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色を司りし者  作者: 彩 豊
第ニ章 鉛白な国の中にある魔道具と漆黒の意志
398/546

5-2-10(第397話) 拷問結果

(これで一通り吐かせ終えたか)

 さらに時刻は過ぎ、目の前の騎士はもう死んだ。

(いや、死んだというと語弊があるな)

 肉体的には死んでいない。だが、心が死んだのだ。

 具体的に言うと、漏らしているにも関わらず一切羞恥の感情が見られず、目が虚ろになっている。俺が拘束を解いても、一切動こうともしない。こういう人間を何と言うか・・・あ、思い出した。確か廃人だ。俺は目の前にいる騎士を廃人に変えたのだ。

(・・・俺って結構やばいな・・・)

 俺は改めて、自身の危なさを実感した。俺、地球にいなくて正解だったかもな。こんな人間が地球で暮らしていたら、確実に殺人行為を繰り返していただろう。この世界に来てよかった。まぁ、だからと言ってこの世界で何回も殺人行為をしてもいいわけではないのだが。そのあたりは・・・控えるとしよう。絶対にしない、なんてことは言えないからな。これからするかもしれないし。

(さて、こいつから聞いた情報をまとめておかないとな)

 後、目の前にいる騎士を拘束して、逃げられないようにしよう。目の前で放心こいつに逃げる気力があるとは思えないが、念には念を入れるとしよう。

「そこでじっとしていろよ。逃げたら・・・、」

 俺は最後まで言わないことで、騎士の恐怖心を倍増させた。もっとも、俺のこの言葉がきちんと騎士の耳に入っているか怪しいがな。こいつ、ちゃんと生きているのか?殺してはいないし、息をしているはずなのだが・・・。まぁ、生きていることは確認済みなので、こいつはこのまま放置でいいか。

(・・・さらに念をいれておくか。【結界】)

 俺はこの部屋を出てから、出た部屋を囲むように、複数の【結界】を展開する。これでやつは出られないだろう。

 そして俺は、この部屋を出て、みんなと合流することにした。


「・・・あ、アヤト!」

 俺がある大部屋に入ると、みんなの姿が俺の目に入った。みんな、俺より先に拷問を終わらせたんだな。ということは、みんな俺より拷問が上手いという事か。もしくは、拷問していた騎士共が早々に情報を吐いたか。

「そっちは終わったんだな」

 俺が確認の意味を込めて聞くと、

「ええ。それぞれ聞いてきた情報を整理し、みんなと共有するために集まってもらっている状態です」

「そうか」

 となると、これからみんなと話し合い、拷問で得た情報を共有する、といったところか。

 それにしても・・・、

「・・・ところで、あれは何をしているんだ?」

 今、ヴァーナとジャルベは、他のキメルム達と笑顔で談笑しているのは別にいい。けど、

(どうしてイブはホットケーキを食べているんだ?)

 リーフは俺と話している今も、ルリの頭を撫でているし。

「あ、あの、モミジ様!?何もそこまでしなくても・・・!?」

「いいのです!だってクロミルさん、私には出来ないようなことを長時間していたのです。何も出来ない私ですが、せめてクロミルさんのお世話くらいさせてください」

 何故かクロミルはモミジから手厚くお世話されているし。一体どうなっているんだ?

「う~ん・・・なんといいますか・・・。みんな、心の治療を受けていると言いますか・・・」

「心の治療?何かの病気なのか?」

 だとしたら、リーフ達に拷問させてしまい申し訳なく思ってしまうのだが。

「いえ。その・・・、」

 リーフは俺に近づき、俺の耳元で話し始める。

「今回拷問したことで、色々見たくないものを見てしまったと思います。それはもう、人によっては精神的病にかかってしまうこともあります。例え精神的病にかからなくても、絶大な負担がかかります」

「その負担を出来るだけなくすために、色々お世話している、ということか」

「はい」

 なるほど。拷問をするにも精神的負担は絶大だ。なにせ、拷問することで色々エグイものを見る事になるからな。大人でも生の臓器を見てトラウマになる人はいるからな。未成年の俺達が見たら、駄目な人にはとことん辛いだろう。だから、そのケアをするために、こうして心のケアを行っていると。

