表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
色を司りし者  作者: 彩 豊
第ニ章 鉛白な国の中にある魔道具と漆黒の意志
416/546

5-2-28(第415話) ブラグ教皇との戦い~VSブラグ教皇その2~

「さぁ、行きなさい!その有用性を私に知らしめなさい!」

 ブラグ教皇の命により、蘇った死者共がモミジとレンカに襲いかかる。

(ここは、私がなんとしてでもモミジ殿をお守りしなくては!)

 レンカはモミジの前に立ち、腕の形状を、筒から剣へと変化させる。

「私が突っ込みますので、モミジ殿は後方支援をお願いいたします」

「あ、ちょ・・・!?」

 レンカはモミジの言葉を聞かずに突っ込む。

(もう・・・!?)

 モミジはすぐに分かる。

 レンカが、自身に攻撃を集中させることで、私に攻撃の手をいかないようにしているのだと。その気遣いに応えるため、地面に魔力を注ぎ、植物達に呼びかける。

「分かりまし、た!」

 そして、先端が鋭利な木の枝を無数に作り、死者共に向ける。飛んでいった鋭利な木の枝は、死者共の体に突き刺さる。

「効かない・・・」

 だが死者共はものともせず、元々持っていた武器に手をかけて突き進む。

「大丈夫です!」

 死者共の視線がレンカからモミジに移って出来た隙を、レンカは見逃さない。レンカは、剣の形状となっている自身の腕を振り下ろし、死者共を切りつける。

「私が切り倒します!」

 切りつけられた死者共は倒れ、ブラグ教皇とレンカ、モミジとの間を阻む者がいなくなる。

(今です!)

 モミジは自身の掌に魔力を溜め、形を変えていく。三本の爪にそれぞれ火、風、雷を纏わせていく。

「【三樹爪撃】!」

 ブラグ教皇に向けて、モミジの魔法、【三樹爪撃】が放たれる。

「!?」

「まだ、いるのですか・・・!」

 だが、モミジの【三樹爪撃】はブラグ教皇に届くことはなかった。死者共がブラグ教皇の身代わりになったのだ。

「しかも、さっきより増えている・・・」

 モミジ、レンカ達が死者共と戦っている間に、続々と地面から死者共が出現する。

「はっはっは!これが死への冒涜という魔道具ですか!実に、実に素晴らしい!」

 ブラグ教皇は、目の前の光景に興奮し、歓喜する。

「何度殺そうとも、何度でも蘇る!しかも、生前の強さを引き継いでいるときた。誰もこの軍勢に敵わないだろう!」

 ブラグ教皇が歓喜している間も、レンカとモミジは必死に死者共の数を減らそうと攻撃し続けた。

 だが、

「【三樹爪撃】!【三樹爪撃】!!」【三樹爪撃】!!!

「・・・!・・・!!・・・!!!」

 モミジとレンカが倒した数以上に、死者共が増えていく。

「うぅ。もう魔力が・・・」

「私もです・・・」

 ブラグ教皇との戦いの際に大量の魔力を消費した為、二人に疲弊の色が見え始める。

「どうしたのですかぁ?まさか、この程度で倒れるなんてこと、ないですよねぇ?こちらには、まだまだ蓄えはありますからねぇ」

 ブラグ教皇は語尾を伸ばし、モミジとレンカを苛つかせようとする。

「でも確か・・・あった!」

 モミジはアイテムブレスレットからあるアイテムを取り出す。

「これで魔力を回復出来る!」

 取り出した道具は魔力池。これを使えば、魔力をある程度回復出来る道具で、事前に彩人から渡された魔道具だった。

「レンカさん!これ使ってください!」

「モミジ殿、感謝します!」

 レンカとモミジは、それぞれ魔力池を使用し、魔力を回復させる。

「うっ!?だ、大丈夫ですか、レンカさん?」

「モミジ殿こそ、顔色があまり優れていないですよ?」

 二人とも、不調である事が一目瞭然だった。それでも二人は立ち上がり、死者共に立ち向かう。

「【三樹、爪撃】!」

 モミジは遠距離から魔法を放ち、死者共を一掃する。

「・・・!」

 レンカは、出来るだけ多くの死者共を切りつけ、どんどん倒していく。

「!」

 なんとか死者共の隙をつき、魔道具に向けて腕を筒状に変形させて、圧縮させた魔力の塊を放つ。

「・・・」

「どうやら、私達の隙をついたと思っているのですが、そのような勘違いをしていて滑稽ですねぇ?」

 死者共、もしくはブラグ教皇本人が弾いてしまう。

(駄目です。私じゃあ、届かない・・・!)

