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色を司りし者  作者: 彩 豊
第5色 白の国 第一章 人間と魔獣が混ざり、鈍色なキメルム
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5-1-9(第368話) キメルム達の奇襲~クロミルVSヴァーナ~

「ここは・・・どこ、でしょうか?」

「あら?気がついたかしら?」

「!?あなたはさきほどの・・・!」

 クロミルはさきほど【血槍】をはなった外套を纏った者と対峙する。

「ああ。そういえば名乗っていたかったわね。私は吸血鬼のキメルムのヴァーナよ」

 その者は自らをヴァーナと名乗る。

「キメルム?その言葉、どこかで聞いたことがあります。確か、私の同胞がそのような言葉を述べていた気がします」

「へぇ。あなた、よその国から来たくせにキメルムという言葉を知っているなんてね」

「具体的なことは分かりませんが、キメルムは人と魔獣が混ざったもの、と聞いております。」

「ふぅ~ん。本当に軽くだけ、聞いていたのね」

 ヴァーナはだけ、という単語を強調する。

「それで、あなた方はどのような目的で私達を襲ったのですか?」

「それはさきほども言ったはずです」

「食料、ですよね?」

「ええ。その食料を得るためなら私は、」

 ヴァーナは自身の周囲に赤黒い槍、【血槍】を再発生させる。

「あなた達を殺すことだって躊躇いません」

 ヴァーナは指をクロミルめがけて振り下ろす。すると、【血槍】はクロミルに向かっていく。

「・・・」

 クロミルは【血槍】を前にして手をかざす。そしてクロミルは【魔力障壁】を展開する。クロミルが展開した【魔力障壁】とヴァーナの【血槍】が激突し、

「な!?」

 ヴァーナの【血槍】が形を保つことが出来なくなる。

「これで私を殺せると思ったのですか?あなたの眼は随分悪いようですね。一度、目の検査をすることを推奨します」

「な!?舐めるなぁ!!」

 ヴァーナは自身の周囲にコウモリを顕現させる。

「いけ!」

 コウモリ達がクロミルめがけて襲い掛かる。

「これで貴様を殺し、糧を手に入れてやる!」

「やはり私を舐めているようですね」

 クロミルは両の掌を合わせてから、コウモリ達に掌を向ける。

「【牛封・牛麟結界】」

 クロミルが発生させた結界により、コウモリ達の動きが止まる。

「な!?貴様ぁ、何をしたぁ!?」

「あなたの眷属を動けなくしました。これで再び一対一ですね」

「!?やはりあなたは、私が直接殺すしかないようね」

 ヴァーナは、自分の腕を噛む。噛んだ個所から血が流れる。その血は空中で止まり、ある形を形成していく。その形は、さきほどの槍の様な形ではない。その形状は、鎌。ヴァーナが鎌を持つ姿は死神を彷彿とさせる。

「死ね!」

 ヴァーナは鎌をクロミルめがけて思いっきり振り下ろす。

(死んだ!)

 ヴァーナの鎌がクロミルの頭を割ろうとした時、ヴァーナは勝利を確信する。

 だが、

「その武器で刈り取れるほど、私は甘くありませんよ」

「な!?」

 クロミルは、彩人からもらった魔銀製の剣でヴァーナの剣を防いでいた。

「舐めるなぁ!」

 ヴァーナはクロミルの命を刈り取るため、懸命に鎌を振る。

(随分乱雑な振りですね)

