5-2-9(第396話) 騎士への拷問
時刻は少し過ぎ、俺はある騎士の前にいた。
「―――!?――――!!??」
その騎士は何か言おうとしていたが無駄だ。口に猿轡を装着しているからである。
そして、首、手首、足首の3個所に錠が繋がれている。その錠は、着けられたものの魔力操作を妨害する機能が備わっている。俺が前に着けられた錠の機能を再現である。しかも魔銀で作ってあるから、耐久度もかなりのもので早々壊れる事はない。
(自分でお願いしといてなんだが、よくこんなの作れたな)
どうやって製作したのかは不明だが、流石はレンカだ。魔道具の事に関してはレンカに任せるのが最適だ。
俺は騎士に浸けていた猿轡を外し、会話可能な状態にする。
「さて、なんで捕まったか分かるか?」
「死ね!」
いきなり物騒な言葉が返ってきた。せめて俺の質問には答えて欲しいものだ。
「大丈夫。俺はそう簡単に死なないから。それで、俺の質問には答えてくれるよな?」
「貴様みたいなキメルムの仲間に話す事なんてあるか!さっさと俺を解放して死ね!」
・・・こいつ、さっきから俺の事を死ねばかり言いやがって。それしか言えないのか?
「だが、話してもらうぞ。こっちは色々聞きたいことがあるんだ」
主に魔道具の件なのだが。キメルムの件は・・・重要だが、聞けなかった場合は諦めるとするか。
「何度も言うが、貴様みたいなキメルムの仲間に話す事なんてない!さっさと俺を解放して死ね!」
・・・こいつ、さっきも同じようなこと、言ってなかったか?
仕方がない。元より最初からするつもりだった拷問を始めるとするか。
「はぁ」
思わずため息がついてしまった。
俺だって好きで拷問なんてしたくない。が、守るため、貴重な情報を吐かせるためには仕方がない。
(【空気の刃(エアカッタ―)】)
俺は無言で騎士の右足の指を全て切断する。
「!?ああぁぁ!!??」
叫びたい気持ちは分かる。足の指を全部まとめて切断されたのだ。激痛という言葉では言い表せられないほど苦痛だろう。
だが、俺はそんなの気にせずに話しかける。
「大丈夫。お前は絶対死なせない」
俺は即座に、目の前の騎士に白魔法をかけ、切断した足の指全てを回復させる。
「!?」
「言ったろ?お前は絶対死なせない。が、」
俺は再び、騎士の足の指を全部切断する。
「!!??ああぁぁ!!??」
「死ぬ以上の苦痛を与えると覚悟しておくんだな」
「!!!???て、てめぇ!!!!????」
騎士は俺を思いっきり睨みつける。これほど鋭い視線はいつ以来だろうか。似たような視線なら、地球で何度か受けたことがあるな。
「痛い目を見たくないなら、さっさと俺が望む情報を教える事だな」
「誰が貴様みたいなキメルムの言う事を聞くか!さっさと俺を解放して死ね!!」
「素直に話したくないならそれでいい。その分、」
次に俺は、両手の指先を切断する。
「!!!???」
「死ぬ以上に辛い体験をさせてやるよ」
この時、自分でも驚くくらい冷たい声が出ていた。
(きっと、こいつといじめっ子を重ねているんだろうな)
こいつらは、キメルムをいじめるいじめっ子。
つまり、地球で俺をいじめていた奴らと同じ存在だ。
そう考え、いつも以上に非情になっている自分がいる。
もしかしたら、こいつらにも何かやむにやまれぬ事情があって、キメルム達を攫おうとしているのかもしれない。
(だとしても、俺が手を抜いていい理由にならないな)
どちらにしても、こいつから聞きたい情報はあるんだ。今までキメルムを襲ってきたんだ。逆に襲われ、捕まり、拷問される覚悟もあっただろう。なかったら今までこいつらを襲っていなかっただろうし。
「俺を、甘く見るなよ?」
「ひっ!!!???」
俺が低い声で告げると、騎士は俺を怯えた目で見始める。
(さて、殺さない程度にいたぶるとするか)
まずは襲ってきた理由を吐かせるとしよう。
そして次は、魔道具の件。
出来ればこいつが全て吐いてくれると嬉しいのだが。
まぁ、頑張ってみるか。
結果、俺は何時間も拷問し続けた。
俺は適度な休憩を挟んでいたのだが、あの騎士には一切の休憩を許さなかった。具体的に言うと・・・いや、辞めておこう。あまり他の人に聞かせたくないようなことを色々したからな。こういう時、地球で拷問に関する知識を蓄えていて良かったと思う。
え?どうしてそんな知識を蓄えていたのかって?そりゃあもちろん、思春期な男として、様々なエロ本を読み漁り、それ関連で少し・・・ごほん!!いや、何でもない。今の話は聞かなかったことにしてくれ。
とにかく最終的には、こいつから色々聞くことが出来た。
まず、こいつら騎士共の目的は、キメルム達を自身の町、シロネリに連れ去ることだった。なんでも、シロネリに供給されるはずだった魔力がなくなってしまったんだとか。その魔力を補うため、今回の作戦を決行するに至ったらしい。
(やっぱ、あの魔道具を壊したせいか)
あの魔道具、レンカの言葉通り、キメルム達の魔力を吸い取るためだったらしい。そして、吸い取った魔力は白の国の首都、シロネリに送られ、活用されていたのだとか。どのように活用されていたのか聞いてみたところ、
「さ、作物や水を生成するのに使っていた。多量の魔力を混ぜると、魔力が回復し、味の質が向上するんだ・・・」
とのことだった。
(そのせいでこいつらキメルム達は空腹となり、この土地が痩せ細ったというのか・・・!?)
