5-2-46(第433話) 話し合いになっている話し合い~テイク2~
「まず、話し合いの前に私達から一言、言いたいことがある」
「なんだ?」
突然、グードが立つ。
「シーナリも立ちなさい」
「はい」
シーナリも立ちあがって、一体何をするつもりなのだろうか?
「先日の件、本当に申し訳なかった」
グードはいきなり俺達に頭を下げてきた。グードに続き、シーナリも頭を下げる。
「私達がもっと見ていれば、アヤト殿達をあそこまで不快にさせることはなかった。誠に、申し訳ない」
「申し訳ありませんでした」
「・・・別にお前らが謝る必要なんてないさ」
悪いのはあの屑共だ。なので、こいつらの謝罪なんて必要ないと俺は思っている。
「そう言っていただけで心が救われます。感謝します」
「ありがとうございます」
「まずは顔をあげてくれ。謝罪の気持ちは受け取ったから」
グードとシーナリは頭を上げ、着席する。
「それでは、本題に入りますか」
「本題、か」
そういえば、今回の話し合いの目的って何だっけか?あの屑共とのやり取りのせいですっかり忘れてしまったな。
「・・・ブラグ教皇を襲った理由ですよ」
リーフがこっそり教えてくれた。リーフ、ありがとう。
(出来ればこのままリーフが、どうしてブラグ教皇を襲った理由も話してくれると助かるけど)
まぁ流石にその理由は、俺が説明しないとまずいか。
「実はな・・・、」
俺は一通り、二人に説明した。
ブラグ教皇が、死者を蘇らせる魔道具を持っていた事。
その魔道具を破壊しようとしたこと。
簡単に伝えたところ、
「「・・・」」
二人は驚きを隠せないでいた。
「・・・経緯は分かりましたが、本当にそのような魔道具が存在するのですか?」
「にわかに信じられません」
どうやら二人とも、死者を蘇らせる魔道具の存在を疑っているようだ。
「そもそも、どうしてブラグ教皇がそのような魔道具を持っていることが分かったのですか?」
まぁ、当然の質問だな。会ったこともない男の所持品が分かるなんて、ストーカー以上の恐怖ものだよな。
「実はその魔道具、ある者が作ったもので、その魔道具のおおよその場所が分かる魔道具を持っているんだ。その魔道具で場所を特定したところ、そのブラグ教皇の家にある事が分かった。その後、ブラグ教皇と共に移動していたことから、ブラグ教皇が魔道具を持っていることが分かったんだ」
「・・・魔道具の位置を特定できる魔道具?そのような魔道具、聞いたことありません。シーナリはありますか?」
「・・・私もない。本当にあるのです?」
俺はアイテムブレスレットから、アイテムレーダーを取り出し、二人に見せる。
「・・・これが、さきほどアヤト殿が言っていた魔道具・・・」
「特定の魔道具を探すことが出来る魔道具・・・」
二人ともマジマジと見ている。
「ちなみに可能であれば、どうやって操作するのか教えていただけますか?」
「いいぞ」
この魔道具はただ探すだけなので、特に危険はない、はず。そう思った俺は、二人に操作方法を一通り説明し、実演する。
(あれ?)
レーダーを見ると、すぐ近くに反応があるな。ということは、あの杖が、教皇が持っていた杖が近くにあるということだ。
「・・・あの、私の目が間違っていなければ、この反応、すぐ近くを示していませんか?」
「・・・示しているな」
どういうことだ?
「あ。それなら私のせいかと」
「え?」
そうレンカが言うと、レンカは自身の体に腕を突っ込み、何か探し始める。
(そういえば・・・)
レンカもこのアイテムレーダーの製作者、デベロッパー・ヌルが作った魔道具なんだよな。なら、このアイテムレーダーに反応があるべきなんじゃないか?
