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色を司りし者  作者: 彩 豊
第ニ章 鉛白な国の中にある魔道具と漆黒の意志
447/546

5-2-59(第446話) 模擬戦~VSグード~

(速攻で決めるか)

 俺はグードの周囲に【毒霧】を発動させる。毒の種類は強めの麻痺毒だ。どれくらい強いかというと、少しでも吸うと全身動かなくなるくらい強い麻痺毒である。もちろん、この毒を吸ったところで心臓が止まって死ぬ、なんてことはない。今ここでグードが死なれたら困るからな。

(!?)

 どうやら俺の配慮は余計だったらしい。グードは高くジャンプすることで、俺の【毒霧】を躱したのか。俺の【毒霧】は無味無色無臭だというのに、よく初見で躱せたな。

(次は【結界】で上手くあいつの腹に当てて気絶させるか。【結界】)

 俺はグードの腹に直撃させるように【結界】を展開する。

 が、

(!?あいつ、俺の魔法が見えているのか!?)

 グードは何かを察したのか、地面に直地した瞬間、ローリングしたことで、俺の【結界】を躱す。

(嘘だろ!?【結界】も無色の魔法なんだぞ!?)

 目で見えないはずなのに、それを予知して躱したように見えたぞ!?

(落ち着け、俺)

 魔法を二つ躱しただけだ。慌てる事じゃない。

「・・・まさか俺の魔法を簡単に躱すなんてな」

 俺はグードから情報を引き出そうと話しかける。

「そちらこそ、なかなか面白い魔法を使うじゃないか。これまでの経験がなかったら即敗北していたよ」

「これまでの経験、ねぇ」

 こいつもかなりの場数を踏んでいるのだろう。その場数はおそらく、俺以上。となると、俺が有利になるような戦いを俺から仕掛けていく必要がありそうだな。

(俺がこいつより勝っているもの・・・)

 俺は魔力で腕を形成し、グードの足を掴もうと伸ばす。もちろん、魔力で形成した腕の色は透明。見えるはずがない。

「おや、お話し中に私の足を掴もうとは。なんとも手癖の悪い青年なこと」

 だが、俺の予想は簡単に裏切られ、俺の腕を簡単に避けられてしまう。

(俺の攻撃をこうも簡単に躱されるとは・・・)

 やはり、これまでの経験が体に染みついているのだろう。俺にはない経験が。


「・・・あの、一体何が起きたのですか?」

 グードと彩人との模擬戦を見ていたモミジは、何が起きているのか分からずにいた。

「ご主人様はグード様に【毒霧】を使用したのですが、グード様は回避しました。その後、ご主人様は【結界】を使用したのですが、それもグード様が回避。三回目は、ご主人様はイブ様のように魔力で形成した透明の腕でグード様の動きを止めようとしたのですが、それもグード様は回避されました」

