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色を司りし者  作者: 彩 豊
第ニ章 鉛白な国の中にある魔道具と漆黒の意志
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5-2-56(第443話) ゴーストタウンにあった魔道具、お詫びの魔道具

 ゴーストタウンの出入り口から移動して、俺達は今、教会に似せた建物の中にいる。この建物の中には、俺、シーナリ、グード、クロミル、レンカ、ジャルベ、ヴァーナの七人である。ちなみにルリとモミジは席を外してもらっている。ルリは子供達と共に遊んでおり、モミジはルリの子守である。後でモミジにお礼を言っておこう。

「それでは、話させてもらうよ」

 そう言いながら、グードは席を立った。大事な話をする時って、立って話をするものだっけ?違う気がするのだが・・・?

「先日の件とは別で、この町にあった魔道具の件だが、どうやら枢機卿が絡んでいたことが分かった。本当に、申し訳なかった」

(・・・あぁ、あの三角錐みたいな形状をした魔道具のことか)

 最初、グードが何の事を言っているのか分からなかったぞ。デベロッパー・ヌルのことでも魔道具が絡んでいたからな。ジャルベ達も魔道具が絡んでいた事なんて忘れていたな。

(あれほどの出来事を忘れるなんてな)

 俺の記憶力がよほど残念なのか、あの糞教皇の出来事が濃過ぎたのか。まぁどちらでもいいか。

「それで、お詫びとしてこの魔道具をこの町に贈呈しようと、この町に赴いた、といわけだ」

 そう言いながらグードはシーナリに視線を送る。グードから視線を感じたシーナリは無言で頷き、袋の中から四角い木箱を取り出した。そして、四角い木箱のふたを開けて、何かをテーブルの上に置いた。

(また三角錐みたいな形状の魔道具だな)

 三角錐、好きなのか?

「それで、この魔道具は大丈夫なのか?」

 俺は心配なのでグードに聞く。また周囲の人々から魔力を吸収するとか、地面の養分を吸収し、植物を育たないような大地にするとか、そんな害悪効果を備えているのなら、また俺がぶっ壊すとしよう。

「もちろん大丈夫だ。流石に私が一から作ることは出来ないが、出来る限りの事は協力したつもりだ」

「そうか。ならこの魔道具どんな時に使う物で、どんな効果があるんだ?」

 俺が聞くと、グードはある紙を取り出し、目を通し始めた。

(まさかこいつ、この魔道具について何一つ覚えていないのか?)

 ・・・いや、そんなわけないか。きっと、俺にきちんと説明するために念には念を、といったところ。

「この魔道具は置くだけで効果を発揮する。置くだけで、周囲の土地に繁栄をもたらしてくれる物で、あらゆる生物に活気をもたらしてくれる効果だ」

「はぁ~・・・、」

 要するに、置くだけで土地や俺達を元気にしてくれる、ということか。

(本当なのか?)

 なんか、精神論を語られているような気がする。地球にも似たような詐欺商品、会った気がするな。

(だが、今の俺では、この魔道具にそんな効果があるのかどうか判断出来ないな)

 見るだけじゃあ分からないな。

「触ってもいいか?」

「もちろん」

 了承を得たので、俺は三角錐形の魔道具を手に取る。

(う~ん・・・)

 俺は色んな方面から魔道具を見てみたのだが、やはり分からなかった。俺に判断が出来ないのなら、ジャルベ達に見てもらうか。

「お前達はどうだ?」

 俺は魔道具をテーブルの上に置き、ジャルベ達の方に寄せる。・・・そういえば、この魔道具はジャルベ達に贈呈するんだよな?なら最初は俺じゃなく、ジャルベ達に触らせるべきだったな。ちょっとしくじったか。まぁやってしまったことは仕方がない。次から気をつけるとしよう。

「・・・これ、前に俺達が持っていたやつと何が違うんだ?」

「確かに親分の言う通りです。前に異なる点があるとすれば、配色、ですかね」

「なるほど」

 ヴァーナの言葉に俺は気づく。

 確かに、前にあった三角錐形の魔道具は紫色だったが、今手元にある三角錐形の魔道具は白だ。

「・・・確かに違う・・・気もしますが、詳細なことが分かりません。申し訳ありません」

「いや、俺も分からないから気にするな」

 そっか。クロミルも分からないか。

「ほほう?」

 俺達がどう違うのか分からないでいると、レンカが興味深そうに魔道具を見始める。

(そういえばレンカは魔道具。魔道具について詳しかったな)

