1-2-11(第37話) 今の状況
翌日、俺は重要会議室へと向かう。先日のお仕置き(ハラパン)のせいでお腹が痛いが気にしない。そして、俺が入った途端、空気が重くなった。
「「「「………」」」」
「…あ、今日もよろしく頼むぞ、アヤトよ」
「あ、おはようお兄ちゃん♪」
「あぁ、今日もよろしく」
以外にも、スレッド国王から話しかけてくるとは思わなかったぞ。
そしてヒュドラよ。こんなにわかりやすいほど空気が重いのに、相変わらずだな。
「それでは、会議を始めるが、最悪の事態となった」
「最悪の事態?」
俺はオウム返しで聞いてしまった。
「うむ。実は…」
こうしてスレッド国王はこの国に向かっている軍勢の数、その軍にいる魔獣のランクなど、どれもこれも状況をひどくさせるような内容だった。
「ギルド長、この国の冒険者を戦争に参加させるのはどうでしょう?」
「無理だな。あいつらは自由を好むし、なにより戦争前に逃げ出すだろう」
「「なるほど」」
思わず俺とリーフさんが納得してしまう。
「それでは我が国の兵士を使えばいいのではないでしょうか?」
「貴族全員が参加しない戦争に参加させるのか?信用がないだろ」
「それじゃどうするか?」
「うむ」
「「「「「………」」」」」
ギルドマスターとスレッド国王の言葉をきっかけに、全員が黙ってしまう。
そこで、イブが席を立つ。
「どうしたイブ?」
「………増援、呼ぶ」
その言葉を言った瞬間、イブは消えた。恐らく、イブが持っている魔道具で「魔の国」に行ったのだろう。そして、すぐに戻ってきた。二人を連れて。
「おぉ、アヤトか!どうしたのだ?」
「アヤトさん!またホットケーキ作ってください!」
そう、魔王とその妻だった。
二人がおおよその話を聞き、結果が、
「「アヤト(さん)に任せれば?」」
であった。その言葉を聞いた瞬間、全員がこちらを向いた。そしてその眼には、期待と希望を宿しているのを感じた。
「わかったよ。その代わり、死んでも知らないからな」
この言葉を聞いた瞬間、俺以外の全員が満面の笑みを浮かべていた。
まったく、俺は戦争をするために来たわけじゃないぞ。
そして、彩人は気付かなった。自分を頼ってくれていたのが嬉しくて、少しにやけていたことに。
((((((((アヤト、嬉しそう))))))))
そして、そのことが他の人にばれていることに。
俺は、作戦を説明しようとしたとき、みんなが笑った後、少しにやけていることに気付いた。
「おい。なんでにやけているんだよ」
「「「「「「「別に~」」」」」」」」
そう言いながらみんなにやけていた。だからなんでにやけているんだよ!俺はそんなもやもやした気持ちで説明を始めた。
間食代わりに作った大量のホットケーキをみんなで食べながら、会議は佳境を迎えていた。
「…ということだけど、他に何か質問はないか?」
「なら、少しいいか?」
「お、なんだ魔王?」
「我々が手伝うのはわかったが、その報酬はどうなるのだ?」
「報酬?」
そう言えば忘れていた。確かにスレッド国王、クリム王女、リーフさん、ギルドマスター、ヒュドラは戦う理由はあると思う。だが、「魔の国」所属の三人は関係ないのだ。報酬を要求するのは当たり前なのだろう。
「それで、何が欲しい?」
そう言うとわかっていたのか、二人はすぐに俺を指さした。一応、俺の後ろに何かあるかもしれないので、後ろを向く。何もない。やはり、俺を指さしていた。
「「お前の料理だ(ですわ)!」」
「…えっと、今ホットケーキ食べているよね?」
「もちろん」
「これとは別の美味しい料理ですわ!」
こいつら、俺と会ってから、ずっと食い物の話しかしていない気がする。でも、これから助けてもらうし、あまり強くは言えないし。はぁー。
「わかったよ。だけど後でな」
「「よっし!」」
さて、魔王とその妻は放っておいて、
「じゃあこれから、俺は罠設置に「待って!」行ってくってなんだヒュドラ?」
「私も手伝うから連れてってよお兄ちゃん♪」
確かに、罠設置だけでも東西南北と四か所あり、さらに専用の魔道具も作らなくてはならないからな。魔力が足りなくなるかもな。
「わかった。一緒に来てくれ」
「うん!」
「他の人は魔力や体力を管理して、戦争時に全力を出せるようにしてくれ」
「「「「「「「ふぁい」」」」」」」
せめてホットケーキ食べ終えてから喋れよ。
俺はその光景を見て安心してしまう自分がいた。だからこそ、
「この場所を守らなくちゃ」
誰に聞かせるわけでもなく、自分の意思表示として呟いた。




