5-1-12(第371話) キメルム達の奇襲~ルリVSドーカリ―~
場所は変わる。
「お前らかぁ」
「ん?なぁに?というかここはどこ?」
ルリは独りでいた。他の姉達を探しているのか、周辺を見渡している。見渡し終えたのか、目の前の者を見る。その者は、外套で全身が謎に包まれていた。
「ドーカリ―に食べ物をくれるのはぁ」
「食べ物?お腹空いたの?」
ルリは外套を纏っている者、ドーカリ―に質問する。
「ああそうだ。だから、」
ドーカリ―はルリに急接近し、
「よこせぇ!!」
高速で手をだす。まるで、食べ物をかすめ取るかのように。
「!?」
ルリはドーカリ―の咄嗟の行動に驚いたものの、冷静にドーカリ―から距離をとる。
「逃げるなぁ!」
ドーカリ―はルリを追うかのように狙う。
「そんなにお腹空いたのなら、自分の持っている食べ物を食べればいいじゃん」
ルリはドーカリ―に落ち着いて言う。
「!!??」
そんなルリの言葉が、ドーカリ―にとって地雷を踏んだかのような衝撃が走る。
「それを貴様らが、奪ったんだろうがぁ!!!」
ドーカリ―が思いっきり叫ぶ。ドーカリ―の外套が少し破れ、ドーカリ―の肌が露出する。露出したドーカリ―の肌を見て、ルリは疑問を抱く。
「あれ?お姉ちゃん達の肌にもあんな鱗、あったっけ?」
それは、ドーカリ―の体に鱗があったのである。
「この鱗はなぁ、ドーカリ―が竜のキメルムの証だからだ!」
外套がドーカリ―の元からなくなり、ドーカリ―の全身がルリの視線に入る。
ドーカリ―の体は全身鱗で覆われ、指は3本で爪は長く、鋭くとがっている。ドーカリ―の歯も爪同様鋭くとがっている。目も人間とは思えないほど鋭くなっている。
「この見た目でドーカリ―は食べ物に散々苦労した!」
その目はまるで、狂気をはらんだ竜のように鋭く、毒々しい。
「だから、食わせろぉ!」
ドーカリ―はルリめがけて炎の息を吐く。
「氷れ」
ルリはドーカリ―の息に向けて手をかざす。すると、ドーカリ―の息がどんどん氷となっていく。ドーカリ―は、このままだと自分も氷になると判断し、息での攻撃を中断する。
「よく分からないけど、ドーカリ―ちゃん、でいい?」
「ドーカリ―の名前を、気やすく呼ぶなぁ!」
ドーカリ―の感情はルリと交戦中、ずっと不安定となっている。
「・・・」
ルリはそんなドーカリ―を見て、冷静にドーカリ―の攻撃を躱す。
(そんなにお腹空いているのかな?寄越せとか言っているから、食べ物、持っていないのかな?なら、)
ルリはドーカリ―の体を拘束するよう動き出す。
「【蛇睨み】」
「!?」
ルリの【蛇睨み】によって、ドーカリ―は動けなくなってしまう。その間にルリはアイテムブレスレットからホットケーキを取り出し、
「はい、あ~ん」
「や、やめろ!そんな分からんものを・・・!?」
ドーカリ―に何も言わせないまま、ホットケーキをドーカリ―の口の中に入れる。ドーカリ―はよく分からないまま、入れられたホットケーキを咀嚼し、味わう。そしてsのまま飲み込む。するとドーカリ―は頬をおさえてこう述べた。
「美味しー!!??な、なにこれ!!??」
ドーカリ―はホットケーキ一つで、ホットケーキの魅力にとりつかれる。
「ホットケーキだよ。とっても美味しい食べ物なの♪」
「もっとちょうだい!」
さっきまで殺す気だったドーカリ―と同一人物とは思えないほど雰囲気が一変する。
「いいよ~♪それじゃあ一緒に食べようよ!そっちの方がもっと美味しいよ!」
ルリがそう言うと、
「分かった!」
ドーカリ―は素直にルリの提案をのむ。どうやらドーカリ―はルリを殺す事より、自身の食欲を満たすことを優先したらしい。
「ほい」
ルリは氷を作り、即席でテーブルを作る。そこに簡易な皿を敷き、その上にホットケーキを出す。
「うわーい!」
ドーカリ―は目の前のホットケーキを食べようと我先に身を乗り出す。
「待って。これをかけたらもっと美味しくなるよ」
ルリはホットケーキだけでなく、ハチミツをとりだす。そのハチミツにドーカリ―は釘付けになる。
「なにそれ?」
「まぁ見てて♪」
ルリはホットケーキにハチミツをかける。ハチミツの甘い香りに、空腹状態が長く続いていたドーカリ―の胃袋は限界値を超過していると叫ぶ。
「いいよ」
その一言を聞いた瞬間、ドーカリ―は用意してあったフォークを使わず、手でホットケーキをつかみ、手をハチミツでベトベトに汚しながらも一切残すことなく完食した。
「まだ食べる?」
ルリもホットケーキをアイテムブレスレットから取り出して食べていたが、食すことを中断し、ドーカリ―に声をかける。その様子はまるで、妹を気にする姉のようである。
「うん」
今のドーカリ―は、食欲という主を持ち、忠実に従う従者のようになっていた。ルリはドーカリ―の意志を聞き、追加のホットケーキを取り出す。
「後、ホットケーキを食べる時はこのフォークを使って食べるといいよ。手が汚れないからね。汚れた手を洗うから、手を出して」
ルリとドーカリ―は少しの間、ホットケーキを食べ続けた。ルリのアイテムブレスレットからホットケーキが完全になくなったので、次は果物をアイテムブレスレットから取り出し、2人で食べ始める。
「美味しい・・・。食べる事ってこんなにも幸せだったんだね」
そんな独り言のように呟いたドーカリ―の言葉に対し、
「そうだよ♪」
ルリは笑顔で答える。その笑顔で、ドーカリ―は今までルリに見せてこなかった笑顔を見せる。その笑顔は、ルリと同じくらい純粋さが多く残っていた。
ひとしきり食べた後、ルリはドーカリ―に質問する。
「それで、お兄ちゃんはどこなの?」
「ん~・・・。確かあっち、だと思う」
ドーカリ―は素直にルリの質問に答える。ドーカリ―は完全にルリを信頼していた。
「ふ~・・・ん?」
「!?」
ルリは、ドーカリ―が指差した方向を見る。見た直後、ルリは異変に気付く。ドーカリ―も異変に気付いたのか、目の色を一変させる。
「やばい!?」
ドーカリ―はすぐ異変の元凶の場へ向かおうとする。
「ねぇ?何があったの?」
ルリはドーカリ―の慌てている様子に気付き、何があったのか問う。
「親分が【獣化】しちゃったの!早く止めないと大変なことになっちゃう!」
ドーカリ―は親分の元へ急ぐ。
「?どういうこと?」
ルリが疑問を抱いているにも関わらず、ドーカリ―は親分のところへ向かう。
「急がないと消えちゃう!町も、みんなも!!」
ドーカリ―の急かしは、ルリの不安を煽ることになっていく。
次回予告
『5-1-13(第372話) キメルム達の奇襲~クリムVSゴダム~』
複数人による奇襲で、彩人達は分断されてしまう。そんな中クリムは、異形の腕を携えるゴダムから奇襲を受ける。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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