 クロミルは冷静にヴァーナの振る舞いを分析する。

 その振る舞いは、さきほどより焦っているのか、余裕が見られない。まるで、なにか焦っているような、そんな感じである。

「お前らみたいに、私達を非難し、殺してきたから!」

「・・・」

 クロミルは何も言わず、ヴァーナの鎌を受け流したり、防いだりする。

「貴様らが私達をこんな体にしたのに、どうしてここまで非難されなきゃいけないって言うのよ!?」

「・・・」

「あんたらみたいに、人を人とも思えない屑がいるから、私の、私達の仲間が・・・、死んでいったのよ!!!」

「・・・」

 ヴァーナは、親の仇を殺そうとするかのように、攻撃に殺意を込める。そして、攻撃の所々に発する言葉にも、攻撃と同じくらいに殺意を込める。

 その一方で、クロミルはヴァーナからの殺意を、攻撃とともに受け流す。

「私達はみんな苦労していたのに、なんであんたらは楽しそうにしているのよ!?ふざけんじゃないわよ、ふざけんじゃないわよ!!」

 ヴァーナは自身の腕に切り傷をつくり、傷から血を流す。その血から複数の槍、【血槍】がクロミルの周囲に顕現する。

「私達の幸せを、邪魔するな―!」

 ヴァーナの複数の【血槍】がクロミルめがけて放たれる。

「・・・」

 複数の【血槍】をクロミルは剣で全て薙ぎ払う。

「別に私達は、あなた方の幸せを邪魔するつもりはありません」

「うっさい!」

 ヴァーナは腕に追加の切り傷をつけ、流血量を増加させる。

「それ以上血を流しますと命に関わりますよ?」

「これで仕留める!」

 ヴァーナは多くの血を一個所に集める。その血の量は、【血槍】で使っている血の量より多い。

「【()(りゅう)】!」

 赤黒い血が竜の形を形成し、クロミルに襲い掛かる。

「牛術が一つ・・・、」

 クロミルは【血竜】に対し、ある牛術の準備をする。そして、

「!?消えた!?どこに・・・!?」

 ヴァーナがクロミルの行方を探し始めると、【血竜】が横一直線に分断された。その後、【血竜】が細かく切り刻まれ、竜という形が無くなった。

「な!?」

「【午閃】」

 クロミルはとどめと言わんばかりに、ヴァーナに剣先を向ける。

「これで満足ですか?」

「わ、私は、親分のために・・・、」

「あなたは親分、という方を慕っているのですね」

「当たり前じゃない!?私達を救ってくれた命の恩人なの!親分のためなら私、なんだってするわ!」

 ヴァーナは最後の抵抗と言わんばかりにクロミルを睨みつける。

「であれば、あなた様の死亡によって、あなたが言う親分様が悲しむのではありませんか?」

「!?あなたに何が分かると言うの!?私は親分のために負けられないのよ!?」

「私も同じです」

「え?」

「私も主のために負けられないのです。ですが今回は負けてもいいと思っています」

「は?負けたらあんた、死ぬのよ?それでもいいの?」

「いえ、あなた様の勝利条件は、私を殺すことではないはずです」

「は?あなたを殺すことに決まっているじゃない!あなたを殺して・・・、」

「今日を生き抜くための食料を得る為、私達を殺そうとした、違いますか?」

「!?」

 ヴァーナは図星を突かれたのか、体が一瞬震える。

「あなた様方がもし、今回の事に関して深く謝罪をするのであれば、ご主人様は受け入れると思います」

(多分、ですが。御主人様、かなり根に持つ人間ですので、何らかの報復はされると思いますが、仕方がない事でしょう)

 クロミルは自身の主、彩人を執念深い人間と位置付けていた。きっと、緑の国での出来事や、普段の行動をよく見ているからこその判断であろう。

「そして、あなた様方に食料を分けると思います」

「・・・なんであんたはそこまで私に情けをかけるの?」

「あなたに主、親分がいるように、私にもご主人様、親分のような存在がいるからです」

「あなたも?そうか、あなたは牛人族だから・・・、」

「ええ。あなたと私は似ているのです」

「!?この気配、まさか!!??」

 ヴァーナは突如、あさっての方向を見る。そしてクロミルはすぐ何かに気付く。

「この気配は一体何なのでしょうか?」

 クロミルは謎の気配について考察し始める。だが、ヴァーナはすぐに謎の気配の正体を理解していた。

「きっと親分だ。それにこの気配、まさか【獣化】したんじゃ・・・?」

「【獣化】?【獣化】とは一体・・・?」

「早く親分のところに向かわない、と!?」

 ヴァーナは親分の危機を救おうと動き始める。だが、

「う!?」

 思うように動けなかった。ヴァーナは思うように動けない理由を推測出来た。

(後の事を考えずに血を使い過ぎたのね。まったく、私らしくもないわ)

 後悔先に立たず、である。ヴァーナは満足に動けない体を酷使しながら親分のところに向かおうとする。

(この状況を最も理解しているのは私よりこの方のようです。であれば、この方に協力するのも手ですね)

 クロミルは指先を切り、血を皮膚の外に出す。

「私の血でよければ飲みますか?」

 クロミルは流血した指をヴァーナにさしだす。ヴァーナはクロミルの姿勢に驚く。

「本当にいいの?」

「ええ。その代わり、現在の状況について説明をお願いいたします」

「分かったわ。もしかしたらあなた達の命に関わるかもしれないし」

(どういうことでしょう?)

 クロミルはヴァーナの言葉に疑問を抱きつつ、ヴァーナに血を分ける。

「それじゃあまず、親分のところへ向かうわ。向かっている間に今起きている出来事について話すけど、それでいいかしら?」

「ええ。それでお願いします」

「分かったわ」

 こうして、さきほどまで戦っていたクロミルとヴァーナは親分のところへ向かう。

次回予告

『5-1-10(第369話) キメルム達の奇襲~モミジVSピクナミ~』

 複数人による奇襲で、彩人達は分断されてしまう。そんな中モミジは、ピクシークイーンのキメルムであるピクナミから痩せこけた土地に関する話を聴く。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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