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色を司りし者  作者: 彩 豊
第ニ章 鉛白な国の中にある魔道具と漆黒の意志
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5-2-40(第427話) 彩人の逆鱗

 俺はまず、黒い者の四肢・・・いや、片腕切り落としたから三肢か。それと胴をしっかり固定する。

「なら、思う存分やらせもらうぞ」

 俺は魔銀製の剣で、黒い者の腕と足を切り落とした。

「!?」

 黒い者は痛みをこらえようと必死みたいだ。

 だが、

(まだまだだ!)

 俺は白魔法で、黒い者の四肢を回復させる。すると、黒い者の四肢が再生し、切り落とされる前の状態に戻った。

「「「???」」」

「まさか、アヤト・・・、」

「アルジン・・・、」

 醜い豚共が疑問符を浮かべていることに対し、リーフとレンカは、俺がこれからやることを分かったのか、若干顔色が悪くなっている。

(悪いな、二人とも)

 出来ればこういうことはしたくないのだが、仕方がないのだ。

 だって、俺の大事な人を精神的に傷つけたのだ。その報いを受けてもらわなければ。

 俺は魔銀製の剣で、黒い者の四肢を切断する。

「!?」

 そして、白魔法で四肢を再生させる。

「!!??」

 驚きしかないだろう。

 何せ、さっき切り落とされたはずの腕と足が二度も生えてきたのだから。

 一度だけなら、まだ気のせい、と勘違いすることが出来るかもしれない。

 だが、二度も激痛が走ったのならば、これは現実だと、嫌でも知覚するだろう。

「痛いか?」

「・・・」

 黒い者は、激痛に耐えているようだが、決して痛い、辛いなんて言葉は口に出さなかった。

(強情だな)

 俺は一切容赦しない。

 情けを見せた結果、リーフが辱めをくらうところだったのだ。俺が間一髪で防いだからよかったもの、このままだったら・・・。

 俺は何度も四肢を切り落とし、再生させた。

「!?・・・!!??・・・!!!???」

 黒い者は、だんだんと生気を失っていく。

(まさかあいつ、失神しているのか?)

 俺は黒い者を思いっきりビンタする。そうしたことで、黒い者が驚いた表情でこちらを向く。

「なにこれくらいで失神しているんだ?この程度で死んだ、なんて思うなよ?」

 俺は再度、【毒霧】を発動し、黒い者に吸わせる。今回の毒は、五感、特に痛覚が敏感になるような毒を吸わせた。

 そして俺は、引き続き黒い者の四肢を切断し、再生させる。

 その肯定を何回、何十回も繰り返す。

 ちなみに、自害しないよう対策済みである。

「・・・や、やめ」

「聞こえないなぁ」

 俺は傷口に魔銀製の剣を突き立てる。

「あぁ!!??」

「どうした?俺に殺意を向けたんだ?これくらいされても、文句はないだろう?」

 黒い者はとうとう悲鳴を挙げ始めた。

 だが、まだ足りないな。

「こいつ、痛がるふりをして、俺を油断させようとしているぞ?お前もそう思うよなぁ?」

 俺は別の黒い者に話しかける。

「!!??」

 別の黒い者は驚き、首を横に振ろうとしていた。あ。首も動かないのか。口呼吸くらいしか出来ないもの。だが、僅かに首が左右に揺れている気がする。

「違うのか?まさか、これくらいの痛みで根をあげる、なんて柔な鍛え方はしないよなぁ?」

 俺は煽るように声を発する。

「だが、これで吐いてくれないとなると、次の手を使うしないなぁ」

 俺がこう言うと、散々四肢を切断、再生させていた黒い者が顔を青くしながら、

「・・・これ以上のことがある、のか?」

 なんか聞いてきたので、

「ああ。まだまだあるぞ」

 そう言ってやったら、なんか泡を吹き始めて意識を手放そうとしたので、俺は再度ビンタしてやった。

「何夢の中に逃避しようとしているんだ?逃がさないぞ?」

 俺の目を見て何を悟ったのか、

「・・・ミンゴ枢機卿が、俺を雇ったんだ」

 貴重な情報を吐いてくれた。

「な!?こやつを殺せ!なんとしてでも!!今すぐに!!!」

 なんか真ん中の醜い豚がわめき始めたので、俺は【空縛】で醜い豚を宙に浮かせつつ拘束する。

「うるさい。今は黙って聞いていろ」

「!?むぐぅー!!??」

 うるさいので口を塞ぐ。呼吸は出来るようにしてやろう。俺の慈悲だ。

「それで、そのミンゴ枢機卿はどいつだ?」

 というと、黒い者は何か動かしたそうにしていた。あ、【毒霧】の毒で体を動かせないのか。

「俺から見て、左から何番目の豚・・・男がそのミンゴ枢機卿、なんだ?」

「左から三番目の男が、俺達を雇ったミンゴ枢機卿だ」

 つまり、さきほどからずっとわめいている真ん中の男が、この黒い者達を雇ったミンゴ枢機卿、ということか。

(まぁ、なんとなくわかっていたことだったけど)

 状況だけである程度推測は出来ていた。ただ俺は、言葉が、大義名分が欲しかっただけだ。

 この目の前の醜く、食用にもなれない豚共を殺すための口実が。

「雇った目的は、俺達を殺すことか?」

 そう聞くと、黒い者は唇を震わせながら、

「は、はひぃ・・・、」

 ビクビクと答えた。

「お前らも同じか?言っておくが、下手な嘘をつくとどうなるか分かるよな?分からないならその身に刻ませるが、どうだ?」

 そう言ってやったら、

「その通りだ」

「俺達はいつも通り、ミンゴ枢機卿から雇われただけなんだ」

「今回もいつも通り、知り合いを脅しの道具とし、暗殺するだけの簡単な仕事だと言われたんだ」

 そんな話がちらほらと聞こえ始めた。そういえば、さきほどまで脅されていたナナはどこに行ったのだろうか。そんなことを考えながら周囲を見渡していたら、リーフが保護していた。

