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色を司りし者  作者: 彩 豊
第5色 白の国 第一章 人間と魔獣が混ざり、鈍色なキメルム
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5-1-20(第379話) キメルム達の奇襲~アヤトVSジャルベその7~

「では、アヤトが時間稼ぎをしてくれている間に、簡単に役割を決めてしまいましょう」

「「「「「「はい!!!!!!」」」」」」

 彩人に託された者達は、リーフを筆頭に役割を決めようとしていた。

「まず、あの・・・【隕黒滅】と呼ばれていた黒い球を足止めする人ですが、」

 リーフはクリムに視線を送る。

「了解!」

 クリムはリーフの視線の意図を汲み取り、質問する前に了承した。

「クリムの【炎拳】ならきっと大丈夫です。後、イブもクリムを手伝ってくれる?」

「…ん。魔力で形成した腕であの【隕黒滅】を足止めする」

「ええ。それでお願いします」

「ねぇねぇ、ルリはー?」

「ルリちゃんは氷を張って、親分からの攻撃を防いでください」

「分かったー」

「私とモミジちゃんも、みんなを守っていきます。いいですか、モミジちゃん?」

「は、はい!大賛成です!」

「レンカちゃんとクロミルちゃんは、アヤトの負担を軽減するために、あの【隕黒滅】を出来るだけ小さくしてもらいたいのですが、どうでしょう?」

「小さく、ですか?」

「ええ。あの【隕黒滅】を外側から削ぎ落す・・・と言えばいいのでしょうか?」

「食材の皮をむくように、でしょうか?」

「そんなところね」

「かしこまりました、リーフ様」

「それじゃあみなさん、いきま・・・、」

 7人の役割を簡単に説明し、行動しようとした時、

「あ、あの!」

 リーフ達に声をかけた者がいた。

「あなたは?」

「ヴァーナ様です」

 リーフの質問にクロミルが答える。その者は、さきほどクロミルと戦ったヴァーナである。

「えと・・・ヴァーナ、ちゃん?どうしたの?」

 リーフは困ったように聞く。

「私達も親分を助けるお手つだいがしたいのです!お願いです!私達に出来る事ならなんでもします!」

「「「お願いします!!!」」」

 ヴァーナ達キメルムはリーフ達に頭を下げる。その頭には、さきほどリーフが戦ったサキュラ、サキュリも含まれていた。

「・・・」

 リーフは少し考えた後、

「あの【隕黒滅】を足止めする人。【隕黒滅】を外側から削ぎ落す人。親分の攻撃を防ぐ人。残りの人達はどこか安全な場所に避難してください」

「「「・・・」」」

 リーフの言葉に、キメルム達は黙る。

 少し経過し、

(やはり、私達だけでやりますか)

 リーフはそう考え、キメルム達に背を向けようとした時、

「俺は!あの【隕黒滅】を足止めするぞ!」

 クリムと戦ったキメルム、ゴダムが自ら名乗りを上げた。

「それでは私は、【隕黒滅】を外側から削ぎ落します」

 ヴァーナとゴダムの後、続々と名乗りを上げ、自ら役割を決めていく。

「それじゃあみなさん、アヤトを、親分を助けに行きますよ!」

「「「はい!!!」」」

 リーフの掛け声で、全員が動き出す。

 暴走している人物を救うため。

 そして、暴走している人物を救おうと抗っている人物を助けるために。


「さて、行きますか」

「…ん」

 クリムとイブは一歩、前に出る。

「足、引っ張らないでよね、イブ?」

「…そっちこそ、足を引っ張ったら容赦しない」

 二人は互いに口角を向け合う。

「さぁ、行くわよ!」

 クリムは思いっきりジャンプをし、拳に炎を纏わせて【隕黒滅】にぶつける。

「…あの【隕黒滅】を、止める」

 イブは腕を魔力で形成し、【隕黒滅】に向ける。

「早く、行って!」

「…ここは、大丈夫!」

 クリムとイブは、目の前の【隕黒滅】のみを視界に映し、誰かに聞かせるような声量で口を動かした。

「分かった。後は任せるぞ」

 二人の言葉を聞いた男は、【隕黒滅】から手を離し、【隕黒滅】へ足を向けた。

「俺もやるぞ!」

 クリム、イブの後に続くかのように、ゴダムも自身の腕を使い、【隕黒滅】を止めようと動き始める。

「親分!親分は、こんな腕の俺でも、快く受け入れてくれた!俺の腕を初見で引かなったのは、今までで親分だけだったんだ!そんな心優しい親分と、俺はもっと一緒にいたい!だから・・・だから!」

