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色を司りし者  作者: 彩 豊
第ニ章 鉛白な国の中にある魔道具と漆黒の意志
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5-2-39(第426話) 話し合いにならない近い話し合い

 レンカと話ながら歩いていたら、とある扉の前でレンカが足を止めた。

「ここが聖域に通じる扉です」

 そこには、兵士が扉の両隣に立っていた。まるで門番だな。

「・・・貴様らが、ブラグ教皇とことを構えた者共だな?」

 ・・・なんか、凄い睨まれているのだが?俺、何かしたのか?

 ・・・したわ。この目の前の兵士の言葉通り、あのブラグ教皇とことを構えたからか。嫌っているからといって、ここまで嫌悪感をむき出しにしなくてもよくない?これから話し合うんだぞ?

「・・・人数を見るに、全員揃っていないようだな。この聖域では、全員まとめて入ることが規則となっている。なので貴様らは、全員揃うまでここで待ちなさい」

「・・・分かった」

 全員揃って入ることを規則としている、ねぇ。何その規則、おかしくない?正式な話し合いだから、この国独自の作法なのか?それにしたって、やはり態度が気に入らない。ふと、圧迫面接ってこんな感じなのかな~と考えてしまった。

(だがまぁ、リーフが来るまで待っているか)

 俺とレンカだけではちょっと怖いからな。今の俺、病み上りだからどれくらい体を動かすことが出来るのか、まだ完全に検証出来ていないんだよな。体感、まだ本調子じゃないと思う。

 しばし、黙り合っている時間が続き、遠くから足音が聞こえてきた。

「お待たせしました」

 この声、リーフだな。そう思って振り返ると、予測通り、リーフだった。

「これで全員のようだな。ではこれから、聖域に通じる扉を開ける。早急に入るように」

 ・・・なんでこいつ、こんなに偉そうなのだろうか?本当、謎だな。

 この後、俺達は兵士の言葉に従い、開けてもらった扉を通り、聖域と呼ばれる部屋の中に入る。

(・・・白いな)

 この部屋の第一印象は、白。とにかく白い。椅子や長机はあるのだが、全部白に統一されていた。

(汚れ、目立ちそうだな)

 そんなことを考えてしまった。手入れ、大変そうだ。

「・・・どうやら、私達が座る席はこちらのようです」

 リーフはある椅子を指差す。こちら側には、椅子が三つ並んでいて、反対側には、椅子が五つ並んでいる。つまり、反対側には司祭達が座るということだ。

「私が真ん中に座りますので、アヤトとレンカちゃんで、私の両隣に座ってください」

「分かりました」

「おう」

 俺はリーフの指示に従い、リーフは真ん中、俺はリーフの左隣、レンカはリーフの右隣に着席した。俺がリーフの左隣に着席した理由は特にない。たんなる気まぐれだ。

 しばらく待っていると、何やら物音が少し聞こえてきた。

(来たか)

 俺は呼吸を整える。

「「「・・・」」」

 扉が開くと、よく分からない六人の男が入室してきた。

(あれ?話し合いは五人だったはずじゃあ・・・?)

 一人、多くないか?そんなことを考えていると、俺達の前に五人着席し、もう一人は俺達と話し相手の間に立った。

「それではこれからここ、聖域で話し合いを執り行います」

(あ、司会進行の人か)

 それなら六人なのも納得だな。

「まずは結論として、そちら側は私達に損害賠償として、五十億円支払っていただきます」

「・・・は?」

 この司会進行はいきなり何を言っているんだ?

 話を始めてすらいないのに、いきなり結論から始めやがって。しかも、損害賠償として五十億円だと!?いくらなんでも高過ぎだろう!?

「その五十億という数字は、どういった経緯で導き出したのか、詳細を聞いても?」

 俺が驚いているなか、リーフが冷静に聞き始めた。

「それを貴様ら蛮族に説明したところで理解出来まい。貴様らは大人しく五十億円支払えばいいのだ!」

 そう言い、目の前の五人の男共はニタニタと気持ち悪い笑みを向けてくる。司会進行の男も、目の前の五人同様、気持ち悪い笑みを向けてくるだけ。

(こいつら、最初からこのつもりか・・・!)

 俺達から金をあるだけ毟り取る気だ。

(出来れば最悪の事態にならないといいが・・・、)

 俺は知っている。この後、こいつらがどんなことを言うのか。何せ、そういった系統の動画を、暇な空き時間に見ていたのだから。

「まさか、出来ないのか?出来ないのであれば仕方がない。それなら代わりに・・・、」

 目の前の男は、リーフを指差す。

「その女を我ら白の国に差し出せ。もちろん、その女だけでなく、貴様の近くにいた女もだ」

 やはりか。

 こういう下水道みたいなゲスイ男が思う事なんてある程度推測出来る。

 弱みを握ったら、それをたてに脅し、ひたすら相手から搾取する。搾取する対象はなんでもいい。それこそ、お金、女、名声等だ。また、特定の人物の名声をどん底まで落とすことだってする。

 そして目の前の男共は、目の前の美女、リーフを我がものにしようとしている。リーフだけじゃない。クリムやイブも、俺から搾取しようとしている。

(これが神に仕える信徒なのか?性欲に溺れた醜い豚じゃねぇか!?)