「えと・・・つまり・・・?」

「はい。アルジンの攻撃は全て、グード殿に見破られた、ということです」

「へぇー」

「あのおじさん、すごーい」

「「「ねー」」」

 クロミルとレンカの解説を聞き、周囲にいた者は、彩人とグードがどのようなやりとりがあったのか理解する。

「だが、あの大親分の攻撃、どれもこれも見えなかったぞ?どうやって回避したんだ?」

 ジャルベはクロミルとレンカに、自身が気になっていることを質問する。

「・・・おそらくですが、ご主人様の魔法が発動する際、僅かに変動する魔力の動きを察し、回避しているのでしょう」

「魔力の、動き?」

「ええ。アルジンが魔法を発動する際、僅かですが魔力に動きが生じています。その動きは本来とても微小で、一般の人なら違和感なんてないのですが・・・、」

「グード様ほどの実力なら、その微小な変化を利用し、アルジンの攻撃を推測、回避しているのでしょうね」

「・・・私にはその変化が分かりません。クロミルの姉御とレンカの姉御は分かるのですか?」

「私は分かります。私、ご主人様の従者ですので」

「私もクロミル殿と同じです。私、アルジンの魔道具ですから」

「ごめんなさい。私には何が何だか分からないです。いつか私にもみえるようになるますかね?」

「「必ず」」

 モミジの言葉に、クロミルとレンカは迷いなく言葉を返す。

「それにしてもアヤトさん、魔法を使っても避けられてしまうと、どうやって戦うつもりなのでしょうか?」

 モミジの疑問に答えたのは、

「そんなの簡単だよー」

 ルリだった。ルリはホットケーキを一枚丸々口の中に放り込む。

「簡単って、どうやるのですか?」

 ルリの言葉に疑問を持ったモミジは、続いて質問をする。

「そんなの、剣に決まっているんだよー」


 俺は少し息を吐きだす。

「・・・やめだ」

「ほう?もう、模擬戦を辞めるというのかね?まだ私は何もしていないのだが?」

「いや。辞めるのはあくまで魔法だ」

 出来れば無傷且つ不意打ちで決められれば良かったのだが、そうはいかないか。流石は黒ランク冒険者、といったところか。

「これから行うのは、純粋な力比べだ」

 俺はグードに剣を向ける。

「・・・そうか。いいだろう」

 グードは俺の意図を汲み取ってくれたのか、俺に剣を向ける。

「「勝負!!」」

 俺とグードは互いに向けて走り出し、剣をぶつけ合う。

「やるじゃないか」

「アヤト殿こそ。引退したとはいえ、私と真っ向から挑むとは」

 どうやら俺とグードの力は拮抗しているらしい。どうやら俺の力は、黒ランク冒険者相当らしい。この世界に来てから、俺も成長したものだ。

「ならもっと力を出すとしよう」

「え?」

 拮抗していると思ったら、どうやら俺の勘違いだったらしい。

(ち!まだ素の俺じゃあ力不足か!)

「まさかこの程度、なのかね?」

「!?」

 こいつ!?俺を挑発してきた、だと!!??

「いいのか?そんな安い挑発をしたせいで、つまらない敗北を迎える事になるぞ?」

「問題ない。私もこれからより力を出す事にしたからな」

「なん、だと?」

 なんだろう?なにか嫌な予感がする。

「【重量付与・加重】」

「!?」

 突然、グードの剣が重くなる。なんだよ、これ!?つばぜり合いに耐えられない・・・!?

(ち!)

 俺はグードの剣をなんとかはじき、距離をとる。

(なんだ?一体何をした??)

 急に剣が重くなった?まさかあの剣、重量を自在に変えられるのか?

(もしくは、グードが何かしたか)

 グードが魔法で剣に細工をし、剣の重量を変えたのか?

(そんな魔法、あるのか?)

 無魔法なら可能だが、まさかグードに無魔法の適性があるのか?それとも、別の色魔法を使って、剣の重量を・・・。

「さて、次はこれだ」

 グードは周囲にある石を拾い始める。

(・・・何を、しているんだ?)

 急にゴミ拾いでも始めたのか?それともあの小石、何か細工がしてあり、グードが仕掛けたのか?

「【重量付与・加重】」

 グードは石ころを空中に投げた。・・・本当にあいつは何をしているんだ?拾ったゴミを撒き散らして、何をしているんだ?

(・・・ん?)

 なんだ、あの石ころ?石ころの割にはやけに落ちる速度が速過ぎるような・・・?

(・・・!?まさかあの石ころ・・・!?)

 俺は咄嗟に石ころから距離を取る。石ころが落ちると、石ころとは思えないほど大きな音が響き渡る。

(あの石ころの重量を増やしたのか!?)