 ゴダムは最後まで言えなかった。

「?」

 ゴダムが感情の一部を吐き出した後、ゴダムの後ろには無数の何者かがいた。

「親分!」

「私達は、親分を裏切ったんじゃない!」

「力のない私達に何が出来るか分からないけど、親分を、助けたいんだ!」

 それは、他のキメルム達だった。そのキメルム達は全員、見た目や奇異な能力等で迫害されてきたが、ジャルベによって救われた者達である。

「親分を、助ける!そのために・・・、」

 ゴダムは、自身の腕をさらに太くし、体格に合わない大きさへと変貌させる。体格に合わない腕を巧みに使う。だが、無茶をしているのか、顔に苦痛の色が見られる。

「どんな無茶だって、やってやる!絶対に、助けるんだ!!」

 苦痛の色が見え始めても、自分の歯を食いしばり、気合いで痛みを誤魔化す。


「・・・どうやら、クリムとイブは上手く制止出来ているようです」

「そのようですね。流石はクリム様とイブ様です」

「ゴダムも、きちんと足止め出来ているようで安心だわ」

「そうね、サキュラ」

「・・・これでいつでもいけるわね」

 リーフ、クロミル、サキュラ、サキュリ、ヴァーナはクリム達とある男性の様子を窺っていた。

「どうやらアヤトが動き出すみたいです。私達も動きますよ」

「かしこまりました」

「「ええ」」

「全ては親分のために」

 リーフ達は、ある男の後を付いていくように動き始める。


「あの【隕黒滅】、内部に潜り込もうとしているアヤトに何かしようとしていますね」

 【隕黒滅】から黒い触手のような何かが彩人に向けて伸び始める。まるで、彩人という侵入者を排除するかのようである。

「!?」

 彩人はその黒い何かに驚く。

「ふん!」

 その黒い何かから彩人を守るため、リーフは自身の剣に風を纏わせ、黒い何かに向けて風の斬撃を飛ばす。風の斬撃が黒い何かを切り裂き、黒い何かは空気中に霧散した。

「アヤトは気にせず突き進んで!」

 リーフは彩人の周囲に風の膜を形成し始める。

「それなら周囲を気にせず進められるはずよ!あまりもたないから急いで!」

 その後、黒い何かは風の膜に接触すると、剣で切り刻んだかのように細かく切り刻まれて霧散する。彩人はリーフの方を向かず、【隕黒滅】に神色剣で切れ目を入れ、【隕黒滅】内部に入っていく。

「後、お願い出来る?」

 リーフは彩人の周囲に発生させた風の膜を維持させるのに精いっぱいで、後のことをクロミル達に頼む。

「お任せを。ご主人様方を必ず守ってみせます」

 クロミルはアイテムブレスレットから魔銀製の剣を取り出す。

「疑似牛刀作成・・・作成完了」

 クロミルは魔銀製の剣に魔力を纏わせる。

「それでは、いかせていただきます」

 クロミルはその場を大きくジャンプし、【隕黒滅】の元へ近づく。【隕黒滅】に近づいたことで、【隕黒滅】から黒い触手のようなものがクロミルに向けて伸びていく。

「牛術が一つ、」

 クロミルはその黒い何かに向けて、

「【午閃】!」

 牛術の一つである【午閃】を繰り出す。

 【午閃】が直撃した黒い何かは細かく切り刻まれ、欠片も残らずに霧散した。

「それでは、ご主人様を傷つけないよう、【隕黒滅】を外側から削っていきましょうか」

 クロミルは疑似牛刀を【隕黒滅】に向ける。

「まずは、空中に足場を作って移動するとしますか。ご主人様の魔法、お借りいたします。【結界】」

 クロミルは階段状に【結界】を複数設置し、【隕黒滅】に近づいていく。

(この【結界】を足場にしていきますか)

