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色を司りし者  作者: 彩 豊
第5色 白の国 第一章 人間と魔獣が混ざり、鈍色なキメルム
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5-1-27(第386話) キメルム達の奇襲後~その4~

「聞きたい事って言うのは、魔道具の事だ」

「魔道具?」

 俺の魔道具と言う発言に、ジャルベは首をかしげている。まさか、魔道具について一切知らない・・・なんてことはないか。おそらく、俺が言う魔道具とはどんな魔道具なのか分からず、首をかしげているのだろう。これから俺が説明するわけだし、把握していなくて当然だな。

「ああ。俺達はある魔道具を捜しているんだ」

「それってどんな魔道具なんだ?」

「それが分からないんだ」

「・・・どんな形なのか、どんな効果なのかも、ということか?」

「ああ」

 俺がそう返答すると、ジャルベは困った顔をする。困った顔をするのは分かるが、これしか情報がないのだからしょうがないじゃないか。

「この白の国にあることは分かっているのだが、どんな魔道具かは分からないんだ」

「・・・もしかして、それで見つけようとしているのか?」

「ああ・・・あ。もう一つてがかりあったわ」

「手がかり?」

 俺はジャルベに、アイテムレーダーに関して一通り説明する。

「・・・魔道具を探す魔道具か。聞いたことがないな」

 ジャルベがそんな感想を漏らした。やはり、魔道具を探す魔道具、つまりこのアイテムレーダーは珍しい魔道具の類なのか。なんか、これを持っているだけで優越感を覚えてしまう。俺ってすげぇ。

 ・・・あまり調子に乗っていると足元をすくわれるから、気を引き締め直すとしよう。

「そうなのか。それで、この話を聴いて何か心当たりはないか?」

 俺は今までの話を聴いたうえで心あたりがあるか聞いてみた。出来れば何か心当たりがあると助かるが、どうだろうか。

「う~ん・・・思い当たる節は特にないな。悪いな、力になれなくて」

 ジャルベの回答を聞くに、どうやらこの近辺に魔道具はないらしい。

(となると、こことは別の町にある、ということか)

 魔道具に関して目ぼしい情報は得られなかったが、少なくとも栄えている町の情報くらいは持っているだろう。その事に関して聴くとするか。

 俺が思考を巡らせていると、

「・・・その話、本当ですか?心当たりがあるのではないですか?」

 レンカが俺とジャルベの会話に入り込んできて、このようなことを言ってきた。

「・・・いや、心当たりなんてまったくない。この町に、そんな価値のある魔道具なんてない。そもそもあったら売って金にしているはずだ」

 ジャルベの言い分も理解出来る。

 あのデベロッパー・ヌルが作った魔道具だ。どんな魔道具かは分からんが、希少性だけで言えばかなりのものだろう。だから、売却価格は相当なはず。そのお金を手にしていれば、こんなひもじい思いなんてしていないかもしれないな。

 だが、レンカが何の理由もなしに人の話を否定するとは思えない。それなりに理由があるはずだ。その理由を聞いてみるか。

「レンカ、どうしてそう思う?」

「この近辺に魔道具の気配がするからです」

 魔道具の気配、ねぇ~~~・・・。

「・・・もしかしなくてもアルジン、信じていませんよね?」

「いや、信じていないわけではない」

 レンカは人間ではなく魔道具だからな。レンカ特有の何かを持っているのかもしれないな。一応、他の奴らにも聞いてみるか。

「イブ、リーフはレンカの発言についてどう思う?」

 俺はイブ、リーフに話をふる。イブとリーフは少し考えてから、俺の質問に返答する。

「…レンカには、私達とは異なる景色が見えているのかもしれない」

「私はレンカちゃんの言葉を信じます。レンカちゃんには何か考えがあるのでしょう」

「そうか」

 どうやらイブもリーフも、レンカの発言を全面的に信じるらしい。俺もほとんど賛成だが、理由くらいは聞いておきたいから聞くか。

「それでレンカ。言うからにはちゃんと理由があるんだよな?」

 俺はレンカの目を見て言う。

「理由も何も、あちらから魔道具の気配を感じるから、としか言えないのですが・・・、」

 俺の言葉に、レンカはある方向を指差しながら言う。その方向に何があるのだろうか。ジャルベに聞くか。

「レンカが指差した方角に何があるんだ?」

「何もないが?」

「え?」

 どういうことだ?

