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色を司りし者  作者: 彩 豊
第ニ章 鉛白な国の中にある魔道具と漆黒の意志
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5-2-33(第420話) ブラグ教皇との戦い~VSクロミル&ルリその4~

「!?どうしてお前らがここに・・・!?」

 俺は、目の前で【魔力障壁】を展開している者、ジャルベと、

「心配だったからだ。リーフの姉御も、イブの姉御も、クリムの姉御も、あの街を出ていく時、とても険しい顔をしていた。だから、俺達にも何か出来ないかと急いできたわけだが、どうにか間に合ったみたいだ」

「はい。このまま大親分を死なせてしまったら、必ず私達は後悔していましたから」

 ヴァーナに視線を移す。

「・・・どうやら、イブの姉御も、クリムの姉御もかなりやばそうだな。俺達も加勢するぞ」

「ですが親分、私達ではルリの姉御とクロミルの姉御を同時に相手するのは・・・、」

「分かっている。それでもやるんだ。大事な姉御達を助けるために!」

 ・・・どうやら二人は、命懸けで二人を相手するつもりらしい。

(そんなの、無茶だ。絶対に、死ぬ)

 クリムとイブがいる上に、ジャルベとヴァーナもいる。なら、いけるか。

「・・・一人ならどうだ?」

「「え??」」

 俺の言葉に、ジャルベとヴァーナが驚く。

「一人なら、誰も死なずに相手出来るかどうか聞いたんだ。早く答えてくれ」

 俺はゆっくり立ち上がりながら答えを急かす。

「・・・出来ます。例え出来なくても、やってみせます」

 その強い言葉を聞き、俺は剣を強く握り直す。

「ならクロミルは、俺が相手をする。必ず倒してみせるから、それまでルリの相手をしてくれないか?」

「・・・分かった。それじゃあ大親分、死なないでくれよ?」

 すると、ジャルベは迷わずルリの元へ向かった。

「【悪魔牛斬(デーモンカウスラッシュ)】」

 クロミルは、ジャルベの道を妨害しようと、剣を振り下ろし始める。

「【六色気】」

 俺はクロミルの剣を受け止める。

「今の内に早く!」

 俺は出来るだけ大声で叫ぶ。この声なら、ジャルベだけでなく、イブ、クリムにも聞こえるだろう。

「・・・後で色々聞かせてよね?」

「ああ」

「・・・クリムに同じ」

「もちろん」

 短い会話を終えて、クリムとイブはルリの元へ向かって行く。

(これでいい。これでようやく、クロミル一人に集中出来る)

 だが正直、クロミル一人に勝つことが出来るのかどうか怪しいな。今の俺は白魔法で回復したものの、残っている魔力量はもう半分も残っていない。

「・・・」

 その時、ある者が彩人を見ている視線に、誰も気づいていなかった。


「さて、ようやく一対一だな、クロミル」

「・・・」

 クロミルは攻撃をやめ、いったん距離を置いてきたので、俺はクロミルに話しかける。だが、相変わらずの無口だ。

「これなら、俺が負けるなんてことはないぞ。絶対にな」

(まぁ嘘だけど。今すぐにでも寝たいくらいには疲れた)

 それでもやらなきゃ駄目なんだ。そういえば、さっきの牛術、どれもかなりやばかったな。どれも使ってほしくない牛術ばかりだった。

「【悪魔牛斬(デーモンカウスラッシュ)】」

「!?」

 さっそく使ってきやがった!あの斬撃、直撃させるわけにはいかないな。

(剣で受け流すしかないな)

 カウンター出来れば申し分ないのだが、今の俺にそこまで出来る余力は残っていない。クロミルよりかなり弱い相手なら、今の俺でもカウンターを決めることが出来たのかもしれないが、クロミル相手には無理だ。クロミルは本当に、敵にまわしたくないな。

「!?ち!」

 カウンターが決められないと分かったうえで、俺はカウンターしようと、クロミルの攻撃に合わせて蹴りをくらわせてやろうと思ったのだが、簡単に避けられてしまう。

(やっぱ俺一人じゃあ敵わないのか・・・!?)