 重量を増やしたことで、隕石のような攻撃を再現したのか!?周辺の地面がボコボコじゃないか。まさかその辺にある石ころで自然災害を再現出来るなんてな。

「なかなか面白い魔法じゃないか」

「そうですね。この魔法のおかげで何度も助けられましたからね」

 確かにあの攻撃は脅威だ。

 だが、

「まさかあれだけ、というわけじゃないんだろう?」

「ええ。他にもいくつか策はありますが、まずはさきほどの攻撃を突破出来ますか?」

 そう言いながらグードはまた小石を拾い始め、宙に投げる。

「【重量付与・加重】」

 どうやらさきほどの攻撃が再度来るらしい。

(さて、さっきの攻撃、どう防げばいいのだろうか?)

 あの自然災害を模した攻撃、どう防げばいいのやら。対象がかなり小さいから、こま切れにするとしても難しい。

(・・・やるか)

 俺はある魔法の準備をする。

 そして、

(いけ!)

 俺と小石の間に、巨大な水球を生成する。

「・・・まさか、その水の球ごときで止められるとでも?」

「・・・お前こそ、ちゃんとこの水の球を見てみろよ」

「何?」

 俺が今生成した水の球の水は、単なる水ではない。高粘性の水である。

(後は・・・、)

 俺は高粘性の水で生成した球を複数用意し、さらに高粘性の水で腕を形成する。

(これと風で受け止める!)

 俺は念のため、緑魔法で風を発生させ、小石の勢いを少しでも弱めつつ、高粘性の水の球と腕で受け止めようと試みる。

(!?)

 やはり勢いが凄いな。だが、止められないわけでは、ない!俺は、グードの魔法の勢いを殺す事に成功した。

「ほぉ?流石はアヤト殿。あの攻撃をそのような方法で止めるとは」

「お前も結構やるな」

 正直に言うとかなり危なく、無事に止められて内心ほっとしている。

「この程度では、やはりアヤト殿に届きませんか」

 どこか諦めたような、そんな声が聞こえた。

「負けを認めるのか?」

 俺の質問に、グードは首を横に振る。

「まさか。まだ私はあれを使っていないのですよ?負けを認めるとしたら、あれを使ってからです」

「あれ、だと?」

 あれとはなんだ?

「ええ。正直、あれを使うのは久々ですので、失敗しないよう念には念を入れませんとね」

「念には念を、だと?」

 なんだろう?何か嫌な予感がする。さっきも嫌な予感がしたのだが、さっき以上に嫌な予感がする。

(念には念を・・・まさか!!??)

 まさか、こいつが今から使用する魔法って・・・!!!???

 グードの目がだんだん白くなり始める。

「【白色気】」

 やはり【色気】だったか。それも【白色気】。つまりグードは、白魔法に適性がある、ということだ。まぁそんなこと、今はどうでもいいか。今は白魔法の適性より【色気】だ。

「お前、【色気】が使えるのか?」

「ええ。最後に使用したのがだいぶ前でしたので、上手く使用出来るかどうか分かりませんでしたが、上手くいってよかったです」

「何が上手くいってよかった、だよ」

 【色気】は上手くいくいかないのレベルじゃないんだぞ!?

(【色気】を使えるという事は、少しでも失敗したら死ぬような特訓をした、という事か)

 下手したら簡単に死ぬくらい難しい魔法なんだぞ!?それを使えるとか、流石は元黒ランク冒険者。並の冒険者じゃないってことか。

「さて、アヤト殿。【白色気】にどう立ち向かうのかね?」

「【白色気】、か」

 ・・・そうだな。

「?何を笑っているのかね?」

「笑っているのか?」

 俺は自身の顔に触れる。

(確かに笑っているな)

 口角の上昇が感じ取れた。まさか、楽しんでいるのか?

