5-2-42(第429話) 従者の謝罪、主の困惑
醜い豚共との話の後、俺は数日、ベッドで安静にしていた。
そんな数日後のある夜である。
「zzz・・・、」
俺は寝ていた。
(・・・)
安静に、今までの疲れを癒し、万全な状態にする為に。
「・・・」
そしてその静養は、ある者が破く。
その者は、俺のベッドの上に跨り、布団をめくり、俺と同じ布団の中に入っていく。
「・・・」
・・・なんか、急に寒くなったな。と思ったら、なんか違和感が・・・?なんか、温かい・・・?
(ん?)
なんか、見知った顔があるような、ないよう、な?
「今、回復させますね」
なんか、慣れ親しんだ声が聞こえる。それと同時に、なんか体がどんどん傷が治っていくな。この感覚、白魔法で回復しているのか?だとしたら一体誰が・・・?
(この感覚、モミジか?でも確かモミジは、白魔法に適性がなかったはず。となると、白魔法に適性があるクロミルか?)
俺は目をゆっくり開ける。すると、俺の予想通り、クロミルがいた。
いたのだが、クロミルがいた場所に、俺は驚かされた。
何せクロミルは、今俺が使用しているベッドにいるのだ。
(俺、クロミルと同じベッドで寝ていたのか!?)
俺が寝始めた時、確か・・・あれ?俺、ベッドで寝たっけ?
そういえば俺、リーフとレンカに肩を貸してもらって、あの聖域から出たんだっけか。その後は・・・覚えていないな。となると、ベッドに寝ているのは、リーフかレンカのおかげか。これはあの二人にお礼を言わないとな。
(・・・あれ?となるとクロミルは?)
どうしてここにいるんだ?
もしかして、俺の怪我の完治のために、わざわざリーフとレンカが呼んでくれたのか。このことにもお礼を言わないとな。
「クロミル、大丈夫か?」
「!!??ご、ご、ご主人様!!!???起きていらっしゃったのでしゅかぁ!!!???」
どうやら、俺が声をかけたことに相当驚いているらしく、現在使用している毛布がはがされた。さっきの言葉は俺宛てに言ったわけじゃないのか?もしかして独り言、だったのか?だとしたら、今まで寝ていると思っていた人間がいきなり話しかけてくる。確かに驚くな。
「ああ。クロミルの白魔法のおかげで助かったよ。元気になった」
「この度は誠に、誠に!誠に!!申し訳ありませんでした!!!」
俺がクロミルに感謝の言葉を伝えると、何故かクロミルは、それはもう綺麗で綺麗なジャパニーズ土下座だった。クロミル、いつの間にあんな技術を身につけたんだ?
というか、
「どうしてクロミルが俺に頭を下げているんだ?」
分からん。理由が全く分からん。
「私はご主人様の従者でありながら、ご主人様に刃をむけてしまいました。それは、従者として最もしてはならない、裏切り行為をしてしまったのです」
「・・・あぁ~」
なるほど。クロミルは一時的とはいえ、俺に刃を向けたことに対して強い後悔の念を抱いているのか。
「そんなの、別に気にしなくていいぞ」
結果として、クロミルを助けることが出来たし、今もこうして全員生きているし、無問題だ。
「俺達もクロミルも、全員生き残っていんだ。それに、クロミルだってわざと俺達と敵対していたわけじゃないから、別に気にしなくていいぞ?」
その意図を伝えたのだが、
「それでは駄目なのです!みなさま、ご主人様のようなことをおっしゃって下さったのですが、他でもない、私自身が許さないのです!」
(えぇ~・・・)
みんな言っているならそれでいいじゃないか。だが、それだとクロミル自身が許さない、と。非常に面倒くさい性格だ。
「なら、お前自身はどうしたいんだ?」
こういう場合、本人がどうしたいかによって行動が変わる、と思う。多分、だけど。実体験、ないからな。俺、人の悩みとか相談とか、した経験もされた経験もないからな。
「私は・・・、」
「・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
お互い、無言の時間が続く。
おそらく今、クロミルは考えているのだろう。
自分がどうしたいのかを。なら俺は、その考えがまとめ終わるまで無言で待つとするか。
「・・・決まりました」
どうやら何か決めたらしい。一体何を決めたのだろうか。
「ご主人様以外の方には、私の料理をご馳走します」
「・・・そうか」
まぁ、クロミルが決めたのであればそれでいいか。俺が口を挟むことでもないだろう。
「そして、最も迷惑をかけてしまったご主人様に、この私を差し上げます」
「・・・そうか」
俺はどんな反応をすればいいのか分からず、ぶっきらぼうな返事をしてしまった。
だってしかたがないじゃないか。いきなり自分を差し上げる、なんて言われてどのような返しをすればいいのか分からないんだもの。
奇声をあげて大喜びすればいいのか?