 クロミルから攻撃をくらうのかと思い、覚悟していたのだが、くることはなかった。

「!?な!!??」

 クロミルの攻撃が、ある者によって防がれていたからである。

「大親分、この戦い、不肖ながら私、ヴァーナが参戦させていただきます」

 その者とはヴァーナ。

 よくジャルベと一緒にいる、キメルムの一人である。

 ヴァーナの防御により、俺はクロミルと距離を置く時間が出来たので、上手く距離を置く。ヴァーナは、俺が離れたことを確認してから、俺と同様の行動をとる。

「私が出来るだけ時間を稼ぎます。その隙に大親分は、クロミルの姉御を助けてあげて下さいませ」

 ヴァーナは、血から槍を形成し、手にとって構える。

「・・・いいのか?クロミルが相手なら、数秒相手するだけでも相当大変だぞ?」

 俺はヴァーナに質問する。実際、クロミルに隙なんてほとんどなかったし、作ろうとしても作ることがほとんど出来なかったからな。

「構いません」

 この言葉、かなり重いな。でも、しっかりとヴァーナの気持ちは伝わった。

「任せるぞ」

 俺は更に後退し、準備をし始める。

「・・・さて」

 任されたヴァーナは、改めてクロミルを見る。

 今のクロミルの容姿は、普段生えていない角が生えていたり、体から禍々しいオーラのようなものをはなっていたりと、少し前に見たクロミルとまったく異なっていた。

「同じ従者として情けないですよ、クロミルの姉御」

「【悪魔牛斬(デーモンカウスラッシュ)】」

 クロミルが切りかかってくることに対し、

(私だって、ただ親分を見ていただけじゃない!)

 ヴァーナの目に青が集結する。

「目を覚ましてください!【青色気】!!」

 ヴァーナは【青色気】を発動させ、向上した身体能力と、さきほど血で作った槍で、クロミルの攻撃を受け止める。

(今!)

 ヴァーナは更に、血でクロミルを拘束し始める。

 血の粘りが、クロミルの体に纏わりついて、動きを阻害し、遅くさせる。

「大親分!」

 ヴァーナは大声を出す。すると次の瞬間、

「ありがとな、ヴァーナ」

 耳元で感謝の言葉が聞こえたと思ったら、クロミルがヴァーナの視界から消えていた。

「!?お、大親分!!」

 視認出来た光景は、大親分の立ち姿だった。

「だ、大丈夫なのですか!?」

「俺もクロミルも大丈夫だ。まぁ、クロミルは少しの間、気絶することにはなるだろうがな」

 すぐ近くには、倒れたクロミルの姿があった。

「白魔法で回復させて、と。頼むからもう俺達を襲ってくるなよ~」

 白魔法で回復されたクロミルは、先ほどより傷の個所が減り、若干表情が和らぐ。

「それじゃあ俺はこれから、ルリのところに行ってくる。出来ればお前には、クロミルの近くにいてくれると助かるのだが、頼んでもいいか?」

「承りました、大親分」

 大親分のお願いに、ヴァーナは快く了承する。

「いや、そんなかたくならなくていいから。そうだな~・・・、」

 俺は、アイテムブレスレットから魔力池とホットケーキを取り出し、ヴァーナに渡す。

「これを使えば魔力を回復出来るから、お前用とクロミル用に使ってくれ。これは・・・腹が減った時に食ってくれ」

 ホットケーキを食べて、体力を回復してほしいのだが、そこまでの気遣いは不要だったか。

「ありがとう、ございます」

 ヴァーナは俺の魔力池とホットケーキを受け取ってくれた。

「それじゃあクロミルのこと、よろしく頼む」

「お任せを」

 俺はクロミルとヴァーナから離れ、ルリのところへ向かう。

(さて、あっちは一体どうなっているのだろうか?)

 どうか、ルリも含めた全員が無事でありますように!

 そう祈りながらルリのところへ向かう。


 一方、

「・・・一体どのような事情があって、クロミルの姉御は大親分と敵対していたのですか?」

 ヴァーナは、今も気絶しているクロミルに話しかける。

「本来、従者は主に殺意、敵意を向けるなど、あってはならないのですよ?そのことを承知の上で、さきほどのような行動をとったのですか?」

 ヴァーナの語りに、クロミルは一切反応しない。

「きっと、クロミルの姉御もそれ相応の理由があって敵対していたのでしょうし、説明すれば分かってもらえるかと思います」

 ヴァーナは今、クロミルを自身と重ねていた。

 クロミルとヴァーナは、主は違うが、同じ従者。想うところがあったのだろう。そしていつの間にか、ヴァーナはクロミルの頭を自身の膝の上に乗せていた。

「今、私の親分と、クロミルの姉御の主が戦っています。クロミルの姉御も、最後まで生きて、戦い抜いてください。何せ、私達が尊敬している主が、今も戦っているのですから」

次回予告

『5-2-34(第421話) ブラグ教皇との戦い~VSクロミル&ルリその5~』

 助っ人、ヴァーナの協力の元、ついに彩人達はクロミルを気絶させ、無力化することに成功する。その後、クロミルの事をヴァーナに任せた彩人は、ジャルベ達に任せたルリの元へ駆けつける。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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