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色を司りし者  作者: 彩 豊
第ニ章 鉛白な国の中にある魔道具と漆黒の意志
443/546

5-2-55(第442話) 三人の旅立ち後

 リーフ達が旅だってから十日間。俺達は何をしていたのかというと・・・、

「・・・うん。これくらい美味しいホットケーキを焼けるなら、俺から教える事はなにもないな。後は枚数を焼いて、自分好みの焼き方を体に覚えさせていくといい」

「はい!」

 何人かの子供達に、ホットケーキの焼き方のコツを教えていた。

 何故教えているのかというと、自らホットケーキを上手に焼くコツを教えて欲しいと懇願されたからである。

(まさか料理人志望者がこの子供達の中にいるとはな)

 俺はてっきり、キメルム特有の高い身体能力を活かし、冒険者になるのかと思ったぞ。

(でも、キメルムの子供だけでなく、孤児院の子供達もいるからな)

 孤児院の子供達は、キメルムの子供達と違い、普通の子供だ。なので、高い身体能力を持ち合わせていない。

(もしかしたら、キメルムの子供達が孤児院の子供達と一緒にいたいから、やりたいことを合わせたのか?)

 ということは、キメルムの子供達が孤児院の子供達に気を遣った、ということになるな。

「お前達、誰かに気とか遣っていないか?」

 俺は子供達に質問する。

「ううん」

「ホットケーキ作るの、楽しいよー?」

「私、料理大好きー♪」

 ・・・どうやら子供達は、気を遣っているわけではなさそうだ。ということは、俺の杞憂だった、というわけか。

(もしかしたら、この子達の中から、世界一の料理人が出てくるかもな)

 そう考えると、俺は将来世界一となる料理人の師匠、となるのか。なんだか少し、自身に自信が持てそうだ。

 料理を教えていたら、グード教皇とシーナリがこのゴーストタウンにやってきた。

「ただいま戻りました」

「やぁ」

「「「わぁーーー!!!」」」

 孤児院の子供達全員、グード教皇とシーナリの近くに集まっていく。そして、キメルムの子供達も何人かグード教皇とシーナリに近づいていった。

(・・・キメルム達も、徐々にだがグードに、シロネリの人達に心を開き始めているようだな)

 心を完全に開いているわけではなさそうだが、それでも大きな一歩だな。

「はい。シロネリで買ってきた食べ物です。後・・・これです!」

 そう言い、シーナリはたくさんの木の板を俺達の前に置いた。

(なにこれ?)

 木の板を見てみると、大きく「あ」とか「い」とか、一文字ずつ書かれていた。

(「さ」の裏には・・・魚、か?「う」の裏には・・・牛、か?)

 これはまさか・・・?

「みんな、これを使って文字の勉強をしようね。文字を読めるようになれば、もっと出来る事が増えるからね」

 そうシーナリが提案したのだが、

「文字・・・?」

「読めるようになって、意味ある?」

「今こうして生きているし、いらないんじゃなーい?」

 子供達は否定的な意見ばかりである。

(無理もないか)

 今まで、毎日生きるか死ぬかの生活を強いられ続けてきたのだ。文字の必要性なんてそう簡単に出来るわけないか。

「料理を人に教える時、お前達はどう教える?」

 俺はシーナリとの話に乱入し、子供達に質問する。

「?話して伝えるんじゃないの?」

「口―?」

「時折、手とか体とかも動かして伝えるよー」

 みんな、思い思いの意見を伝えてくれた。確かに子供達の言う通り、口で伝える時もあるし、手とか体を動かす、つまりジェスチャーで伝える方法だってある。

「だが、それでも伝わらない時は?伝えたい人が近くにいなかったら?」

「・・・諦める?」

「後で伝えればいっかー、と思うよ」

「でもそれだと、たまに伝え忘れ事あるよねー」

「あるあるー」

「そのために、伝えたいことを文字に残しておく必要があるんだ」

 俺は子供達の回答を聞きながら、俺なりの考えを伝える。

「さらに、他の人に料理の仕方、材料の分量を教える時にも文字は役立つぞ」

「「「!!!???」」」

 俺の言い分は、どうやら料理好きの子供達に効果てきめんだったらしく、シーナリがもっている木の板をかっさらうように持っていってどこかに行った。おそらく、あれを使って文字の勉強でもするのだろうな。

(・・・他の子供達も、料理好きの子供達の後を追うように行ったな)

 これでここにいるのは、俺、シーナリ、グードの三人にジャルベ、ヴァーナ、クロミル、モミジ、レンカの五人の計八人ということだな。

「それで、わざわざここまで何しに来たんだ?」

「・・・別に用が無くても来てもいいのではないかね?」

 なんだかジト目で見られている気がする。言い方が意地悪だったか?

「そりゃあ悪かった。それじゃあ今日は泊まっていくのか?」

「ああ、そのつもりだ。ここでの暮らしはいい刺激をもらえるからね」

 刺激、か。一体誰がグードに刺激を与えているのだろうか。

「それに今日は君達に、大切な話があるからね」

「そうか」

 間違いなく、個々に来た理由はそれだろう。

(大切な話、か・・・、)

 俺達を神の敵とみなして殺しにかかるとか、そんな話じゃないよな?

(・・・て、そんな話なわけないか)

 この世界に来てから俺の考えが物騒になってきた気がする。この世界と地球での価値観の違いに俺も慣れてきた影響なのだろうか。その影響が悪影響じゃなきゃいいのだけど・・・。

 俺は誰にも気づかれていない不安を抱きながら、場を移動し始めたのだった。

次回予告

『5-2-56(第443話) ゴーストタウンにあった魔道具、お詫びの魔道具』

 グードから大切な話という話があると聞き、建物の中に入っていく。

 その建物の中で行われる大切な話というのは、魔道具に関する話だった。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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