 俺の神官のイメージは、出来るだけ質素に生活し、自分に厳しく、相手に優しいものかと思っていたのだが、目の前の男共は全然そうではなかった。

 目の前の男共は、今も顔から汗を垂れ流し、服のサイズが体に合っていないのか、服がパツパツで今にも破けそうだ。そして、さきほどの発言。

(こいつらの言葉を素直に了承するわけねぇだろ!?)

 俺は席を立ち、反論しようとしたのだが、立つ前にリーフに止められた。

「そもそも、何故私達があなた方に金銭を支払わなくてはならないのですか?その説明が欠落していると思うので、説明をしていただいても?」

 リーフは冷静に言っていた。リーフ、すげぇな。俺だったら絶対怒っているな。

「さきほども言ったであろう?貴様ら蛮族に説明したところで理解出来まい。貴様らは大人しく五十億円支払えばいいのだと」

「・・・話を聞く気は、ないのですか?」

(!?)

 俺はリーフの声を聞き、内心震えあがった。声を聞くだけだと、とても平静を保っているように聞こえるが、俺には分かる。リーフは怒っているのだと。

(無理もないか)

 自身がいやらしい目で見られて喜ぶ人なんてそうそういないだろう。いるとしたら・・・恋人とかカップル、夫婦とかか?後、見られて喜ぶような変態ぐらいか。

 ちなみにリーフはノーマル・・・と、思いたい。ノーマル、だよな?特殊な性癖とかない、よな?

「おっと?下手に手を出さないでくれ給えよ。おい、ここにあれを」

「は」

 真ん中に座っている醜いおっさんが、司会進行に何か言った。すると、司会進行のおっさんが何やら扉を開け、扉の前にいた門番に話しかけ始める。

「これから、ある者を連れて来る。その者を見た時、貴様ら蛮族は非常に驚くだろう。そして、神に背いたことに懺悔し、その身を我々に捧げることだろう」

 ・・・こいつは一体何を言っているんだ?だが、これから誰かを連れて来ることは分かった。一体誰だろうか?

(まさかルリか!!??)

 ・・・いや、ないな。ルリなら食べ物につられて、という可能性はありそうだが、それで懺悔するかと言われたら、多分しないな。というか、連れてこられた者を見て驚く、ということは分かるが、懺悔するって何?そこのところがよく分からん。

 俺が、さきほどのおっさんの発言に対して考えていると、門番が扉を開けて入ってきた。そして、ある小さな者を連れてきた。小さな者は、口にある拘束具、猿轡をされていた。

(・・・あの子、誰?)

 正直、あの子に見覚えなんてないな。少なくともルリではないし、キメルム達にもいなかった気がするな。となるとあの子は一体・・・ん?

(待てよ・・・?)

 あの女の子、どこかで見たような・・・?

「こいつに見覚えあるだろう?こいつは、貴様が訪れた神殿にいた孤児の一人だ。名前は確か・・・、」

「ナナ、でございます」

「そう、ナナがどうなってもいいのか?」

 そうか。この子供、確かシーナリという神官と話していた時に水をだしたあの時の子供か!?どうりで見覚えがないわけだ。

 だが、

(こいつら、正気なのか?)

 大人が子供を脅しの材料にしているなんて。聖職者がこんなことをしていいのかよ!?

「・・・アヤトはあの子、知っているのですか?」

「・・・ああ。だが、あくまで知っているだけだ。親しい間柄じゃない」

 とはいえ、目の前で殺されるのは嫌だな。それに、リーフ達をこいつらに渡したくない。

「・・・どうすれば、その子を解放、してくれるのですか?」

(!?り、リーフ!!??)

 まさかリーフ、あの子を助ける気なのか!?リーフはあの子と初対面のはずなのにどうして!!??

「そうだなぁ~・・・、」

 真ん中の男はニタニタと、リーフを凝視しながら考え始める。

「まずは、その穢れている服を自ら脱ぎ、この場で身を清めてもらおうかな?」

(こいつ・・・!!??)

 間違いねぇ!!リーフの裸を見ようとしていやがる!!!

(許さねぇ・・・!!!)

 この時、俺の何かが切れた。

「そう、ですか・・・、」

 リーフが服に手をかけようとしていたので、俺はその手を止める。

「アヤト・・・?」

「悪いな、リーフ。もう大丈夫だ」

 この場でリーフが裸になり、豚みたいなおっさんに見られるくらいなら・・・!