 なら最初からレンカに聞けばよかったのでは?・・・まぁ、次から気をつければそれでいいか。

「レンカは分かるのか?」

「ええ。それにしても・・・ふぅん」

 レンカは三角錐形の魔道具とグードを交互に見ながら、何か納得する。

「おい。何か分かったのなら俺達にも教えてくれよ」

「そうでしたね。分かりました。きちんと説明いたします」

 レンカは軽く咳払いをする。

「どうやらさきほどグード殿が説明した効果と同じようです。ただ・・・、」

「ただ、なんだ?」

 何か怖いのだが?

「・・・この魔道具に使われている材料が、私の記憶の中ではとても貴重だった気がしたので・・・、」

「材料?」

 見たところ白だから白っぽい鉱物・・・いや。もしかしたら白で塗装している可能性もあるかも。そういえば持った時、金属みたいな重みを感じたな。少なくともプラスチックではなかったと思うが・・・?

「・・・微量ですので間違っていたら申し訳ないのですが、この魔道具には【()(せい)(きん)】が使われているらしいのです」

「【魔聖金】?魔金、じゃないのか?」

 魔金なら前に聞いたことがある。それと関連があるのか?

「はい。魔金は魔銀より希少で高性能である、ということはご存知ですよね?」

 レンカは俺達に確認の質問をする。俺は無言で頷く。他のみんなは・・・頷いたな。ということは周知の事実、なんだな。前に教えてもらってよかった。

「ですが、魔金の中で極稀に、魔金より魔力吸収率や硬度が高く、少量でも混ぜるだけで魔道具の性能を向上させられる特別な魔金が採掘されるのです」

「それが魔聖金、だと?」

「ええ」

 確か、魔銀製でも結構高かった気がするのだが、魔聖金がどれくらいの値がつくのだろうか?金は銀より値が高いから、金より高額なのは確実だな。

「ちなみに、このような場で金銭に関する話はあまりするべきではないと思いますが、これだけ伝えておきます」

「なんだ?」

 金に関する話だと思うが、なんだか怖いな。

「この魔道具に使われている魔聖金ですが、とある町では微量・・・一つまみ量の魔聖金をめぐって争いが起きた、という記載があります」

「「「!!!???」」」

 は、はははぁぁぁ!!!???

「本当、なのか?」

「本当かどうかは不明ですが、それほど希少な金属であり、手に入れるためにかなりの金銭と覚悟が必要である、ということを胸に秘めておいてください」

「・・・それほどの金属をこの魔道具に使っているのか?」

「・・・ああ、これくらいしないと、と思ってね。実際、この魔道具には必要だと思ったから、貯金を切り崩したんだ」

「・・・ちょっと待て。これ、実費なのか?」

 レンカの言葉を信じるなら、魔聖金の調達だけで相当金がかかるんじゃないか?それこそ何百万何千万、下手したら億単位のお金が飛ぶのでは?まぁ、俺の金銭感覚がくるっている可能性もあるのだが。

「ああ。こればかりは私の我が儘だからね。我が儘に教会のお金を使うわけにはいかないからね」

「そのお金はどこから出したんだ?まさかお前・・・!?」

 さっき、実費と言っていたが、実は教会のお金を着服していたのか!?こいつ、まsか横領を・・・!?

「・・・今君が考えている愚行は一切していいないから安心してくれ。こう見えて私は昔、冒険者として活動していたからね。その貯えを使っただけだよ」

「お前、冒険者だったのか!?」

 てっきり最初から聖職者として生活しているのかと思っていたのだが、違ったのか。

「ええ。確かここに・・・あった」

 グードはポケットにしまっていた何かをテーブルの上に置く。

「これは・・・!?」

 間違いなく、俺も持っている冒険者カードだ。しかもこの色・・・黒、だと!?