(いや、今はおいておくか)
「確か・・・あ、これです、ね」
レンカが、何か杖のようなものを机の上に置く。
て、
「これってまさか・・・!?」
「ええ。アルジンが考えている通りです。これは、あのブラグ教皇という者が持っていた魔道具、死への冒涜です」
「おま!?これ、今まで持っていたのか!!??」
「?はい」
「だ、大丈夫なのか!?」
この魔道具、何か呪いの類でも仕掛けられているんじゃないのか!?そんな心配を話してみたところ、
「まぁありましたが、そこまで使用しなければ問題ない呪いでしたので問題ありませんでしたよ?」
「問題だらけじゃないか!!??」
逆に言えば、かなりの回数を使用していたあの教皇は、呪いに侵されていたということじゃないか!?
「それで、どのような呪いなのですか!?触って大丈夫なものですか!?」
グードのやつ、すぐ死への冒涜から離れたな。
「私は呪いに関して詳しくありませんので詳細は分かりませんが、どうやらこの魔道具には、一定回数使用すると、使用者の心に干渉し、怒りや殺意等、憎悪に染めるような呪いが発動するみたいです」
「憎悪・・・、」
この魔道具、かなり怖いな。
(やはり、いい話だけでは終わらない、というわけか)
いい話には裏があるとよく聞くが、まさにこのことだな。
この杖、ただ単に死者を蘇らせるチート性能の杖かと思ったが、一定回数使用すると、心が憎悪に染まる、と。つまり、暴走すると。
(そういえば・・・?)
そもそもこの杖、本当に死者を蘇らせることって出来るのか?俺、ブラグがこの杖を使っているところ見たことないから分からないな。俺としてはレンカを信じているからいいが、グード達は実際に死者が蘇っている場面を見ていないし、俺達の言葉だけじゃあ信じきれないかもしれないな。
「なぁ?俺が実際に使ってみてもいいか?」
「「「!!!???」」」
俺が提案してみると、俺以外の全員が、信じられないような目で俺を見てくる。
「しょ、正気なのですか!?」
「心が憎悪に染まったらどうなるか、分かって言っているのですか!?」
「・・・何か考えがあって、言っているのですよね?まさか、考えなしに言った、訳ではないですよね?」
「もちろんだ」
俺は、どうして死への冒涜を使用したいのか、その説明をした。
グードとシーナリに、死への冒涜の魔道具の効果を実演するために使用したいこと。
グードとシーナリに効果を見せる事が目的であるため、使用回数は一回、多くても二回である事。
グードやシーナリに使わせてもしもの場合、どうなるか分からないので使わせられない事。
同様の理由で、リーフやレンカにも使わせられない事。
何かあっても俺ならなんとかできるので、俺が使用するのが最善であること。
出来るだけ簡単に説明、したつもりだ。口下手な俺にも説明出来ただろうか。
「・・・それでは、お願いしてよろしいでしょうか?」
「お願い、します」
グードとシーナリは控えめにお願いしてきた。
「アヤトはそれでいいのですか?」
「ああ。俺も本当に死者が蘇るのか見たいし、二人にもどんな効果なのか見せないと危険性を理解出来ないと思うからな」
「それでアルジン、この死への冒涜の使用方法、理解出来ているのですか?」
「・・・あ」
そういえば、使用方法とか使用時の注意事項とか、まったく知らないな。魔道具なのだから、魔力が必要なのだろうか?
