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色を司りし者  作者: 彩 豊
第二章 赤青交わる戦争
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1-2-15(第41話) 赤の国と青の国の戦争 ~西編~

今回はメインヒロイン、イブ、リーフ=パール、クリム=ヴァーミリオンの回です。

今回も長いです。読みづらくしてすみません。

 時間はまた遡り、北の方角で四人が戦い始めたころ、西の方角でも戦いが始まろうとしていた。


 クリム=ヴァーミリオン、カナ=デビルことイブ、そしてリーフ=パールは連携の確認をしていた。


「それでは、クリム王女様が前衛、イブ様が後衛、そして私がその両方のサポートをするってことでいいですか?」

「はい!」

「…ん」


 アヤトつながりですっかり仲良くなった三人は、アヤトから渡された魔道具を使い、魔術師達を殲滅しようとした。だがしかし、魔術師達が魔力砲を魔力障壁でほとんど防いだらしく、あまり効かなかった。


「あれは厄介ですね」

「そうですね」

「…しぶとい」

「それでは作戦通りお願いします!」

「はい!」

「…ん」


 こうして、西でも戦争が始まった。



 時間にしてどれほど経っただろう。あれから三人は年頃の女性とは思えないほどの奮闘を見せた。

 まず、前衛のクリム=ヴァーミリオンは全身を赤魔法で強化し、たひたすらに相手を殴る。相手も防具を着ているのだが、魔術師は兵士と比べて体力がないため、どうしても軽くて守る範囲が限られている物しか着られない。そんなこともあってか、クリムの強化された打撃は相手を一撃で永遠の眠りへと強制的に案内している。

 後衛のカナ=デビルことイブは、クリムの攻撃範囲外から襲い掛かってくる魔法を消去、そして相手陣営に魔法で広範囲に攻撃していた。もちろんクリムがピンチなりそうな時は最優先で助けている。

 中でも、その両方をサポートしているリーフ=パールの動きが的確だった。自分達はもちろん、相手もきちんと見て、実に絶妙なタイミングでクリムに緑魔法を使って加速させたり、クリムやイブでも対処しきれなかった魔法を、緑魔法で軌道そのものをずらし、直撃を免れている。本当にギルドの受付嬢なのか目を疑うくらいの活躍ぶりだ。

 だが、やはり限界は来てしまう。


「だ、大丈夫ですか?」

「ちょっと、休憩したいですね」

「…ん」


 三人とも戦う前に比べて、体力や魔力が底を尽きかけ、服もぼろぼろで所々に血がついている。そして、呼吸も肩でしているかのように荒い。回復手段も持っていない。まさにピンチだ。


「「「アヤト((さん))」」」


 不意に三人の声が重なる。三人とも違いはあるが、アヤトのことを思っている。

 時には、私の無茶なお願いを聞いて、凶悪な殺人鬼と死闘を繰り広げた。

 時には、自分の兄の暴走を止めるだけでなく、姉の死因やその元凶となる人を捕まえてくれた。

 時には、自分の膝の上で寝てしまうほど、自分に心を許し、一国との戦争を一人でやるなんて無謀な発言をするほどこの国のことを護ろうとしてくれた。

 そんな人の傍にいたいから、自分の出せる精一杯の力でこの状況を乗り越えようと思った。だが無理だ。もう体力の限界なのだ。


「ふん!たかが三人で我々魔術部隊がやられるわけがないだろう?」


 そう言いながら三人の前に現れたのは他の魔術師よりも豪華な装飾が施されているローブを纏っている中年の男だ。


「だが、我々の奴隷になるのなら特別に命だけは助けてやろう」


 その男はいやらしい笑みを浮かべながら三人の体をじっくりとなめまわすように見る。三人とも立っているのがやっとというくらい消耗し、攻撃が止んでいることに安堵しているが、目の前の男のいやらしい視線を感じたのか、三人ともあからさまに嫌そうな顔をする。


「おい、なんだぁその面は?せっかくこのクーガ=グラント様が貴様らの相手をしてやろうって言うのに。まぁ、そっちの方が興奮するし、楽しめそうだ」


 クーガはそう言いながら、自分の服に手をつける。どうやらあれをだすらしい。

 三人もそれがわかったのか、顔から血の気がなくなっていく。


「「「アヤト((さん))」」」


 震えていた。自分達に何をされるのかわかっているのか、その声は唯一の希望にすがるようだ。

 シュパッ!

 だが、突然何かが切れたような音が聞こえると、クーガは自分の服を全部脱ぐ前にその行動を止める。そればかりか、前のめりに倒れていく。そしてその体には、

「「なっ!!??」」


 魔法を打つ準備をしていた兵士たちが驚いていた。無理もないだろう。

 倒れたクーガの体には、頭がついてなかったのだから。

 その後、三人の近くにある男が近づく。その男は三人の女性と知り合いらしく、ゆっくりと近づいてゆく。クリム達はその男の正体がわかると、すぐに大粒の涙を流してしまう。何故ならその男は、

 

「みんな、大丈夫か?」

「「「アヤト((さん))!!!」」」


 今まで待ち焦がれていた人だったのだから。



 一体どういう状況なのだろう?