(こいつ、こう見えてとてつもなく強いってことかよ・・・)

 下手したら俺、こいつに負ける可能性があるってことかよ。というか、全然強く見えなかったな。そこまで強いとは思わなかったな。俺は人を見る目が全然なかった、ということだな。もっと養わないとな。

「いえいえ。これはあくまで過去の栄光です。最近は剣を握っていないので勘がどうも鈍っていましてね。今ではどこにでもいる一聖職者ですよ」

「いやいや、元とはいえ黒ランクの冒険者が普通の聖職者なわけあるかよ」

「それを言うなら、君もかなり腕がたつじゃないか。私が現役でも敵いそうになさそうだ」

「いやいや。俺こそどこにでもいる普通の冒険者だぞ?」

「「「え???」」」

「・・・え?」

 その驚き顔は一体なんだ?まるで俺がどこにもいない異常な冒険者みたいな反応じゃないか。

「・・・アヤトさん、アヤトさんは全然普通じゃないと思いますよ?」

「・・・アヤト殿、普通の冒険者は、教皇と戦おうだなんて思いませんよ?」

 ・・・なんだろう。シーナリとグードから呆れの視線を受けた気がする。

「・・・大親分、普通の冒険者は俺達に勝つ、なんて出来ないぞ?」

「・・・大親分、普通の人は私達キメルムにここまで親切にしてくれませんよ?」

 ・・・なんだろう。ジャルベとヴァーナからも呆れられている気がする。

「・・・ご主人様。私牛人族は、普通の方について行くなんてこと、ありませんよ?」

「・・・アルジン、この場にいる誰よりも、アルジンが一番普通じゃないと思いますよ?」

 ・・・クロミルとレンカまで、俺の普通を否定してきた。

「みんなしてなんだよ。どこからどう見ても、俺は普通の冒険者じゃないか」

 確かに俺は過去、多くの人からいじめられていたが、見た目は普通・・・だと思いたい。

「「「それはない」」」

「え?」

 まさか俺の普通が全面的に否定されるとは。

「・・・話がそれてしまったね」

 ここでグードが話をもどしてくれた。これ以上、俺のメンタルを削らないほしいと思っていたのでよかった。俺の普通に関する話は別の機会でお願いしたい。

「そういうわけで、私はこの魔道具を君達キメルムに贈呈したのだが、受け取ってもらえるかな?」

 そう言いながら、グードは俺達に見せていた魔道具を木箱に入れ直し、ジャルベ達ン手渡す。

「・・・分かった。あんたの気持ち、受け取るよ」

 ジャルベはグードからの品を受け取り、そのままヴァーナに渡す。

「・・・さて、これで大事な用件は済んだ。今日はここに泊まらせてもらうが、構わないかね?」

「・・・別に構わない。子供達も喜ぶだろうさ」

「ありがとう、ジャルベ殿」

「ふん」

 グードはジャルベに優しい笑顔を向ける。ジャルベは照れくさかったのか、グードから視線を逸らす。

(素直じゃねぇな)

 俺はジャルベの様子を暖かく見守る。

「あのご様子、まるで素直にならないアルジンですね」

「・・・うるせぇ」

 まったく。レンカはいちいち余計なことを言うよな。本当、誰に似たのやら。

「それではこれから、子供達と話をしてこようかね。構わないかな?」

「構わない。あんたはその・・・信頼出来る、からな」

「ありがとう」

 ジャルベは自分で言いながら恥ずかしくなったのか、またあさっての方角を向く。

「本当、そっくりです」

 俺はレンカの言葉を聞かないことにした。レンカは俺をいじめることに快楽を感じている変態なのだろうか。

「あ、私も行きますね!今日は首都から様々な食材を買ってきましたからね!夕ご飯、楽しみにしていてくださいね」

 そう言いながら、グードとシーナリは俺達の前から去っていった。

(もう俺がいなくても大丈夫そうだな)

 ジャルベ達はもう自活出来ている。

 キメルム達の中には、冒険者として活動しているキメルムもいるし、首都の雑用をして生活しているキメルムもいる。

 そして、キメルム達を心配してくれる、グードのような大人がいる。

 まだ数日はいるが、そろそろ俺達はこの町から出るか。

(目的地は魔の国だな)

 リーフ達がこの町から出て十日は経っている。ノンビリ追いかけるとするか。

「幸せそうだな」

「!?わ、悪いかよ!?」

「いいや。お前らが幸せそうで嬉しいんだよ」

 心に余裕があるからか、他の人の笑顔を見ると自然と俺も嬉しくなる。地球にいた時なら、他の人が笑顔でいると、不幸な目にあえと呪いのように願っていたな。

「な!?そ、そんなこと言うなよ!?」

 ・・・なんだろう?もしかして、ジャルベが照れた、のか?

