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色を司りし者  作者: 彩 豊
第5色 白の国 第一章 人間と魔獣が混ざり、鈍色なキメルム
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5-1-19(第378話) キメルム達の奇襲~アヤトVSジャルベその6~

(さて、どうするか・・・)

 頭上にはバカでかい黒い球が浮かんでいる。その黒い球はどんどんでかくなり、俺達人間どころか、目の前にある町すら呑み込むんじゃないかと思ってしまうくらい巨大だ。

(【毒霧】であいつを眠らせるか?)

 そうすれば、あいつを拘束出来るだろう。だが、あいつはそれで満足するのか?

 きっとしないだろう。俺が【毒霧】で眠らせて起きた後、今と同じような暴走をするだろう。もしかしたら、今以上に暴走するかもしれない。

(となると、今のあいつ・・・【隕黒滅】?だったか?あれをジャルベの目の前で止めないとな)

 その上で拘束する必要がありそうだ。拘束して言葉を、気持ちを伝えないとな。俺も言いたいことがあるし。そのためにも、まずはあの黒い球を・・・、

(ん?)

 一瞬、ジャルベの体から他の魔力とは異なる色の魔力があの黒い球に吸収されたように見えた気がする。俺の気のせいか?まぁ今はいいや。そんなことよりあの【隕黒滅】をなんとかする方法について考えるか。

(・・・俺が【黒色気】を使って一点突破すればいけるか?)

 ・・・いけそうな気がしないでもないが、行けなかった場合のリスクを考えるだけで怖いな。となると、

「ご主人様、私達のお力、お使いください」

「!!!???」

 く、クロミルさん!!??あなた、本当に私の考えが読めるのではないですかね!!??そうじゃなければ、このタイミングでその言葉なんて言えないと思うのだが・・・。もういいや。クロミルに関して深く考えるのはよすとしよう。そういうものだと悟り、受け入れることにしよう。

「もちろん死なせないようにするが、最悪、死ぬぞ?」

「ご主人様の命で死ねるのであれば本望です」

 クロミルは俺の言葉に即答した。

 だが、俺はクロミルの言葉を聞き、否定することにした。理由は一つ。

「死ぬことを本望と言うな。死んだら、もうお前の人生はそこでおしまいなんだぞ?」

 死んだら、死んだ者の人生がそこで終わる。そして、俺はここでクロミルの人生を終わりにしたくない。だから俺は否定したのだ。

「クロミル。俺はまだお前と、お前達と食卓を囲み、くだらない話をして笑っていたいんだ。だから、もう死ぬことが本望とか、そんな切なくなるようなことは言わないで欲しい」

 俺はクロミルにお願いした。クロミルは俺の言葉に驚いたのか、日常ではほとんど見られない顔を見た。クロミルのレア顔なので、どこかに保存しておきたい。カメラないかな。

「かしこまり、ました」

 クロミルにしては驚きだったようで、言葉に少し詰まっていた。ここで少し和んでいたいところだが、そんな訳にはいかない。

 だって、頭上には俺達を殺そうと、今も大きくなり続けている【隕黒滅】があるのだから。

(クロミルが協力してくれるとなると、あの【隕黒滅】を少しでも削って小さくしてくれるようお願いしてみるか)

 あの【隕黒滅】には気になることがあるからな。完全消滅させる前に俺が直接出向かないとな。

「もちろん、ルリも頑張るよ!」

 ルリだけでなく、

「あの人のためにも協力させてください!」

「アルジン、私という道具を使ってください。きっと役に立ちますから」

「この拳で出来る事、なんでもやってやります!」

「知恵も力もいくらでもお貸しします!」

「…私も同じ」

 モミジ、レンカ、クリム、リーフ、イブも名乗りを上げてくれた。

(みんなが協力してくれたら、色々出来る事が増え、一人一人の負担が軽くなりそうだ)

 何をやってもらうかはまだ決まっていないが、これだけ協力してくれる人がいるなら、ジャルベを止める事が出来るだろう。

「そうか。それじゃあみんなに頼みたいことがある」

 俺のこの言葉で、みんなが俺を見る。この視線、全身に突き刺さるようであまり好きじゃないんだよな。今はこんなことを言っている場合ではないが。

「俺があの黒い球を内側からなんとかする。それまで、あの黒い球が町に当たらないよう時間を稼いでほしい」

「「「「「「「はい!!!!!!!」」」」」」」

 俺の言葉に、7人全員が快く返事してくれた。返事の内容が否定で無かったことに俺は内心喜びつつ、

「俺はあの球の内部に入るから、出来ればあの球を握りつぶす様な真似はやめてくれよ」

 軽口をたたきながら注意しておく。俺ごとあの黒い球を消す様な真似、しないよな?そんなことされたら、俺、死んじゃうからな?

