6-1-8(第456話) 再会の突撃
「・・・なぁ?」
「なんでしょう?」
「普通、城の警備って普通厳重じゃないのか?」
「普通はそうでしょうね」
「それなのに今の俺達はどうだ?」
「城の門番達に敬礼された後、笑顔で通されましたね」
「これって普通なのか?」
「普通、じゃないですね」
「だよな?今のこの状況っておかしい、よな?」
今俺達がどこにいるのかと言うと、魔の国にある城、魔王城内部である。
え?事前に入城の許可はとっていたのかって?そんな許可、もちろんとっていませんよ?それなのにどうして普通に入城出来ているのかって?俺も知らん。
(もしかして、俺の顔がこの魔王城で働いている者達全員に知られていて、来たら通すように通達されている、とか?)
・・・そんなわけないか。こんな考えを持っている俺って自意識過剰だな。
(違うとなると、一体どうして俺達を素通りしたのだろうか?)
・・・もしかして、イブ達が事前に話を通してくれた、とか?
(これなら大いにありそうだ)
イブ達が、俺達に気を遣って、俺達とすぐ会うことが出来るよう手配してくれた、か。これが本当なら、イブ達の心遣いに感謝しなくちゃな。おかげで俺達は今こうして、楽に城の中を移動出来るわけだからな。
(それで、肝心のイブ達はどこにいるんだ?)
城の中に入ってから、イブ達の姿を見ていないな。まさか、この城の中にいないのだろうか。そもそも、本当にこの国にいるのだろうか?俺達と遭遇していないだけで、まだ魔の国に到着していない、とか?
(・・・だんだん不安になってきたな)
もしかして、イブ達の顔を見ていないから不安になっているのかもしれないな。少し会っていないだけでここまで不安になるとは、俺も弱くなったものだ。
「・・・とー」
「・・・お兄ちゃん、今、何か聞こえなかった?」
「え?・・・気のせいじゃないか?」
現に俺は何も聞こえないぞ?だが、もしかしたら俺の勘違いという可能性もあるので、改めて聴覚に意識を集中させて、音を聞き逃さないようにするか。
「あやとー」
「!?聞こえた!確かに聞こえたぞ!?」
ルリの言っていたことは本当だったのか!?
(それで、一体どこから聞こえたんだ?)
俺は改めて聴覚に意識を集中させて、どこから声が聞こえたのか判断しないと。
・・・。
「ご主人様、あちらです」
俺が集中していたら、クロミルが俺に声をかけてきて、とある方向を指差す。指差した方向には、何者かが歩いて・・・いや、走ってきた。
(あのシルエットは・・・!?)
「「「アヤト!!!」」」
「ぐふっ!!!???」
そしてその何者か達が、俺に向かってタックルしてきた。
タックルしてきた者の正体はすぐに分かった。
「久しぶりだな、みんな」
その者達は、
「アヤト、なんだか見ないうちに大きくなりました?」
「いや、短期間で急成長しないから」
クリム、
「…見るだけで分かる。アヤトの魔力制御の精度、更に向上した?」
「…よく分かったな。イブ達がいない間も魔力制御の特訓は欠かさなかったぞ」
イブ、
「私達がいなくて大丈夫でしたか?色々、溜まっていませんか?」
「…大丈夫だ」
リーフ。
(やっぱ、この三人か)
分かっていたのだが。
(・・・ん?)
なんか、三人とも変わったか?体・・・は特に変わっていなさそうだが、魔力の質がどこか違う・・・気がする。確証がないのでなんとも言えない。
が、前に見た三人とは明らかに違う。それだけはハッキリと言える。
「・・・ここにおったか」
「たく、探しましたわよ」
この声、忘れられることのないこの声は、
「どうしてここにいるのですか、魔王様?」
「・・・ほぉ?会わぬうちに随分他人行儀になったものだな?」
「そうですわよ。義理とはいえ私達は家族。もっと仲良くしましょう?」
そう言い、魔王の妻、ストレガ=デビルは俺に向けて手を伸ばしてきたので、俺はその手をとる。
(!?い、いた!!??)
何故かは分からんが、急に握る力が強くなって位にか?否、確実に強くなっている!!??
「ところでアヤトさん、一つ、聞きたいのですが・・・、」
「はい?」
「私の実の娘、イブから聞きましたよ、経緯は省きますが、なんでも、手を出した、と」
「!!!???」
怖い!!??笑顔なのに凄く、凄く怖いのだが!!??
(それに、さっきから握られている右手が痛い!?)
いい加減放して欲しい。
「まぁまぁ。私もアヤト君とは仲良くしたいと思っているから、私とも是非握手してくれ給え」
「あ、ああ」
魔王であるゾルゲム=デビルも手を出してきたので、握手していない左手を差し出し、魔王は俺の左手をとる。
「私の大事な娘に手を出してくれたんだ。私にも話、聞かせてくれるよな?まさか、このまま逃亡するとか、そんなくだらないこと、しないよな?」
・・・魔王がものすごい顔して脅してくるのですが?
(・・・まぁ実際、その通りなのだが)
イブに手を出したことは事実なので認めるし、このまま逃亡することはない。
だが、
(この痛く握り続けるこの手を離して欲しいのだが!?)
俺の心意を察してくれたのか、ようやく手を放してくれた。
「ああ、絶対にしないさ。何せ、イブ達を追ってここまで来たんだから」
俺は改めて三人を見る。
(・・・なんだか、立派に見える)
男の子の場合、三日会わなかったら別人だと思え、というような言葉を聞いたことがあるが、男だけじゃなく、女も同じかもしれないな。
「それじゃあアヤト、」
「ん?なんだ?」
何か用があるのだろうか?
「…早速で悪いけど、」
「私達と模擬戦、してくれない?」
「・・・え?」
俺はリーフの言葉に驚きを隠せず、
(見たところ、冗談で言っている、という風にも見えないな)
三人の強い意志に、三人と戦わなくちゃいけないのかと、俺は諦めの感情を出しつつ、どうして戦わなくてはならないのか、聞く必要があると思った。
次回予告
『6-1-9(第457話) 訓練場での戦い』
リーフ達と再開した彩人だったが、リーフ達の強い意志により、リーフ達と戦うため、訓練場に向かう。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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