1-2-20(第46話) 戦争後の狸寝入り
「…と。お…」
ん?何かが聞こえてくる。けど、何を言っているのかわからない。
「あや…。…きて」
まだだめだ。もう一回夢の世界へ、
「アヤト!起きて!!」
「へぶぅ!?」
行けなかった。
だが、
「あ、もう…駄目だ。三途の川でおばあちゃんが手を振っている…」
「ア、アヤト!アヤト!」
三途の川が見えました。そしてまた、俺は気を失う。
結局、きちんと目を覚ましたのは、俺が倒れた次の日だった。
あれからどうなったのかは覚えていない。だが、俺を城まで運んでくれた白竜皇や黒竜帝から話を聞いた。
とりあえず、あの黒い一つ目巨人は死んだらしい。らしいというのは、俺が倒してから白竜皇達が来るまでに、黒い一つ目巨人の体が無かったらしいのだ。なので、生死は不明ということなのだ。もし、まだ生きているとしたらと思うと…想像したくないな。
だが、戦争自体は終わった。いつの間にか捕まえていた青の国の兵士達を、魔王夫妻が自分の国にお持ち帰りしてごうも、尋問してくれるらしい。そんなことを依頼しても大丈夫なのかと思ったが、次の言葉で解決した。
「依頼の報酬はアヤトの作る料理でいいからな。あと、赤の国と魔の国は同盟を結んだからな」
…もうなにか、おなか一杯だよ。
まず、俺は一日しか寝ていなかったのに、どういういきさつがあって、同盟にまで発展するんだ? そして、同盟国同士で依頼したり、されたりするのはいいのだが、依頼の報酬に俺を使うことはやめてほしい。そんでもって、俺が起きた後、料理作るのは確定なのか。
…なんかまだ嫌なことが起きそうな気がする。狸寝入りでもしているか。
そんな訳で俺はきちんと目を覚ましたにも関わらず、俺はばれないようにまた眠る。
「「「アヤト((さん))…」」」
「(…)」
イブ、クリム王女、リーフさんは俺のことを本気で心配しているらしく、全身にひどい怪我をしていたにも関わらず、俺を介抱してくれている。一方、白竜皇や黒竜帝は俺の気持ちを察してくれているのか、俺が本当は目を覚ましていることを黙っている。ありがとう。
だが、そんなささやかな眠りは小さな少女によって消されてしまう。
「あれ?お兄ちゃん!なんで寝たふりなんかしてるの?一緒にご飯食べよう?」
「「「!?」」」
あ!ヒュドラ!なんで空気読んでくれないの!そんな自称妹なんか知らないからな!
ぐぅ~。
そんななか、俺のお腹は空腹に耐えきれなかったのか、イブ達がいる目の前で大きくお腹が鳴ってしまう。俺のお腹も空気を読んでくれなかった。
「「「アヤト((さん))?」」」
やばい!!もしかしてこいつ起きているのでは?的な目線を俺に送る。この状況を乗り越えるためには、これしかない!
「ぐ、ぐぅ~」
そう!寝言にしてしまえばいい!そうすればきっと、
「ね、寝言ですか~」
「てっきりすでに起きていて腹を空かせているのかと思いました」
「びっくりした」
ふ。どうやら俺はリーフさん、クリム王女、イブ達を見事騙せたようだ。俺の狸寝入りもなかなかのものだ。今後ともこれを使っていこう。
みんな席を立ち、俺の元から離れようとしている。
良かった。これで俺の安眠が…。
シュッ。
不意に、俺に向かって攻撃されそうな気がし、俺は慌ててベッドから起き、その攻撃をかわす。そして、俺がいた場所に弾丸が貫いたような跡が残っていた。
「おい!危ないだろ!気を付けろ…」
俺が怒っているというのに、三人は俺より怒っている感じだった。
どういうことだ?なんで攻撃をされた俺より攻撃したイブ達が…。
ここで、俺がしていたことを思い出す。
…もしかして、俺の狸寝入りがばれたのか?
そう思った瞬間、俺の体から冷や汗が流れる。
そして、
「そんな狸寝入りでごまかせると?」
「アヤトさん?どういうことです?」
「…アヤト、ほんと?」
この言葉で確信へと変わった。
やべ。逃げないと。
だが、体力が十分に回復していない今の俺では、三人から逃げることができず、すぐに捕まってしまう。
「さぁ、何故狸寝入り(こんなこと)をしていたのですか?」
「アヤトさん?ちゃんとした理由、話してくれますよね?」
「…アヤト、覚悟する」
「いーーやーー!」
これでやっと、海原彩人に日常?が訪れるだろう。
次の話は魔王一家が登場すると思います。