 クロミルは【隕黒滅】を攻撃し始める。


「私達もいくわよ、サキュリ」

「ええ、サキュラ」

 サキュラとサキュリは自前の槍を用意し、隠していた翼を背中から出現させて飛び、【隕黒滅】に近づく。

「私の黄魔法と、」

「私の黄魔法を合わせて、」

 サキュラとサキュリは互いの槍の穂先を重ね合わせる。すると、重ねた穂先から雷や火花が飛び出し始める。

「「親分を、助ける!!」」

 穂先から出現する雷が激化していく。

「「【雷雷】!!」」

 サキュラとサキュリの魔法、【雷雷】が【隕黒滅】めがけて放たれる。雷が【隕黒滅】の周囲に纏わりつき、【隕黒滅】の体積を少なくさせていく。


「親分・・・」

 サキュラとサキュリが【雷雷】を繰り出した一方、ヴァーナも魔法の準備を始めていて、準備はほとんど終わっていた。

「今の私達はもう、見えていないのね」

 ヴァーナは独り言を呟く。その呟きは誰に聞かせるわけでもなく、言葉を発した本人の耳にしか届いていない。

「なら、見せてあげる」

 ヴァーナの周囲に、血で形成された槍、【血槍】が複数顕現する。

「これまで私は、親分に助けてもらってばかりだった」

 ヴァーナはこれまでのことを振り返る。

 ヴァーナはこれまで、親分のジャルベに何かしてもらったことは多々あった。

 孤独で潰れそうな時、ジャルベはヴァーナに寄り添ってくれた。

 ジャルベはヴァーナの体質や好きな食べ物等様々な事を聞き、ヴァーナという人間を知ろうとしてくれた。

 ヴァーナが料理の手伝いをした時、

「ありがとう、ヴァーナ。助かったよ」

ジャルベは、ヴァーナに笑顔を見せてくれた。

「そして、笑顔を見せてくれた」

 ヴァーナはジャルベの笑顔を思い出す。

「今度は、私が親分に寄り添い、笑顔にさせる!そのために、」

 ヴァーナから何かを感じ取ったのか、【隕黒滅】から黒い触手のようなものがヴァーナに向けて伸びていく。

「あれから、親分を助けるんだ!」

 ヴァーナは黒い何かめがけて【血槍】を放つ。【血槍】は黒い何かを貫き、霧散する。

「親分の笑顔を取り戻すんだ!」

 ヴァーナは【血槍】の他に、血で形成した剣、【血剣】を飛ばして【隕黒滅】を削っていく。だが、【隕黒滅】が大き過ぎるので、攻撃が効いているのか、本当に【隕黒滅】を削っているのか判断がつかない。


 一方地上では、

「アヤトさん、大丈夫でしょうか?」

「大丈夫かと。アルジンですからね」

 モミジとレンカは【隕黒滅】から伸びる黒い手のようなものからクリムやキメルム達を守っていた。モミジは【三樹爪撃】を放ち、黒い手のような何かを蹴散らしていく。レンカは、自身の腕を大砲のような形状に変形させ、魔力を放出し、黒い手のような何かを蹴散らしていく。

