6-1-18(第466話) 訓練場での戦い~【黒色気】を使った魔王の妻~
「・・・アルジン、また何かやらかした・・・いえ、もうしたのですね」
「おい。俺は何もしていない・・・はずだ、多分」
「アルジンこそ自信がないじゃないですか」
「ですが、どうして魔王の妻さんは、アヤトさんと模擬戦をしたいと言ったのでしょうか?あの方もさきほどの連戦を見て、自分も戦いたくなったのでしょうか?」
「・・・いえ、おそらく違うかと」
モミジの推測を、クロミルは否定する。
「私が推測するに・・・、」
ここでクロミルは俺を見る。まぁ、なんとなく俺が理由なのは分かる。そしてその理由はおそらく、
「さっきの行動、だよなぁ・・・、」
「魔王様の奥方も頭では理解していると思います。ですが、家族のこととなると、そう簡単に割り切れない。心では許す事が出来ないのではないでしょうか?」
「そうだよなぁ・・・」
それしか理由が思い浮かばないな。俺としては、殺す気はまったくなかった。だが身内から見れば、殺す気が無くても許せない事なのだろう。俺も逆の立場だったら許せないかもしれないし、今のストレガのように戦いを申し込んでいたかもしれない。そしてその相手を完膚なきまでに叩き潰して・・・、
(あれ?)
もしかしてこれから俺、魔王の妻、ストレガに粛清される?
「俺、あの人と戦うの嫌なのだけど、拒否って出来ると思う?」
「無理かと」
「だよなぁ・・・」
なんか目が笑っていないように見えるな。まさか闇堕ちしているとか?
(・・・ここはもう割り切るしかないか)
今日は既に何度も戦ってきているんだ。今更一回二回戦ったところで・・・変わるな。
(いや!もう気にしない!!)
例え今以上に疲れるとしても、もう気にしない!気にしたら負けと思うようにしよう、うん!!
「それで、あの人はどんな風に戦うんだ?」
俺はイブに、魔王の妻がどんな戦闘スタイルなのか質問する。やはりイブに似て、魔力で腕を形成し、その腕で戦っていくスタイルなのだろうか。
「…私とほぼ同じ」
「そうか」
となると、相手はイブと思って戦った方がよさそうだ。
「…でも、気を付けて」
「ん?どういうことだ?」
「…多分、何か隠している。私と同じ戦い方だからといって油断しない方がいい」
「分かった。気を引き締め直して挑むよ」
「…ん♪アヤト、ガンバ♪」
「ああ!」
もとより、油断するつもりなんてない!やるからには勝つ!
俺はイブからある程度情報を収集したところで、訓練場の中央に向かう。
「さて、戦う準備は出来まして?」
「ああ、いつでも始められるぞ」
「そう。あなた、審判お願い」
「あ、ああ」
ここで魔王は俺を見る。
(ん?)
視線からして、何か言いたそうだな。
「ちょっと待ってくれ」
「何かしら?別に少しくらいいいわよ」
「悪いな」
俺はストレガの許可をもらい、魔王に近づく。
「それで、どうした?」
魔王はある人物、ストレガ=デビルを見てから俺に話しかける。
「気をつけろよ」
「え?」
何やら真剣なトーンで忠告された。
「あの妻の目、もしかしたらお前を殺すかもしれない」
「!?だが・・・、」
今も魔王の妻はニコニコと笑っている。一瞬、人を殺す人には見えないのだが、
(魔王の言う通りかもしれないな)
さっきから目が笑っていないんだよな。光がないというか、何か覚悟しているような・・・、
「忠告、素直に受け取るよ」
「・・・すまない。家の者が・・・、」
「気にするな。俺も悪いところがあったからな」
主に、魔王の首に神色剣を当てたところ、かな。
「お話、終わりまして?」
「ああ。たった今終わったところだ」
俺は魔王から離れる。
「そう・・・、」
ストレガは無言で魔王を見る。
「それではこれから、我が妻とアヤトとの模擬戦を始める」
俺は神色剣を構える。
(やはり杖を構えてくるか。武器のセンスはイブと同じか)
だが、イブや魔王の忠告を受け止めるなら、この人の武器は、魔力で形成する腕と、今も手に持っている杖だけじゃないはず。要警戒だな。
「始め!」
魔王の合図とともに、俺と魔王の妻、ストレガ=デビルとの模擬戦が始まる。
次回予告
『6-1-19(第467話) 訓練場での戦い~【黒色気】を使った魔王の妻その2~』
魔王の妻が抱く感情。
その感情は、彩人が抱いたことがある感情だった。
その感情を機に、魔王の妻、ストレガ=デビルは彩人と戦いを始める。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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