5-2-11(第398話) シロネリへの同伴者と街に関する勉強
あの後、白の国の首都、シロネリに向かう者達の選定を行っていた。俺は最初、独りでいいと思っていたのだが、問屋はそのまま下ろさなかった。みんなとの話し合いの結果、クロミルを連れていく事にした。
そして、他にも連れて行く者が何人かいる。
「アヤトさん、私がアヤトさんから離れると生命が維持出来なくなって死んでしまいますよ?私も行きます」
「アルジンをシロネリまで安全安心に送迎出来るのは私だけです。それに私なら、普段アルジンの指輪にいますので、邪魔にはならないはずです。それに私がいれば、移動中の負担がほとんどなくなると思うのですが、如何でしょう?」
モミジの親切と、レンカの営業により、モミジとレンカも連れていく事にした。モミジの件は・・・申し訳ないな。何せ、俺の体のせいで、モミジも危険な場所に連れて行かなくてはならなくなったからな。後で詫びになにかしよう。レンカについては、ついレンカの口車に乗せられてしまった。レンカの言う通り、道中の負担が軽減されるのは嬉しい事なのでよしとしよう。
そして、俺、クロミル、モミジ、レンカはジャルベ達から白の国の首都、シロネリの地理について色々教えてもらっていた。なので、ジャルベやヴァーナ達の動向は不要となったのだ。なので連れて行かないことにした。出来るだけ少人数で行きたいからな。こればかりは仕方のない事なのである。
「・・・それじゃあ、後もう少しだけど、今日はこれくらいで終了します。お疲れ様でした」
今俺達は、キメルムの一人、ヴァーナからシロネリのことを教わっている。黒板らしきものには、シロネリっぽい都市の全容が描かれている。
(若干歪だが、街は円形状なのか)
円の中心にでかい建物、教会があると。そして、その教会から複数の道がのびているのか。
(まるで、この首都の中心、都民の生活の中心が教会通いである、と言わんばかりだな)
この首都の象徴は間違いなくこの教会だろう。だが、毎日みんなその教会に通っているとは限らないか。
(教会、ねぇ・・・)
地球では行ったことなかったが、内装はどうなっているのだろうか。暇になったら見てみようかな。
あ、そうそう。拘束していた騎士共の事なのだが、結果から言うと、首都に帰らせた。
話し合いの後、真っ先に体を全回復させ、装備を返し、ケツを叩いて帰還させた。肉体的には無傷なので、一見、成功したようには見えるはずだ。
(まぁ心の方は・・・諦めたわ。あいつらの自業自得だ、うん)
何せ、何度も心を折り、ぶっ壊したのだ。元に戻そうと思っても戻し方なんて分からない。なので、言葉遣いや目が廃人同然なのである。俺、こいつらと夜中に遭遇したくないわ。
「ほら、キチンと帰って、ちゃんと無事倒したと報告してこい。分かったな?」
「「「はい・・・」」」
俺の命令を聞いてはいたのだが、目が死んでいるので本当に分かっているのか分からん。
(これで少しは時間稼ぎになってくれると嬉しいのだが)
その後俺達は今の今まで、シロネリに関して勉強している、というわけなのである。
翌日。
「・・・これで、私達が知っているシロネリに関する情報は全て話しました。みなさま、ご苦労様でした」
「ふぅー。そっちこそお疲れ」
長い座学がようやく終わった。これほど真剣に勉強したのはいつ以来だろうか。高校受験以来だな。
(て、意外と最近じゃないか)
きっと、この世界での生活が色々と濃いせいで、地球での生活がかなり懐かしく、随分前の記憶と錯覚しているのだろう。俺、もうじいさんになったんじゃないか。
「もうずいぶん長い事生きたねぇ、ばあさんや」
「・・・そうでございますね、ご主人様?」
「そう、ですね。ですが、まだまだこれからですよ、アヤトさん!」
「?アルジンは一体何を言っているのですか?」
「・・・なんでもない」
