5-2-27(第414話) ブラグ教皇との戦い~VSブラグ教皇その1~
彩人がルリ、クロミルを連れてモミジ、レンカから離れた直後。
「おやおや。二人を引き連れて行ってしまいましたか。あの三人の末路を見たかったのですが」
そう言いながら、ブラグ教皇はモミジとレンカに向き直す。
「あなた方で我慢しますか」
モミジとレンカは、ブラグ教皇に対し、強い警戒態勢をしく。
「アヤトさん、大丈夫でしょうか?」
モミジはブラグ教皇を警戒しつつ、アヤトの心配をする。
「モミジ殿、アルジンは必ず大丈夫です。それより今は私達の心配です」
「!はい!」
モミジはレンカの言葉を聞き、意志を強固にする。
「ここでは、私の魔道具の効果が出づらいですね。場所を変えますか」
ブラグ教皇は歩き始める。
「私達が逃がすとお思いで?」
「ここであなたを倒します!」
レンカは銃口を、モミジは鋭利な木の枝をブラグ教皇に向ける。
「逃げる?この私が?そんなわけないじゃないですか」
ブラグ教皇はおどけたように、嘲笑うように言い捨てる。
「しっかり、確実に殺して差し上げますよ。あなた達も、あなたの仲間達も、ね」
「「!!??」」
ブラグ教皇が見せる黒い笑顔に、モミジとレンカは驚きを隠せない。その隙にブラグ教皇は移動を開始した。
「ま、まて!」
「逃がしません!」
レンカとモミジは後を追う。
(・・・もしものため、アヤトさんのために。お願いしますね)
アヤトのことを想いながら、何か地面に細工をした後で。
「ここなら、この魔道具の力を発揮出来そうですね」
ブラグ教皇が向かった先は、ある墓地である。その墓地には、今まで戦死していった者達が無数に、安らかに眠っていた。
「ここは・・・?」
「無数のお墓・・・どうやらここは墓地のようですね」
「墓地、ですか。でもどうして・・・?」
「分かりません・ですが、じきに教えてくれるでしょう」
モミジとレンカの目の前にいる者、ブラグ教皇の顔は少し前からにやつきが止まらなかった。
「ようやく、ようやくです」
ブラグ教皇は、手に持っていた杖を地面に突き刺す。
「死者よ。この地に眠る強大な力を持つ死者どもよ。この世界に舞い戻り、我が手足となりて、この地で我が使命を果たせ!」
すると、ブラグ教皇付近の地面がボコボコと動き始める。
「い、一体何が・・・?」
「【死への冒涜】、墓地・・・は!?」
レンカは何か思い出したのか、驚いた表情をする。
「モミジ殿!今すぐあの魔道具を破壊してください!早く!」
「!?きゅ、急にどうしたのですか、レンカさん!?」
レンカの慌てている様子にモミジは驚いて戸惑ってしまい、動けなくなってしまう。
「あの魔道具は危険です!今すぐ壊さないと・・・!」
レンカは自らの腕に魔力を溜め、発射させる。
「!?ち!?」
ブラグ教皇はレンカの攻撃を容易く受け流し、杖に攻撃が当たらないようにする。
「今この魔道具を破壊されると困りますので防がせていただきますね」
ブラグ教皇は、勝ちを確信したかのようににやつく。
「駄目、でしたか」
ブラグ教皇とレンカがぶつかり合っている間も、地面はボコボコし続けている。
「レンカさん、前はあの魔道具の効果が分からないと・・・、」
「思い出したのです!あの魔道具は・・・、」
レンカが言い終える前に、ボコボコ動いていた地面から人のような手が伸びる。
「ひ!!??」
レンカは目の前の光景に恐怖の心を隠せない。
「ふっふっふ。これです。これを待っていました!」
モミジが恐怖の感情を露わにしている一方で、ブラグ教皇は歓喜の感情を露呈させる。
「な、なんですかあれ!?」
「・・・おそらく、この地に眠っていた死者達です」
「死んだ人達、ですか?え?でも・・・、」
モミジはこう言いたかった。
どうして、死んだはずの人達が、こうして私達の前に姿を現しているの、と。
「それがあの魔道具の効果です。死者を蘇らせ、発動者の意のままに操ることが出来る、死という現象を冒涜するような魔道具です」
そのレンカの言葉に、ブラグ教皇は嘲笑う。
「死を冒涜する、ですか?何を言っているのか分かりませんねぇ。私はただ、死者の意志を尊重させ、この地に舞い戻しただけですよ」
「意志を尊重、ですか?私、その魔道具の効果を知っているのですよ」
ブラグ教皇の言葉にレンカは反論する。ブラグ教皇の魔道具、死への冒涜を知っているからこその言葉だった。
「その魔道具で死者を蘇らせることは出来ても、意志を尊重させることまでは出来ないと。つまりあなたは今、平然と嘘をついていることになります」
「それは違います。彼らは、この世界に蘇った事に喜び、蘇らせた私に感謝をし、私の願いを聞き入れてくれるのです」
ブラグ教皇は杖に触れる。
「目の前に、私の邪魔をする者共がいます。排除してください」
この言葉を聞いた死者達は、一斉にモミジとレンカに視線を向く。
「「!!??」」
その視線に感情なんて一切ない。ただ、ブラグ教皇に命令された通り、目の前にいる、ブラグ教皇の邪魔をする者共を排除するために足を動かし始める。
「このようにね♪」
ブラグ教皇の笑顔が、モミジとレンカにとって、恐怖の顔でしかなかった。
「さぁ、どんどん出てきて、目の前の敵を討ちなさい」
どんどん地面から出てくる死者の数に、モミジとレンカは息をのむ。
「モミジ殿、死者達を退けつつ、あの魔道具を破壊しましょう」
「はい!」
レンカとモミジは決意を固める。
レンカは、自身の持ち主を助けるため。
モミジは、自身に手を差しのべてくれた者を助けるため。
それぞれの意志が交差し、戦闘が始まる。
一方。
「急がないと!」
白の国に向けて走り続けている者がいた。
「分かっていますよ!」
「・・・ん!二人とも早過ぎ。もっと、落として・・・、」
また、ある一人の後ろに、別の二人も走っていた。
「もう、仕方がないわね。私の背中に乗って」
「・・・感謝する」
そして、もう一方の者は、もう片方の者の背中に乗る。
「まったく。急いでいるというのに・・・。いや、急いでいるからこそ、かもしれないわね」
「・・・ん。この方が合理的。私、走るの苦手だし、体力も二人よりないから」
三人は一時的に止まる。
「ほら!止まらないで行くわよ!」
「ええ、そうね!」
「・・・ん。頑張って」
「人事だと思って・・・。後で覚えておきなさいよね」
だが、すぐに走り始める。
(どうか無事でいて、ルリちゃん!)
(あの子、大丈夫かな?無事、だよね?)
(…ルリに一体何が・・・?)
ある者、ルリを助けるために。
こうして、彩人達がブラグ教皇と戦いを繰りひろげている裏で、別の者達が既に行動を起こしていた。
次回予告
『5-2-28(第415話) ブラグ教皇との戦い~VSブラグ教皇その2~』
モミジとレンカは、何度倒しても立ち上がる死者の軍勢に苦戦する。二人が死を覚悟した時、裏で鼓動していた者が合流する。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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