6-1-5(第453話) 彩人がいない地にて
一方、
「はぁ、はぁ、はぁ・・・、」
「・・・お、お父様、つよすぎ・・・、」
「私もかなり鍛えたのですが、それでもまだとどきませんか」
魔の国のある訓練場で、三人の女性が横たわっていて、五体満足である。
「いや、三人ともかなり良かった。一人一人ならそこまで苦労しなかったが、三人の連携がかなり強力だった。おかげで私達もかなりギリギリだったよ。な?」
「えぇ。ヒヤヒヤしましたわ」
その三人の横には、成人済みの男女が立っていた。だが、かなり疲弊しているのか、時折肩で呼吸をし、流れ出ている汗をぬぐう。
「それにしても、かなり上達したな」
イブの父親、ゾルゲムはリーフとクリムに手を差しだし、立つように促す。
リーフとクリムはゾルゲムの手を素直につかみ、自身の体を立たせる。
「ありがとう」
「・・・淑女をいつまでも地面に転がしておくわけにはいかないからな」
「さすが、私の魔王様ね♪」
イブの母親、ストレガはイブに手を差しだす。
「…ん。ありがと」
イブはストレガの手を取り、自身の体を起こす。
「強くなったわね、イブ」
「…ん。守りたいものがあるから」
イブは視線をリーフとクリムの二人に送る。
「・・・そう」
「!?…どうして・・・!?」
イブは、ストレガが涙を流し始めたことに驚く。
一方、
「これが今回の試作品か」
「ええ。これを使用すれば、ある程度魔獣の動きを制御することが可能かと」
「そうか。それでこの魔道具一つで、どのくらいの魔獣を制御出来る?」
「一万は確実かと」
「そうか。ではこれを後5つ作れ。そうしたら再度報告するように」
「はっ!」
玉座に座っている者が、頭を下げている者に指示を送ると、頭を下げている者は即座に頭を上げ、玉座に座っている者の目の前から消える。
「これでようやくだ」
玉座に座っている者から声が漏れ出る。
その少し後、玉座に通じる扉の向こう側から、扉を叩く音が聞こえる。
「失礼します」
入ってきたのは、玉座に座っている者の眷属の一匹、メイキンジャー・ヌルである。
「お前か。それで、魔道具の配置場所は決めたのか?」
「は」
メイキンジャー・ヌルは懐から6枚の地図を取り出し、玉座に座っている者の前に置く。
「この地図に記載している赤丸箇所が、魔道具の配置場所となります」
メイキンジャー・ヌルは今も膝を地面につけ、頭を下げ続ける。
「・・・分かった。魔道具については、デベロッパーが試作品を一つ持ってきてくれた」
「・・・結果は、どうだったのかお聞きしても?」
「無論だ。結果は・・・」
静かな空気が二人の間に訪れる。
「無問題、だ」
「では・・・?」
「メイキンジャー。デベロッパーと協力し、この地図に記載されている個所に魔道具の設置をしろ」
「はっ!」
玉座に座っている者は、自らの腰を上げる。
「ようやくだ。ようやく、ようやく・・・、」
魔力が少しずつ漏れ始める。
「この世界を、全てを無に帰すことが出来る」
その言葉に、
「いよいよですね、我が主よ」
メイキンジャー・ヌルは嬉しそうに声をあげる。
「ああ。本当に、待ちかねたぞ」
落ち着きを取り戻す為か、再び玉座に腰を下ろす。
「では、デベロッパーの作業の方を急がせますか?」
「・・・いや、いい。急いで作った結果、不良品になった、なんて事態は絶対に避けたいからな。デベロッパーには、時間はかかっても確実に作るようにと言っておいてくれ」
「かしこまりました。それではすぐに行ってまいります」
デベロッパーはそう言うと、すぐに玉座の間から去っていく。
「それではメイキンジャー、魔道具が完成次第、パラサイダーと協力して各所に魔道具の設置をしろ」
「はっ!」
メイキンジャーは玉座に座っている者の前から消える。
「・・・いよいよだ」
玉座に座っていた者は、自らの足で立ち、歩きながら明後日の方向を見る。
「ようやく、ようやくこの世界を・・・、」
その視線の先には、目の前にある壁の色すら映っていなかった。
次回予告
『6-1-6(第454話) 神色剣に施されている【付与】』
【色気】の特訓をの間に休憩している間、彩人は神色剣について考え始める。
中でも、神色剣に施されている【付与】について考え、みんなに相談する。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
感想、評価、ブックマーク等、よろしくお願いいたします。