 まさか、どっちかが嘘をついているのか。だが見た感じ、どちらも嘘をついているように見えないな。もしかして、ここでどっちが嘘をついているのか見極める必要があるのか?俺、人の嘘を見抜けるほど観察眼は優れていないのだが?

 俺が困っていると、

「片付け終わったよー」

 ルリが能天気に、会話の中に入ってきた。別に片付けの報告とか今しなくていいんだけどな。

「そうか。お疲れ様」

「うん!それでこれからお祈り?しに行ってこようと思っているんだけどいい?」

「別にいい・・・待て、お祈りだと?」

 この町に、このゴーストタウンに教会が存在する、だと!?

「この町に教会があるのか!?」

「いや、そんな大層なものはない。ボロボロな家を少し綺麗にして、そこでお祈りしているだけだ」

「ちなみにどこにあるんだ?」

「あっち・・・だ」

 ジャルベが指差した方角は、さきほどレンカが指差した方角と一致していた。ということは、

「さっきジャルベが言っていたボロボロな家に魔道具がある、ということだな」

「おそらく」

 俺の言葉にレンカが頷く。

「いや、そんなはずはないはずだ。けど・・・、」

「とにかく、そのボロボロな家に案内してくれないか?」

 まずは現物を見ないと話にならないからな。現物を見るためにも移動を始めるとしよう。

「分かった。こっちだ」

 俺達はジャルベの案内の元、移動を始めた。


 歩き始めて十分ほど経過しただろうか。

(それにしても、本当にボロボロだな)

 どの家もボロボロで、小学生の子供が押せば崩れそうなくらい脆そうに見える。とても大きな天災にでも遭ったのだろうか。例えば津波がこの町を呑みこんだとか、それくらいじゃないとこんなボロボロにならない気がする。

 それに、こんなボロボロな町を歩いている中でも、住人であろう子供達が見られる。まさか、こんなボロボロな家に住んでいるというのか?雨風凌げるだけマシ、という考えの元、住んでいるのだろうか?

(凄いな)

 地球にいた時の俺なら、こんなボロ屋に住みたくないし、住むことなんて出来なかったと思う。電気がないと俺の好きなゲームが出来ないからな。

 ・・・ゲーム、久々にしたいな。俺のゲームデータ、消去されていないだろうか。ちょっと心配だな。

「着いたぞ。ここだ」

 おっと。どうやら余計な事を考えている間に着いたようだ。

(ここが教会か)

 見た目は今まで見てきたボロボロな家だ。だが、この家だけ妙に綺麗だ。雑草は生えていないし、他のボロボロな家より若干綺麗だ。綺麗と言っても、日本でよく見る普通の家に比べたら汚いがな。あくまでこのゴーストタウンの中で一番きれいな家と言えるだろう。

 ジャルベは何も言わず、このオンボロ教会の中に入っていった。俺もジャルベを見失わないよう、ジャルベの後を付いていく。

(ここにあるのか)

 俺はボロボロな家の中を見渡す。中も外の見た目通りボロボロで、一部光が家の中に差し込まれていた。最初、そういう家の設計をしているのかとも考えていたが、実際に目で見て分かった。ただ単に屋根の一部が壊れていたから、光が差し込まれていた。そして、その光に向けて何人かが頭を下げていた。

「もしかしてこいつら、祈っているのか?」

「ああ」

 俺の質問に、ジャルベは即答する。祈っていた者達は俺達の存在に気付いたのか、頭を下げてから道を空けてくれた。

「わりぃな」

 俺の言葉に、祈っていた者達は首を横に振った。その後、祈りを再開した。

(一体、何に祈りを捧げているんだ?)

 俺は祈り先が気になり、お辞儀をしている先を見る。

(・・・もしかして、あれに祈りを捧げているのか?)

 見えたのは、光に照らされていた物体だ。

 その物体は三角錐みたいな形状をしており、若干発光しているように見える。差し込んだ光が重なってそう見えるのか?

(ん?)

