5-2-50(第437話) 仲をより深めるために
「・・・宴会?」
「そ。これを機に宴会をしようと思っていてな。どうだろうか?」
俺はイブ、クリム、リーフ、ルリ、クロミル、モミジ、レンカを集めてこれから行うこと、宴会の開催について話をしていた。
それにしても、この8人で集まるの、なんだか久々に感じるな。俺の気のせいだろうか?
「いいんじゃないでしょうか?食べることで体を強く出来る、なんて聞きますからね」
「…私もアヤトの意見に賛成。それにしても相変わらず、自身の筋肉にしか興味がない筋肉お馬鹿」
「な!?」
「まぁまぁ二人とも落ち着いて。あ、私もアヤトの考えに賛成ですよ?私もサキュラちゃん、サキュリちゃんに助けられたわ」
「いいと思う。ジャルベお姉ちゃん達に一杯迷惑かけちゃったから、そのお詫びがしたい」
「私もルリ様と同じ思いです」
「みなさんとのお食事・・・楽しみです」
「・・・アルジン、何かいやらしいこととか考えていないですよね?ただ、食事するだけ、ですよね?」
概ね賛成の意見をいただいた。レンカだけ、俺の言葉に疑いを持っているようだ。俺、そんなに信用ないのか?
「なので、これからみなさんには、キメルム達と、教会にいる孤児達の分の料理を作ってもらおうと思っているのですが、手伝ってくれないでしょうか?」
正直、手伝ってくれないととても困るが、最悪、独りで作ることを想定して2,3日夜通しで料理し続ければ・・・いけるのか?きっと遠慮なんて言葉を知らない食べ盛りの子供達は、俺の想定をはるかに上回る量の料理を食すことになるだろう。それだけの食材を全て調理し、提供出来るのか?
「異議ナーシ!」
「…ん。味見役は任せて」
「イブもちゃんと料理しなきゃ駄目ですよ?」
「ルリもやる!ホットケーキ、いーっぱい作るー!」
「このクロミル、全身全霊で料理を作らせていただきます」
「みなさんとのお料理・・・が、頑張ります!」
「アルジンが隠れて毒を入れないよう、しっかり見張りませんとね。もちろん、料理も手伝わせてもらいますよ?」
どうやら、俺の心配は杞憂だったようだ。・・・ところでレンカは、俺のことを一体なんだと思っているんだ?俺は人様の楽しみを奪うような鬼畜じゃないし、拷問好きでもない・・・、
(あ)
そう言えば俺、緑の国でやらかしていたんだったな。だが、レンカは緑の国の出来事を知らないはずだ。なんせレンカは、緑の国の次に行った黄の国で出会ったわけだからな。
(となると、誰かが緑の国の出来事をレンカに教えたのか)
誰がレンカに教えたのか問いただしたいところだが、やめておくか。
「・・・それで、何作るの?」
このイブの言葉で、全員が俺の方を向く。
(何作る、ねぇ・・・、)
正直、今も悩んでいる。
出来ればこの世界にある料理を作りたいと思っているのだが、地球の料理の方が美味しいんだよな。黄の国にあったおでんもどきも、地球のおでんに負けていたし。
(・・・おでん、作るか)
前にも作ったが、ここでもう一度作ってみるか。・・・なんか作ろうと考え始めたら、無性におでんが食べたくなってきたな。今すぐ食べたい欲求を抑えて、話に集中しよう。
「・・・ひとまず、黄の国で食ったあの料理を作ろうと思う」
「・・・その料理って?」
「それはだな・・・、」
俺は黄の国で食った料理とおでんについて、簡単に説明する。
「・・・美味しそう」
他のみんなは・・・似たような反応だな。
「後はみんなで各々好きな料理を大量に作るとして・・・カレーは必須かな?」
俺が独りごとのように呟くと、
「「「カレー!!!!」」」
みんなが思いっきり反応していた。
(無理もないか)
地球でも大人気料理だったからな。子供の好きな料理ランキング上位にいつも食い込んでいたような気がする。記憶が曖昧なので絶対、とは言い切れないのだが。
「絶対、作って!」
「あれ、美味しかったですよねー」
「ええ。大変美味でした」
「鍋一杯に作って飲みたい!」
「・・・ルリ様、カレーという料理は飲み物ではないと、前にご主人様が仰っておりましたよ?」
「カレー・・・前にみなさんが話していた料理、ですよね?とても美味しいという、至高の料理でしたっけ?」
「至高の料理、ですか。魔道具である私も食べてみたいですね」
・・・なんか、カレーに対する期待値、限界突破していませんか?これじゃあ作り辛いのだが?いっそのこと、カレーはもう作れないと断言した方が後々楽になるかも?
