5-2-8(第395話) 騎士達との応戦
みんなで食事をした翌日、俺達は早朝から準備をしていた。早朝から何の準備をしているのかというと、
「イブ―?そっちは問題ないですかー?」
「…ん。無問題」
騎士共を迎える準備である。今、騎士達を見張りつつ、罠の最終チェックを行っている。町への被害を考慮し、戦えないキメルム達は町の端へ避難している。
(最も、町に被害を出すつもりなんてないがな)
ボロボロな町だが、キメルム達が住んでいる大事な町だ。この町に踏み入れさせたとしても、絶対、壊させる真似なんてさせるものか!
(・・・やっぱ俺、こいつらキメルム達を護ろうとしているな)
一体どういう心境の変化なのだろうか。かつて俺を殺そうとしたやつらを護る、なんてな。
(まぁいいさ。この機会を利用して、あの騎士共から魔道具に関する話を聞きだすだけだ)
元々俺は、この国にあるあのデベロッパーが作った魔道具を破壊しに来たのだ。その魔道具を破壊したら俺はこの国を出ていくつもりだ。
(そしたら次は、どの国に行こうかね・・・)
て、いかんいかん。今はこれから来る騎士共の対応に集中しないと。先の事を考えるのは少なくとも今じゃない。
(周りを見たところ、騎士共を迎える準備はほとんど出来ているようだな)
後は、騎士共がいつ来るか把握するくらいか。そういえば、騎士共っていつ来るんだ?前は昼前とか言っていた気がするが、その時間で合っているのだろうか?直前で悪いがもう一度確認しておくか。
ジャルベに確認してみたところ、ジャルベがヴァーナに聞いてくれた。そのヴァーナによると、もう間もなくこの町に到着するとの事。
(いよいよ、か)
この国の騎士共がどれほど強いのか不明だが、上手くやってくれよ。
(まずはあの双子、サキュラとサキュリ、だな)
みんなが俺の負担を軽くしてくれたおかげで、俺は拷問だけすればいいことになった。なので、俺は陰から他の人達の活躍を見るとしよう。
(一応、騎士共がどこにいるか分かるようにしておくか。【魔力感知】)
すると、複数の魔力が感知出来た。てか、【魔力感知】を使えばわざわざジャルベに聞く必要なかったんじゃ・・・?まぁいい。魔力を少し節約した思っておこう。
(この二つの魔力と位置から察するに、サキュラとサキュリだな)
二つの魔力が複数の魔力に近づいていっているな。
(作戦、上手くいってくれよ)
俺は祈りながら、【魔力感知】を使い続ける。
(とはいえ、もっと詳細に知りたいところだ。【魔力感知】だと、魔力の動きくらいしか分からないし・・・、)
だからと言って、あの二人に近づいて行ったら迷惑をかけるかもしれない。だから、ここからでもサキュラとサキュリの活躍が目視出来るよう、【赤色装】で視力を強化しておくか。
(お。これで見えるようになったな)
サキュラとサキュリ、槍を持っているな。あの槍で騎士共を攻撃するつもりなのか?
(・・・ん?)
なんかサキュラとサキュリの周囲がおかしいぞ。なんか、桃色の雰囲気が二人を包み始めているな。大丈夫、なのか?
(!?)
なんか、急にお胸がもの凄いことになっている女性が見えるようになっていないか!?あの女は一体どこから現れたんだ!?というか・・・、
(あの女と、やりたい)
あの女を見ていると、急に性欲が倍増し、俺の・・・、
(は!!??)
あ、危なかった。
あやうく、作戦中にも関わらず、性欲に負けて思わずあの場に急行するところだった。おそらく、あの女は幻影で、サキュラとサキュリの2人で生み出したものだろう。きっと、あの幻影も何かの魔法の類だな。
(なるほど。あの幻影で騎士共を魅了し、誘導していくのだろう)
事前に教えてもらっていたとはいえ、これは男に色々と辛いな。戦い中に欲情するなと言われればそれまでなのだが、生理現象なのだから、ある程度は許して欲しい。
(となると、今もサキュラとサキュリに向けて剣を構えている騎士共は女、ということだな)
どうやらサキュラとサキュリの魅了は、同性には効果をなさないらしい。もしかしたら、同性愛に目覚めている女騎士なら、魅了にかかっていたかもしれないな。後で聞いて・・・て、今はこんな推測している場合じゃないな。
(サキュラとサキュリ、かなりピンチなんじゃないか?)
女騎士共は最低でも5人以上いて、全員臨戦態勢だ。数的に不利な状況だ。
(ここで作戦通りなら・・・お?)
ここで突如、サキュラとサキュリの後ろから別の魔力を感知した。どう考えてもサキュラとサキュリの魔力じゃないな。
(この魔力はモミジだな)
何度も似たような魔力を感知したことがある。この魔力はモミジの魔力だ。それとは別の魔力があるな。この別の魔力はおそらく、ピクナミの魔力だな。位置的に地中か?
(お?)