「・・・アルジン、私なら、この魔道具の使用方法を熟知していますので、教えますよ」
「・・・教えてくれて助かる」
レンカ指導の元、俺は死への冒涜の使用方法を聞き、場所を移動した。
場所を移動した理由は、
「ここよりある場所の方が、発動した際の効果が分かりやすいので」
ということらしい。俺には何の事か分からないのが、レンカの言葉に従うとしよう。
「それではアルジン、さきほど私が説明したとおりにしてくださいませ」
「ああ、分かった」
(確かまずは、この杖の宝玉の部分に魔力を注ぐ、と)
どのくらい魔力を注げばいいのか聞いたところ、
「アルジンの全魔力量の内、半分ほど注げば確実かと。余ったら、その杖から過剰分を吸い取ればよろしいかと」
ということらしいので、俺は死への冒涜の宝玉部分に魔力を注ぎ始めた。
・・・。
(というか、俺の総魔力量の半分も必要って、どれだけの魔力を必要とするんだよ・・・)
いや、そういえばあの教皇、確か何年も祈りと称して、様々な人から魔力を搾取し続けたんだっけか?それほど魔力が必要な魔道具、ということか。
・・・さて、これくらいかな。一応、レンカに聞いてみるか。
「これくらいだと思うんだが、どうだ?足りると思うか?」
「ん~・・・。一、二回であれば余裕で足りるかと」
「分かった」
(確か後は、杖をかざして、蘇らせたい死者の軍勢をイメージ、と)
すると、杖の宝玉部分が妖しく光り始める。
「「「!!!???」」」
そして、ここにいるほとんどの者が驚いた。
なにせ、いきなり地面から手が伸び始めたと思ったら、頭が見え、全身が露出したのだ。
(ホラー映画とかでよく見るゾンビみたいだな)
この軍勢、俺達に敵意を向けてはきていないみたいだな。死者によって、武器は様々だな。剣、槍、大槌等々、個性が見られる。
(この軍勢が、本当に俺の言う事を聞くのだろうか?)
試しに色んな命令を下してみるか。
「俺に向けて敬礼しろ」
すると死者の軍勢は、俺に向けて敬礼をした。
・・・どうやらきちんと命令を聞いたみたいだ。
よし。この調子でどんどん命令してみるか。
「右手を挙げろ」
「左手を挙げて、右手を下ろせ」
「左手を下ろし、左足だけで立ち続けろ」
「両足で立ち、その場で一回転しろ」
様々な命令を下してみたところ、どの命令も素直に聞いてくれた。
(本当にレンカから聞いていた通りだな)
さっきから簡単なことしかやらせていないが、これでこの魔道具の効果は分かったはず。それに、
「・・・なるほど。本当に死者を蘇らせることが出来るのですね」
「それに、様々な命令を聞く、と。これはかなり危険かと」
「確かに危険だな」
どんな命令も聞くという事は、俺が殺人行為を命令すれば、この死者の軍勢は躊躇なく殺人を実行するだろう。
(それにこの感覚、人数もかなり呼ぶことが出来そうだ)
俺が考えていると、
「それでアヤト、大丈夫、ですか?」
「?大丈夫、とは?」
「え?だって、その魔道具を何度も使うと、心が憎悪に染まる、と。なので大丈夫かなと」
「・・・いや、特に変化はないと思うぞ?」
さっきの説明では、心が憎悪に染まるとか言っていたが、今の俺は憎悪に染まっていないと思う。やはりレンカの説明通り、何度も使用しないと心が憎悪に染まらないのだろうか。俺はまだ一回しか使用していないから大丈夫、ということなのだろう。
(そういえば、命令は回数に含まれるのだろうか?)
含まれるとしたら、俺はこの杖を複数回使用したことになる。ということは、俺の心が憎悪に染まる可能性も・・・、
(ないな)
憎悪というより不気味、に近いかな。
理由としては、やはり目の前の光景だ。
(死者の軍勢がこうして俺の目の前にいることが不気味なんだよな)
地球では、ゾンビとか幽霊とか、そういったオカルト系統はゲームの中の話だけで現実だと絶対に見られないと思っていた存在が、今も俺の命令一つで動いているのだ。慣れれば問題ないのかもしれないが、今はまだ不気味なのだ。
「そう、ですか。それならよかったです」
「もしアルジンが憎悪に染まったらと思うと・・・恐ろしいです」
レンカがそう言うと、俺とレンカ以外の全員が揃えて首を上下に振る。
「おいおい、俺が恐ろしいとか、そんな訳ないだろう?」
「「「そんなことない」」」
何故か全員にツッコミを入れられてしまった。何故?