騎士の話を聞いた俺は思わず、騎士の両手両足を切断してしまった。やはり俺は、こいつらキメルム達に相当感情移入しているらしい。俺は慌てて両手両足を回復させ、死んでいないかどうか確認した。その結果、死んではいなかったが気絶していたので、俺は騎士の顔を思いっきりぶん殴って起こしてあげた。
「!?な、なにをしやが・・・!?」
起こしたのは良かったのだが、うるさくなると思い、俺は思いっきり騎士の頬にビンタを複数回くらわせ、黙らせることにした。しばらく無言で騎士の頬をビンタし続けると黙ったので、俺は再び騎士を拷問し、話を聞くことにした。
ここに来た目的は大体聞き出すことが出来たので、次に魔道具の話をふってみた。
すると、面白い話が聞けた。
何でも、シロネリで過ごしているこいつらの上司が、今まで見たことのない杖を持っているのだとか。その杖には、紫と黒を混ぜ合わせたような色の宝玉がついているらしい。
(怪しいな、その杖)
その杖を直接見ないとなんとも言えないが、その杖の性能によっては、あのデベロッパーが作った可能性も考慮しないとな。そいつが持っている杖の能力について聞いてみたところ、特に有力な情報は聞けなかった。
「だが時々、あの杖・・・というより、杖に付いている宝玉に魔力を注いでいたような・・・?」
それ、結構重要じゃね?だが、宝玉に魔力を注いでいるから何なんだ、という話になる。う~む・・・。駄目だ。情報が少なすぎて分からん。宝玉に魔力を注いで何かをしようとしているのか?でも一体何を・・・?
分からないので、その杖の場所を吐かせることにした。
「いつも教皇様が身につけていらっしゃる故、どこに保管しているかは分からん・・・」
と、吐いてくれた。自分で吐かせておいてなんだが、そんな重要そうな情報を吐いていいのだろうか。まぁ、それだけ俺に恐怖しているのかもしれないな。この調子で色々話してくれると嬉しい。その旨を伝えると、
「もう、もう殺してくれ・・・」
どうしても俺に殺人の罪を負わせたいらしく、自分を殺してくれとお願いしてきた。それほどまでに痛い思いをしてきたのだろう。そんな騎士に俺は手を置く。
「大丈夫」
その言葉で、騎士の顔に希望の色が映り始める。
「これまでジャルベ達、キメルム達が受けてきた痛みを何億倍にもして返し、心を思う存分殺した後で解放してやるから」
俺のこの言葉で、騎士の顔色が希望から絶望へと変色した。おかしいな。俺、お前を殺さないと確約したはずなのにな。
その後俺は、騎士を拷問し続けた。何か重要な情報を知っていないか、執拗に、執念深く拷問し続けながら聞く。
(俺ってやっぱ性格悪いな)
何度もこの騎士の体に剣を突きつけ、足や腕を切断した。それなのに、俺はほとんど感情を抱かなかった。辛いとか悲しいとか、そんな感情を抱かなかった。
(無意識に、昔俺をいじめていた奴らと重ねているのかね)
そして今、こいつに八つ当たりをしている。
(俺もまだまだ子供だな)
本来、こいつは俺に何もしていない。なのに俺は・・・。自分の性格の悪さにうんざりしてしまう。
そうやって自己嫌悪しながら、俺は更に情報を吐かせ続ける。
次回予告
『5-2-10(第397話) 拷問結果』
拷問し、情報を得た彩人達は情報を共有する。共有していく情報の中で、気になる情報があった。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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