6-1-2(第450話) 新たな魔力制御の特訓
「・・・」
「るんるんるるーん♪」
「・・・。・・・」
「・・・。・・・。・・・」
「・・・アルジンにクロミル殿は一体何をしているのです?」
「ん?俺はただぼーっとしているだけだが?」
「私はご主人様の凛々しい顔を見ているだけですので」
「はぁ」
俺達は今、白の国を出て、魔の国に向かっている。
その道中、俺は暇なので、暇つぶしにただ景色をぼーっと眺めているのである。
(本当はやること、たくさんあるんだけど)
魔力池をかなり消費してしまったので、ルリにもらった魔銀に魔力を込め、魔力池を作らなくてはならない。
今もルリがホットケーキを食べているので、追加でホットケーキを作らないといけないし、他の煮込み料理も万が一のために作っておかないとならない。
自身の能力向上のために、魔力制御の技術をもっと磨かないといけない。
本当、やるべきことは数多くあるのに、今は何もする気がない。
(白の国で色んなことをやって疲れたからなのか?それとも、リーフ達がいないからか?)
俺は今、ルリ、クロミル、モミジ、レンカ、俺を含めての5人で魔の国に向かっている。本当は後3人大切な人がいるのだから、その3人、イブ、クリム、リーフは別行動で、先に魔の国に向かっている。
(俺も頑張らないといけないんだけど、どうにもやる気が出ないんだよな)
そんなことを考えながら、
「ねぇねぇお兄ちゃん!」
「ん?なんだ?」
「そろそろお昼ご飯の時間だよ!今日は何食べるのー?」
「そうだなー・・・、」
今日は何を作って食べようかね。
お昼ご飯を考えながら時間が過ぎ去るこの頃である。
「このままじゃいけないな」
お昼を食べて数刻経過。
俺はこのままでは駄目だと思い、一念発起した。
「お兄ちゃん、どうしたのー?」
俺がやる気を入れていることに対して、ルリが質問してくる。
「怠けているまま魔の国に向かうわけにはいかないと思っていてな」
俺は自身に気合いを入れ直す。
「それでアヤトさんはこれから何をするつもりなのですか?」
「まずは魔力池を作ろうと思っていてな」
「魔力池、ですか?」
「ああ。今後必要になるだろうからな」
俺はアイテムブレスレットから魔銀を取り出す。
「あの、見ていてもいいですか?」
「別に見るくらい構わないが、面白くないぞ?」
「構いません」
ならいいか。
俺はひたすら魔力池を生産していった。
(・・・)
・・・。
「・・・にいちゃん」
・・・。・・・。
「お兄ちゃん」
・・・。・・・。・・・。
「お兄ちゃん?」
「は!?」
どうやら俺は無心で魔力池を作り続けていたらしい。魔力の方は・・・まだ残っているな。だが、結構少ないな。作れたとしても後1,2個、というところか。
(少し休憩するか)
俺は魔銀から視線を外し、上を向く。
「悪いな。ちょっと集中し過ぎた」
「そうなの?ならよかった」
ルリは俺に笑顔を見せた後、現状を確認する。
(うわ~)
確認した結果、魔力池が軽く二桁超えていた。少なくともニ十個以上あるな。無意識でここまで作るとは。
(時間経過で魔力が回復するとはいえ、大丈夫なのか、俺?)
魔力の使い過ぎによる倦怠感とかは・・・ないな。
ということはつまり、このくらいでは魔力の使い過ぎにならない、ということなのか?
(俺はいつも通りに魔力池を作ったんだけどな)
ということは、前に魔力池を作った時から、魔力の総量が増えているという事か!?まさかこんなところで自身の成長を実感出来るとはな。
(俺もまだまだ成長期、ということだな)
自身の成長に喜びを覚えたところで、さっそく作った魔力池を使ってみるか。さて、どのくらい魔力が回復することやら。
・・・。
(・・・うん、まあ・・・うん)
全然回復しなかった。
確かに回復はしている。その感覚はあるし、事実そうだろう。
だが、全然物足りない。
まるで、一日中何も食べずに我慢して、その翌日に百円前後で買える棒アイスを食べたような感じだ。
(・・・て、それもそのはずか)
魔力池に込めた魔力量に変化はないが、俺の魔力量は増えている。
(つまり、食べている量は同じだが、胃袋が大きくなったから満腹感がえられない、みたいなところか)
となると、魔銀に込める魔力量を増やし、魔力池で回復出来る魔力量を増やすか?
(試しにやってみるか)
ピキ。
「あ」
魔力を更に込めたら、魔銀にヒビが入ってしまった。これ、魔力池として機能するのだろうか。
(・・・駄目だ。亀裂から魔力が漏れているな)
今まで込めていた魔力が無駄になってしまったじゃないか。
(ということは、魔力を込める量はさっきと同じくらいにして、もっと多くの数の魔力池を生産するしかないか)
というわけで魔力池を・・・
(て、魔力がほとんど残っていないんだった)
となると、何をするか。
・・・。
ふと、俺は外に目をやる。
「レンカ様、左右両方から魔獣が接近しています。私が左の魔獣を殲滅します」
「了解しました、クロミル殿。では私は、右側の魔獣を殲滅致します」
二人は今も接近している魔獣の殲滅をしてくれているらしい。こうして見張りが十分過ぎる仕事をしてくれるから、俺はこうして自分の事に集中出来るんだよな。
そしてルリとモミジは・・・?
「おー♪クロミルお姉ちゃん達、すごーい」
「ですね。レンカさんは自身の体を一部筒みたいに変えて、魔力の塊を魔獣にぶつけて倒していますし、クロミルさんは魔銀の剣で魔獣を切り倒しています。二人とも本当に、本当に凄いです」
・・・どうやら、二人が魔獣と戦っているさまに見惚れているらしい。
(確かに、着実に魔獣を倒しているな)
レンカは魔獣を魔力球で倒し、クロミルは魔銀製の剣で魔獣を切り倒している。
(あの正確さ、まるで機械だな)
まぁ、レンカは魔道具なので、あながち間違っていない・・・のか?
(でもレンカは人間みたいに感情豊かだからな。機械、と断言していいのだろうか?)
う~ん・・・分からん。
これ以上考えていても仕方がないから、別のことを考えるとするか。
(別の事・・・)
そろそろ、新たな特訓方法を考えないとな。
何せ、魔力制御の特訓に慣れてきたためである。
(確か今は・・・6つ、か)
俺は六種類の魔力球をだし、それぞれ別の動きをさせる。
(・・・うん、俺の思い通りに動かせるな)
このまま動かす魔力球の数を増やすのもいいが、別の方向で特訓したい。
何かいい方法がないだろうか。
相談してみるか。
次回予告
『6-1-3(第451話) 【色気】を発動しながらの魔力制御』
みんなに新たな魔力制御の特訓方法を相談してみた結果、【色気】を発動しながら魔力制御の特訓をしてみるのはどうかと提案を受ける。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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