「ああ。笑っているな」

「そうか。ならきっと、嬉しいんだ」

「嬉しい、だと?【色気】を使用する相手にして嬉しいのかね?」

「ああ。これで俺も【色気】を使って戦えるというものだ」

「なに!?アヤト殿も【色気】を!?」

 俺は、自身が【色気】を使えるという証拠を見せる為、【白色気】を発動させる。

「・・・これで分かっただろう?俺も【白色気】が使えるんだよ」

「・・・まさか本当に、アヤト殿も【色気】、それも【白色気】を使えるなんてな」

「・・・お前、何笑っているんだよ?」

 俺は、グードが笑っていることを指摘する。

「・・・笑っている?」

 グードは俺の指摘で、自身が笑っていることに気付く。

「そうか。きっと、アヤト殿と同じ理由で笑っているのだと思うよ」

「そうか」

 俺とグードは、ほぼ同じタイミングで力を込める。

「いくぞ、グード!」

「全力で迎え撃ちます!」

 俺達は互いに移動し、剣同士をぶつけ合う。

(こういう戦いも、悪くないな)

 確かに一歩間違えれば死ぬかもしれない戦いだ。

 だが、俺とグードの間に、負の感情はない。この戦いを楽しもうとする感情。

 この戦いを通して、俺自身の事を知ってほしいと思い、グードの事を知りたくなってしまう。

(やっぱ、大きな盾相手だと、なかなか堅いな)

 俺は剣一つしか持っていないが、グードは剣と大盾を一つずつ。俺の攻撃は、全て件で受けるか盾で受け流すかされて、グードに届かない。

(後一つ、足りない)

 単純に手数が足りないな。手数をもっと増やすか、あるいは・・・、

「ぐ!?」

 俺が考え事をしていたら、グードの盾の攻撃を受けてしまう。

「この楽しい戦いに考え事とは。水を差さないでくれないかね?」

「わりぃな。どうやったらお前に勝てるのか考えていてな」

「ほぉ?この状況をどうやってひっくり返すのか、」

 グードは一瞬で俺との距離を詰める。さっきも思ったが、あんな重そうな大楯を持っているのに意外と早く動けるんだな。

「楽しみだ」

 俺は咄嗟に剣を構え、グードの剣を防ぐ。

「それじゃあ、」

 俺はアイテムブレスレットから、もう一つの魔銀製の剣を取り出して手に取る。

「いくぞ!」

 俺は再度、グードに向けて走り出す。

「そうきたか」

 グードも俺に向かって走り出す。

 そして、俺の二つの剣と、グードの大楯がぶつかり合う。

「面白い、面白いぞ!」

 グードは大楯を押し、俺をのけ反らせる。俺に隙が出来たと判断したのか、手に持っていた剣で切りつけようとしてくる。

「そうだな!」

 俺はグードの剣を双剣で受け止め、思いっきり薙ぎ払う。

「「・・・」」

 互いの顔に笑みがこぼれたことを確認してから、何かの合図があったかのように、俺とグードは互いの武器をぶつけ合う。

(勝ちたい!いや、勝つんだ!!)

 俺は勝利を貪欲に求め、剣を振り続ける。


「・・・凄い」

 彩人とグードの戦いを見守っている一人、モミジはそんな言葉を漏らす。

「アルジン、戦いを楽しんでいらっしゃいますね」

「そうですね。おそらくご主人様は喜んでいるのかと」

「喜んでいる、ですか?」

「ええ。なんのしがらみもなく戦えて、ご主人様もグード様も嬉しいと思います」

「しがらみというのは、もしかして・・・?」

「・・・勝たないと死ぬとか、仲間を人質に取られるとか、そういう類です。かくいう私も、この白の国の戦いで、ご主人様にとってしがらみになってしまいました。大変申し訳ないです」

「!?い、いえ!私は気にしていませんからそんなこと言わないでください!ね?」

「そうですよ。私も気にしていないですし、アルジンも気にしていないはずですよ」

「・・・その心遣い、感謝いたします。」

 クロミルはモミジ、レンカにお辞儀をする。

「二人とも楽しそう♪」

 ルリはホットケーキをむしゃむしゃと食べながら笑顔で言葉を発する。

「・・・あんな速度で戦うなんてすげぇな」

「私なんて、大親分の剣筋なんてまったく見えないわ」

「それに、グード教皇の剣筋もまったく見えないわ。強かったのね」

「でも、活き活きしている」

 彩人とグードの戦いを見ている者達の内、ほとんどの者が見えていなかった。その中でも剣筋が見えているクロミルやルリなど僅かな者達は、彩人とグードの表情を見て一言、こう感じていた。