 レンカは内心、自身の攻撃ではあの魔道具に届かないことが分かっていた。だがそれでも、必死に足掻き続ける。

(気が緩んだ隙に破壊を、と思ったのですが、無理だったようですね。出来れば接近戦を得意とする方が応援に来てくれれば・・・、)

 レンカは脳内で戦い方を色々空想し、どの戦いかたならあの魔道具を破壊出来るのか模索する。

(いえ、もしもの可能性に縋るなんて・・・。今の私に出来る最善の手を考えませんと・・・)

 レンカは、体内に保有している魔力を消費し、自身の腕の本数を増やす。

「・・・おや?腕を増やせるのですか?」

「ええ。正直、魔力の消費量が激しいのであまりしたくないのですが、そんなこと言っていられない状況ですので」

 レンカは元々あった腕と増やした腕を剣状に変形させ、周囲の死者共を切りつけていく。

(こうなったら・・・!?)

 レンカは動くことをやめる。そして、腕を伸ばし、レンカの周囲だけでなく、少し離れた死者共も切りつけ、倒していく。

(敵の数を減らすことに集中しなくては!)

 レンカは懸命に腕を動かし続け、今も増え続ける死者共を切りつけ続ける。

(やはり、死んだ人の力をそのまま使ってきますか)

 レンカの体はボロボロだった。本体が指輪なので、魔力で形成されている体にいくら傷がつこうと問題はない。だが、レンカに貯蔵されている魔力量がかなり減り、増やした腕が形を保てなくなり、腕の本数が二本に減る。

「おや?もしかして、もう限界ですか?」

 ブラグ教皇は、レンカの現状を見て、嬉々と話す。

「さぁ?もしかしたら作戦かもしれないですよ?」

「ほぉ?それはどんな作戦なのですかな?」

 ブラグ教皇とレンカが話している間に、死者がレンカの死角から近づく。

「!?レンカさん!!??」

 モミジが声をかける直前に、死者はレンカを倒そうと襲い掛かる。

 だが、

「あなたを油断させる作戦、ですよ」

 レンカは死者を一切見ずに切り倒した。

(嘘です。今も辛そうです)

 モミジは、レンカの言葉が嘘であると見抜く。レンカが虚勢を張っていることに気付き、

(今の私に出来る事は・・・!)

 レンカを助けようと、地面に手を当て、魔力を大量に注ぎ始める。

「お願い、みんな!!」

 モミジの叫びに、多くの植物達は呼応し、死者共を拘束していく。

「その程度で死者の軍勢を止められるとでも・・・、」

「まだです!みんなお願い!私に、大切な人を助けるために、力を貸して!!」

 植物が、死者共を拘束するだけでなく、地面を覆い始める。

「何を・・・!?」

 最初ブラグ教皇は、モミジが何をしているのか意味が分からなかった。だがすぐに、モミジのやりたいことを理解する。

「まさかお前・・・!?」

「これでもう、地面から出てこないはず、です!」

 地面を植物で覆う事により、死者共が地中から出てこられないようにしたのである。そして、地表に出ている死者共は、モミジが植物で拘束しているため、動けない。

「なら、貴様を殺すだけだ」

 ブラグ教皇は、服から短めのナイフを取り出し、モミジに向けて走り出す。

(!?今は植物達に魔力を渡し続けていて動けないのに!?なら・・・!)

 モミジはさらに魔力を注ぎ、ブラグ教皇を植物で拘束する。

「ぐ!?」

 ブラグ教皇は植物に拘束されて動けない。

「今です、レンカさん!早く!!」

 モミジはレンカに言い放ちながら、口から血を飛ばす。

「でもモミジ殿の体から血が・・・!もうほとんど魔力も残っていないはず・・・、」

「私のことはいいから早く!長く持たない!」

「!?」

 レンカは、今も全身から血を流し続けるモミジから目を離し、ブラグ教皇に腕を伸ばす。

「これで終わりです!」

 レンカは、モミジの叫びに応えるため、残り僅かな魔力をほとんど腕にまわす。そのためか、体のサイズも、いつも成人女性ほどあったが、今は幼稚園生並みのサイズまで小さくなっている。

