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色を司りし者  作者: 彩 豊
第5色 白の国 第一章 人間と魔獣が混ざり、鈍色なキメルム
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5-1-7(第366話) 無魔法

 コウモリを地面に埋めて放置し、後にしてから数日。特に困った出来事は起きていない。魔獣もレンカで事足りる程度だったし、夜通し見張りも当番毎にしてもらっているが、毎晩問題ないらしい。俺はおでんを作った日以来、夜通し見張りしていないから分からない。見張りをしてもらったイブ達から聞いただけなので真偽は分からん。

 そして、おでんをみんなで食べた。この世界で食べたおでんと、地球で食べたおでんを基に俺流のおでんを出してみた。結果、

「「「美味しー♪♪♪」」」

 好評だった。みんな、黄の国でこのおでんを食べていたのか、

「…これ、黄の国にあったおでん?」

「とてもよく再現していますし、美味しいですね♪」

「アヤトもおでんを食べていたのですね。気づきませんでした」

「流石はご主人様です。食に関する知識も豊富でいらっしゃいます」

「この餅餅巾着、ルリのいただきー♪」

「この野菜、とっても美味しいです。え?ゴボウって言うんですか?」

「アルジンが手をかけると、なんだか面妖になっていきますね」

 みんな喜んでくれた。ところでレンカ、俺の料理を面妖とか言うんじゃない!俺の料理はこの世界のおでんと地球のおでんを再現したものなんだぞ!?面妖の意味を理解していないんじゃないのか?まぁいい。おでんの感想を聞けたことだし、俺の料理のレパートリーに付け加えよう。

 料理の出来に満足した俺は、あることをみんなに聞くことにした。

「なぁ?無魔法について何か知っているか?」

 それは、無魔法についてだ。

 確か、デベロッパーと戦っている時、パラサイダーが言っていたな。今までどんな魔法か気にする余裕がなかったのだが、今は多少余裕が出来たので、この際に聞こうと思ったのだ。

 え?ならおでんを作る前に聞けばよかったんじゃないかって?それは・・・聞かないで欲しい。ただ一つだけ言わせてもらうと、決して、今の今まで忘れていたわけではない。ないんだからね!

「何それ?ルリ知らなーい」

 そう言いながら、ルリはおやつ用に焼いていたホットケーキを貪っていた。今の時刻はおやつ時だから別に食べても問題ない。今はレンカを休ませ、休憩中だからな。

「?赤魔法、ではないですよね?」

「ああ」

 俺はクリムの確認に肯定する。

「緑魔法でも青魔法でも黄魔法でも白魔法でも黒魔法でもない、ということですよね?」

「あ、ああ」

 リーフが赤魔法以外の色魔法を列挙した。俺はそれらの色魔法を全て否定した。リーフが列挙したどの色魔法とも異なるからな。

「…聞いたことが無い魔法。本当にその無魔法?は存在するの?」

「多分?」

 俺だって確定的なことは分からない。だが、あいつらは確かに言った。無魔法と。

「申し訳ありませんが、私は無魔法という魔法に関する知識はありません」

「そうか」

 まぁ、クロミルにも知らない事の1つや2つあるよな。

「私も分かんないです。分からなくてすみません」

「いや。知らないのならしょうがないさ」

 現に俺も知らないし。知らないから聞いているわけだし。

「レンカはどうなんだ?」

 俺はまだ聞いていない相手、レンカに質問する。

「う~ん。記憶として知っている範囲でよければ話しますけど、聞きます?」

「え?お前、知っているのか?」

「はい。書物に記載されている記録は記憶しています」

 書物に記載、だと?

「無魔法に関する記載をしている書物があるのか?」

「今はもうないかもしれませんが、数百年前にはあったかと」

「はぁ」

 数百年前にはあったのか。ていうか、どうしてレンカはそんなことを知っているんだ?今はいいか。

「それじゃあ知っている範囲でいいから教えてくれないか?」

「ええ。もちろんです」

 こうして俺達は、レンカから無魔法に関する話を聞くことにした。


「まず、無魔法は7種類目の色魔法です」

 そのレンカの言葉に、

「「「・・・は???」」」

 俺達全員同じ声をあげた。驚くのも無理はないはず。なにせ、

「…色魔法は全部で6種類のはずだけど?」

 イブが行った通り、色魔法の種類は全部で6種類である。

 赤魔法、青魔法、緑魔法、黄魔法、白魔法、黒魔法だ。さっき、クリムやリーフが言った色魔法である。

「現代はそのような認識みたいですね」

「現代?それじゃあ昔は違ったのか?」

「ええ」

 俺の質問に、レンカはあっさりと肯定した。

「昔、それもかなり昔です」

 そうか。相当昔なんだろうな。

「無魔法を使える者は例外なく殺害対象となっていました」

「「「!!!???」」」

 レンカの言葉に、俺達全員は驚きを隠せずにいた。

「ど、どうしてですか!?」

 クリムがレンカに質問する。

「無魔法があまりにも強力過ぎたから、でしたかね?」

「…それじゃあ、無魔法は一体どんな魔法なのですか?」

 リーフが恐る恐るレンカに聞く。

「確か、【想像】と【創造】ですね」

「「「・・・???」」」

 レンカの言葉に、レンカ以外が戸惑っていた。

 というか、そうぞうとそうぞうって何だ?片方のそうぞうはおそらく【創造】かもしれないが、もう一つのそうぞうは何だ?人の名前か?

