6-1-9(第457話) 訓練場での戦い
「なぁ?」
「なんでしょう、アルジン?」
「俺達は今、どこにいるんだ?」
「ここは城の地下施設の一つ、訓練場です。周辺に強力な【結界】が展開されるらしいので、思う存分魔法を行使出来るらしいですよ」
「そんなところで俺は今、何をしようとしているんだ?」
「何って、アルジンがクリム殿、リーフ殿、イブ殿と戦うのですよ。さきほどの話を聞いていなかったのですか?」
「どうして俺はクリム達と戦わなくちゃいけないんだ?」
「さぁ?もしかしたらアルジンが知らず知らずのうちに何かしでかしたのかもしれませんよ?思い当たる事、ありませんか?」
「あり過ぎてどれの事を言っているのか分からないんだよ・・・、」
日常的に色々やらかしているからな。
お風呂の為に青魔法と赤魔法を駆使してお湯を出していたところ、間違ってイブ達にお湯をかけてずぶ濡れにさせたことあったな。それに、失敗した料理を間違えてクリム達に出してしまい、苦い顔をさせてしまったこともあったな。
・・・少し振り返っただけでも、結構やらかしているな、俺。時間をかけて振り返ったら、何個やらかしが出てくるのだろうか。恐ろしくて考えたくもない。
「ですが、あの目から普通じゃない意思の強さを感じました。今から戦わないよう説得するのは難しいと思います」
「だよなぁ。俺もあの三人の目から、ただならぬ意思を感じたよ」
どうしてあそこまで俺と戦おうとしているのだろうか?
・・・駄目だ。理由が思いつかん。
「やはりアルジンが知らず知らずのうちに何かしでかしたのでは?」
「そうかもしれないが、イブ達にあの二人がいるというのが不気味なんだよ」
「あの二人と言うのは、さきほどアヤトさんと握手していた魔王さんとその妻さんですか?」
「ああ」
おそらく、あの二人がイブ達を鍛えたのだろう。だから師匠として見守りたい。そんなところだろうか。俺に弟子なんていないから心境がまったく不明なのだが。
(俺には弟子どころか友人一人いないけどな!)
・・・なんだろう。既に敗北したような気分だ。俺、不戦敗でいい?このまま帰りたい・・・。
「それにしても、ルリ殿はとても楽しそうに御三方と話をしているようですね。ここからでも分かります」
「ですよね。少しの間とはいえ、リーフさん達三人と離れていたわけですからね」
「だな」
ちなみに、俺の近くにはクロミル、モミジ、レンカの三人がいる。そしてリーフ達の周りには、魔王夫妻とルリがいる。ルリがあっちに行った経緯は、
「ルリ、お姉ちゃん達と話がしたいからあっち行ってくる!」
と、俺達に笑顔でこう言い、走って行った。まぁ、ルリとリーフ達は少しの間とはいえ離れ離れだったから、旅での出来事を話したいのだろう。
「それじゃあ、行ってくるよ」
準備が出来たので、訓練場の真ん中に足を向ける。
「頑張ってください、アルジン」
「本当は私も参加したいのですが・・・、」
「あの三人たっての願いですので、私達がご主人様に参戦する訳にはいきませんよ?」
「アヤトさん、相手が三人である以上、かなり不利だと思いますが、頑張ってくださいね?」
モミジは俺に近づき、俺の手をとり、励ましてくれた。本当、モミジのこの励まし方はありがたいな。なんこう・・・元気が出るな。
「ああ、もちろんだ」
例え相手が大切な人でも負けたくないな。こんな俺でも応援してくれる人がいるんだ。
(負けたく、ない!)
俺が中央に向けて歩いていると、リーフ達も歩いて向かってくる。
「今回、私達の我が儘に付き合ってくださり、ありがとうございます」
リーフの言葉の後、三人が頭を下げる。
「それでは早速、私達の成長を実感してもらいましょうか!」
「…ん!審判、お願い!」
「うむ」
いつの間にか訓練場中央に来ていた魔王がイブの言葉に返事する。
「言っておくけど、本気、だしてよね?」
「出さなかったら許しませんよ?」
「…冒涜は許さない」
本気、ということは、【色気】を使って戦え、ということなのだろう。ここまで念入りに言われてしまったら、使わない訳にはいかないな。
「いいのか?どうなっても知らないぞ?」
【色気】を使うと手加減が上手く出来なくなる。そのことを承知しているのか確認する。
「ええ!」
「そのために私は鍛えたのですから!」
「…ん!負けない!!」
「それではこれから模擬戦を始める。・・・始め!」
こうして、俺とクリム、リーフ、イブとの戦いが始まる。
次回予告
『6-1-10(第458話) 訓練場での戦い~【色気】を使わない3人~』
いよいよ彩人とクリム、イブ、リーフの3人の戦いが始まる。
彩人は【赤色気】を使ってくるのに対し、3人は【色気】を使わずに戦い始める。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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