6-1-14(第462話) 訓練場での戦い~【色気】を発動したクリム、イブ、リーフ~
(まず初めに、クリムは突っ込んできたな)
何も考え無し、というわけではなさそうだが、何を考えているのか分からないな。
(【赤色気】!)
ひとまず、クリムと応戦だな。俺は【緑色気】を解除した後、【赤色気】を発動させる。
「【赤色気】!【炎拳】!」
燃え盛る炎に包まれたクリムの拳が俺に襲いかかる。
(さっきとあまり変わらない、だと?)
三人で戦うわけだから、戦略でも練ってきたのかと思っていたのだが、そうではなかったらしい。
(まさか、三人がそれぞれ俺に攻撃するのか?)
それだと、さっきの三連戦とほとんど変わらない気がするな。
「はぁ!」
(やっぱ来るよな!)
クリムの連続攻撃の合間に、重箱の隅をつつくようなリーフの鋭利な攻撃が俺に襲いかかる。
(!?なんだ、これ!!??魔力の腕、だと!!??)
突如、どこからか俺の足を掴む謎の手があった。この手は魔力で形成されていて、誰の差し金なのかすぐに分かった。
(イブの奴・・・!)
なるほど。
最初、クリムがただ何も考えずに突っ込んできたのかと思ったのだが、どうやら違うようだ。
(クリムの突っ込みに合わせて、リーフが蜂のように刺す。イブは、二人の攻撃が当たるよう支援する)
「ぐ!?」
イブの妨害により、リーフの剣が俺に直撃する。
「今!」
そして、クリムの【炎拳】が俺に直撃。思いっきり吹っ飛ばされてしまう。
(いってぇ・・・、)
あの三人、以前より連携が良くなっていないか?先に魔の国に来て特訓していただけあるな。
(三人の連携を切り崩すか?いや、例え切り崩したとしても個々の能力が高いからあまり意味が無いな)
となると、三人一斉に相手をするしかないな。
(クリムの攻撃を受けつつ、リーフの攻撃とイブの妨害を受け流さないといけない、ということか)
その場合、手数が足りないな。それも当然か。俺独りに対し、相手は三人なのだから。
(なら、答えは簡単だ)
手数を増やせばいい。
「もう一度行きます!」
クリムの声が聞こえた後、クリムが真正面から突撃してくる。
「風よ、砂を巻き上げて視界を塞いで!」
リーフの緑魔法により、風が巻き起こり、砂が俺の視界を砂で埋め尽くそうとしてくる。
(まだ俺には【魔力感知】があるから問題な・・・!?)
俺が【魔力感知】を発動させたら、俺に向かって真正面から向かってくる大きな魔力反応がある。この反応はクリムと分かっているからまだいい。
が、俺の後ろに回り込んでくる魔力の反応があった。この魔力、おそらくイブだな。さっきと同じように、俺の足や腕を掴んで動きを妨害するつもりなのだろう。
(そんな手に何度も・・・いや、ここは乗ってみるか)
俺はわざと、魔力で形成されたイブの手に掴まれる。
「「はぁ!!」」
クリムとリーフが俺に拳と剣先を向けている。後数秒も経たずに直撃してしまう事だろう。
(【赤色気】を発動している今の俺なら間に合う!)
「「!!??」」
クリムとリーフの拳と剣が俺の前で止まる。もちろん、二人がわざと止めたわけではない。俺があることをして止めたのである。
「これは・・・!?」
「まさか、イブの腕を再現して止めたのですか?」
「ああ。こっちの手数が少ないからな。増やさせてもらった、よ!」
俺はクリムとリーフを思いっきり投げる。二人は空中で立て直し、イブと合流する。そのイブはと言うと、
「…!?」
「【火球】」
直接魔法をぶつけた。イブが俺に向けて腕をのばしたように、俺もイブに向けて腕をのばしたのである。
「「イブ!!??」」
イブは俺に向けてのばしていた腕を霧散させた。おそらく、俺の魔法をくらって維持出来なくなったのだろう。
「大丈夫ですか!?」
「火傷の手当てを・・・、」
「…いい。敵はまだ健在」
「…ですね」
「…二人とも、まだ、やれます?」
「…ん!」
「もちろん!」
その後、三人は俺と肉弾戦の時間が続いた。
クリムとリーフの二人が中心で俺と接近戦をし、イブが少し後方から俺に向けて攻撃を行っていく。
(魔力で腕を作ることが出来て本当によかったよ)
おかげで手数の差を埋めることが出来たのだから、イブに感謝だな。
接近戦が何時間も続き、お互いに疲れが見え始める。
いや、実際は数十分、数分くらいのやりとりかもしれないが、少なくとも今の俺にはそう感じた。
(一進一退だな。何かきっかけがあればいいが・・・、)
俺の今の【赤色気】だと、この三人を圧倒することは出来ない。
(なら、答えは簡単だ)
【赤色気】だけじゃなくて他の【色気】も・・・。
「これで終わりです、アヤト!」
「…この魔法で、終わらせる!」
「私達の最強の魔法で!」
三人の魔力が徐々に集約していく。この魔力は、三人の魔力だ。その魔力を混ぜているのか?
