5-2-16(第403話) 教皇のルーティーン
まずはレンカから。
「まず、先日回収した賢猿の魔道具なのですが・・・、」
(一体、どんな効果を秘めているんだ?)
気のせいか、レンカが若干ためて話しているように感じる。俺の気のせい、だな。
「罠系統の魔道具でした」
「罠系統?」
「はい。先日、私達が賢猿の住処を襲撃した際、アルジン含めて私達は、ある光景を目撃しましたよね?」
「ある光景?それってなんだ?」
「賢猿が地面に、この形状の魔道具を地面に叩きつけている光景です」
レンカは俺に、三角錐形の魔道具を俺に見せながら説明を始める。
「あぁ、それか」
俺はレンカの言葉に納得する。
「はい。効果は、アルジンが自身で体験した通り、対象の視界を一定時間奪う魔道具のようです。ただ、緑魔法で風を起こしたり、赤魔法で視界を確保したりと、色々対処方法があるみたいです」
「へぇ~」
俺は緑魔法で風を起こして飛ばしたけど、赤魔法で火をつけるのもいけたのか。咄嗟の出来事だったからか、そこまで思考が回らなかったな。
「で、他にはどんな魔道具があったんだ?」
「はい。この四角い魔道具は、落とし穴を設置出来る魔道具。この丸いのは、空中から特殊な網がふってくる魔道具。他には・・・、」
レンカから一通り話を聞いたところ、俺が倒した賢猿達は、色々な罠に関する魔道具を作っていたようだ。
(それで罠系統の魔道具、というわけね)
それにしても、どうして賢猿はこんなに罠系統の魔道具ばかり作っていたのだろうか。もっと生活に役立ちそうな魔道具を作ればいいのに。例えば・・・コタツ、とか?・・・久々にコタツ、欲しいな。あの温もりを体験しつつ、ミカンを貪りたいな。
・・・思考が逸れてしまったな。
レンカから報告を一通り受けた俺は労いの言葉をかけ、クロミルの報告を聞くことにした。
「教皇の住処なのですが・・・申し訳ありませんが、地図をだしていただけませんでしょうか?」
「分かった」
俺はアイテムブレスレットから地図を取り出す。そういえばこの地図、先日俺がつけた印入りだな。
「・・・流石はご主人様ですね」
何故かクロミルは俺を褒めた。な~ぜ~?
「何が?」
「ご謙遜を。ご主人様自身が事前に印をつけているではございませんか?」
と、俺が事前に付けていた印を指差す。
(え?この印のことを言っているのか?)
確かに昨晩、この印を付けた。それは昨晩、俺が【魔力感知】でひときわ大きな魔力反応を感知出来たからその場所に印をつけただけだ。
(もしかして・・・?)
まさかだけど、昨日俺が感じた魔力反応というのが教皇の魔力反応で、この印を付けた場所が、教皇の居場所、なのか?
