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色を司りし者  作者: 彩 豊
第5色 白の国 第一章 人間と魔獣が混ざり、鈍色なキメルム
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5-1-25(第384話) キメルム達の奇襲後~その2~

 最初、俺達8人だけでホットケーキを作っていた。

 が、

「お、俺達にも何か出来る事、ないか?」

「見ているだけじゃあ申し訳ないわ」

「あの姉ちゃん達みたいに食べた―い♪」

 ということなので、ジャルベ達にも手伝ってもらう。ちなみに、最後に発言した者はド―カリ―で、あの姉ちゃん達はルリやイブを指し示しているらしい。

「あれは味を見るために食べている。ただ食べているわけじゃないのよ?」

 リーフはド―カリ―に味見の説明をする。

「…もちろん、私は味見の大切さをしっている。その上で食べている」

「へぇ―、そうなんだー」

 まさかルリ、味見の大切さを理解せずにただ食っていたのか?

 ・・・これ以上考えるのはやめよう。俺もホットケーキ作りに集中するか。

「・・・ご主人様、質問があるのですが、よろしいですか?」

「ん?いいぞ」

 俺が無心でホットケーキ作りをしていると、クロミルが俺に話しかけてきた。クロミルが俺に質問か。一体何を質問してくるのだろうか・・・?

(まさか、俺のスリーサイズを聞きたいのか!?)

 バスト、ウエスト、ヒップの3つだったか。・・・そんな訳ないか。馬鹿な事を考えるのはやめよう。

「さきほどジャルベ様が放った【隕黒滅】はどうしたのですか?」

「ああ、あれね。あれは【転移門・吸収】で吸収したんだ。だから大丈夫だ」

 後で【転移門・解放】で吸収した分を放出しないとな。

(今試しに、【転移門・解放】を発動してみるか?)

 いや、もし【転移門・解放】を発動し、暴発したらやばそうだ。後でこっそり、安全を十分に確保してから展開するとしよう。

「あの魔法を吸収とは。流石はご主人様です」

「そ、そうか?」

 なんか褒められることに慣れていないからか、ちょっと恥ずかしいな。

「はい。自慢のご主人様です」

「・・・あ、あんがと」

「いえ」

 ・・・本当、いい性格をしているというか、人を素直に褒められる人ってそうそうい

ないぞ?俺ですか?俺は無理です。人を素直に褒めるとか、聖人か何かですか?きっと何か一線超えていると思う。あくまで俺個人の見解だけどな。

「・・・」

「・・・そんなにジロジロ見て、一体何をしているんだ?」

 俺に視線を向けている者、レンカに声をかける。

「私の知識が正しければ、料理に使う材料って計量すると記憶していたのですが、違いましたか?」

「いや、合っていると思うぞ?」

 特に菓子作りは、上手く計量出来ないと失敗するって言うからな。

「それでは、何故アルジンは計量せずにホットケーキを作っているのですか?きちんと計量しないと失敗してしまいますよ?」

「普通なら失敗するだろうな」

 普通なら、だけどな。

「であればどうしてアルジンは計量せずに調理しても失敗しないのですか?」

「計量すればそりゃあ美味いだろうが、計量せず、多少多かったり少なかったりしても味はそこまで変わらないからな」

 分かる人には分かるかもしれないが。あいにく、俺の舌はそこまで繊細で高性能ではない。

「まぁ、俺の場合は計量なんてしなくても、感覚で重さが分かるからな。計量なんてしなくていいんだ」

 そう。

 俺はこの世界に来てから、数えきれないほどホットケーキを作っている。そのおかげで、感覚で人数分の量が分かってしまうのだ。

 ・・・本当、数えきれないほど作ってきたからなぁ。救いだったのは、フライパンをいくらふっても腱鞘炎にならなかったことかな。この世界に来てから、肉体を鍛えたからかもしれないな。体を鍛えたことで、地球にいた時とは比べものにならないほど身体能力が上がり、強靭な肉体を手にしたのだ。

(つまり、俺はこの世界に来てから変わったという事だ!)

 この世界に来てから、地球にいた時とは比べものにならないほど強靭な肉体を手に入れた。

 この世界に来てから、数えきれないほど料理を作った。

 この世界に来てから、多くの友達・・・友達?