(混ぜる?ということはまさか・・・!?)
あの魔法が、俺が命名したあの魔法が俺に向かって放たれるのか!?
(直撃はまずい!!)
俺は複数の【魔力障壁】と【結界】を展開する。
(正直、これだけで三人のあの魔法を止められるなんて思わない)
何か対策を練らないと。俺にあの魔法、【殲滅熱光線嵐】が直撃してしまう!?
(もっと対策を・・・!?)
どうやってあの三人の協力魔法を防ごうか考えていたら、
「「「いっけぇーーー!!!」」」
【殲滅熱光線嵐】が放たれる。
(なんとか【魔力障壁】で持ちこたえてくれ!)
俺は【殲滅熱光線嵐】を【魔力障壁】で耐える。
(!!??やっぱ、真正面から魔法を受けるのは間違いだったか)
ここは地下なので下手に避けると施設が壊れると思ったので受けたのだが、この判断は間違っていたのかもしれない。だが、その間違いに後悔しても遅い。
(この魔法、やべぇな)
魔法の威力が強力なのか、徐々に押されている。
いや、それだけではないな。
この魔法の威力に、クリム、イブ、リーフ三人の強い思いが、魔法の威力に加算されているのだろう。
(この魔法が消えるまで耐えないと!)
やがて三人の魔法、【殲滅熱光線嵐】が消える。
(やっと、消えた・・・、)
もう二度と、あの魔法をくらいたくない。というかあの魔法、強過ぎない?チートだ、チート!・・・て、俺が言えるわけないか。俺、全色魔法に適性を持っているからな。
「もう一発行きますよ!二人とも、行けますか!?」
「・・・ん!当然!!」
「これで終わりにさせますよ!」
(まじかよ)
まさかあの魔法がもう一発来るのか?
(さっきの魔法だって、【魔力障壁】を展開し続けて、ようやく耐えきったというのに)
さっきと同じ防ぎ方なんて出来ないぞ?既に魔力の残量は4分の1切っている。さっきの魔法を耐えきるには、【魔力障壁】を展開し続けるだけの魔力と、怪我を回復させるための魔力が必要だ。二つの事をするには、俺の全魔力量の半分くらい必要だ。なので、現魔力量だと魔力が不足しているのだ。
(魔力池を使うか?)
・・・いや、やめておくか。三人はこれまで、武器は使っていても、魔道具は一度も使っていない。まぁ、俺だけ連戦しているのだから、魔道具位使っても文句は言われないかもしれないが、使用は遠慮しておくか。
(となるともう残りは・・・、)
俺は三人を見る。
「アヤト、これで終わりです!」
「…覚悟する」
「降参するなら今ですが、しますか?」
三人の言葉から、三人は俺の敗北を、自身の勝利を確信していることが分かった。
(・・・正直、リーフ達との戦いでこれを使う気はなかったけど、そんなこと言っていられないな)
だから俺は、三人の強さを再認識し、ある魔法を発動する。
その直後、俺に【殲滅熱光線嵐】が直撃する。
「!?アヤトさん!!??」
「大丈夫ですよ、モミジ様」
彩人の心配をするモミジに対し、クロミルは優しく声をかける。
「ご主人様なら心配いりません、なにせご主人様は、」
クロミルが言い終える前に土煙が晴れ、ある人物のシルエットが浮かび上がる。
「これからはもう、戦いにならないぞ?」
その人物の目は、六つの色で光り輝いている。
「は、はは・・・、」
「…そう。アヤトにはまだ、それがあった」
「私達三人でも敵いませんか」
三人はそれぞれある人物、彩人の目を見て、諦めの感情を表に出す。
「これで終わりだ」
彩人は瞬時に三人を横切る。その直後、三人の意識が途絶える。
「さっすがお兄ちゃん!」
「・・・アルジンの【六色気】、本当に強力ですね」
「・・・」
俺は無言で審判をしている魔王に目を向ける。
「勝者、アヤト!」
こうして、俺独りとイブ、クリム、リーフの三人の戦いは、俺の勝利で幕を閉じた。
(頑張ったな、俺)
さて、どうして戦おうと思ったのか、理由を聞かないとな。
そう考えながら、俺は三人に近づき、白魔法で回復させていく。
次回予告
『6-1-15(第463話) 訓練場での戦い~クリム、イブ、リーフが闘った理由~』
彩人は【色気】を発動したクリム、イブ、リーフの3人との戦いに勝った。
その後、彩人は3人から理由について聞く。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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