もう二度とボケたりツッコミを期待したりするものか。そう心に誓った瞬間だった。ボケをしてもツッコまれないって悲しい事なんだな。お笑い芸人でボケとツッコミが必要な理由がよく分かったわ。独りでボケをしても虚しいだけなんだな。本当、虚しい・・・。
俺のどうでもいいボケはともかく、こうしてシロネリに関する勉強が終わり、いよいよシロネリに向かう準備を始める。
(つもりだったのだが・・・、)
既にほとんど、キメルム達がやってくれた。何でも、
「今の自分達に出来る事と言ったらこれくらいですから」
と言ってくれ、諸々の準備をしてくれたのだ。俺としても手間が省けたので嬉しい。きちんと感謝の言葉を述べ、出発の準備を進めていく。といっても、ほとんどのことをキメルム達がしてくれたので、やることは少ない。
(今の俺に出来る事は・・・武器の手入れ、くらいか)
とはいえ、何故か神色剣は常にピカピカで、手入れ不要な状態だ。となると、俺のアイテムブレスレットに保管されている魔銀製の剣でも手入れしておくか。
「流石はご主人様です。こんなことまでも予測し、事前に手入れまで済ませているとは!」
「あ~・・・うん、はい。そうだね~・・・」
複数の魔銀製の剣を出してみたところ、手入れ不要だった。おそらく、手入れしてから使っていなかったからだろう。このアイテムブレスレットに入れておくと、時間経過による劣化がないんだよな。もしかしたらあるのかもしれないが、俺の目には分からん。あったとしても誤差みたいなものだろう。
結果として、俺が今やるべきことは、武器や防具の手入れではなく、
「ご主人様、私もお手伝いいたします」
「いや、これくらいはさせてくれ。俺も久々にホットケーキ作りをしたいんだ」
「は」
これから食べる料理の準備だった。これから教皇と話すにしろ戦うにしろ、お腹が空いていたら上手く出来ないからな。
(それにしても、ホットケーキを作るなんて久々だな)
いや、ホットケーキそのものは最近作っていた。だが、こうやって意識的に作ろうとしたのは久々なのだ。最近作っていたと言っても、呆けていたり寝ていたりと、無意識で作っていたな。
(今思うと俺、かなり危ない調理をしていたな)
ホットケーキを作る際、火を使う機会がある。だから、手元が少しでも狂うと火傷する危険があるのだ。俺はそんな危険を知らず知らずのうちにおかしていたのか。今度から、きちんと起きて料理しよう。
・・・今更だが、無意識でホットケーキを作るってすごくね?この特技、誇れるんじゃね?
・・・はい、すみません。危険なことをしていたと自覚しています。反省しています。て、俺は一体誰に反省しているのやら。
「!?」
と、心の中で反省していたら、いつの間にか大量のホットケーキが目の前に陳列していた。どうやら俺は無意識のうちにホットケーキを大量に作っていたらしい。俺、言っている傍から無意識で作っていたのか。本当、俺は学ばないな。だから俺はいじめの対象に・・・、
(て、いかんな)
何故こんな時にいやな思い出を思い出してしまうのだろうか。本当、自分が嫌になる。
「・・・ご主人様?」
「ん?どうしかしたのか?」
「いえ、ご主人様の顔色が悪くなりましたので、どこか体調を悪くしたのかと思いまして。余計でしたでしょうか?」
「・・・いや。心配させて悪かった。もう大丈夫だから心配するな」
どうやら俺の自己嫌悪がクロミルに伝わってしまったらしく、クロミルを悲しい気持ちにさせてしまったらしい。これは申し訳なかったわ。今後は出来るだけ気をつけるとしよう。ただ、今後絶対出来る、とは限らないが。
次回予告
『5-2-12(第399話) シロネリへ出発』
彩人と共にシロネリに向かう者達の選定を終え、彩人達は白の国の首都、シロネリへ向かい始める。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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