「アヤトのあの行動が無差別に実行されたら、私達はおしまいですよ?」
「アルジンが無差別殺人したら、この国は終わり、最悪、この世界の終わりですね」
「本当、あの時アヤト殿を止められてよかったと心底思いましたよ」
「あの時のアヤトさん、本当に怖かったですからね」
・・・どうやら、先日の話し合いの時の俺が相当怖かったらしい。なんか申し訳ないな。これ以上俺の話をされるのは恥ずかしいので、無理矢理にでも話題を変えるとしよう。
「とにかくこれが、俺達があのブラグを襲った理由だ。分かったか?」
「・・・確かに、君達の話は理解した」
グードは重々しく返事をする。
「だが、聞きたいことがあるのだが、聞いてもいいかな?」
「答えられる範囲でなら答えるぞ」
「なら聞かせてもらうが、」
そう言うと、グードはレンカを見る。レンカの頬に生クリ―ムでもついているのだろうか?・・・そんなわけないか。
「どうして君は、あの魔道具の効果を知っていたのかね?それとも、あの魔道具はレンカ殿、あなたが作ったのか?」
このグードの言葉に、空気が重くなる。
そして、重々しい空気の中、レンカは口を開く。
「私に、このような魔道具を作る技術はありません。この魔道具を作ったのは、私を作った創造主です」
「創造主、ですか?」
グードは、どういう意味だ?と言わんばかりの視線を俺に向けてきた。
「実はな・・・、」
俺は、レンカが人間ではなく魔道具である事。
レンカの作成者と死への冒涜の作成者は同一人物である事。
その作成者は俺の敵で、この国の害にしかならない魔道具を作ったと判断した俺が、魔道具破壊に向けて、この国にやってきたこと。
以上の事柄を伝えた。
(流石に作成者、ヌル・デベロッパーの事は言えないな)
あの強さといい無魔法の件といい、おいそれと言える内容ではないから黙っておこう。
「・・・本当、聞けば聞くほど、新たな情報が舞い込んでくるな」
「まさか、レンカさんが人ではなく魔道具だったとは・・・。お、驚きました」
俺はこのシーナリの言葉に眉を細める。
「人じゃなかったら何かまずいのか?」
俺のこの言葉に、
「い、い、いえ!?そんなことないですよ!!!??ただ、魔道具なのにとても人間らしい振る舞いだったので驚いただけですよ!?勘違いさせてしまったのならすみません」
「・・・そうか。俺も強く言い過ぎて悪かった」
俺の勘違いっぽいし、ここは素直に謝罪すべきだろう。
(それにしても俺、レンカのことを悪く言われ、本気になっていたな)
いつの間にか俺は、レンカの事を大切な家族のように思っていた、ということか。
「アルジン・・・」
「アヤトったら・・・、」
そんな目で見ないで欲しい。は、恥ずかしいじゃないか!?
「ごほん」
ここでグードがやや大きめの咳払いをした。ここで話題を変更するのだろうか。
「それで、レンカ殿と、その死への冒涜、の作成者についてお聞きしてもよろしいのでしょうか?」
「・・・俺も詳しくは知らんぞ?それに、話せないこともある」
「・・・そう、ですか。なら、これ以上は聞きますまい」
よかった。これ以上詮索されなくて。
「その気遣い、感謝するよ」
「それで、君達の処遇なのだが・・・、」
何故かグードは頭を悩ませていた。
「君達の行動によって、確かに多くの者達が救われたと思っている。だが・・・、」
ああ。もしかしなくても、あの教皇を襲ったのがまずかったのか。まぁ、人ひとり襲った上に、襲った奴がこの国の偉い人だからな。無罪放免、というわけにはいかないのだろう。
「それじゃあこういうのはどうだ?」
俺はここで一つ、提案してみる。
「確かこの騒動で教会がボロボロになっただろう?それをお前監修の元、俺が修理して、それで無罪放免、でどうだろうか?」
「・・・。・・・・・・。・・・・・・・・・」
グードは長考している様子。
(あいつ、腐っても教皇だから、早朝の掃除程度の罰じゃあ駄目、ということかもな)
となると、もっと重い罪を自身に課す必要がありそうだな。
そう考えていると、
「きっと大丈夫ですよ、アヤト」
「!?」
どうやらリーフには、今俺が考えていることが分かるようだ。俺、そんなに分かりやすく顔に出ていたのか。
「・・・まぁ、それならいいでしょう」
「え、いいの??」
俺はてっきり断られるものかと思っていたのだが、どうして了承したんだ?
