6-1-11(第459話) 訓練場での戦い~【赤色気】のクリム~
「それでは、いきます!」
クリムが真っ先に、俺に向かって飛び出してきた。
(リーフとイブは・・・動かない?)
てっきり、クリムが俺と一対一で戦いながら、イブとリーフの二人が隙をつくものかと思っていたが、違うのか?
(まぁいいか。どちらにしても、俺のやるべきことは変わらない)
目の前にいるクリムと戦うだけだ。まぁ、イブとリーフに対しては要警戒なのだが。
「【炎拳】!」
クリムから発している炎、さっきより炎のサイズが大きくなっているな。おそらく、【色気】を使った影響により、魔法の威力が向上しているのだろう。俺も体感しているからな。
(だからといって、怖けるつもりはない!さっきと同様迎え撃つだけだ!)
「【炎拳】!」
俺も【炎拳】を発動させたことで、さっきと同じ状況になってしまった。
が、
(ぐ!?さっきよりも重い!?)
【色気】を使う前と使った後で【炎拳】の威力が全く異なるじゃないか!?まるでさっきまで手を抜いていたみたいじゃないか!?
(けど、押し負けるほどじゃない)
俺は自身の拳を押し、クリムの【炎拳】に押し勝つ。
「ぐ!?やっぱアヤトには勝てませんか」
クリムは悔しそうな顔をする。さっき勝てないとか言っていたが、俺も結構危なかったぞ。少しでも気を抜いていれば確実に押し負けていたな。クリムの力、凄いな。
「ですが、負けません!押し負けたのなら、押し勝つまで何度も何度も押し続けるだけです!」
そう言い、クリムは俺に向けて【炎拳】を連打する。
(冗談じゃないぞ!?あの威力の【炎拳】を何度も何度も打ってくるとかふざけているのか!?)
あの攻撃を何度も真正面から迎え撃つことなんて出来ないぞ!?迎え撃つことが出来ないのなら
「あれ?アヤト、急に拳をほどいてどうしたのですか?まさか、自ら負けを認めるつもりですか?」
「諦める?そんなわけないだろう?俺は負けを認めるつもりなんてないからな」
クリムが言う通り、俺は自身の拳をほどき、構え直す。
「なら、証明してくださいよ!【炎拳】!」
クリムは引き続き、俺に向けて【炎拳】を放つ。
(真正面から迎え撃つことが出来ないのなら・・・、)
「!?まさか、私の【炎拳】を全て受け流すつもり?」
俺はクリムの【炎拳】に対し、徹底して受け流した。さっきまで全力で迎え撃っていたことに対し、今は受け流している。その戦法の違いに戸惑っているのだろう。
「人によって戦い方は様々だ。学ばなかったのか?」
「いえ、アヤトと真っ向からぶつかり合うことが出来ず、ちょっと残念に思っただけです、よ!」
俺はクリムの【炎拳】を受け流し続ける。
「クリム、諦めろ。俺にもう【炎拳】は効かない。それは何度撃っても同じだぞ?」
そしてクリムに、【炎拳】はもう効かないと告げる。
「なら、別の手を使うまでです」
別の手、だと?クリムって、【炎拳】以外の魔法、使えるのか?
(そういえば別の魔法を使ったことがあったような・・・?)
「【炎牢】!」
クリムが【炎牢】を発動した瞬間、俺の近辺に炎の牢獄が出現し、俺を牢屋に閉じ込める。
(そういえばクリム、こんな魔法も使えたんだな)
なんか久々に見た気がする。
(これで俺は逃げられなくなった、というわけか)
いや、地中に穴を掘って逃げる、という選択肢があるな。緑魔法で穴を作成すればいけるな。問題があるとすれば、この地下に穴を掘っていいかどうかだが・・・まぁいいだろう。地盤の問題とかは・・・考えないようにしよう。
「緑魔法で地面に穴を開けて逃げるつもりですか?そんなことさせません!【炎海】!」
ちちゅいに逃げる事を考えていたら、先読みしたクリムが【炎海】を発動させ、地面を炎の海に包む。
(焼死しないよう対策しないとな。まずは【結界】だな)
俺は自身を囲むように【結界】を発動させ、【炎海】による焼死を阻止する。・・・そういえば【炎牢】という魔法は炎で牢屋を再現したような魔法なのだが、【炎牢】から発せられる熱に苦しめられることはなかったな。俺の気のせいか?それとも、俺の体に強い熱耐性が備わっているのだろうか?
(今更そんなことは関係ないな)
だってこれから、クリムが発動した【炎牢】と【炎海】を吹き飛ばすのだから。
(ふん!)
俺は緑魔法で強風を起こし、クリムの【炎牢】と【炎海】を吹き飛ばす。
「流石はアヤトです。私の魔法を風で吹き飛ばすなんて」
そう笑顔で答えてきた。
「まさか、これで終わりか?」
俺もクリム同様笑顔で質問する。
「まさか。まだまだ・・・と言いたいところですが、交代です」
「交代?」
一体どういう意味だ?
「こういうこと、です!」
クリムは自身と俺の間に巨大な炎の柱を立てる。
(?どういうことだ?)
今、クリムは炎に隠れて見えなくなっている。まさか、隠れて炎の矢でも放つつもりなのだろうか?
(いずれにしろ、要警戒だな)
俺は臨戦態勢を解かず、視界から炎を外さない。
・・・。
(何も、してこない?)
一体何を企んでいるんだ?
だが、何もしてこないのなら好都合。
(こちらから仕掛けるまでだ)
俺は黄魔法で電気の矢を形成し、炎の柱に向けて放つ。
(・・・感触無し、か)
もう何発か入れてみるか?だが、感触がない個所に何度も何度も魔法を撃ちこむのは魔力の無駄な気がするし、どうすべきだろうか。
俺が悩んでいたら、炎の柱から黒い何かが見えた。
(!?)
俺は嫌な予感がしたので、咄嗟にその場を離れる。
(この黒い光線、まさか!!??)
炎の柱が消えたと思ったら、黒い何かが俺に向かってくる。俺はその何かから距離を取ろうとしたのだが、間に合わずに一撃くらってしまう。
「…やはりアヤトは、急な出来事に対応する能力が不足している」
「この声、イブか」
俺は声質から、俺に一撃くらわせたのがイブであると断定する。
「…次は私」
イブはその手に持っている杖を俺に向ける。
「…覚悟するといい。私はクリム程甘くない」
「そうか」
どうやら次はイブと戦うらしい。
(イブのあの目、【黒色気】を使っているな)
連戦はきついが、頑張るとしよう。
(勝って、この戦いの目的を聞くとしよう)
さて、イブはどんな風に俺と戦うのだろうか。
そして、俺とイブの戦いが始まる。
次回予告
『6-1-12(第460話) 訓練場での戦い~【黒色気】のイブ~』
彩人は【赤色気】を使ったクリムトの戦いに勝利した。
そして次に待っていたのは、【黒色気】を発動したイブとの戦いだった。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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