 なんかあの魔道具、変なチューブでもついているのか?気のせいかもしれないが、後ろから変な管みたいなものが地面に刺さっているように見える、気がする。ここからだとはっきり見えないから断言出来ないな。

 それに、魔力が何かに吸われている気がする。これに関してはあくまでそういう感覚があるというだけで、特に確証はない。気のせいと言われたら気のせいで納得するし、実際に吸われていたとしても微々たるものだからそこまで気にすることではないな。長時間吸われ続けるとさすがに支障が出そうなので、ひとまず様子見だな。

「みなさんは一体、何にお祈りしているのですか?」

 モミジがジャルベに聞く。

「あれだ」

 ジャルベが指差したのは、俺がさきほど気になっていた三角錐みたいなものだった。

「・・・」

 レンカが三角錐みたいな形状の何かを見た瞬間、怪訝な表情が一瞬露出した。俺はレンカの怪訝な表情を見逃さなかった。

「どうかしたか?何か分かったのか?」

 俺がレンカに質問する。

「・・・みなさんは、自分で自分を傷つけるのがお好きなのですか?」

「「「!!!???」」」

 そんな質問を、レンカはした。質問した相手は間違いなくジャルベ達だろう。

「どういう意味だ?」

 俺は真っ先に質問する。下手に間をあけると、ジャルベ達が逆上し、話にならなくなるかもしれないからな。

(というか、レンカの質問の仕方、棘があるだろ・・・)

 もう少し、言い方ってものを考えた方がいいと思うぞ?まぁ俺には、言い方を気にするほど親しい友人なんていなかったけどな!

 ・・・大人しく話を聴こう、うん。

「簡単な話です。あの魔道具は、あなた達に害は与えますが、利は一切ありません。何故そのような魔道具を崇拝しているのか、私にはよく分かりません」

「「「!!!???」」」

 レンカの発言に、みんな驚いていた。

「・・・どういう、ことだ?」

 ジャルベはレンカの発言に驚きつつも、落ち着いて質問してきた。逆上してこないあたり、ジャルベは冷静だな。

「簡単ですよ。その魔道具は、周囲にいる者達の魔力等を微弱ながら吸収しているからです」

「「「!!!???」」」

(なるほど、どうりで)

 ジャルベ達が驚いている中、俺は心の中で独り納得していた。この部屋に来てから魔力の妙な動きにも納得がいくな。

(だが・・・)

 本当にそれだけか?俺の目には、魔力だけでなく、別の何かも吸われている気がするんだよな。じゃあその何かってなんだよ、と聞かれても分からないのだが。

(ん?)

 そういえばジャルベの奴、魔力等を、と言わなかったか?つまり魔力だけでなく、他の何かも吸い取るってことじゃないのか!?

「・・・魔力等ってさっき言ったけど、魔力だけを吸い取っているんじゃないの?」

 ここでイブは、俺が考えていたことをレンカに質問してくれた。

「ええ。おそらくですが、ジャルベ殿達の生命力・・・とでもいうのでしょうか?そういう類のものも吸い取られていますね。端的に言えば、とても疲弊して体がだるくなります。心当たり、あるでしょう?」

 レンカはイブの質問に答えつつ、ジャルベ達に質問した。

「でも、お祈りってそういうものじゃないの・・・?」

「祈りを捧げているのだから、魔力が減ってもしょうがないんじゃない?」

「それだけ頑張ってお祈りしているのだから疲れても当然なんじゃ・・・?」

 そんな会話が耳の中に入ってくる。レンカの耳にも入ったのか、レンカはそれらの言葉に反論する。

「お祈りは魔法ではないので、お祈りする際、魔力は必要ありません。まして、体がだるくなんて聞いたことがありません。ね、アルジン?」

「・・・え?」

 俺はいきなりレンカに話をふられて驚く。みんなも、何故か俺に注目し始める。

(レンカ、いきなり俺に話をふるんじゃねぇよ!!)

 そのせいで無駄に注目が集まっているじゃないか!だが、注目してしまった手前、何か言わないとな。

(確か、お祈りする際に魔力は消費せず、疲弊することはない、だったか)

 そもそも地球では魔力なんて概念はなかったからな。お祈りどころか、日常生活に魔力を使う習慣なんてない。疲弊に関しては・・・まぁ、同じ姿勢をとりつづけた疲れるだろう。だが、今見ていたところ、数分間だけ同じ姿勢をしていなかった。ただ目の前で両手を合わせ、頭を少し下げ、目を瞑る。その姿勢を数分続ける事が苦痛、なんてことはあまりないだろう。

(俺なりの考えをまとめると・・・、)

 お祈りで、魔力を消費したり、疲弊したりすることはない。これが俺の考えだ。

(この考えを伝えるか)