(自分で言い出しておいてなんだが、本当にいいのか?)
「ブラグ元教皇が生粋の善人なら、アヤト殿の提案に異を唱えていたのですが・・・、」
「そうじゃなかった、と?」
俺の言葉に、グードは無言で頷く。
「ブラグ元教皇は日夜、自宅に女性を招き入れ、行為に耽っていたのです。おなじ聖職者としてあるまじき失態ですよ、本当」
「とんだ糞野郎だな」
そういえばクロミル達から似たような話を聞いた気がするな。俺はレンカの方を見ると、無言で頷いた。
(ということはやはり・・・、)
クロミル達が言っていたのは、目の前のグードが言っている件と同じ件、というわけか。
「なので、アヤト殿をどのように扱えばいいのか困っているのです」
「多くの女性を救った英雄か、国にとって最重要人物を倒した凶悪犯か、というところですね?」
「ええ」
リーフの言葉にグードは頷く。
「一部の者からは、アヤト殿を殺せ、凶悪犯罪者をこの地に留まらせるわけにはいかない!と、強く言われてしまいましてね」
「そうか」
まぁ、分からなくはない。
何せ俺は、この国の最重要人物を倒した男だからな。
だが、
「もし俺を凶悪犯として認定するのなら認定すればいい。が、それで俺を殺そうとするなら全力で抵抗するぞ?それに、」
俺はリーフやレンカを見てから、再度グードに言う。
「俺の大切な人達に手を出したら、一切容赦なんてしないからな?」
「そう、ですよね」
グードは俺と目を合わせた後、目を瞑る。
「失礼を承知ですが、先に謝っておきます。申し訳ありません」
「?一体何の・・・!?」
瞬間、空気が激変する。例えるなら、緩やかな下流から、激動し続ける上流、といったところだろうか。
(一体何のつもりだ?)
突如、グードが胸に手を入れたかと思ったら武器を取り出し、俺に向けて攻撃してきたのだ。
「!?一体何の・・・!?」
俺はリーフの言葉を遮る。
(この程度、リーフが出るまでもないな)
俺は一瞬で、魔力で腕を形成し、まずグードの腕を止める。そして、腕の形状を鋭利な刃物状に変形させ、グードの首に当てる。
「・・・で、お前は一体、何がしたいんだ?」
「・・・お見事です。流石はアヤト殿。私の不意打ちに対し、容易に対応出来るとは」
ここでグードは、俺に向けていた武器をしまう。
「再度謝罪をさせてください。さきほどはアヤト殿に武器を向けてしまい、申し訳ありません」
「ただ単に気が狂った、とかではなさそうだな?何か意図があるんだろう?」
「・・・失礼ながら、アヤト殿の力を見させてもらいました」
・・・なんか少し上から目線のような気がする。もしかしたら俺の勘違いかも知れないが。
「それで、力を試した結果はどうだったんだ?」
「・・・想像以上でした。私、こう見えてもかなり鍛錬していて腕に多少自信があったのですが・・・、」
「まぁ、あれくらいならなんともないかな」
あのくらいの攻撃、メイキンジャー・ヌルやデベロッパー・ヌルの攻撃に比べたら止まって見えたな。本人の目の前で言うと傷つくから言わないけど。
「そう、ですか・・・」
グードは少し落ち込んでいたが、少ししたら顔を再びあげる。
「もし仮に、アヤト殿を凶悪な殺人犯として認定し、罪に問おうとした場合、アヤト殿を拘束する必要があるのですが、アヤト殿が素直に応じるとは思えません」
「まぁ、理不尽な対応だと判断し、力の限り抗うつもりだ」
「そうなると、アヤト殿を武力で黙らせる必要があるのですが、現在我が国に、アヤト殿以上に強い方はいません。なので、集団で抑える必要があるのですが・・・、」
「当然、私達がただ黙って見ているだけ、なんてことはしません。アヤトに協力するつもりです」
「アルジンの身を守るためにこの力、惜しみなく使うつもりです」
なんとも頼もしい仲間なこと。
「まぁ、アヤト殿の仲間も参戦するとなると、この国総出で対抗しても無理でしょうね。本当、アヤト殿も強いですが、アヤト殿の仲間も強いですからね」
グードは大きめのため息を吐く。
「本当、国の上層部はアヤト殿をどのように捕まえようとしているのやら、」
「はぁ」
俺に愚痴られても困るのだが?