(あれ?)

 この世界に来てから、友達、作ったか?

 ・・・。

「・・・?アルジン、どうしたのですか?」

「レンカ様の言う通りです。先ほどまでとはうって変わり、とても落ち込んでおられます。一体何があったのですか?」

「・・・いや、何でもない。俺はどこにいても独りだなぁ、と思っただけだ」

 肉体を鍛えたからといって、ボッチが脱却出来るわけじゃないのにな。今更そんなことに気付くとか、馬鹿だな、俺。

「「??」」

 レンカとクロミルは分かっていないようだが、分からなくていい。これは俺の問題だからな。友達、欲しいなぁ。

「・・・アルジン、落ち込んでいるのに、動きに無駄がありませんね」

「はい。とても洗練された動きで、流石はご主人様です」

 俺は相変わらず友達のいないボッチであると再確認し、ホットケーキを作り始めた。


 自分は今も友達が出来ていないことに気付いて落ち込んでいても、俺の体は俺の意識関係なくホットケーキを量産していく。

 ルリ達の協力のおかげで、思ったより人数分のホットケーキを作ることに成功した。

「・・・美味しそう」

「見ろ!俺のホットケーキは特大だぞー!」

「こら!アヤト達が俺達のために用意してくれたんだ!ちゃんとお礼の言葉を言うんだ!」

「「「アヤトさん達、ありがとー♪♪♪」」」

 そして、ジャルベ達は俺達にお礼の言葉を言ってきた。この後、

“は?何言っているの?これ全部、俺一人で食べる用なんですけど?お前らはそこでただ見ていろよ”

 なんて言ったらどうなるだろうか。

 ・・・間違いなく俺は鬼畜で屑野郎だな。絶対に言わないけど。言ったら、地球で俺をいじめていたいじめっ子達と同類になるからな。

「材料はこっちで用意したが、自分で食べる分は自分で作ったはずだ。だからありがとーなんて言う必要はないぞ?」

 ルリ達の協力もあったが、ジャルベ達も協力してくれたのである。最初はホットケーキ作りに手間取っていたが、最初の計量だけきちんとしていれば、後はそこまで難しくないからな。大きさや厚さがまばらなのは大目に見よう。ホットケーキ初心者にしてはかなりいい出来栄えだからな。

「でも、俺らにはこれらを作る材料がなく、方法が分からなかった。だから少なくとも、この二つの事には感謝の言葉を言わせてほしい」

 と、ジャルベが頭を下げてきた。ジャルベが頭を下げた後、他の奴らも一緒に頭を下げ始める。

「・・・分かった。その感謝の意志はきちんと受け取る」

 ・・・そういえば、ジャルベ以外はさっき、ホットケーキを食べていたよな?それなのにまた食べるなんて腹の方は大丈夫なのか?そんないっぺんに食べ物を胃の中にいれるのはまずいのでは?・・・そんなことも考えられないくらい、食料を得る事に苦労し、腹を空かせていたということか。

「それじゃあ改めて食べるか」

「「「はい!!!」」」

 こうして俺達は、ホットケーキで宴会・・・ではないが、食事をすることになった。

(そういえば、ジャルベは初めてホットケーキを食べるんだよな)