 俺は地球にいた時の頃を思い出しながら、お祈りという行為で魔力を消費し、疲弊することはないと伝える。

「だそうです。お祈りで魔力を吸われ、疲弊することは本来あり得ないのですよ」

「だけど、実際におきているじゃん!」

「それは、その魔道具が実際に、あなた方の魔力や生命力を吸い取っているからです」

「じゃあどうすれば・・・!?」

「そんなの簡単です。その魔道具を壊せば収まります」

「「「・・・え???」」」

「アルジンもとっくに気付いていますよ。ねぇ、アルジン?」

「え?あ、あぁ」

 何故急に話をふるのだろうか?ずっとレンカとジャルベ達だけで話をしていればいいのに。

「「「・・・」」」

 ・・・なんか、イブ、クリム、リーフが疑惑の視線を向けているな。

 お前、本当に気付いていたのか?という視線をぶつけているな。正直、気づいていなかったよ?でもここはあえて、レンカの言葉にあやかることにするさ。そうした方が俺のメンツが保てそうだからな。・・・俺に守りたいメンツなんてないかもしれないが。

「さらに言えば、これを早急に破壊しないと、この土地で永久に食物が育たなくなりますよ?」

「「「・・・え???」」」

 このレンカの発言に、ジャルベや俺だけでなく、リーフ達も驚いていた。レンカのやつ、あの魔道具を一目見ただけでどれほどの情報を取得したのだろうか。目、良過ぎない?

(というか、食物が育たなくなる、だと?どういう意味だ?)

 どうやったらお祈りの話と食物の話が繋がるんだ?意味が分からん。

「食物の件は、おそらくアルジンと・・・モミジ殿なら分かるはずです」

「・・・え!?わ、私ですか!!??」

 俺もそうだが、何故ここでモミジが出てくるんだ?それに、俺とモミジなら分かる、とはどういう意味なのだろうか?

(そういえば・・・、)

 この魔道具に変なチューブがついていたな。改めてみると、地面に突き刺さっている。

(俺とモミジの共通点は・・・?)

 そんなことを考えながら、俺は床に手を置く。

(・・・ん?)

 ここで俺は違和感を覚える。地中にも流れている何かがおかしいのだ。いつもなら気にしないのだが何故か今回は気になった。気になった理由は、流れがある一点に集中しているからである。その一点こそ、今議論されている魔道具である。

(地中・・・。そして、俺にモミジの・・・、)

 俺とモミジの共通点は・・・魔獣である事か?いや、それは違うな。ルリは魔獣だからな。となると・・・なんだ?

(確か、寄生の関係、だったな)

 モミジが俺に寄生してくれたから、今もこうして生きながらえることが出来ている。そのおかげでまぁ人間じゃなくなり、植物の言葉も多少ながら分かるように・・・。

(!?)

 そうか!レンカの言いたい事、伝えたいことが分かった。それに、この奇妙な流れ方をしているこの何かの正体もある程度推測出来た。

 なるほど。これは確かに普通の人間には分からないわけだな。

「・・・そういう、ことですか」

 どうやらモミジは何か分かったようだ。地面に顔を近づけていることから、おそらく地面付近に生えている植物にでも聞いたのだろう。もしくは、地中の植物に聞いたのかかも?まぁどっちでもいいか。

「モミジも気付いたのか」

「はい。も、ということはアヤトさんも?」

「ああ。あの魔道具は、」

 俺はレンカに向き直る。

「この地面にある養分を吸い取っているんだ。そうだろう?」

 さぁ、合っているだろうか?間違っていたら恥ずかしいな。確認のためにレンカを見てみるか。

「・・・」

 レンカは俺をみて頷いていた。どうやら俺と同じ考えを持っているらしい。良かった。少なくとも俺の答えは見当外れではないはず。

「流石はアルジンです」

 良かった。内心間違ったかと焦ったが、焦る必要もなかったな。

「・・・養分ってあの養分?」

「…クリムが言う養分について分からないけど、アヤト達は植物に必要な養分の事を言っていると思う。そう?」

 イブがモミジに聞いてきた。これは確認の為に聞いたんだろうな。

「はい。だからこの町には育っている大樹がほとんどなく枯れ木ばかりなのですね」

「…やっぱり」

「これらの理由で、私は一刻も早く破壊することを推奨します」

 確かにレンカの言う通り、この魔道具は一刻も早く破壊した方がこいつらのためになるだろう。今までこいつらから魔力を、地面からは養分を吸い続けてきたんだから・・・な?

(あれ?)