(リーフ、いつの間に・・・、)

 いや、もしかしたら、リーフとレンカが俺のことを心配していた時には、既に七を保護していたのかもしれない。リーフ、ありがとう。

(さて、)

「おい。話を聞くに、お前がこいつらを雇ったそうじゃないか。しかも、俺達を暗殺する目的で!」

 俺は出来るだけ冷静に言ったつもりだったが、語尾が若干強くなってしまった。まぁこれくらい可愛い子供の悪戯だと笑って許してくれるだろう。

「ち、ちが・・・!」

「違うだと?ならこいつらは何だ?本人達曰く、お前に雇われたと言っているが?どうせお前らも加担しているんだろう?さっきまでこのミンゴ枢機卿と嘲笑っていたんだからなぁ?」

 俺がそう言うと、五人の醜い豚共は激しく震えだした。

「おい」

 俺は、我関せず状態となっている醜い豚・・・司会進行をしていた男に話しかける。

「何お前だけ無関係だ、という体でいるんだ?」

「え?」

 何故この醜い豚はそんなに驚いているのだろうか?

「お前のさっきの司会進行、明らかに、こいつらと共謀しているんだろう?同罪だからな?」

「!?わ、私をグアズン枢機卿と知っての発言か!!??この、背教者め!神が貴様に天罰を下すぞ!」

 自らをグアズン枢機卿と名乗った醜い豚の発言をきっかけに、

「そうだ、そうだ!」

「我々を今すぐ解放すれば、神に下される天罰もきっと軽くなることだろう!」

他の醜い豚共も、きゃんきゃん喚き始めた。

(グアズン、枢機卿?)

 ・・・誰?俺、知らないのだが?というか、この話し合いに参加するのは司祭じゃなかったか?なんで枢機卿の奴が参加しているんだ?というか、枢機卿って何?・・・もしかして、司祭より上の階級を指しているのだろうか?分からんけど、まぁどうでもいいか。

(枢機卿の件もそうだが、同じくらい気になることがあるんだよな)

 そのことを聞いてみるか。

「天罰ってなんだよ?」

「「「・・・え???」」」

 えって、どういうことだ?

「天罰って言うのは、具体的になんなんだよ?俺に雷でも落ちてくるっていうのか?それとも、俺にだけ、火や水が襲い掛かってくるのか?」

 この言葉に対して、

「そうだ、そうだ?」

「神は全てを操る全能なんだぞ!?」

「貴様も神の雷に打たれて死ね!神の炎に焼かれて死ね!!」

 激しい返答が来た。

 神の雷に神の炎、か。

「それがどうかしたのか?」

「「「・・・え?」」」

 えって何?

「雷なら俺の緑魔法で土の壁を形成してかき消してやる。炎なら、俺の青魔法で水を出して消火してやるよ。だから、神の雷とか神の炎なんて怖くねぇよ」

「!?何という罰当たりを・・・!!??」

 俺は未だ何かほざいている・・・ミンゴ枢機卿、だったか?そいつに剣を向ける。

「な!!??」

「そもそも俺自身、天罰をくらってもおかしくないくらい屑な人間だと思っている。けどな、子供をたてにして脅し、女を裸にひん剥き、性的に辱める方よりましだと思っているよ。何せ俺は、理不尽にいじめられ続けただけだからな」

 ・・・なんか自己嫌悪しそうだ。だが、今はそんなことをしている場合ではない。

「さて、お前らみたいに子供を脅しの道具として使う屑も、俺を殺そうとしてきたお前らも殺すとするか」

 俺は魔力を鋭利な刃物状に形状を変更させ、醜い豚共と黒い者達それぞれの首に当てる。

「ま、まて!?」

「あ?」

 なんだ、こいつ?まだ俺に何か用なのか?

「私達を殺せば、神の裁きが貴様ら蛮族に下るぞ!?一生、命を狙われることになるぞ!!??それでもいいのか!!!???」

 俺は一体誰から命を狙われるというのだろうか。まぁそんな疑問はひとまずおいておくとするか。

「望むところだ。神の裁きだろうとなんだろうと、俺の大切な物を、家族を奪おうというなら、何度でも返り討ちにして殺してやるよ」

 俺の言葉で、豚共の顔色が白くなり始める。黒い者達も、黒とは対照的に、顔色が白くなる。

「じゃあな屑共。せめてもの情けだ。同じ屑である俺が、お前ら屑を殺してやるよ」

 俺がなんのためらいもなく、魔銀製の剣を振り下ろそうとすると、外が少し騒がしくなり始め、やがて聖域の扉が乱暴に開かれた。

 俺は扉の開閉なんてものを気にせず、剣を振り下ろし始めた直後、

「待ってください!」

 大きな声が俺の耳の中に入り、俺と豚共の間に何者かが割って入ってきた。

「誰だ?」

 俺は質問しながら、声の主の顔を見る。

「私です、シーナリです!」

 その者は、俺が先日会った女だった。

次回予告

『5-2-41(第428話) 周囲の言葉とやめる勇気』

 リーフの全裸を要求したミンゴ枢機卿達と、雇われた者達を徹底的に痛めつけ、殺しに手をつけようとした時、シーナリが彩人を止めようと動く。その動きに連動し、リーフとレンカだけでなく、ある者も彩人の殺人行為を止めようと言葉をかけていく。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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