「!?」

 レンカの一撃がブラグ教皇に直撃・・・しなかった。

「「!!??」」

 ブラグ教皇は、植物による拘束を力で無理矢理解き、レンカの一撃で死なないよう体を動かしたのだ。だが、躱しきれなかったからか、ブラグ教皇の体から血が流れ始める。

 そして、

「!?う!?」

「!?モミジ殿!!??」

 モミジにはもう、体に魔力なんてほとんど残っておらず、死者共を拘束するため、植物に供給していた魔力量が少なくなり、ついに途切れてしまう。それにより、植物で拘束していた死者共が動き始める。

「モミジ殿!」

 レンカはモミジに駆け寄る。魔力の無茶な使い方をしたからか、体から血が流れ、顔色も優れない。

「ご、ごめんなさい。私の、せい、で・・・、」

 モミジは、レンカを守ることが出来ず、思わず泣いてしまう。

「モミジ殿のせいではありません。ですから、泣かないでください」

「でも、私がもっと拘束出来ていたら・・・!」

 レンカはモミジの涙を優しく拭う。

「私にも非があります。私ももっと、武器の使い方を学んでおけば、モミジ殿にここまで辛い思いをさせなかったわけですから」

 モミジとレンカが話している間にも、死者共が二人に近づく。

「さて。これであなた方も終わりです。あちらもじきに終わる事でしょう」

 ブラグ教皇は別の方向を見る。その方向の先には、今も戦っている3人がいる。

(クロミルさん、ルリさん、そしてアヤトさん。ごめんなさい)

 モミジは目を力いっぱい瞑る。

(出来ればもっと一緒にいたかったのですが、今の私にはこれくらいしか出来ないようです。これではアルジンの魔道具失格です!)

 レンカは後悔の念を抱き、モミジを守るように抱きしめる。

「さぁ、これでおしまいです!」

 ブラグ教皇の言葉で、ある死者が剣を思いっきり振り上げ、モミジとレンカめがけて振り下ろす。

「おしまい?それはあなたの方です」

 だが、振り下ろされた剣は、モミジとレンカに当たることはなかった。

 それは何故か?

 ある者が、死者共の攻撃を防いだからである。

「!!??あなたは・・・!?」

「・・・二人とも、よく、生きていてくれましたね。流石です」

「ああ、あぁ・・・、」

 レンカはその者の登場に驚きを隠せず、モミジは感動のあまり、言葉にならず、涙を流す。

「・・・あなた、何者ですか?」

 ブラグ教皇は、いきなり出てきた者に質問する。

「人に名前を聞く時まず自分から名乗る。そう教わらなかったのですか?」

 ある者の返答にブラグ教皇の機嫌が悪くなるも、ブラグ教皇はある者の問いかけに応じる。

「これは失礼しました。私は色教の教皇を務めさせております。ブラグ、と申します。以後、お見知りおきを」

「そうですか。それは丁寧にどうも。私は・・・、」

 ある者は、死者共を倒してから、自らこう名乗る。

「リーフ、あなたを倒す者です」

 こうしてある者、リーフはモミジ、レンカと合流する。

「・・・なるほど。あなたもその者共同様、私の邪魔をするつもりなのですね。面白い」

 ブラグ教皇は、杖の魔道具に手をかける。すると、地面から更に死者共が湧き出る。

「殺して差し上げますよ。そして、この魔道具の糧とさせていただきます」

 モミジは、自身が手に持っている細剣を握り直し、モミジとレンカにある物を渡す。

「魔力池です。これで魔力を回復して休んでください」

 モミジとレンカに向けられる視線や態度は、とても暖かく、体力が回復していると錯覚してしまうほど安らぐ。

「まさかリーフさん、あの方を独りで相手するつもりなのですか!?そんなの無茶です!!」

「そうです、リーフ殿!あの魔道具は、死者を無限に復活させる効果です。だから私達も・・・!」

 モミジとレンカの説得に、モミジは首を横に振る。

「大丈夫です。全て私に任せて」

「・・・何か、策があるのですね?」

「ええ。あの死者の復活が魔道具によるものなら、あります」

(それにしても、この場にアヤトがいないのはどうしてなのでしょう?)

 こうして、モミジとレンカに代わり、リーフがブラグ教皇と戦い始める事になった。

次回予告

『5-2-29(第416話) ブラグ教皇との戦い~VSクロミル&ルリその1~』

 モミジとレンカがブラグ教皇と戦っている間、彩人はクロミル、ルリと戦っていた。なんとか二人を倒そうと奮闘するものの、個々の強さ、二人の絶妙な連携に苦戦していく。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

 感想、評価、ブックマーク等、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