5-2-15(第402話) 賢猿の巣に突撃
ギルドに戻り、受付嬢に報告を済ませた。
「え!?賢猿の巣があったのですか!!??それに、巣にいた賢猿達も討伐したって、本当ですか!!??」
そういえば、依頼内容は賢猿5匹の討伐、だったな。巣にはどれくらいいただろうか。少なくとも20匹以上いたと思う。いちいち数えていなかったから正確な数字は分からんが。死体の数を数えれば分かると思うが、今はしないでおくか。
もちろん、討伐したことを証明するために、討伐部位を受付嬢に見せた。
「まさか本当に・・・?さすが、専属契約を結んでいる冒険者様、てところかしら」
どうやら、専属契約していることがここで活きてきたらしい。そういえば今の受付嬢、さっき担当してくれた受付嬢と違うような気がするのは俺の気のせいか?まぁ、きちんとやってくれるなら誰でもいいか。本音を言えば専属契約を結んでいるリーフがベストだろうが、今回ばかりは仕方ないか。
そして依頼報酬をもらう。
(本来、この依頼は報酬額一万円相当だったが、巣ごと討伐したことで、追加報酬で四万円。一日だけで総計五万円ねぇ)
半日も働いていないのにこの金額。この調子なら一日十万も余裕で稼ぐことが出来るな。年収換算で言うなら、一年三百六十五日で三千六百五十万円か。
(とんだ金持ちだな)
と、報酬金額について考えるのはこれくらいにしておくか。
依頼の報告ついでに、何か変わった事が起きていないか聞いてみた。
(まぁ、半日も経っていないし、そうそう変わった事なんて起きるわけないよな)
そんな諦めの気分で聞いたのだが、
「ああ、ありましたよ」
どうやら、俺達が賢猿を討伐している間、何かあったらしい。
「それで、何があったのです?」
「教皇が町の人々を教会前に集めてお祈りさせたらしいのです」
「へぇ~」
そんな話、ここに来る前にも聞いたな。本当にお祈りさせているんだ。別にお祈りという行為自体は問題ではない。問題なのは・・・、
「その時、教皇は杖を持っていましたか?」
「杖、ですか?持っていたと思います。又聞きなので正確なことは分かりません」
「そうか」
つまり、お祈りをさせることで、町の人々から魔力を奪い、蓄えていたと。まだ確定していないが、可能性は十分ありそうだ。
「毎日毎日お祈りさせて、そんなに信仰心が大事なんですかね?」
「・・・きっと、大事な人には大事なんだと思います」
俺みたいなボッチにも大切なもの、人がいる。きっと、お祈りしている人も、俺みたいに大切なもの、人がいるのだろう。そしてきっと、縋っている。その形の一つが、お祈り。地球でいうところの、アイドルの推し活動、といったところだろうか。例え全てを理解出来なくても、大切なものってあるからな。そういう類のものなのかもしれないな。
(だからといって、デベロッパー作の魔道具をそのままにしておくなんて危険な真似は出来ないがな)
あいつの魔道具は本当にやばいからな。黄の国で戦ったデベロッパー作のゴーレムなんか本当にやばかった。あれ一つで国が滅ぶぞ。
「大事、ですか。確かにそうかもしれませんね。
「・・・」
「・・・アヤトさん、どうかしましたか?」
「いや、ちょっと考え事をしていました」
「それでその後、ある冒険者が教皇の近くをたまたま通ったのですが、その時にある言葉を聞いたみたいなんです」
「ある言葉?それって・・・?」
「後もう少し、だったかと」
「!!??」
ということはまさか、近いうちに魔力が完全に溜まり切るのか!?