 ジャルベの様子を見てみるか。

「・・・」

 他の奴らは嬉しそうに食べているが、ジャルベはまだホットケーキに手をつけていないな。

「食ってみろよ。お前の仲間だって喜んで食っているんだ。美味いぞ~?」

 俺は他の奴らに視線を送る。

「美味い!?」

「何度食べても美味し~♪」

「これ、かけていいの!?」

「これ、かけて食べてみてよ。めっちゃ美味し~♪」

 ジャルベ以外の奴らはみんなホットケーキを喜んで食べている。

「私が作ったホットケーキも美味しいですが、やはりアヤトの作ったホットケーキが一番美味しいですね」

「…ん。クリムに同意」

「ですね~」

 もちろん、クリム達も美味しく食べている。

「まさか、フォークの使い方も分からないのか?そんな訳ないだろう?」

 俺はジャルベにホットケーキが乗っている皿を近づける。ジャルベはゆっくりホットケーキをフォークで差し、口に運ぶ。

「・・・」

 ジャルベは静かに涙を流し始める。

「そのままでも美味しいが、ホットケーキに色々かけるとさらに美味くなるぞ。試しにこのハチミツをかけてみたらどうだ?味については保証するぞ」

 俺はアイテムブレスレットからハチミツ入りの容器を取り出し、ジャルベの前に置く。

 ジャルベは無言で手に取り、ほんの少しだけかけた。

「それだけでいいのか?もっとかけてもいいんだぞ?」

「でも・・・、」

 なんかジャルベが渋っていたので、俺はジャルベのホットケーキにハチミツを大量にかける。

「え!?そ、そんなにかけていいのか!!??」

「?もちろんいいぞ。他の奴らもかけているはずだが?」

「・・・た、確かに・・・。い、いいのか?」

「別に問題ないさ。無くなったらまたとってくればいいんだし」

 近辺にハチの巣があるかどうか分からんが。まぁ店に行けばハチミツくらい売っているだろう。

「・・・」

 ジャルベはハチミツがたっぷりかかったホットケーキをフォークで差し、持ち上げる。ハチミツがホットケーキから滴り落ちる。

 そして、かぶりついた。

「!!??」

 ジャルベの表情から、驚きの表情が手に取るように分かる。

「どうだ?美味いか?」

 俺はジャルベに分かり切った質問をする。

「美味い、美味いな・・・」

 ・・・ちょっと嘘をついてみるか。

「なぁ?どうしてその料理がそんなに美味いか分かるか?」

「?そんなの、いい食材を使ったからに決まっているだろう?」

「いいや違う。食材の良し悪しだけで、料理の美味さは決まらないんだ」

 決まることもあるが、俺はそんなことを言いたいのではない。

「それじゃあどうしてこの料理は美味いんだ?」

「それは、あいつら、共に食事をしてくれる奴らのおかげだ」

 俺はルリ達全員に視線を送る。

「それって・・・、」

「もちろん、一人で食べる事を否定するつもりはない。だが、みんなで同じ料理の味の感想を言い合ったり、喜びあったりした方が美味しいはずだ。少なくとも俺はそう思っている」

「味の感想を?」

「お前らはどうだ?美味いか?」

 俺は少し声を張り、みんなに聞こえる声量で話しかける。

「「「おいしーーー!!!」」」

 そして、ジャルベに近づいていき、

「ねぇ?親分はどう?美味しい?」

 さきほど食べたホットケーキの味の感想を聞いてきた。

(ジャルベはどう答えるのだろうか?)

 もしかして、

“俺、こういう料理、好きじゃねぇんだよな。ぶっちゃけ嫌いだ。”

 なんて言われないだろうか。言われてしまった暁には・・・まぁ、そう思うしかないか。人にはそれぞれ好き嫌いがあるからな。

 さて、ジャルベはどう答える?

「・・・美味しい。美味しいよ・・・」

 ジャルベは他の者達の肩を自分の近くに抱き寄せる。

「この味、感覚は、一生忘れられない。忘れてたまるものか・・・」

 ジャルベの周りに、どんどんジャルベの仲間が集まっていく。俺にとってはほとんど名前も顔も分からないが、ジャルベには一目瞭然だろう。

「親分、何泣いているの~?」

「何か嫌なことあったの~?」

「痛い~?」

「・・・いや、痛いんじゃないんだ。嬉しいんだ・・・」

 ・・・どうやら、俺はこのままフェードアウトした方がよさそうだな。このまま俺達の元から行方をくらます、なんてことはないよな?逃げないよな?

「みんな、幸せそうだな」

 俺のなにげない一言に、

「私は今、こうしてご主人様に仕えることが出来て幸せでございます」

「!?」

 俺はクロミルの突然の発言に驚く。

「そ、そうか。それは、よかった、な」

 幸せなのはいいことだと思うのだが、それを俺が言っていいのか不安になる。

「はい」

 俺はクロミルの笑顔を見て、クロミルの言葉が本当なのだと再認識した。

 その後、俺はジャルベ達の笑顔からお休みの顔を一通り拝見し、夜を迎える事になった。

次回予告

『5-1-26(第385話) キメルム達の奇襲後~その3~』

 ジャルベ達との戦いを終えて初めて迎える夜。その夜に、彩人はレンカと話をする。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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