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色を司りし者  作者: 彩 豊
第ニ章 鉛白な国の中にある魔道具と漆黒の意志
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5-2-3(第390話) どんな世界でも勉強は大事

 俺は少し歩き、ある家の中に入った。

「も、もうやめてくれ。頭が壊れる・・・!」

「…この程度で根をあげちゃ駄目。あなたはここのキメルム達を束ねる長的存在。なら、最低限の教養、礼儀は身につけるすべき」

「そんなの、全部ヴァーナに任せるからいい!俺は、やりたくない!」

「親分・・・」

 その家の中には、イブがジャルベ、ヴァーナに何か教えていた。何かというのは・・・俺も分からん。

「…アヤト、そっちはどう?」

 イブは俺の存在に気付いてくれ、声をかけてくれた。俺、人に気付かれない影薄のボッチじゃなかったんだな。少し感激だ。・・・自分でも、感激するところ違くね?と思ってしまった。まぁいいや。気にしないでおこう。これも自虐の一種だと思えば。

 ・・・ほんと俺って結構な頻度で自虐するよな。自分で自分が嫌になるな。

「…アヤト?」

 おっと。自分の世界に入り過ぎてしまった。

「いや、なんでもない。気にしないでくれ」

「…?分かった。それで、どうだった?」

「ん?」

 どうだったって、何がだ?・・・ああ、食料の方か。俺は出来るだけ簡潔に説明しようと心掛けた。

「…なるほど。大体分かった」

 どうやらイブは俺のつたない説明で理解出来たらしい。

「それで、こっちはどうなっている?」

 今見たところ、ジャルベが諦めの姿勢を見せた、くらいしか分からないんだよな。イブの教え方がよほど鬼畜だったのだろうか。

(けど・・・)

 隣のヴァーナはケロリとしているんだよな。もしイブの教え方が鬼畜だとしたら、ヴァーナもジャルベ同様諦めの姿勢を見せるはず。だが、ヴァーナは今も平常運転のご様子。ということは・・・?

「…ヴァーナは問題ない。けど・・・、」

 イブはちらりとジャルベを見る。

 なるほど。やはりジャルベに問題があったか。

「だって、食事の作法とか挨拶の作法とか世界の歴史とか、こんなの、やっていられるか!」

 確かに作法とか歴史の勉強は嫌だわ。俺、勉強嫌いだし。

 勉強嫌いな人の気持ちが分かるから、ジャルベに助け舟でも出してやるか。

「そこまでジャルベに教える必要なんてないんじゃないか?見たところ、ヴァーナが出来ているみたいだし、それでいいんじゃないのか?」

 俺の助け舟がよほど嬉しかったのか、ジャルベが凄い顔でこちらを見てきた。よほど辛かったんだな。俺もその気持ちはよく分かる。

「…それは駄目」

 だが、俺の助け舟は、イブという大嵐が発生して頓挫してしまった。イブよ、容赦ないな。

「…さっきも言ったけど、ジャルベ、あなたはここのキメルム達を束ねる長的存在。なら、最低限の教養、礼儀は身につけるすべき」

「だったら、その時がくれば長代理としてこのヴァーナを出させればそれで全部解決じゃないのか?」

「…ならあなたは、最低限の礼儀、作法すら知らない長に付いて行きたい?」

「う!?そ、それは・・・」

「…もっというと、あなたは、呼吸するように人を罵ったり、人のモノを平然と盗んだりするような人に付いて行きたい?」

「・・・」

「…そんな人だと思われないため、そんな人にならないため、勉強する必要がある。分かった?」

「・・・分かった?」

 イブ、教え方は極道みたいに厳しいのかと思ったが、そうでもないみたいだ。ちゃんと人情溢れる素敵な授業をしているに違いない。俺も地球にいた時、イブから教えてもらっていたら、勉強が好きになっていたのかもしれないな。

「…それじゃあ、アヤトもこっち座って」

「・・・え?」

 何故このわてくしに声をかけるのでしょうか?・・・つい言葉遣いがおかしくなってしまった。

「…アヤトも、かなり知識に偏りがあるから、この機会を活かして勉強する」

「・・・」

「…そんな苦い顔しない」

 どうやら俺の感情が表情に出ていたらしい。だって勉強嫌いなんだもの。仕方がないじゃないか。

「お、俺には必要ないんじゃないか?今のままで十分だと、思うぞ?」

 若干語尾が上がってしまった。

「…確かに今はそのままでいいかもしれないけど、いずれは必要になる。だから、勉強する」

「・・・分かった・・・」

 俺は仕方なしに、今目の前で絶望しているジャルベと共に世界の歴史とやらを勉強することになった。

「さ、やりましょうね、勉強?」

「「はい・・・」」

 イブの近くにいたリーフの指摘で、俺はジャルベと共に勉強を始めた。

 うぅ。勉強嫌だぁ。


「はい、お疲れ様でした。よく耐えましたね」

「…ん」

「「・・・」」

 俺とジャルベは、イブとリーフから世界の歴史やら食事の作法やら色々教わった。歴史に関しては基本座学だったので、本当に地獄だった。ただ、食事の作法に関しては実戦形式だったので、勉強と食事が兼任しているのは嬉しかったな。後、魔法の基本的性質に関しても一通り教えてもらった。教えてもらった内容は・・・考えるのが面倒だ。今は過去に行った勉強より、これから向かうクリム達のことだ。