もちろん、魔力のことでない可能性もある。もしかしたら、今朝漬けていた漬物がそろそろ完成する、という意味なのかもしれない。
だが、そんな楽観視出来るほど、今の俺はのんきではない。
(とはいえ、すぐに動けるわけでもないしな・・・)
教皇の居場所とか、杖の場所を一切知らないからな。杖を壊そうにもどうしようもないのである。
(だからといって、いつまでも手招いているわけにもいかないよな)
なら、これから教皇に関する情報収集を本格的にするか。本当はもっとギルドで依頼をこなしつつ、町に馴染みながら情報を収集しようと思っていたのだがな。
(集まった情報次第だが、早くても明日、決行だな)
作戦は俺の脳内である程度考えてはいる。だが、色々服確定要素があるからな。その不確定要素をなんとかしないと。そのためにも情報がいる。あの教皇がいる場所。そして、その場所に関する情報。そして、魔道具を壊した後の逃走経路の確保。
(色々やることが多いな)
明日までに必要な情報を収集して、作戦を決行して・・・いけるのか?だが、やるしかない。
(もし教皇の持っている杖が、デベロッパー作の魔道具だとしたら・・・、)
考えるだけで恐ろしい。
「今日から色々話し合う必要があるから、今日から忙しくなるぞ」
「「「はい」」」
こうして俺達は、来たる日のために、情報を集める事にした。
一晩経過。俺達は色々話し合い、色々進展した。
まず、ルリとモミジが一緒に行動してもらうことにした。ルリの面倒をモミジに見てもらうためだ。ルリの奴、何をやらかすか分からないからな。二人には、この町を楽しみつつ、出来る範囲で情報を収集するようお願いした。
レンカには、賢猿から回収した魔道具の鑑定をお願いした。レンカ曰く、まだ鑑定し終えていないらしいので、その鑑定が終わり次第、クロミルの手伝いをお願いした。
クロミルには、無理しない範囲での潜入調査をお願いした。潜入して内部事情を知ることが出来れば、作戦も立てやすくなるかもしれないからな。
(俺は情報の整理に魔力池の作製、作戦の考案だな)
俺はボッチだから、人から情報を引き出すような、誘導尋問みたいな真似は出来ない。だから俺は独り、作業に没頭するのだ。
(・・・なんか俺、異世界に来てもボッチだな)
・・・やはり人間はそう簡単に変わらない、ということか。
て、俺の話はどうでもいいか。
簡単にそれぞれの役割を話し、お願いした後、それぞれ行動を始めた。
(といっても、ルリとモミジは寝て、俺、クロミル、レンカの3人だけだけどな)
なんて言ったって今は夕飯後の夜。子供は寝る時間だろう。モミジは子供じゃないかもしれないが、植物だからな。日が出ていないこの時間帯に動いてもらうのは辛いだろう。従って、俺、クロミル、レンカの3人で動き始めたのだ。レンカとクロミルは早速外に出た。ちなみに、毎朝全員集合して、情報を共有することには承諾してもらった。二人には負担がかかるが、後で何かケアしておくか。
俺はと言うと部屋に残り、ルリとモミジを見つつ、魔力池の作製を始めた。
(さて、俺もやるか)
俺は魔力池を作りつつ、【魔力感知】を使う。周囲には様々で、無数の魔力反応がある。
(この反応が全部人、か・・・)
数が多過ぎて処理が追い付かなくなりそうだ。これ、魔力池作りながら無理だな。一旦中断して。【魔力感知】に集中するか。
(ん?)
この町の中にひと際大きな魔力反応があるわ。無数の魔力反応にも大小の差はあるが、この反応はひと際でかいな。
(相当な実力者か?そんな冒険者いたか?)
受付嬢からこれといった話は聞いていないな。あの受付嬢、俺に話し忘れたのか?それとも、そもそも冒険者じゃないとか?それか、この反応が、俺達が今情報収集している教皇の魔力なのか?
(・・・【魔力感知】だと、誰が誰の魔力なのか分からないな)
知っている人なら分かるが、顔も知らない男の魔力なんて分からないな。
(ひとまず、場所だけは覚えておくか)
冒険者ギルドで買った簡易的地図に書き記しておくか。・・・ここら辺、だな。地図を見ながら印をつけていくか。
(でかい魔力反応があった場所と教会の場所、結構近いな)
もしかして、教会の隣に家を建てた奴がそうなのか?いや、そんな考察、今はどうでもいいか。
(それよりも、だ)
さっき見つけたひと際でかい魔力反応は、一つではなく二つ、だった。
(この時間で隣り合うように位置している二つの反応、ねぇ・・・、)
もしかして、大きな魔力を持っている二つの反応の主は夫婦なのか?それか、同性愛者、なのか!?・・・ないな。これはあくまで俺の妄想に留めておこう。
(もしかすると、片方の反応が、あの杖の魔力反応で、もう片方の反応が教皇の反応、か?)
その可能性はありそうだな。だが、確実ではないな。あくまで可能性の一つ、として脳内に留めておこう。確定するなら、レンカ、クロミルからの情報を聞いてからだな。
(さて、)
ひとまず、【魔力感知】を解除して、魔力池の作製に励むか。
(魔力池があれば、魔力を思う存分使えるからな)
魔力があれば、戦闘や回復等色々使えるからな。もしもの時のための保険として持っておくのも悪くないし。
(それにしても・・・、)
あのデベロッパー・ヌルは、一体どんな魔道具を作ったのだろうか。確か魔道具の名前は・・・、
「死への冒涜、ねぇ・・・、」
一体どんな効果なのか。その効果について、レンカやクロミルが明かしてくれると嬉しいな。さて、二人はどんな情報を持ってきてくれるのだろうか。
俺は二人の帰宅を待ちつつ、魔力池の作製を続けていった。
ところで、どうしてレンカは外に出たのだろうか。魔道具の鑑定って、どこでも出来るものじゃないのか?まぁ、魔道具の鑑定なんてやったことないし、魔道具の鑑定に何か必要な道具や条件があるのかもしれないな。
さて、勝手な推測はひとまずおいておいて、クロミルとレンカの報告を聞いてみるとするか。
次回予告
『5-2-16(第403話) 教皇のルーティーン』
賢猿の巣に関する報告を冒険者ギルドに報告した後、彩人達は教皇について調べ始める。たった数時間の調査だったが、彩人達はその数時間の調査結果を報告する。そんななか、教皇のルーティーンについて話を聞く。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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