(それにしても、この国の御偉いさんは、俺のことを敵視しているのね)
まぁ、俺自体、褒められたことをしたと思っていないし。今思えばもっといいやり方があったかもしれないからな。それにしたって、俺は色々な人から嫌われるよな。ボッチの宿命なのか?
「それに対して、多くの市民から、このような声が挙げられています」
「?」
「あの教皇をぶっ倒してくれてありがとう。直接顔を見てお礼が言いたい等々、さまぁまなお礼の言葉が多く募られています」
「・・・そう、か」
なんだろう。俺の行動そのものは褒められたものじゃないと自覚していた。それなのに、俺の行動一つで褒められると、ちょっと嬉しい自分がいるな。・・・もしかして、俺って結構単純?
「「・・・」」
・・・なんか近くから、生暖かい視線を感じる。
(リーフ、レンカ!?頼むからそんな目で俺を見ないでくれ!?)
内心叫びつつ、俺はグードの言葉を聞く。
「だから、上層部の説得に関しては、私にお任せください。絶対、私がこの国でアヤト殿に戦いを挑むような聖職者がいないよう努めます」
「頼むぞ。もし俺に襲い掛かるような馬鹿がいても、そいつの生は失ったものと考えてくれ」
正当防衛で自身の身を護らせてもらおう。うん、だから俺は悪くない。
「・・・アヤト殿に手を出せば命はないと、口を酸っぱくして言わせてもらうよ」
何故かグードは顔を引きつらせて言ってきた。
う~ん、何故だろう?
(あ、そうだ)
ついでにあいつらのことも話させてもらうか。
「確認なんだが、元教皇襲撃の件は教会の壁修繕、でいいか?」
「・・・本当はよくないのかもしれないが、その方向で話を進めるよ。アヤト殿の魔法なら壁の修繕くらい出来るだろう」
まぁ自分から言い出したことだし、実績はないがきっと出来るだろう。多分、だけどな。
「さて、それじゃあ俺から一つ、お願いをしていいか?」
「・・・何かね?まさか、人殺しの依頼かね?いくらアヤト殿でも・・・、」
「いや、流石の俺も、そんなお願いなんてださねぇよ。なぁ?」
俺は肯定してもらいたくて、リーフとレンカに話を振ってみた。
「「・・・」」
「・・・ねぇ?どうして返事してくれないの?」
返事くれないと、まるで俺が日夜人殺ししているような凶悪殺人犯みたいじゃないか!?
「アヤト、たまに非人道的なことを平気でやっていましたからね。この場で言うのもはばかられるようなことを・・・、」
「アルジン、私にはグード殿の言葉に反論なんて出来ませんよ。なにせアルジンは先日、容赦なく四肢を切断していましたからね。あの時は驚きましたよ」
「・・・あの時の俺はどうかしていたんだ」
だから忘れて欲しい。
「と、話が逸れてしまった。話を戻すぞ」
俺のこの言葉で、さきほどまで軽くなっていた空気が重くなる。
「人殺しのお願いではないとすると、一体何のお願いなのかね?」
「お願いというのは、あいつらの待遇を改善してほしいんだ」
「・・・それであいつら、とは?言葉から察するにアヤト殿自身、というわけではなさそうだが?」
「ああ。あいつらというのは、先日助けてもらったジャルベを含めたキメルム達のことだ」
せっかくの話し合いの場だ。ついでにあいつらのこと、何とか出来るか相談してみるか。
次回予告
『5-2-47(第434話) キメルムの処遇に関する話し合い~テイク2~』
ブラグ教皇を襲撃した理由、死への冒涜、という魔道具に関する説明、ブラグ教皇を襲撃事に関する処遇等、様々なことを話していく。
そして次に彩人は、先日助けてもらったキメルム達の処遇について話題を振る。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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