば、周囲の人の表情や視線を気にしなくてよくなるのだ。
(その代わり、料理の難易度が飛躍的に上がるんだけどな)
だが、今の俺にそんな障害は障害じゃない。何せ今の俺は、寝ながらホットケーキを作ることが出来るくらい作り慣れているのだ。
(・・・本当はホットケーキを作る時、火を扱うのだから注意する必要があるんだけどな)
慣れって本当に恐ろしいものだ。
「こ、これほどの量をあっという間に・・・!?」
「流石ホットケーキマスター!私達のはるか上をいっているわ!」
「こんなの、凄いだけじゃあ言い表せない」
・・・どうやら俺のホットケーキは凄いらしい。俺は作り過ぎて、ホットケーキの精霊に会えるのでは?なんて考えてしまうくらいだ。
ま、いるわけないのは分かっているんですけどね。
そんな周辺の声を聞き流しつつ、俺達はホットケーキを作り終え、
「それじゃあ食べるか」
「「「はい!!!」」」
みんなでホットケーキを食べる事になった。
みんなと言うのは、俺やルリ、魔王達だけでなく、
「いやー、まさか使用人である我々も同じ食卓を囲っていいだなんて」
「本当、私達って運がいいわよね!」
「そうね。周りの人に自慢出来るわ!」
この城で働いている執事、メイド、護衛の人達とも一緒なのだ。まぁ、食卓を囲む人数が多いと、それだけ賑やかになるからな。悪くない光景だ。
「・・・うむ。うむ」
「これ!これですわ!!このホットケーキこそ至高!!!」
魔王、ゾルゲムの方は頷きながら食っているな。
魔王の妻、ストレガの方は、俺のホットケーキを褒めながら食っているな。
二人とも、幸せそうに食べているならよかった。
「うーん!やっぱりホットケーキさいこー♪♪」
「…うまうま♪」
「ですね。自分で作ると味を変えることが出来ますから、このように香辛料をたっぷりかけて食べることが出来ますね♪」
「その食べ方をするのはクリム、あなただけよ・・・」
「で、でも!ホットケーキになにかつけるのはいい考えだと思いますよ!?ほら、このジャムとか!」
「確かにみなさまは普段、ホットケーキにハチミツやジャムなど、なにかした創意工夫をして食されていますね」
「それにしてもこのホットケーキ、何度食べても飽きませんね。アルジンはこの料理をどのように思いついたのか興味が出てきます」
どうやらルリ達も満足しているようだ。
(この光景・・・、)
俺はふと、地球にいた時の自分を思い出す。
地球にいた時の俺は、いつも独りだった。だから、食事する時はいつも独り・・・、
(いや、違ったな)
俺の両親が一緒に食事してくれたこともあったから、三人か。
(それが今はどうだ。)
周囲を見渡せば、家族以外の者がこんなにもいる。
(この世界に俺の両親はいない。けど、俺と食卓を囲んでくれる者がこんなにもいる)
そう考えるだけで、なんだか胸が暖かくなる。
「?お兄ちゃん、ホットケーキ、ちゃんと食べている?」
「・・・ん?あ、ああ。食べているさ」
俺はルリから言葉をかけられ、俺は食べているとアピールする為、大きめのホットケーキの口の中に放り込み、何回か咀嚼してから飲み込む。
「な?」
「美味しい?」
「ああ」
いつも通りの出来だ。
「ならよかったー♪」
ルリは笑顔を俺に向けてくる。
その笑顔が、俺の両親と重なった。
(俺がどんなに不出来でも、見捨てず、ここまで育ててくれたんだよな)
このホットケーキも、親に教えてもらったんだっけか。
(どこでもいい。どこかに両親の墓を建てて・・・て、それは違うか)
死んだのは俺の方なのだから、墓を建てるとしたら俺の方だな。
死んでもいない自身の墓を建てる。
それはそれでなんか違うな。
(墓じゃないけど、何か建てて、そこに報告しよう)
俺はそう考え、後で行動に移そうと考える。
「…?アヤト、どうかした?」
「・・・いや」
俺はさきほどの考えを飲み込み、
「美味いな、と思っただけだ」
この言葉に、
「…ん。確かにこれは美味♪」
イブは笑顔で返答する。
(今夜あたり、両親に報告してみるか)
そう思いながら、残っているホットケーキを食べながら、何を報告しようかんが得始めた。
次回予告
『6-1-21(第469話) 誰もいない丘で』
みんなでホットケーキを食べ終え、入浴を済ませた彩人は、誰もいない場所である人物達に現状鉱区をする。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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