(いや、そんなわけないか)
そんなわけないと思うが、一応確認の為に聞いてみた。
「?何を当然のことを聞いているのですか?」
「・・・なるほど、そういうことなのですね」
・・・どうやらクロミルは勘違いしているらしい。レンカはどうやら分かったらしいが。まぁ、この誤解はこのまま解かなくていいか。解こうとしたら更なる誤解を生みそうだし。
「それで話なのですが、ご主人様が事前につけていたこの印に住居を構えていると思われます。ですが、まだ確定出来ていませんので、裏を取り次第、再度報告します」
「・・・そうか。わずかこの短時間でそこまで掴むなんてすごいな」
「いえ、ご主人様の従者として恥ずかしくない行動をとったまでです」
いや、たった数時間で教皇の家をある程度特定するなんて凄いと思う。俺だったら観光だけして何の成果もあげられなかったことだろう。それにしても、一体どんな手段で調査をしたんだ?ちょっと気になるが、聞かないでおこう。知らない方が幸せ、ということがあるかなら。
「ですので、後もう2日・・・いえ、1日時間をください。そのうちに、あの教皇の家、そして家内の詳細な間取りを把握してみせます」
「お、おお・・・」
他にも、教皇の夜の決まった行動・・・ルーティーンと言えばいいか。そのことについて教えてもらった。
なんでも毎晩、酒をコップ一杯分だけ、ゆったりと飲んでいるらしい。そしてそのままほろ酔い気分で床につくんだとか。
後、週に1回くらいの頻度で、教皇は女性を呼び、行為にふけっているらしい。
・・・本当にどうやって調べたんだ?すごい情報量に驚きだ。
(まだクロミルやレンカには調査してもらうとして・・・、)
有力な情報があったな。確か、女性を呼び、行為にふける、という情報だ。
(もしその情報が本当なら、上手く利用するしかないよな)
女性と行為にふけっている間、もしくはその直後に教皇の魔道具を破壊する、とかな。そのためにも、情報をもっと集める必要があるな。
(俺も俺で動かないとな)
レンカやクロミルばかりに働かせるのも悪いからな。
(まずは冒険者ギルドに行って情報収集だな。それから・・・、)
俺も俺で動き始めよう。
「それじゃあ早速で悪いが、これからのことを話す。二人とも、まだ大丈夫か?休憩が必要なら少し休んでからでも・・・、」
「いえ、このまま話してください。私はこのままでも大丈夫です」
「私も問題ありません。何せ私はアルジンの魔道具ですから」
「・・・そうか」
二人とも、昨晩からずっと頑張り続けていたから、少し疲れていると思っていたのだが、俺の気のせいだったのか。俺、人を見る目がないな。
「それじゃあまず・・・、」
「お兄ちゃん達、おはよー!」
ここで大きな声が聞こえた。声の主は、朝に相応しい爽やかな声を発した。。
「・・・あれ?お兄ちゃん達、もう起きていたの?てっきりまだ寝ているのかと思ったよ~」
「おはようございます。みなさん、もう起きていたのですね」
ここでルリとモミジが会話に入ってくる。二人はもう起きてきたのか。
(そういえば・・・、)
夜が明けてからずっと話していたからか、朝ご飯の時間に気付かなかったわ。
「ああ。ちょっとこれからのことについて話していてな」
俺はクロミルとレンカに視線を軽く送る。すると、二人は俺に向けて頷いた。
(・・・どういう意味だ?)
最初俺は、二人が何故ここで頷いたのか理解出来なかった。
(もしかして、今までの話を二人にしてOK、ということなのか?)
なら、これまでの経緯をかいつまんで話そうかね。
だがその前に、
「その前に、みんなで朝ご飯を食べようか」
俺のこの言葉に、
「うん♪今日もホットケーキが食べたーい♪」
「それではアヤトさん、私、お手伝いしますね」
ルリ、モミジは調理の準備を始めた。
「よろしかったのですか?」
ここでクロミルが、他の人達に聞こえないような、小さな声で話しかけてくる。
「ん?何がだ?」
「先にこれからのことについて話した方がよかったのではないですか?そうした方が今後動きやすくなると思うのですが・・・、」
確かに、クロミルの言いたいことは分かる。
必要な情報は出来るだけ早く共有すべきだと思うし、異論なんてない。
「けど、腹が減っては、これからの戦に支障がくるかもしれないからな。まずはみんなで腹ごしらえだ」
俺は自身の腹を触る。かなり我慢してきたせいか、お腹がかなり空き、音が鳴ってしまった。
「かしこまりました」
「分かりました、アルジン」
さて、腹を満たして休憩してから本格的に動くとしよう。
次回予告
『5-2-17(第404話) 襲撃プランの構想』
本格的に、教皇に関する情報を集めた結果、更なる情報を得る事が出来た彩人は、どのような手順で襲撃すればいいのか、作戦を組み立てる。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
感想、評価、ブックマーク等、よろしくお願いいたします。