(確か、魔法は使えないんだっけか)

 けどまぁ、いいや。無理矢理使うか。俺は【毒霧】を発動させようとする。

(!?ちぃ!!)

 なんか魔法を発動させようとすると、何かしらの抵抗を感じる。どこか、俺の魔法を発動させまいと、何者かの妨害を受けているような、変な感覚だ。

(この感覚がもしかしたら、聖域内で魔法を使えない理由なのかもしれないな)

 だが今はそんな考察などどうでもいい。

 今、俺の目の前にいるこの人の皮を被った醜い豚共を黙らせるために、

「その口、閉じろ」

(【毒霧】)

 俺は魔法を発動させようとする。

「は?平民風情、が・・・!?」

 魔法はブラフでもいい。隙を作ってこいつらをぶった切れば・・・、

(ん?)

 なんかあいつら、急に苦しんでいないか?

「貴様、我らに何をしたぁ!!??」

「ミング枢機卿、お気を確かに!!」

「これ・・・まさか毒!!??」

 ・・・もしかして、俺の【毒霧】が発動しているのか?

「【闇】よ!今すぐこいつを殺せ!金ならいくらでも払う!やれ!」

 こいつが言う闇ってなんだ?暗闇のことか?でも暗闇が俺を殺すなんて思えない。だとすれば、何かの隠語か?

(!?)

 何か分からないが、何かが俺の近くに来ているな。だが、まったく見えないな。

 そうか。これが、レンカがさっき言っていた、姿を見えなくする魔道具か。

(だが無駄だ!)

 今俺は明確な殺意を向けられている。なら、文句は言えないはずだ。

 例え、腕や足を切り落とされたとしても。

(姿が見えなくても、敵意や気配である程度の位置は分かるんだよ!)

 俺はアイテムブレスレットから魔銀製の剣を取り出す。

(やはり、魔法は使えなくても魔道具は使えるらしいな)

 俺はある位置に剣を思いっきり振り下ろす。

「!!??」

 するとどこからか、人の腕が落ち、血が滴り始めた。そして、どこからともなく人が現れ、腕を押さえている。現れた人は全身黒い服で身を固めているが、腕の部分は赤く染まっている。この赤は血だな。

「おい。お前、誰だ?」

「!?」

 黒い者はどこからかナイフのような鋭利な刃物を取り出し、俺に無言で襲い掛かってきた。

「!?」

 なので俺は、魔力を腕の形に変形させ、黒い者を捕らえた。

「もう一度言う。お前は誰だ?」

「・・・」

 黒い者は、俺が作った魔力の腕の拘束から逃れようと、必死にもがいている。

「大人しくしろ」

 俺は【毒霧】を発動させ、黒い者に吸わせる。毒は強めの麻痺毒である。この毒なら、相手を行動不能に出来るだろう。案の定、黒い者は動かなくなり、抵抗がなくなった。

「それで、こいつはお前らの差し金か?」

 俺の問いに、

「し、知らない!こんなやつなど知らない!こいつはこの神聖な聖域に侵入してきた不届き者だ!」

「!?」

 この言葉に黒い者が何か反応した、ように見えた。麻痺にさせたので、体が動かないのか。

「つまり・・・、」

 俺は更に殺気を感じたので、数回、思いっきり剣を振り下ろす。

 すると、片腕と片足が落ち、同じような装いをした者達がどこからか現れる。現れた者達は全員、腕か足、どっちか切り落とされていた。まぁ、元凶は間違いなく俺だろう。

 俺はそいつら全員を同様に拘束し、【毒霧】で動けなくする。

(まだいたようだが、無事に拘束出来たな)

 俺は、黒い者達が完全に動かなくなったことを確認してから、醜い豚共に視線を向ける。さっきは言えなかったから、今度はきちんと言わせてもらうとしよう。

「つまり、こいつらをどうしようと構わない。こういうことでいいんだな?」

 俺の言葉に、

「も、もちろんだ。むしろ、この暗殺者を捕縛してくれたこと、感謝する」

(・・・)

 言質を取れたので、俺は黒い者に白魔法をかけ、口だけ動かせるようにした。

「それでお前は、誰に雇われたんだ?」

「・・・早く殺せ」

 黒い者はそう言うだけだった。

「そうか」

 なら、殺させてもらおう。

(後悔、させてやるよ)

 俺に殺意を向け、殺そうとしたこと。

 そして、俺の大事なリーフの裸を見ようとしたことを。

次回予告

『5-2-40(第427話) 彩人の逆鱗』

 白の国の者が、白の国の孤児、ナナを解放する条件として、リーフの全裸を要求する。その要求に彩人は、怒りを露呈し、本来使えないはずの魔法を使って、徹底的に痛めつける。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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