 活き活きしている、と。

「・・・そろそろ、決着がつきますね」

 クロミルがそう言う。

「「え??」」

 ジャルベやヴァーナなどのキメルム達が驚く中、

「・・・確かに、そろそろアルジンが決めそうですね」

 クロミル、レンカが冷静に発言する。

「え?勝敗が決まるのですか?私には拮抗しているように見えるのですが・・・?」

 モミジの目には、彩人とグードが接戦しているように見えていた。だから、クロミルとレンカの発言が信じられずにいるのである。

「だからです」

「え?でも・・・?」

「確かに今は拮抗しています。ですがそれは、グード殿とアルジンが【色気】、それも【白色気】を使用しているからです」

「?そうなのですか?私には分からないのですが・・・、」

 モミジは再度、彩人とグードを見る。モミジは正確に把握出来ないが、【白色気】を使用した影響だからか、二人の目は白色に光っている。

「アルジンが【白色気】の他にまだ5種類の【色気】を使うことが出来ます。もしアルジンが6種類の【色気】を同時に発動した場合、グード殿に勝ち目はないでしょう」

 モミジ、レンカの話を聞いていたジャルベは、

(このまま大親分が勝つのだろうか?それとも・・・、)

 この模擬戦が、本当に彩人の勝利なのか疑っていた。


「・・・悪いな、グード」

 俺はバトルジャンキーではないが、叶うならば、俺はずっとグードと戦っていたい。このままずっと、剣を交えていたい。

 だが、この戦いは終わりにしよう。名残惜しいがな。

「・・・何が悪いというのかね?」

「この戦いが終わる、ということだよ」

「この戦いが終わる、だと?直前まで拮抗していたのだぞ?それを終わらせるなど、簡単なことではないぞ?」

「そうだな。本来ならとても簡単な事ではないな」

 俺は呼吸を整える。

「だが、俺の【白色気】と互角なら、この勝負、俺の勝ちだ」

 この勝負、終わらせたくないが終わらせるとしよう。

「・・・そこまで自信があるのなら、その自信の理由を教えてくれないかね?」

 落ちつけ、俺。いつも通り、いつも通りに魔法を発動させるんだ。

「今に分かるさ」

 俺のこの言葉を聞いたグードは、【白色気】で強化した身体能力を使用し、俺に急接近してくる。

「ならその前に倒すとしよう」

 グードは俺めがけて剣を振り下ろす。

 振り下ろした剣が俺に直撃・・・することはなかった。

 何故かというと、俺が剣を使って受け止めたからである。その後、俺は後退し、少しでもグードと距離を取る。

「来いよ。これで終わらせてやる」

 俺はKO宣言をする。

「そうだな。お互い、この攻撃で終わらせるとしよう」

 グードは大楯を捨て、持っていた剣を両手で構える。

(守りを捨てたか)

 この攻撃で終わらせるなら、守りなんて不要だ、とでも考えたのだろう。守りより攻撃に重きをおいた結果だな。俺は双剣を構える。

「いくぞ!」

「こい!」

 先に仕掛けてきたのは、グードだった。

 グードは俺に向かって接近してくる。

(・・・)

 俺は冷静に、グードとの距離を正確にはかり、タイミングを狙う。

(今だ!)

