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色を司りし者  作者: 彩 豊
第ニ章 鉛白な国の中にある魔道具と漆黒の意志
407/546

5-2-19(第406話) 教会に属している初対面の女

「さぁ、どうぞ」

 教会の裏側の扉前に着いたところで、女は俺に声をかけた。

(警戒を怠らないようにしつつ、中に入るか)

 俺は軽く会釈して、女の案内の元、教会の中へ入る。

(中は普通の民家みたいだな)

 木造建築で、特に変わったところはないな。

(奥にある多くの魔力反応を除いては、な)

 俺に何か隠していることは確定だな。だが、今目の前の女に聞いたところで教えてくれるわけないから、警戒は引き続きしていくか。

「何もなく、汚いところですが、どうぞ」

 女は部屋の中にある椅子を一つひき、俺に座るよう促してきた。俺はその椅子に腰を下ろす。その様子を見た女は、俺と向かい合うように椅子の位置を調整し、座る。

「さ・・・、」

 女が話し始めようとしたところで、突如、俺が使用した扉とは異なる扉から音が聞こえた。

(もしかしなくても、俺を殺しに来たな!)

 俺は魔法の準備をし、神色剣に手をかけたところで、扉は開かれた。

「お水、どーぞ」

 扉を開けた者は、小さな子供だった。

(・・・子供?だが・・・、)

 子供を暗殺に利用する話はよく目にしていたな。目にしていたといっても、本の中の話だが。

(子供が今持ってきた水の中に毒が入っていそうだな。【毒感知】)

 ・・・あれ?毒の反応がない、だと?俺の魔法が失敗したか?それとも、子供が持ってきた水に毒が入っていない、ということなのか?

 子供は俺の前に、水が入った木製のコップを置き、女の前にも同様のコップを置く。

「ありがとう、ナナちゃん。もうお部屋に戻っていてね」

「うん♪」

 ナナちゃん、と呼ばれた小さな子供は機嫌をよくしたまま、この部屋から出て行った。

(この女の娘か?それにしてもこの女、若過ぎないか?)

 そもそも、血が繋がっているのか?あまりにも似ていなかったように見えたからだ。だが、赤の他人が同じ家の中で過ごすことなんてあまりないんじゃ・・・?

(まさか・・・?)

 俺はこの状況に既視感を覚えた。この感覚、確か前にも見たことがある。

(そうか)

 なんとなくだが、あの子供は、ジャルベ達と同じ境遇なのかもしれない。まぁ、あくまで俺の主観なので何とも言えないのだが。

「・・・あの子はとてもいい子なのですが、親には恵まれなかったのです」

「そうか」

 俺は、女のこの言葉であの子供のことが大体分かった。

 あの子は親に捨てられた孤児で、この女が保護をしているのだと。

(本当、ジャルベ達みたいだな)

 そんなことが脳内によぎったが、今は目の前の事に集中しよう。もしかしたらこの女は俺を殺そうとしているのかもしれないし。

「さて、本題に入りますか」

 女は水を一口飲んでから話し始める。

「あなた様が今手にかけているその剣、もしかしなくても神色剣、ですよね?」

 女は、俺が持っている神色剣を指差してきた。

「・・・いや、違う。これはどこにでも売っている普通の剣だ」

 俺は咄嗟に嘘をついてしまう。

「・・・そう、ですか。ではそういうことにしておきます」

 どうやら、俺が今嘘をついたことはお見通しらしい。俺って嘘、下手じゃね?

「・・・私、元はこの教会に拾われたのですよ。それでここまで育てていただき、本当に感謝しています」

「・・・世間話がしたいのなら、さっきの子供とすればいいんじゃないか?」

 少なくとも、初対面の異性とするような話じゃないと思う。

(こいつの目的って何だ?)

 分からない事だらけだが、ここで時間を潰すより、みんなと計画について話し合い、作戦の成功率を上げた方が得策だろう。そう思い、俺は席を立とうとしたのだが、

「・・・ここで私の話を聞いておいた方がよろしいと仰っておりますよ?」

 俺はこの女の声で再び座る。

「・・・どういう意味だ?」

 俺がそう聞くと、

「そのことも踏まえて説明いたしますので、私のお話、聞いてくれますか?」

 確かに、この女のさっきの発言は引っかかる。

(仰っております、ねぇ・・・)

 自分で思っているなら、こんな堅苦しい言葉は使わないはずだ。それなのに使ったとなると、誰かがこの女に言った、ということになる。

(一体誰が・・・?)

 気になる。

 ・・・。

「分かった」

 俺は諦めて、目の前の女の話を聞こうとする。

(そういえば、この女の名前、何?)

 どうして俺、この女の名前を知らないまま話をしていたのだろうか。人の名前を覚えることが苦手で、そのことを察した女が気を効かせた、ということなのか?・・・そんなわけないか。そこまで気が効く人なんてそうそういるわけないか。

「あ、申し遅れました。私、シーナリ、と申します」

 ここで、シーナリと自称した女が席を立って頭を下げ、また席に座る。

「それで、説明、してくれるんだよな?」

「はい、もちろんです。順番にお話しいたしますね。まずはそうですね・・・、」

 シーナリは自身の顎に軽く指を当てて考え事をし始める。

「やはり、私の生い立ちから話しますね」

 生い立ち、か。

「もしかして、さっきの子供と同様・・・、」

「ええ。私もこの教会に拾われた孤児なのです」

 こうして俺は、教会に所属している女、シーナリと話をすることになった。

次回予告

『5-2-20(第407話) 教会で保護された孤児、シーナリ』

 彩人を教会内に招き入れたシーナリは、自身にある能力があることを話しながら、自身が伝えたいことを話していく。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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