「それにしてもあの黒いの、数が多いですね」

「これも、アルジン達のためです。頑張りましょうね、モミジ殿」

「はい」

 モミジとレンカは一つずつ確実に黒い手のようなものを蹴散らしていく。

 だが、モミジが言ったように数が多かったのか、徐々に二人だけでは辛くなっていく。

「レンカさん!そちら、お願いします!!」

「分かり、ました!」

 モミジとレンカに焦りの色が見え始める。

「モミジ殿、危ない!?」

 そして、黒い手のような何かの対処に遅れ、モミジに危機が迫る。

 その危機を救ったのは、

「風よ!」

「フン!」

「オラぁ!」

 ピクナミ、スララカ、ドーカリ―の3人であった。

 ピクナミは緑魔法で風を起こし、黒い何かを吹き飛ばした。

 スララカは、自身の腕を鋭利な刃物の形状へと変形させ、黒い何かを切り刻んだ。

 ドーカリ―は、自身の口から炎の息吹を放ち、黒い何かを消滅させた。

「ピクナミさん・・・」

「おや?どうしてあなたがここに?」

 モミジとレンカは、いきなり三人も登場したことに驚く。

「私達だって、親分を助けたいの!」

「こんな見た目の私でも快く受け入れてくれた親分を見捨てるわけにはいかないわ」

「また一緒にご飯を食べるんだ!!」

 ピクナミ達は親分の様子が異常だと一目で理解し、助けようと必死だった。そして、親分を助けようと動き出す。

「ぐ!」

「流石は親分・・・」

「諦めたくない、のに・・・」

 それでも黒い手のような何かを捌ききれず、ピクナミ達三人、モミジ、レンカの計五人をもってしても、少しずつ追い込まれていく。

「「危ない!?」」

 ピクナミ、スララカ、ドーカリ―に黒い魔の手が迫る。その黒い魔の手から救おうと、モミジとレンカが体を張って守ろうとする。

「「「!!!???」」」

 モミジとレンカは目を閉じ、襲い掛かる痛みに備える。

 だが、痛みに備えた行為は無駄に終わる。

 その理由は、モミジ達と黒い魔の手の間に、大きくて透明な氷が出現したからである。

「お姉ちゃん達、お待たせ!」

 氷を出現させたのはルリだった。

「もう大丈夫!お姉ちゃん達のおかげで十分な魔力を溜められたから。後は使うだけだよ」

 ルリはレンカとモミジに笑顔を見せてから、【隕黒滅】の方を向き直す。そして、【隕黒滅】に向けて手をかざす。

「【氷蛇】」

 すると、ルリの周囲に氷で精製された蛇が複数匹出現する。氷で精製された蛇はルリ達に向けて伸びている黒い魔の手のような何かに向けて進み始める。そして、氷の蛇は、口を大きく開け、黒い魔の手のような何かを喰らった。小さな体のどこに入るか分からないが、氷の蛇は黒い何かを噛み砕いた後、大きなゲップをし、再び黒い手のような何かを噛み砕きに向かう。

「さぁ、どんどん食べて行こー!」

 氷の蛇達がどんどん増え、ルリ達に襲い掛かる黒い手のよう何かをどんどん喰らいつくす。

「一応、氷を厚くしておこうかな」

 ルリはそう呟くと、地面に手を当てる。すると、元々分厚かった透明な氷がさらに分厚くなる。

 黒い手のような何かが、ルリの氷にぶつかる。黒い手のような何かはルリ達を襲おうとするも、氷に行く手を阻まれてしまう。そして、進路変更しようとしているのか、氷から離れようとする。

「もしかして、その氷から離れようとしているの?無駄だよ」

 ルリはなんてことないテンションで黒い手のような何かに話しかける。その問いかけに答えなんて気にしていない。独り言を呟くように言葉を発する。

「その氷は、触れたものを逃がさないようにしているんだよ?」

 黒い手のような何かは氷から離れようとするが、氷から離れないことに気付く。何故離れられないかは、直視すれば一目瞭然だった。

 氷が黒い手のような何かに纏わりついてきたのだ。まるで、一度見つけた獲物を手にするまで逃がさないように。

「まぁ、ルリが敵だと判断したものだけ、だけどね」

「「「!!!???」」」

 ルリの言葉に、ドーカリ―、ピクナミ、スララカは驚く。

 なにせ、ルリの認識次第で、自分達もこの黒い手のような何かみたいに、氷漬けにされてしまうのではないか。そう考えてしまったからである。

「あ、もちろんお姉ちゃん達はこの氷に触っても何も起きないから大丈夫だよ~♪」

 ルリは笑顔でモミジやレンカ、そしてドーカリ―達に言う。

「これでここは大丈夫かな・・・大丈夫、だよね。後は、」

 ルリは【隕黒滅】を見る。

「お兄ちゃんだけ、だね。頑張れ」

 ルリの応援に、

「アヤトさん、無事だといいですね」

「アルジンなら大丈夫です。必ず、やり切ってくれます」

 ルリ達は分厚い氷に守られながら、【隕黒滅】を通して彩人を想い始める。

次回予告

『5-1-21(第380話) キメルム達の奇襲~アヤトVSジャルベその8~』

 ジャルベの黒魔法、【隕黒滅】の内部に入り込んだ彩人は【隕黒滅】に触れる。すると、ジャルベの感情が彩人に流れ込んでくる。流れ込んできたことで、彩人は地球にいた時の自身の記憶がよぎる。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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