5-2-17(第404話) 襲撃プランの構想
数日経過。まずは今までの調査結果から報告しよう。
なんでも教皇は十日に一日ほど、夜にお酒を飲み、性交する日があるのだとか。つまり、酒を飲む日と性交する日が被ることがあるらしい。そして、その被る日をクロミルとレンカが掴んでくれた。
「私達の情報によると、4日後が狙い目とのことです」
「なのでアルジン、私とレンカ殿は、4日後の深夜に襲撃することを推奨します」
ということなので、俺達は、シロネリに来てから4日後の深夜に襲撃することを決めた。
襲撃する日時は決まったので、次は襲撃する場所の確認である。
教皇はほとんど毎日、自宅で夜を過ごす、との情報を得たので、クロミルとレンカに話したら、
「流石はご主人様です」
「まぁ、私達も既にその情報を持っていたんですけどね」
クロミルは素直に褒めてくれたが、レンカが余計な一言を言ってきた。あ、知っていたのね。なら、俺がわざわざ言わなくてもよかったな。内心、ちょっとへこんだ瞬間だった。
襲撃する日時と場所が決まったところで、次は襲撃する具体的な手段だ。
教皇の家に襲撃するので、教皇の家の中に侵入する必要がある。家の中に侵入する方法か・・・。
(教皇の家だけでなく、周辺の家も日本の家のように、しっかりとしたセキュリティはなかったな)
それに、この世界には魔法がある。俺の【毒霧】を教皇の家の中に充満させ、教皇を眠らせる事にしよう。
(これで、襲撃する日時、場所、方法が確定した)
後は、無事に襲撃できることを祈るだけだ。
ちなみに、教皇が持っている杖の件なのだが、冒険者達の情報によると、教皇は最近、杖を新調したとの事。冒険者達曰く、俺達がこの町に来る前に新調したのだとか。新調する前の杖は真っ白だったとか。
(今持っている杖は黒なのにな)
杖を新調した理由について知っているのかどうか聞いてみたところ、知らないと言われた。
(杖を新調した理由について気になるところだが、それ以上に気になるところが分からなかったな)
そして、俺が最も気にしている杖の入手経路なのだが、一切分からなかった。どこの店で買ったのかも、作ってもらったのかも不明。なので、教皇が持っている杖があのデベロッパー・ヌル作の魔道具なのかも不明である。
(もし違ったら大変なことになるな)
人様の物を無断で壊そうとしているからな。今はまだ、デベロッパー・ヌル作の魔道具で大変危険だから、という理由があるが、それが間違いだったら?
“すみません。間違えて壊してしまいました♪”
・・・これで許されたら、地球に警察という組織はないだろう。だから、デベロッパー・ヌル作の魔道具なのか確認したいのだが、どうやって確認すればいいのだろうか・・・?
(・・・あ!?)
ここで俺は思い出した。
あの魔道具の存在、アイテムレーダーという魔道具の存在を。
(あの魔道具を使えば、教皇の持っている杖がデベロッパー・ヌル作の魔道具かどうか調べられるじゃないか!?)
使うからには、あの教皇の位置を完全に把握した上で使わないとな。
なので、教皇の位置が完全に分かる夜に、アイテムレーダーを使用してみた。もちろん、教皇が自宅にいる時間帯、夜に使用してみた。
(!?やっぱり!!)
すると、反応が出た。位置関係を把握すると、教皇の家近くを示していた。ちなみに、断定は出来ない。というのも、このアイテムレーダーは3次元的に見ていないから、つまり、高さを考慮していないからである。どういうことかというと、もしかしたら、デベロッパー・ヌル作の魔道具が、教皇の家の地下に眠っている可能性もあるからだ。
(【魔力感知】してみたけど、反応は前と同じ2つ、か・・・、)
クロミルとレンカから、教皇は独身である、と言う話は聞いている。なので、片方の魔力反応は教皇で、もう片方の魔力反応が魔道具、という可能性が高そうだ。
だが、確定は出来ない。
もしかしたらこの時間帯に教皇が女を自宅に招き、行為に耽っている可能性も捨てきれないからな。
(・・・いや、この可能性は捨てよう)
教皇は自宅に女を呼ぶと聞いていたし、その女はコロコロ変わると聞いている。だとすれば、教皇は毎回、魔力をたくさん持つ女と肉体関係を持っている、ということになる。そんな可能性を信じていいのか?それなら、教皇は自身の近くに杖を、デベロッパー・ヌル作の魔道具を置いている。その可能性を信じた方が堅実的なのでは?
(・・・そう、思う事にしよう)
一瞬、俺の周りの女性達を見て、自身の意見に異を唱えようとしてしまったが、無視するとしよう。
(そもそも、町の中にそうそう王女とか牛人族とか魔獣とか魔道具とかいるわけないし。そうだよな?)
だから、教皇の他にもう一つあった大きな魔力反応は、デベロッパー作の魔道具だと断定しよう。
「?お兄ちゃん、さっきからどうしたの~?お腹空いたの~?」
「アヤトさん、ご飯の準備が出来ましたよ。みなさんも一緒に食べましょう」
そうそう、モミジとルリについては、あれからこの町を観光し、出来るだけ平穏に生活してもらっている。ルリが何か情報収集しようとしてヘマをする可能性があるからな。モミジはルリの監視役をお願いしてもらった。そんなわけで、俺達は集中して情報収集することが出来たのである。本当、モミジのおかげだな。
(ま、ルリじゃなくて俺がヘマする可能性もあるがな)
そんなことを考えながら、俺達は、モミジが用意してくれた昼食をいただいた。
「モミジお姉ちゃんのホットケーキ、おいし~♪」
「あ、ありがとうございます、ルリさん。みなさんはどうですか?」
「とても美味しく仕上がっております。流石はモミジ様です」
「うんうん、モミジ殿の料理の腕が上達しているようで」
「美味いぞ、モミジ」
それぞれの感想をモミジに贈る。どうやら、俺含めてみんな、モミジ作のホットケーキを美味しいと感じているようだ。
「あ、ありがとうございます。みなさんのお口に合ってよかったです」
「おいしー♪」
美味しい朝食を食べ終え、俺達みんなで朝食の後片付けをしている時、クロミルから話を振られた。
「・・・ご主人様、今夜、決行ですか?」
主語は言わなくても分かる。
「ああ。だが、今日は昼前に少しやりたいことがあるから、みんなは夜まで休憩していてくれ」
そう言うと、
「かしこまりました」
「じゃあモミジお姉ちゃん、今日も一緒に色々食べよー♪」
「はい、ルリさん」
「ところで、アルジンがやりたいことって何なのです?」
レンカがそう聞いてきた。なので俺は、
「ちょっとな」
俺は答えを濁した。
「?」
レンカは俺の答えに納得していないのか、微妙な顔をする。
(さて、行ける内に行っておくか)
次回予告
『5-2-18(第405話) 事前に知りたい事』
やるべきことを決めた彩人は襲撃前、独りである場所に向かう。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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