(今目の前で行われいていることは、心のケアの一環、ということか)

 それなら納得だ。

(でも、俺には必要なさそうだな)

 俺は別にそこまで辛かったり参ったりしているわけではない。だから、精神的ケアをしてもらう必要はなさそうだ。俺自身、ここまでグロ画像に耐性はあると思っていなかったのだが・・・。

 その後、他のみんなが精神のケアを行っているため、そのケアが終わるまで心を休め、これまで拷問で得た情報を脳内でまとめていた。

「アヤトの大親分、これ、食べてみてください。美味しいですよ♪」

「アヤトの大親分、肩、こっていない?肩、もんであげる♪」

 そして、キメルム達から癒しのひと時をいただいた。こいつら、意外にマッサージが上手いな。思わず何もかも忘れて寝てしまいそうになったぞ。


「それじゃあこれから、成果の報告、情報の共有をしようか」

「「「はい」」」

 この場には、俺達8人。

 キメルム達は、数が多いので、ジャルベ、ヴァーナ、スララカ、サキュラ、サキュリ、ピクナミの6人。

 計14人この場に集合している。他のキメルム達は別の場所で待機してもらっている。中には、拷問部屋で死んだように椅子に座っている騎士共を見張ってくれているキメルム達もいる。なので俺達はこうして集中して情報共有を行う事が出来るのである。

「それじゃあ、まずは俺から言うか」

 この言葉で、みんなの視線が俺に集中した。

(やっぱ、この視線はいつまで経っても慣れないな)

 集中する視線に内心戸惑いながら、俺は拷問で得た情報を話す。

「なるほど。アヤトもその杖のことを聞き出していたのですか」

「そう・・・ん?もってことは・・・?」

「はい。私も杖に関することを聞きましたので」

「杖に関する事か。聞かせてくれるか?」

「もちろんです」

 どうやら次は、リーフが話す番のようだ。

「騎士達がここを襲撃した理由は、おおかたアヤトが話していた理由と同じでした。それに追加して、私は杖に関するある話を聞きました」

 リーフからの話を簡単に要約すると、どうやら杖を持った教皇は、町の人々に祈らせたらしい。なんでも、この首都の繁栄のためと言い、祈らせたのだとか。その際、リーフが拷問した騎士の話によると、町の人が祈りを捧げた際、町の人から魔力が抜けていき、杖に付いていた宝玉に魔力が溜まっていったのだとか。

(それで結局、宝玉に溜まった魔力の使用用途までは聞けなかったと)

 俺と同じ結果か。もしかしたら、他の人ならなにか聞いているのかもしれないな。

「…リーフが話したのなら、次、私」

 次は、イブが話してくれるようだ。

「…襲った理由については、アヤトが話してくれた内容とほぼ一緒。それで、騎士達も魔力を注いでいた」

「・・・なるほど。町の人達だけでなく、騎士からも魔力を徴収していたと」

「・・・ん」

 その教皇は、そんなに魔力を集めて一体何をするつもりなんだ?その思考に関してひとまずおいておくか。

 次に、スララカとヴァーナが、拷問の結果を報告してくれた。

 二人ともめぼしい情報を引き出すことが出来なかったらしいが、宝玉に魔力を集めている、ということを話してくれた。

(そんな高頻度で宝玉に魔力を集めているのか?)

 俺は思ったことをみんなに聞いた。

「その宝玉、やばくないか?」

 具体的なことは分からないが、きっと今もあらゆる手段で宝玉に魔力を集めていることだろう。そこまで魔力を集めて一体何をするつもりなのだろうか。

「ええ。おそらく、魔力を一定量集める事で何かの魔法が起動する魔道具でしょう。流石に詳細な魔法の効果までは分かりませんが・・・、」

「・・・ん。リーフに同意。けど、一番気になるのは・・・、」

「ええ。起動する魔法の詳細な効果です。もし、辺り一面を焦土にする魔法が起動したら・・・ぞっとします」

「「「!!!???」」」

 リーフの焦土、という言葉にジャルベ、ヴァーナ、スララカは驚愕した。

(もちろん、リーフが言った焦土にする魔法が本当とは限らないが・・・、)

 絶対に間違っている、とも言いきれないところがもどかしい。だから、リーフの言葉に驚いたのだろう。かくいう俺も内心ビビっているからな!・・・心の中とはいえ、偉そうなことを言えないな。

「ふむ・・・」

「?どうした、レンカ?」

「いえ、なんかこう・・・思い当たる節があるような、ないような?」

「「「!!!???」」」

 レンカの言葉に、レンカ以外の全員がレンカを見る。

(思い当たる節がある、だと!!!???)