(そんなわけないか)

 俺みたいなボッチに照れる要素なんてないだろう。何せ俺は生粋のボッチだったからな!・・・自分で思っていて悲しくなるな。

「いくぞ、ヴァーナ!俺達もそろそろ夕飯の準備をするぞ!」

「はい、親分」

 ジャルベとヴァーナは俺達の前から去っていった。

「・・・いよいよ、この国から出るのですね」

「!?そのつもりだが、どうして分かった?」

 俺はいまさっき決意したはず。その決意を誰かに話したことがないというのに、どうしてレンカが分かったんだ?

「そのような顔をしていましたので」

 そのような顔とは一体どのような顔なのだろうか?国を出るつもりの顔・・・分からん。

「・・・」

「ヴァーナのこと、気になるのか?」

 俺は、さきほど去っていったヴァーナ達の背中を見ていたクロミルに声をかける。

「!?い、いえ!そのようなことは・・・!?」

 あれ?思った以上に動揺しているな。いつもなら冷静に、

“いえ。そのような感情は一切持ち合わせておりません”

 と言いそうだと思っていたのにな。

(は!?ま、まさか・・・!?)

 クロミルの奴、ジャルベの事が好きなのか!?それともヴァーナが好き、なのか?だとしたら今の俺に出来る事は、クロミルの恋を応援するために、この国にクロミルを置いていく事、か。

「・・・ご主人様。一応言っておきますが、私はジャルベ様やヴァーナ様に零愛感情は一切抱いておりませんので、誤解なさぬようお願いいたします」

「・・・そうか」

 相変わらずクロミルは俺の心を正確に読んでくるよな。俺の心は読みやすいのだろうか。

「後、今すぐこの国を出るわけじゃないからな。今の内に挨拶でもしておけよ」

 俺も誰かに挨拶・・・しなくても良さそうだな。俺に親しい友人とか知り合いとかいないからな!

「・・・アルジン?どうして急に胸を張ったのです?」

「・・・なんでもない。だから気にするな」

 単なる虚勢だ。詳細に突っ込まれたら俺の心がえぐられるので控えて欲しい。

「はぁ」

「そんなことより明日からシロネリに向かうぞ。食料とか大量に買い込むから付き合え」

「まったく。アルジンは魔道具使いが荒いですね」

 魔道具使いが荒いとはなんなのだろうか。雑に扱っているつもりはないんだがな。

「ですが分かりました。付き合いますよ」

「おう。よろしく頼む」

 さて、さっそくシロネリに向かう準備をするか。

(買い物するだけだし、クロミルはこの町に残しておくか)

「あ」

 そういえば俺、大事なことを忘れていた。

「どうしたのですか、アルジン?」

「俺、モミジが近くにいないと駄目だったの、忘れていたわ」

「・・・ああ。そういえばアルジン、前に言っていましたよね。確か緑の国で・・・、」

「概ねそんなところだ。だからモミジは連れて行かないと」

 となると、クロミルはこの町に独りでいることになるのか。

(でもまぁ、大丈夫だろう)

 クロミルは強いからな、それにここには、シーナリやキメルム達がいる。心配するだけ無駄か。

「そうですね。ですがモミジ殿には話、通したのですか?」

「話していないな」

 今頃モミジはルリのおもりを・・・は!?

「?どうかしたのですか、アルジン?」

「・・・いや、なんでもない」

 そういえばルリの存在を忘れていたわ。だからクロミルは独りじゃないな。

(すまん、ルリ)

 俺は心の中でルリに謝罪する。俺の心の中のルリは、俺を許してくれた。ありがとう、俺の心の中のルリ!

 さて、ルリへの謝罪は済ませたことだし、買い物の準備を始めるとしよう。

 翌日、俺はレンカ、モミジを連れてシロネリに向かった。

次回予告

『5-2-57(第444話) 従者2人』

 彩人、レンカ、モミジがシロネリに向かった一報、ゴーストタウンに残ったルリとクロミル。

 その内の一人、クロミルはある夜、同じ立場であるヴァーナと話をする。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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