 俺はタイミング良く剣を振る。

「「・・・」」

 互いに無言の時間が数秒続く。

 事態が動いたのは、あるヒビの音である。

「!?」

 グードの剣にヒビが入り始め、やがて剣が壊れる。

 そして俺は一瞬でグードに近づき、グードの首に剣先を近づける。

「・・・これは完敗だな」

 その言葉を聞いた俺は警戒を解き、グードに視線を向ける。

「アヤト殿、狙ってやったのですかな?」

「ああ」

 俺は出来るだけグードを傷つけない為、グードの武器を狙って攻撃したのである。何故そのような芸当が出来たのかというと、

(僅かな時間だけ【六色気】を発動させたから、だろうな)

 俺は【白色気】から【六色気】に変更したのだ。そのおかげで身体能力が大幅に向上し、グードの剣筋を見て、グードの武器破壊に成功したのである。

 グードに近づけていた剣を遠ざけ、剣を上に掲げる。

「これで、俺の勝ちだ!」

 俺は自身の勝ちを宣言する。

「審判!」

 俺は審判を務めている者、シーナリに勝敗の宣言をするよう促す。

「しょ、勝者、アヤトさん!」

 この言葉で、孤児院の子供達、キメルムの子供達が興奮の声をあげ、グードの元へ駆け寄っていく。

「すごい!すごいよ、グードおじさん!!」

「何あの動き!!??全然見えなかった!!」

「どうやったらあんなに速く動けるの!?教えて教えてー!」

 ・・・。

(もしかして俺、またボッチ?)

 どうやら子供達は全員グードの方へ行ってしまったらしい。シーナリもあっちに行ってしまったし。

(模擬戦で俺が勝ったのに、敗者の気分だ・・・)

 まぁ慣れているからいいけどね?地球では俺、常にボッチだったし!全然、全然寂しくなんかないんだからね!?

 ・・・俺は一体誰に言い訳をしているのだろうか?

「流石はご主人様。見事な剣さばきでした」

「!?・・・クロミルか」

 てっきりみんなグードの傍に行ったのかと思っていたから、突然声をかけられて驚いたぞ。

「アヤトさん、かっこよかったです!」

「やっぱ、お兄ちゃんが勝つよねー♪」

「モミジ、ルリ・・・、」

 どうやら俺の勝利を喜んでくれる者はいたようだ。

 ところで、

「・・・レンカ、お前は一体何をしているんだ?」

 レンカは何故か、俺の体をベタベタと触っていた。ものすごく気になる。

「アルジンさきほど複数の【色気】を重ね掛けしたでしょう?なので無事なのかどうか確認しているのですよ!?」

「お、おぉ・・・、」

 いつになくレンカが真剣だな。

「心配しているのか?」

「当たり前ですよ!」

「「「!!!???」」」

 いつも俺を心配し、褒めてくれないレンカとは違い、本気のレンカを垣間見た。

「アルジンはいつもいつも無茶をして、何度死にかければ気が済むのですか!?本当、本当にまったく・・・心配、させないでくださいよ」

 ・・・どうやらレンカは、他の誰よりも俺の体を心配してくれたらしい。俺はレンカの頭を撫でる。

「心配してくれて悪いな。だが今の俺は、【白色気】を使った程度で死ぬほど弱くないから大丈夫だ」

「でもアルジンがさきほど使った【色気】は、6種類の【色気】を同時に使用したのですよ!?それで無事なはずが・・・!?」

「レンカ、お前の主の強さをもっと信用しろよ?【六色気】くらい使えないと、お前の主になんてなれないからな。俺の強さをもっと信じてくれよ」

 俺は笑顔でこう言ってやった。ちょっとかっこつけてしまったのかもしれない。自意識過剰かもしれない。それでも俺は、レンカを安心させたいのだ。

「・・・お前らも何をやっているんだ?」

 俺の言葉の後、ルリ、モミジ、クロミルまでも、俺の体のあちこちを触り始めたのだ。痛くはないのだが、どこかこそばゆいな。

次回予告

『5-2-60(第447話) 従者2人の別れ、旅立ち』

 グードとの模擬戦を終え、いよいよ彩人達は白の国から出国する。

 そんな中、彩人は別れを惜しむある2人を見る。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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