 いつから吸い続けてきたのかは分からないが、今まで吸い続けてきた魔力量、養分量は膨大なはず。その膨大な二つは一体、どこにあるんだ?目の前の魔道具付近にあるのかと勝手に思い込んでいたのだが、そのようなタンクは見当たらない。まぁ、あの魔道具内に魔力、養分を圧縮して収納していると言われたらそれまでなのだが。レンカに聞いてみるか。

「一刻も破壊すべきと主張する理由は分かった。だが、その前に一つ教えて欲しい」

「はい、なんでしょう、アルジン?」

「この魔道具で吸収した魔力、養分はどこにいったんだ?」

「・・・少しお待ちください。今調べますので」

 そう言い、レンカは魔道具を見始める。

(・・・見たところ、見ているようにしか見えないのだが、ちゃんと調べているのだろうか?)

 調べるというからには、もっとこう魔道具を触ったり分解したりすると思ったのだが、俺の気のせいか。きっと、レンカにはレンカなりの調べ方があるのだろう。このまましばらく放置だな。

「ここから北東の約10キロメートル先に何がありますか?」

「え?」

「何がありますか?」

 レンカが何か聞いてきた。ここから北東、か。何があるのだろうか。ここは地元民であるジャルベ達が頼みだな。

「10キロメートルってどれくらい?」

「北東ってどっち?こっち?」

「いや、あっちじゃない?」

「そっちって確か、何かの遺跡があったんじゃなかったっけ?」

「違うよ!確か川だったよ」

 ・・・なんか、情報が錯綜しているな。誰か俺に正確な情報を教えてくれよ。

「ここから北東、約10キロメートル先には、この国の首都、【シロネリ】があるはずよ」

 この声、確かヴァーナ、だったよな?

「よく知っているな」

 俺は素直にヴァーナを褒める。

「・・・別に、収集した情報を常に忘れないよう気を付けていただけよ。感謝を言われることではないわ」

 なんか、ヴァーナが照れながら言っているような気がするな。そのことはひとまず置いておくか。

「それで、そのシロネリ?がどうかしたのか?」

「私の見立てによりますと、そのシロネリという場所にこれまで吸収した魔力、養分が送られるよう付与が施されているようです」

「「「!!!???」」」

 つまりシロネリに住んでいる奴らは、この町の住人に苦汁を飲ませ、自分達は甘い汁をすすっていたという事か。これがお互い容認していたことならまだしも、今のこいつらの様子から判断するに、こいつらは知らなかっただろうな。なんとも理不尽な事。

(俺にも似たようなこと、あったな・・・)


 確か中学生の頃、俺のクラスメイトは俺の財布から金を盗みとっていたんだよな。最初、俺は金の盗難に気付いていたなかったけど、ある日、俺の財布から抜き取っている現場を目撃して、直接問いただしたんだったな。そしたら、

「うっせぇ!」

「陰キャのお前は、黙って俺らに金を差し出していればいいんだよ!」

 そう言って俺を思いっきり殴った後、財布ごと盗られたんだったな。

 あの時の俺は泣き寝入りしたけど、帰った後、両親は心配してくれて、慰めてくれたな。俺に苦汁を飲ませ、甘い汁をすすったあのクソ共、一度でいいからこの手で思いっきりぶん殴ってやりたいわ。


「・・・さん、アヤトさん?」

「ん?あ、あぁ。どうした?」

 ん?なんかみんな、こっち見ていないか?心なしか、不安そうな顔をしている気がする。

「大丈夫ですか?顔色、ひどいですよ?」

「そ、そうか?」

 俺としてはちょっと過去の記憶を思い出していただけなんだがな。

「それより今はあの魔道具の事だ」

 俺はジャルベ達にとって害悪でしかない魔道具を指差す。

「もしかしてだけど、あの魔道具を壊すと、シロネリにいる奴らにばれるんじゃないか?」

 今まで魔力や養分が送られてきていたのに、急に送られなくなったら色々察して、行動に移すだろう。それで魔道具破壊の件がばれたら面倒くさそうだ。

「即ばれますね」

 俺の質問に、レンカは速攻で返した。

 ・・・。

「まぁどっちみち、俺はそれでも壊すけどな」

「「「え???」」」

次回予告

『5-1-28(第387話) キメルム達の奇襲後~その5~』

 ついに魔道具を見つけた彩人。彩人は魔道具を壊そうとするが、ある者が邪魔をする。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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