「それじゃあ・・・」

 俺はここでジャルベを見る。ジャルベは相変わらず、俺だけでなく全員を憎悪の目で睨みつけていた。

「ま、呑気に作戦会議をさせてくれるほど甘くはないってことか」

 憎き相手のコンディションを万全な状態になるまで待ってくれるほど、相手も馬鹿ではないってことか。

(時間稼ぎが出来るまで、俺が時間稼ぎをしておくか)

 俺は神色拳を構え、

「【黒色気】」

 【黒色気】を発動する。これで少しは時間稼ぎ出来るだろう。

「俺があの黒いやつをなんとか抑えるから、それまでに作戦を決めてくれ」

 俺は足に力を入れる。

「お兄ちゃん!」

「任せたぞ」

 俺はみんなの声を聞かずに黒い球、【隕黒滅】の元へ突撃する。

(足裏から緑魔法で風を思いっきり噴射させてっと)

 俺は【隕黒滅】とぶつかり、思いっきりジャルベ側に押し込む。

(!?この異様な憎悪は一体どこから・・・あいつか!?)

 【隕黒滅】に触れた途端、俺に負の感情がなだれ込んできた。

 町の中で無数の人間から容姿だけで蔑まれた時の記憶。

 他の人間と容姿が異なっていることを理由に、石や物を投げつけられ、怪我をした記憶。

 ひそひそと悪口を言われ、堂々と悪口を言われた記憶。

 そして、何度も辛い出来事を経験し、無数の涙を流した記憶。

 聞くだけでも嫌な記憶が、動画付きで俺の脳内に流れ込んでくる。

(どの世界でもいじめっ子はいるもんなんだな)

 俺の過去の傷をえぐるような動画を見せられては、勝てる勝負も勝てなくなってしまうではないか。この戦いが勝てる戦いなのかは不明だが。そもそも、勝利条件も不明だし。

(押し込め!)

 俺は足の裏から風を噴射させるだけでなく、背中から魔力で腕を形成し、その腕を【隕黒滅】に触れ、ジャルベ側に押す。


 ・・・けて。


(?)

 どこからか声が聞こえる。はて、一体誰だろうか?ここには俺しかいないはずなのに。


 ・・・たすけて。


(やっぱり)

 この声は幻聴ではない。だが、声の主が分からない。本当に誰なんだ?


 ・・・俺はただ、家族といたいだけなのに、どうして。


(この声、どこかで・・・?)

 まさか?俺は、声の主に心当たりがあったので、その声の主を見ようとする。

(【隕黒滅】がでか過ぎて見えねぇが、この声、ジャルベじゃないか?)

 俺の勘違いの可能性もあるが、ジャルベの声に似ている気がする。気のせいじゃないかと言われればそれまでだが。


 ・・・このままじゃあ、あいつらを殺してしまう。

 だから、俺が家族を殺す前に、俺を殺してくれ、アヤト!


(殺してくれ、か)

 この声の主はジャルベで確定していいだろう。そして、あいつらというのはキメルム達の事だな。

 さっきの言葉が全て真実だと仮定すると、今ジャルベは自身のことを抑えきれず、暴走状態になっている。そして今、俺達を殺そうとしている、と。ジャルベ本人は俺達を殺したくない、と。

(ふざけんなよ)

 俺はジャルベの考えに苛ついた。

 理由は一つ。

 大切な人を殺したくないから自分を殺せ、なんて言ってきたからである。慕われている人達がジャルベの目の前にいるのに、自分だけ先に死んで楽になろうとしているのだ。ジャルベなりに苦労はしただろうが、死んで楽になろうなんて冗談じゃない。

 自分が死んで悲しむ人間が目の前にいるんだぞ?そいつらの気持ちを考えて言っているのか?


 俺だっていじめを受けた時、何度も自殺をしようとした。何度も自殺方法を考え、縄やナイフを用意し、自身の首に当てたこともあった。そんな光景を一度、俺の両親に見られたことがある。その光景を見た俺の両親は、俺に抱きつき、涙を流した。そして一言。

「お願いだ。私達のためでいいから、生きてくれ」

 父親に言われて泣かれた。

「ごめんなさい。彩人をここまで追い詰めていたことに気付かないで、本当にごめんなさい・・・」

 母親に言われて号泣された。

 俺の両親は、俺に生きる理由を与えてくれた。その理由が、俺を現実の世界に留めてくれた。その時、俺は気づいた。俺が死んだら悲しむ人間がいるのだと。


(こいつにもお教えてやる!)

 ジャルベが死んだ時、ジャルベの死を悲しむ人間がいるのだと。

 俺は強い意志をもって、【隕黒滅】を足止めする。

 あいつらが来るまで、時間稼ぎをしないとな。

次回予告

『5-1-20(第379話) キメルム達の奇襲~アヤトVSジャルベその7~』

 彩人がジャルベの黒魔法、【隕黒滅】を足止めしている間、リーフ達は簡単に役割を説明する。そして、彩人を支援する為に動き始める。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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