6-1-12(第460話) 訓練場での戦い~【黒色気】のイブ~
(イブと戦うとなると、遠距離からの攻撃が中心になりそうだ。となると、接近される心配はないな)
俺は掌に【火球】を発生させ、遠距離戦の準備をする。
(そういえば、クリムの時はクリムと同じ【赤色気】で戦ったから、【黒色気】で戦うか)
俺は【赤色気】から【黒色気】に変え、イブとの戦闘準備を引き続き行う。
(・・・よし。空中には複数の【火球】や【氷槍】を複数展開したし、迎撃準備はひとまずこんなところかな)
後は、イブが遠距離攻撃を始めた瞬間に魔法を使えばいいだけだ。
「!?」
俺がイブからの攻撃に備えていたら、イブが攻撃し始めた。イブが攻撃し始めたのは俺の予想通りだったのだが、俺の予想外の出来事が起きた。
それは、
「ぐっ!?」
イブが俺に急接近し、手にしていた杖で俺を殴り飛ばしたことだ。そのおかげで俺の体は吹っ飛ばされた。
(どうなっていやがる!!??)
イブは遠距離攻撃しかしないんじゃないのか!?
(・・・いや、俺がそう思い込んでいただけ、か)
あまりの驚きにさっき展開していた【火球】や【氷槍】が全部消えてしまったな。
(イブの行動のせいで、俺の作戦がパァになってしまったな)
作戦の崩壊を人のせいにしている暇があるなら他の作戦を考えないと。
(そんなの、決まっている!)
俺は魔銀製の剣を強く握り直し、イブに向ける。
「…それを待っていた」
イブはどうやら、俺との接近戦をお望みだったらしい。
(珍しいな)
いつものイブは遠距離攻撃を主体とした戦い方だったのにな。今はそんな面影など一切ない。もしかして、イブの中に別人格でも芽生えたのか?
「…来ないの?」
俺が色々考え込んでいたら。イブが俺に質問してきた。どうやらイブは、俺が先に仕掛けてくると予想し、構えていたらしい。なんか待たせてしまって申し訳ないな。
「先手は譲るさ」
「…そう。なら、こちらから行く」
イブは俺に向けて走り出す。そして、杖を俺に向けて振り下ろした。
(この攻撃を防げない、なんて思われていないよな?)
俺はイブの攻撃を難なく受け流す。
(これでカウンターを!?)
カウンターしようと思っていたら、息つく暇もなくイブの攻撃が俺に向かってきた。
(ち!)
俺は次の攻撃も受け流し、ようやくカウンターしようと思ったら、またもイブの攻撃に俺に向かってくる。
(この息つく暇もない連続攻撃は一体なんだ?本当にイブか?)
まさかこれが、特訓の成果なのか?
(やべ)
俺はイブからの攻撃を一度、受け流し損ねてしまう。
そして、そのミスが俺にとっての最大のミスとなる。
(な!?この連撃、やべぇ!!??)
一度受け流し損ねた攻撃を軸とし、怒涛の連続攻撃が俺を襲う。その連続攻撃に俺がつけいる隙が無く、カウンターを狙おうにも、カウンターを狙う時間すらない。いや、ないというか作らせない、と言った方が正しいかもしれない。
(なんとかして隙を作らないと。けど・・・、)
一切隙がない。魔法を発動するにも魔力制御する時間すら確保出来ない。
(・・・こりゃあ、俺から隙を作るのは無理だな)
出来る事があるとするなら、イブが攻撃をミスした瞬間だな。イブが攻撃をミスした瞬間に距離をとり、立て直すとするか。
(それまではひたすら防御だな)
そう結論付けた俺は、ひたすらイブの攻撃を耐える。
「・・・」
「・・・」
俺とイブは言葉を交わすことなく、攻撃が直撃する音だけ響き続ける。
(イブの奴、少しずつ、少しずつだが、攻撃速度が遅くなっているな)
おそらく、イブのスタミナが切れ始めているのだろう。攻撃のキレが最初の時より悪くなっている気がする。
(でもまだだ。まだもう少しだけ待って・・・、)
・・・。
(ここだ!!)
俺は、攻撃と攻撃の間にあるコンマ一秒未満の隙を使い、イブの攻撃を剣で受け止める。
「…流石はアヤト。僅かな隙をつく攻撃、見事」
そのまま剣で押し出し、イブから距離を取る。
(これで体制を立て直す事が出来るな)
俺は内心ほっとする。
「お褒めにあずかり光栄だよ」
まったく。本当、隙を見定めるのが難しかったわ。
「…ん。驚いてくれて良かった。特訓したかいがあった」
「そうか」
おそらく、俺達と別れる前のイブなら、さきほどの攻撃は出来なかっただろう。ということは、さきほどの連撃はこの国での特訓の成果、ということだな。
「…次を楽しみにするといい」
「次?」
次ってなんだ?
俺が疑問を抱いていると、イブは背中から腕を複数形成する。
「…【拳雨】」
イブの複数の拳が俺に向かって降り注がれる。
「【魔力障壁】!」
その攻撃に対し、俺は【魔力障壁】で拳を防ぐ。全ての攻撃を真正面から受け止めるとなると、【魔力障壁】が破られると思い、【魔力障壁】の角度を調節し、出来るだけ【拳雨】の攻撃を受け流す。
【拳雨】の攻撃の影響で、周囲に土埃が舞い始め、視界が悪くなり始める。
(攻撃が止んだ?)
この感じ、確かついさっき・・・?
(まさか・・・?)
俺はさきほどの出来事を思い出す。その出来事とは、クリムが炎の柱を立てた事だ。
(・・・来るな)
砂埃が強制的な何かによってはらわれる。そのはらわれた土埃の先に、クリムでもイブでもない者が立っていた。
「やはり次はリーフか」
「流石に気づきますか」
その者は、リーフであった。
「それではアヤト、連戦で疲れているのかもしれませんが、私の成果も見てもらいますよ?」
リーフは細剣を構え、【緑色気】を発動させる。【緑色気】を発動させたからか、目の色が緑色に変色する。
「アヤトも【緑色気】を使ってください。使うまでの時間くらいは待ちますよ?」
「なら、遠慮なく使わせてもらう」
俺はさきほどまで発動していた【黒色気】を解除し、【緑色気】を発動する。
「・・・では、行きます!」
「おう!」
そして、俺とリーフとの戦いが始まる。
次回予告
『6-1-13(第461話) 訓練場での戦い~【緑色気】のリーフ~』
【黒色気】を発動したイブとの戦いの次は、【緑色気】を発動したリーフとの戦いだった。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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