そして突如、地面から太い幹のような蔦が出現し、女騎士共を拘束していく。
(【赤色装】で視力だけでなく聴力も強化されているからか、あいつらの声が聞こえてくるな)
なんか、放せとかやめろとか言っているが、剣を構えながら近づいてきて、今までこいつらキメルムを殺してきたというのに、そんな我が儘が通じると思っているのだろうか。
(あ、気絶した)
見た感じ、死んではいないようだ。おそらく、これから拷問するために生かしてくれたのだろう。
(・・・すげぇな、みんな)
自分の役割を十分に果たしてくれているな。なら俺も頑張らないとな。
(・・・ん?)
なんか、おかしな場所に魔力の反応があるな。
サキュラ、サキュリの魔力の反応と、騎士共の魔力は分かる。町の端っこにある複数の魔力の反応は、戦えないキメルム達の魔力だってことは分かる。
だが、騎士共の後方にも魔力を感知出来た。一瞬、魔獣の類かと思っていたのだが、やけに違和感がある。
(まさか・・・人か!?)
俺が推測していると、動きを感知した。
魔力の反応は騎士の後方から、この町を囲むように移動を始めた。
(魔獣が、こんな統制のとれた動きをしてくるか?)
まるで、これからキメルム達の町を破壊するような・・・!?
(まさか!?)
俺は【赤色装】で強化した目で、魔力の反応があった地点を見る。
(!?やっば!?)
その地点に、どう見ても魔獣ではなく、人が立っていた。なんて言っているか詳細は不明だが、なんか呪文のようなものを唱えている。
(なんとかしないと・・・!?)
俺が動こうとすると、その直前、突如杖を持っている人がぶっ飛んだ。
(!?誰だ!!??)
俺は【魔力感知】で周囲の状況を確認する。
・・・どうやら、俺の助けは不要らしい。
「まったく。ルリ達がいるところを壊そうとするなんて、馬鹿な人~」
「俺達の敵、潰す」
ルリとドーカリ―が立ち塞がっていた。
「モミジお姉ちゃんにも話はしてあるから、外にいる変な人は全員捕まえるよ」
「それでもまだ抵抗するなら、力の差を見せつけるだけだ」
ドーカリ―の呼気に炎が見える。
「!?化け物どもめ!死ね!!」
どうやら杖を持っていた奴がルリ達に火の球を撃ってきたな。
(だがきっと、)
ルリ達なら大丈夫だ。
「氷れ」
ルリが手をかざしたかと思うと、火の球が氷った。相変わらずルリの青魔法は凄いな。
「まったく。その程度の火でルリのことをどうにか出来ると思わないでほしいな」
ん?急にルリの近くに・・・なんか白い細長い動物、蛇みたいな動物がいるな。その白くて細長い動物から煙がでているな。
「ん?こいつらの場所が分かったの?ありがとう♪」
ルリは白い蛇みたいな動物を撫で始めた。そんなことをしていて大丈夫なのか?目の前の男、ちゃんと行動不能にしておかないとまずいんじゃないかのか?
「舐めるな!」
男は、ルリが白い蛇みたいな動物の頭を撫でている隙を狙い、さきほどより大きな火の球をルリに向けて放つ。
「ふん!」
その火の球をドーカリ―は、拳で思いっきり殴りつけてかき消した。
(あの火の球を殴ってかき消すとか、どんな拳をしているんだよ・・・)
ルリも結構規格外だが、ここにいるドーカリ―みたいなキメルム達も結構規格外なんじゃ・・・?
「ありがと♪それじゃあいくよ~」
ルリは白い蛇みたいな動物の頭に手を置いた。
(!?)
すると、杖を持っていた男が一瞬で氷漬けになった。
「ありがと♪蛇ちゃんのおかげで、あれらの居場所が分かったからね」
(・・・なるほど)
おそらく、あの白い蛇みたいな動物が、目の前にいる騎士共の位置をルリに教えたのだろう。そして、位置を把握したルリが、そいつらをまとめて氷漬けにした、そんなところか。
・・・本当、ルリのスペックの底が知れないな。
(本当にこいつらはルリの魔法で氷ったのか?)
俺は確認の為に、周囲を見渡す。
(まじかよ・・・)
町を囲むようにいた騎士共は全員氷漬けになっていた。氷漬けになっていた騎士共付近に白い蛇みたいな動物がいた。
そして、その氷漬けになった騎士共の近くの地面から太い蔦が伸び始め、氷漬けの騎士共を拘束していく。これはきっと、ピクナミ達の仕業だな。
(ルリやモミジ達、事前に相談していたな)
かなりの連携だった。ルリが氷漬けにして行動不能にする。その後、間髪入れずにモミジ達が拘束し、相手を移動させる。完璧な連携だ。なんか先日話していた作戦と若干違うような気もするが、誤差の範囲内だろう。結果良ければ全てよしだ。
(後は、俺がきちんとこいつらから必要な情報を聞き出すだけだ)
何故こいつらを狙うのか。大方推測出来ているし、聞く必要性はあまりない。
(本当にあいつらは、キメルム達から魔力を吸い取るためだけに利用するだけかね)
だが、きちんと話を聞かないとな。
次回予告
『5-2-9(第396話) 騎士への拷問』
騎士達を拘束した彩人達は、情報を聞き出す為に拷問を始める。その結果、騎士達からこのゴーストタウンに来訪した理由を吐き出させることに成功した。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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