 アヤトは白竜皇に乗ってイブ達の元へ急いでいた。やがて三人の姿を確認すると、一人の男が近くにいた。その男が服に手をかけているところでアヤトは気づいた。


「あいつまさか、ここでする気か!?」


 そう、男がイブ達の誰かとやろうとしているのがわかってしまった。だからこそ、


「白竜皇!俺は先に行く」

(わかりました。それではお気をつけて)

「あぁ!」


 そう言って俺は白竜皇の背から降り、男の首を魔力で形成した魔力刀で切った。

 すると、男の首と体がきれいに分かれ、体は前のめりに倒れ、首はどこかに飛んで行ってしまった。その後俺は三人に近づき、


「みんな、大丈夫か?」

「「「アヤト((さん))!!!」」」


 声をかけた。良かった。全員生きていてよかった。

 少し遅れて白竜皇が到着する。


「な、なんだと!?」

「何故ここに白竜が!?」


 違いますー。こいつは白竜を束ねる白竜皇なんですー。とっても強いんですー。


(アヤト殿。この雌達は?)

「雌どもって…。この人達は俺達と一緒に戦っている人達だ。名前は後で言うが、この人達を守っていてほしいんだけど、できるか?」

(アヤト殿は?)

「ゴミを掃除してくる」

(どうか気を付けてください。万が一死んでしまったら、竜の里総出で青の国を滅ぼしに行きますから)


 良かったね、青の国の兵士達。俺が負けても、竜達が盛大なお礼をしてくれるんだって。青の国の将来は良くも悪くも俺にかかっている。


「そんなことにならないよう気を付けるよ」


 さてと、これでイブ達はこれ以上怪我をすることはないし。俺は怒りを目いっぱい相手に向ける。青の国の魔術師達は俺の怒りに体が震えていた。


「よくもやってくれたな。お礼として、全員地獄に送ってやる」


 俺は地面に手を付き、魔力を集中させて、


「【地刺(ちせき)】!」


 そういった瞬間、青の国の魔術師近くの地面から鋭い刺が生え、魔術師達を串刺しにした。


「な!?なんだ、あの魔法は!?」

「早く…」

「遅ぇよ」


 俺は次々と地面から土の刺を作り、串刺しにしていく。それでも全滅いかなかった。


「て、てめぇ!よくもクーガ隊長を!絶対に許さねぇ!」


 クーガ?一体だれのことだろうか。まぁいい。これだけの人数と範囲なら、


「いける」


 俺がそう呟いた瞬間、魔術師達の周りに紫色の霧がたちこめる。


「アヤトさん。あれは一体…?」


 クリム王女が何か言っているけど無視だ無視。

 さて、そろそろまわってきたかな?


「か、体が!くそ…」

「何がどうなって…」

「あー。その霧、吸わない方がいいよ。毒だから」


 まぁ、もうすでに結構吸っていると思うけど。


「ど、毒だと!?」

「そ。正確には【毒霧】だけどな」


 あ。もう俺の話聞かずに死んでいるし。これで…全員だな。

 ふぅ~。疲れたな。俺はそう思いながら、近くの地面に腰を落とす。


「「「アヤト((さん))!!!」」」


 三人が俺の元に駆け寄る。俺はその三人を受け止めようと立ち上がろうとするがよろけてしまう。


「大丈夫ですか?」


 リーフさんが前を、クリム王女とイブは肩を貸してくれた。む、胸の感触が。


「ありがとうみんな」

「こちらこそです!」

「我が国のためにここまで…感謝してもしきれません」

「…ありがとう、アヤト」


 みんな、泣いていた。そうだ。この顔、そしてこの景色が守れただけでも良かったものだ。

 でも、まだ終わっちゃいない。それどころか、まだ最大の敵が東にいる。


(アヤト殿。強大な何かが動き出そうとしています。そろそろ向かわれた方がよろしいかと)

「…わかった」


 俺はゆっくりと三人から離れる。せっかく手に入れたぬくもりだが、このままだとヒュドラが危ないからな。


「アヤトさん?私にも何かできることはありませんか!?」

「アヤトさん。私も連れて行ってもらえないでしょうか?」

「…私も。駄目?」


ちょ!?その頼み方は反則!反則だからぁ!あと、目もうるうるしないで!くそ、こんな場合じゃなきゃ許したんだろうが。


「今回は駄目だ。何があるかわからない。だから遠くで待っていてくれ」

「「「………わかりました」」」


 顔は全然わかっておらず、私は不満ですよ、というアピールが伝わる。

 

 (アヤト殿)

「あぁ。またよろしく頼む」


 そう言って、また白竜皇の背中に乗ろうとすると、また三人が駆け寄ってくる。

 

「どうし…」


 俺がこれ以上言葉を出さなかった。否、出せなかった。それは何故か?


「「「チュッ」」」


三人とも、俺のほっぺにキスしたからだ。俺の思考回路は停止してしまう。


「な!?なにが…?」


俺の頭の中で?がオンパレードだ。キスされる理由がわからない。殴られたり、ビンタされたり、お仕置きされる理由ならいくつかあるのだが、キスされる理由が本当にわからない。


「どうして?」


 思考停止した頭で精いっぱい考えだした質問がこれだ。ストレートな聞き方だと自分でも思う。


「「「帰ってきて((ください))!」」」


 その後、三人は笑った。不覚にも、俺はその笑顔に見惚れてしまう。

 そうか。

これが好きになるってことなのかな。でも今は、


「あぁ。ちゃんと帰ってくる。だから、それまで待っていてくれ」


 そう、俺の気持ちを言うのは今じゃない。この戦争が終わってからだ。終わったら、自分の気持ちを言おう。…今の、死亡フラグじゃないよな?大丈夫だよな?


こうして彩人と白竜皇は東へと向かう。強大な何かを確かめるため。ヒュドラを助けるため。

今回のお話はどうでしたか?

恋をしていない自分にしてはよくかけた気がします。

ラストは東編、ヒュドラです。

最後の敵は強いですよ~。

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