 ということはまさか!?

「その教皇が持っている宝玉というのが、あのデベロッパーが作った魔道具だと言うのか!?」

 だとしたら、レンカに思い当たる節があるのも頷ける!

「う~ん・・・。そうかもしれないし、そうでないかもしれません」

「・・・なんか煮え切らない返答だな」

「しょうがないじゃないですか。覚えていないので断言出来ないのです」

「そっか」

 覚えていないのであればしかたがないか。なら、覚えている範囲で聞いてみるか。

「仮に、だ。仮に、教皇が持っている宝玉というのが、デベロッパーが作った魔道具だとしたら、どんな効果を持っているか分かるか?」

 これでもしレンカが覚えていたら、ある程度対策を練ることが出来るはず。

「確か、くだらない効果だったのは覚えているのですが・・・、」

「くだらない?」

 どういう意味だ?

(もしかして・・・?)

 一生排泄不要になるとか、持っているだけで気持ち良くなるとか、そんな効果か?だとしたら本当にくだらないな。そのために多くの人から魔力を恵んでもらっているというのか?

「ええ。確か・・・あ、思い出しました!」

「!?どんな効果だ!!??」

「あ、効果ではないのですが、魔道具の名前を思い出したのです」

「あ、名前ね・・・」

 俺はてっきり、レンカが魔道具の効果を思い出したのかと思い、興奮してしまったのだが、興奮損だな。

「ええ。私の記憶が確かなら、その魔道具は【死への冒涜】、という名前だったはずです」

「「「死への冒涜???」」」

 なんか中二的病が発症したかのようなネーミングセンスだな。

「死っていうのは、死亡の死でいいんだよな?」

「はい。その死で合っています」

「ふむ・・・」

 その名前だけじゃあ、どんな効果の魔道具なのかは分からないな。

「名前以外に何か覚えていることはないか?」

「ないですね」

「そうか・・・」

 となると、今やれることは一つだな。

「ひとまず、その教皇を要警戒だ。絶対一人で近づこうとするな」

 その教皇にひっそりと近づき、暗殺するように魔道具を壊す、だな。教皇については、殺す殺さないはこの際どうでもいいな。その魔道具を壊す事最優先だ。

「それと、教皇が持っている魔道具は、俺の最大火力で破壊する。そのためにみんな、協力してくれるか?」

「「「はい」」」

 どうやら魔道具の破壊にキメルム達全員協力してくれるらしい。

「その魔道具を壊せば、俺達を脅かす脅威が一つ減るのだろう?なら、俺達が協力しない手はないな。だよな、みんな?」

 ジャルベの言葉に、キメルム達全員頷く。

(そう考えるか)

 俺は正直、さっきの提案は自分勝手だと思っていた。

 なにせ、俺の目的は教皇の魔道具破壊で済むが、こいつらキメルム達は違う。俺が魔道具を破壊したところで、こいつらに対する扱いは変わらないと思っていたからだ。

(それなのにこいつらは、俺の案を前向きに考えてくれた)