(・・・いや、それはしない方がいいか)
もし、もうカレーは作れないと断言したら、今のみんなの笑顔が消えることになってしまう。
(それは駄目だな)
となれば、みんなの期待値が限界突破している中、カレーを作ってみんなに振る舞うしかないか。不味いカレーにならないよう注意して作るとしよう。
「後食べたい料理とかあるか?希望且つ暇があったら作るつもりだが・・・、」
「「「ホットケーキ!!!」」」
「お、おぉ。分かったよ・・・」
食べたい料理について希望を聞いてみたら、全員がホットケーキと即答してきた。
みんな、そんなにホットケーキが食べたいのか?そんなに美味しいのなら、地球にいた時、もっと食べておけばよかったな。まぁ、過ぎたことを悔やんでいても仕方がないか。
「それじゃあみんな、これからどんどん作っていくぞ!」
「「「はい!!!」」」
さーて、料理、頑張っていくか!
「ところでですが、その宴会はいつ、行う予定なのですか?それ以前に、きちんとジャルベちゃん達に伝えましたか?」
「・・・日にちは近いうちにやろうとは考えているが、日にちは決めていないな。ジャルベ達にも伝えていないし」
「…ならまずはジャルベ達に伝えるべき。日にちはどうする?」
「そうですね・・・今から料理を準備するとなると、最短で今晩・・・いえ、明日でしょうか?」
「・・・ん。間に合うように頑張る」
「私のこの筋肉を思う存分使って、がんがん料理していきますよ!」
「ルリもどんどん味見するー!」
「ルリ様、共に味見だけでなく、料理も頑張っていきましょう」
「みなさんに美味しい料理を食べて、笑顔になってもらいたいですね」
「さて、ここは魔道具である私の出番、ですかね。精一杯やらせていただきますよ」
さ、目標は明日の宴会開催だ。
頑張っていこう。
シーナリ、ジャルベ達に宴会のことを話したら、今日明日はいきなり過ぎて難しい、とのことだった。考えてみれば、相手からすれば突然過ぎたかもしれないな。なので話し合った結果、一週間後ということになった。
(・・・ま、妥当か。それに食材の調達もしたかったし、ちょうどいいのかもしれないないな)
どうやら俺達は色々浮かれていて、相手のことを考慮していなかったらしい。反省だな。
そして俺達は、料理に必要な食材を大量購入し、調理をし始めた。
まず下準備として、カレーに必要な野菜達を手ごろなサイズにカットし、煮込み始めた。煮込み始めたのだが、なにぶん量が多いので、時間はかかるわ、手間はかかるわ・・・。
「い、意外と大変ですね・・・、」
「…量が量なのだから仕方がない」
「これはいい訓練になりそうです」
「ルリ、頑張って作るー!」
「このクロミル、例え腕が引き千切れても作る所存です」
「あ、あの、クロミルさん?何もそこまでの覚悟を持たなくてもいいのではないでしょうか?もっと気楽に作りましょうよ、ね?」
「・・・クロミル殿?腕が引き千切るほどの覚悟なんて捨ててしまって構わないですからね?それで本当に腕が千切れたらアルジン、悲しみますよ?」
・・・どうやらみんな、色々と疲れているらしい。まぁ、カレーだけでなくホットケーキやサラダなど、様々な料理を平行して作っているからな。肉体的疲労、精神的疲労がかなりかかっているのだろう。
(こりゃあ、無理かもな)
みんなかなり多く食べることを想定して、出来るだけ多く作っているのだが、失敗だったか?
(なら、あの作戦でいくか)
俺は脳にある考えを思い浮かべる。
「みんな、腕が疲れているだろうが、ひとまず聞いて欲しい。料理のことなんだが・・・、」
俺は俺自身の考えをみんなに伝える。これで俺の考えが伝わってくれたらいいのだが・・・。
「いいんじゃないでしょうか?」
「…ん。アヤトの考えに賛成」
「それはいい考えですね。もしかしたらその方が、みなさん仲良く出来るかもしれませんね」
「ルリね、そのお兄ちゃんの考え、好きー♪」
「ご主人様の考えに従います」
「アヤトさんの考え、とても素敵だと思います」
「自分、モミジ殿と同じ考えです」
よかった。どうやら俺の考えはみんなに高評価のようだ。
「それじゃあみんな、その方向で頑張っていこう」
「「「はい!!!」」」
さて、後数日、しっかり準備して当日に臨むとしよう。
次回予告
『5-2-51(第438話) 宴会で仲を深めよう』
彩人が提案したのは、キメルム達と孤児院の子供達とで宴会を開き、共に同じ食卓を囲んで仲良くなろうという企画だった。
そしてその企画には、ただみんなで食事をするだけでなく、別に考えていたことがあった。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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