それとも、露骨にがっかりすればいいのか?
分からん。
「さしあたって、ご主人様にはまず、私の使い心地を・・・、」
「ちょっと待て。一体何をするつもりだ?
これから何をするのかは分からんが、クロミルは俺の上に跨り、何故か服を脱ぎ始める。
「何って、先ほども言ったではありませんか?私の使い心地を・・・、」
「それと脱衣行為の因果関係について、詳細な説明を求めたい」
いや、もうなんとなく察しがついていた。と同時に、自分の推測が間違っていて欲しいという感情も存在していた。
「私の体を、ご主人様に味見してもらうためです」
これってあれ・・・だよな?
俺がクロミルを食べる。
つまり・・・、
(クロミルと肉体関係を持て、と?)
確かに、クロミルの体はとても魅力的だ。抱きたいか抱きたくないかの二択でいうなら、抱きたい、だ。
だが、俺は既にクリム、イブ、リーフの三人と肉体関係を持っている。俺はこれ以上、どんな女性とも肉体関係を持つような人間になりたくないのだ。・・・まぁ、クリムやイブみたいな少女と肉体関係を持っている変態であることに変わりないか。・・・本当、自分で思っておいて自分が嫌になる。
て、そうじゃなくて!?
「クロミル、俺は、もっと自分を大切にしてほしいんだ」
「・・・私では、ご不満ですか?」
ここで嘘をつくのも嫌なので、正直に伝えよう。
「不満なんて微塵もない。ないが、俺は・・・、」
「であれば、ご主人様は私に襲われた。そういうことにしてください」
「・・・え?」
「それなら、ご主人様は何も悪くありません。ただ私が暴走しただけ。そういうことになります。これならどうです?」
「・・・」
な、なんとも魅力的な提案なんだ!
クロミルの提案なら、確かに俺は悪くないな。
・・・とはいえ、かなりグレーでゲスイ提案だな。魅力を感じているゲスイ自分もいるが。
「沈黙は肯定と捉えさせていただきます。それに、」
「!?」
俺はクロミルの視線の先に何を見ているのか気付き、慌てて隠す。だが、既にておくれなことに気付く。
「ここは正直ですよ?」
あらやだわ♪
・・・若干おねぇが入ってしまった。自分でもきもいと思っているので、気持ち悪いとか思わないでほしい。
「さらに言えば、ご主人様の今の状態では、今の私に敵うことなどあり得ません」
・・・俺は、クロミルの掌の上で転がされた、というわけか。
「覚悟してください、ご主人様」
・・・分かった。ここまで来たからには覚悟を決めよう。
そう思い、俺は真剣にクロミルと向き合った。
向き合った結果、とてもよかった、とだけ報告しておこう。
え?何がとてもよかったかって?
そんなことは聞かずに察してほしい。
とにかく、とてもよかったものはとてもよかったのである。
次回予告
『5-2-43(第430話) イブ、リーフ、クリムとの関係、クロミルとの関係』
クロミルと濃密な一夜を過ごした翌朝、全裸で目を覚ました彩人は、イブ、リーフ、クリムが近づいていることに気付く。
全裸は流石に不味いと考えた結果、ある手段で現実逃避することにした。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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