 なら俺は、こいつらのためになるようなことを出来るだけしていかなくちゃな。そのためにもまず、ここを護ろう。

「そのために、俺がこの国の首都に独りで向かう。それまでに、俺に首都のことを教えてくれ。土地勘がまったくなくてな」

 これから隠密行動をとることになるだろう。そう考えると、最低限の人数で行動する事が必須となる。なら、俺独りで十分だな。そう考えていたのだが、

「「「独りで???」」」

 ・・・どうやら他の人達はそう考えていないらしい。主に、リーフとイブが怪訝な顔をしているご様子。一体何が二人をそうさせているのだろうか。

「・・・何か、問題があったのか?」

 俺は内心怯えながら二人に聞く。これ絶対、俺に文句あるパターンじゃん・・・。文句、聞きたくないなぁ。

「・・・アヤトの意見は分かった。教皇が持っている杖、そして宝玉にも何かとんでもない効果を秘めていそうなことも分かった」

「ですが、何故!?アヤトが独りで首都に向かうという結論に至ったのですか!!??」

 どうやら二人は、俺が独りで首都に向かう事を快く思っていないらしい。だが、俺だって理由なしで独り向かおうと思っていない。ちゃんと理由があるのだ。

「独りで行った方が色々と都合がいい。例えば、作戦を変更するために話す時間が無くなる、とかな」

「ですが、独りで出来る事なんて限られています」

「ああ。だがら、事前に色々準備をすれば問題ないと思っている」

「…相手がどんな魔法を使うのか分からないのに?」

「う」

 イブの指摘が俺の心に刺さる。何せ、イブの指摘は的を射ていたからだ。

「さらに言えば、その教皇が持っている魔道具の効果もほとんど不明です。相手が使う魔法も、魔道具も不明。そのような状況を独りで乗り越えられると?それほど、自分に自信があるのですか?」

「・・・」

 リーフの指摘は本当に苦い。リーフの指摘は正論だと俺自身思うし、リーフが言う可能性に目を瞑った自覚もあるからだ。良薬は口に苦し、と言うが、本当に苦いものだ。

(だが、言い返せない・・・)

 これほど苦い忠告も、全部俺の事を思っての発言だと理解しているからこそ、下手な言い訳が出来ず、リーフの指摘点を踏まえなくてはならない。

「…少なくとも、首都シロネリの情報を持っている者を同行させるべき。後は・・・、」

「私が同行します」

 イブの思考に、クロミルが発言する。

「クロミルちゃんが?」

「はい。私であれば、どんな状況でも対応出来ると自負していますし、ご主人様の考えを迅速、確実に理解出来ます。なので、ご主人様の不安点を解消出来るかと提案します」

「・・・」

 確かに、クロミルなら俺の思考を正確に読み取れそうだ。それはそれで怖いが、この場面においては助かりそうだ。少なくとも、性的なことを考えている時は思考を正確に読み取らないで欲しい。

「大丈夫です、ご主人様。私が読み取るのは、今必要だと思った情報だけを読み取っていますので」

「・・・そうか」

 ・・・今俺、口にだしていなかったよな?どうして俺の思考を全て理解したかのような発言をしたのだろうか。

(少なくとも、この読心術は役に立ちそうだな)

 みんなの視線を見る。どうやらこの場の空気は、

“クロミルを連れていけ”

 という流れになっていた。

「・・・それじゃあよろしく頼む」

 俺は折れたように、クロミルにお願いする。

「は!このクロミル、ご主人様の名に恥じぬよう、命の限り尽くさせていただきます」

「いや、そこまでしなくていいから・・・」

 相変わらずクロミルはオーバーだな。

「それじゃあこれからジャルベ達にシロネリの事を教えてもらうか。ジャルベ、教えてくれるか?」

「ああ。今まで集めた情報、全部教える。から、」

 ジャルベは俺に近づき、俺の胸に拳を当てる。

「頑張れよ。出来るだけ協力するから。今度は、こっちが助ける番だ。だよな、みんな?」

 その後、ジャルベはキメルムのみんなに声をかける。キメルム達全員、ジャルベの問いかけに頷いた。

「だから、いくらでも聞いてくれ」

「頼むぞ、ジャルベ。そしてみんな。クロミルも、改めてよろしく頼む」

「「「はい」」」

 さて、頑張るとしますか。

(もし教皇が、デベロッパー製の魔道具を持っているとしたら、)

 最悪、破壊の祭りが開催するかもしれないからな。

(そういえばあいつら、今はどこにいるのかね)

 確かデベロッパーは、メイキンジャーとパラサイダーに連行されていたな。一体何の目的でデベロッパーは魔道具を作っていたのだろうか?

次回予告

『5-2-11(第398話) シロネリへの同伴者と街に関する勉強』

 騎士達を拷問して、教皇が持っている杖に怪しさを覚える彩人達。その杖を、デベロッパーが開発した魔道具と推測した彩人は、シロネリに向かう事を決意する。最初、独りで行こうと思っていたが、周囲の者達の説得で、何人か引き連れて向かう事にした。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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