 ちなみに、

「なんであの姉ちゃんが勉強していないんだよ!おかしくないか!?」

 ジャルベが、クリム不在に関して指摘した時、イブはこう返答した。

「…あれにはいい教師をしてもらっている」

「いい教師、だと?」

「…ん。勉強を怠り、筋肉に脳を全て割り振った末路。つまり、ああなってはならないといういい反面教師」

 というイブの評価であった。そのイブの評価に、リーフは苦い顔をしていた。リーフも、クリムの脳筋思考を完全に否定出来なかったのだろうな。

 その肝心のクリムは何をしているのかというと・・・。

「うおおおぉぉぉ!!!」

「その腕の使い方では!」

 ゴダムと戦っていた。クリム、本当に戦いが好きなんだなぁ。そんなことを感慨深く思っていたら、

「このように負けてしまいますよ?」

「!?ま、まだまだぁ!」

「次はその腕だけでなく、足も使ってかかってきなさい。腕だけだとさきほどと同じ結果になりますよ?」

「おお!!」

 ・・・クリムがゴダムに、戦い方を教えていた。クリムさん、本当にあなたはたくましいですね。

(あいつらは・・・そうか。クリムとゴダムの戦いを見学しているのか)

 おそらく、クリムとゴダムは模擬戦をしているのだろう。そして、その模擬戦を見学させて、どのように戦えばいいのか実践して見せている。そんなところか。

「その腕だけを攻撃手段とするのは駄目です。ちゃんともう片方の腕、足もきちんと攻撃手段として活用しないと駄目ですよ?」

「分かって、いる!」

「そう!その勢いを保ってください、ね!」

(すげぇな、クリム)

 戦いながら相手にアドバイス出来るとかやばくね?俺、一生出来ない気がするんだけど?もしかしたら、これはクリムの長所なのかもしれないな。

(それに比べ、俺の長所って一体何だろうな)

 ボッチである事だな!

 ・・・いや、ボッチは長所じゃねぇし。自分で自分にツッコミをしてしまった。むなしい。

「あ!大親分!」

 俺を見つけたキメルム達は、何故か俺の元に集まってくる。その集まりにクリムとゴダムが気づき、模擬戦が一時中断となった。なんか俺のせいで模擬戦を中止にさせてしまったみたいで申し訳ないな。

「お、おう」

「アヤトですか。どうでしたか、さきほどの私の戦いっぷりは?」

「良かったと思うぞ?少なくとも俺は、人に指導しながら戦うなんで出来ないから凄いと思うぞ」

 少なくとも今の俺には出来ないと思う。死ぬ気でやれば・・・いや、そんな考えは捨てるか。どうせ今の俺には出来ない事確定だし。

「褒められて嬉しい♪ありがとう、アヤト♪♪」

 クリムの笑顔に、ちょっとドキッとしてしまった。俺、女の笑顔に弱いな。効果は抜群だ!

「みんなも、ちゃんと強くなって、いざと言う時のために備えてくれ」

「「「はい!!!」」」

 ちなみに、みんなは何をしているのかというと、クリムがみんなに戦闘経験を積ませ、強くしているところである。さきほどゴダムと戦っていたようだが、おそらくこの場にいる全員と戦ったのだろう。それなのに、息一つ乱していないように見えるのは気のせいか?クリム、すげぇ。

(俺も頑張らなくちゃな)

 そう意気込んでみたものの、俺は何をすればいいのだろうか?

 ・・・駄目だ。何も思い浮かばん。直接聞いてみるか。

「なんか俺に出来る事、して欲しい事はあるか?」

 すると、ゴダムが一番に名乗りを挙げた。

「俺、大親分と戦ってみたい!駄目、か?」

 そんな聞き方をされてしまったら断る事なんて出来ないだろう。

「分かった。受けてたとう」

 こうして俺は、ゴダムと模擬戦をすることになった。

次回予告

『5-2-4(第391話) 彩人とゴダムの模擬戦』

 ゴダムの提案により、彩人はゴダムと模擬戦をすることになった。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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