「ちゃんと説明しますので安心してください」

 説明していくれるのか。それならよかった。

「まず一つ目の【想像】は、自身が思い描いたものを脳内で考える事です」

「・・・え?それだけ??」

「はい。これだけです」

「「「・・・」」」

 それだけ、なのか?とんだ魔法じゃないか!?そもそもそんな魔法にどのような使い道があるのだろうか?そんな魔法が強力とか、どんな使い方をしたのやら。

「…もしかしなくても、無魔法って大したことないのでは?なんて考えていますよね?」

 レンカの目を直視出来ず、俺は思わずレンカから視線を逸らしてしまう。

「まぁまぁ最後まで聞いてください。もう一つの【創造】がやばいんですから」

「そんなにやばいのですか?」

 モミジが控えめに聞いた。

「ええ。何せもう一つの【創造】は、【想像】したものを具現化させることなのですから」

「…具現化って、もしかして・・・?」

「ええ。【想像】さえ出来ればどんな色魔法も再現出来る、ということです」

「「「!!!???」」」

 え?まさか・・・?

「つまり、無魔法一つに適性があれば、全色魔法を扱える、ということなのか?」

「想像出来れば、ですけどね」

 なにそれやば!?想像さえ出来れば無魔法だけで6種類の色魔法を扱えるのかよ!?

「強過ぎないか、それ?」

「ええ。その強さは、他国から人の性格関わらずに殺害対象となるほどに、です」

「・・・」

 俺は、“そんなの理不尽だ!”と言いたかった。だが、その強さなら殺害対象になっても仕方がないんじゃないかとも思ってしまった。俺はその強さの一端を何度か触っているのだから。

(もしかしたら、ヌル一族が、)

 あのデタラメな強さ、無魔法に適性があるのなら納得がいく。

「そんなの、あんまりじゃないですか!?」

 俺が殺害対象になっても仕方がないと思ってしまった時、モミジが大声をあげて否定した。

「モミジ?」

「だって、力を持っているからってみんなから殺意を持たれるって辛過ぎます!辛過ぎますよぉ」

 そう言い、モミジは泣きそうになった。

(モミジは、本当にいい子、だな)

 おそらくモミジは、無魔法に適性がある子と自身を重ねているのだろう。

 モミジはかつて、森災と呼称され、蔑まれた。そして、同胞であったフォレード達に暴力をふるわれていた。そのひどいさまは、学校で行われるいじめ以上に悪質で、辛いものだった。そんな理不尽を、モミジは辛いと、可哀そうだと言っているのだろうな。

(馬鹿だな、俺は)

 俺自身、そんな理不尽を嫌っていたはずなのに忘れていたとは。俺がいじめられたのも、こんな理不尽からだったな。本当に、どの世界でもいじめに似た行為は起きるものだな。本当、嫌になる。

「・・・」

 俺は無言でモミジの頭を撫でる。

“大丈夫。俺達がいる”

 その意味を込めて、俺はモミジを安心させる。だが、その行為を行ったのは俺だけではなかったらしく、

「モミジちゃん、私達がいます」

「…ん。筋肉馬鹿の言う通り」

「私達は、そのような迫害行為を行いませんし、モミジちゃんの仲間です」

「モミジ様はこの私、クロミルがお守りいたします」

「モミジ殿の優しさ、大変身に染みてきました。私、道具なのに」

「モミジお姉ちゃんは、ルリが守る~」

 みんな、モミジを労っていた。ルリに至っては眠りながら労っていた。

「みなさん、ごめんなさい。そして、ありがとうございます」

 少し時間がかかったものの、モミジは立ち直った。

「それでアルジン、この時に無魔法に関することを聞いたという事は、出会ったのですね?」

「ああ」

 俺はレンカに隠すことなく肯定した。

「?出会ったって誰にですか?もしかして、初恋の人、とかですか!?」

「…この話の流れでどうしてそうなる?この筋肉お馬鹿は」

 クリムの言葉にイブは呆れた。イブだけでなく、リーフも呆れている。モミジは苦み溢れる笑顔を浮かべ、クロミルは無表情だ。クロミルってポーカーフェイス上手いな。

「おそらく、アヤトの言うヌル一族が無魔法に適性がある、ということですね?」

「確証はないがな」

 リーフの言う通りだ。

 あのヌル一族のデタラメな強さも、無魔法に適性があるというなら納得がいく。

「確かに、ご主人様の推測通りであれば、あの者達の強さも納得がいきます」

 そういえば、クロミルはヌル一族と戦ったことがあったんだよな。記憶が正しければ、緑の国でパラサイダー・ヌルと、だったか?戦ったというより一撃でやられた気がしないでもないが、あの一撃だけで自分が敵うか敵わないかを理解したのだろうな。

「ご主人様は今後、そのヌル一族の方々を倒していくご予定なのですか?」

「いや、そんな予定はない。あんなでたらめな奴ら、何度も戦いたくないからな」

 俺は出来れば楽をしたい人間なのだ。あんな奴ら、二度と会いたくない。

 が、また会うだろうな。確証はないが、そんな予感がする。

(何故だろうか?)

 俺自身、その理由は分からない。何度も戦い、重傷になり、死にかけて二度と会いたくないのにな。そんなことを考えたから、フラグでもたったのだろうか。

「…そう。ならいい」

 イブはそれ以上聞くことはしなかった。イブが満足したからなのか、他の人達もこれ以上ヌル一族について聞くことはしなかった。もしかしたら、俺がこれ以上聞かないでくれオーラでも発していたからなのだろうか。

「それにしても、お兄ちゃんが作るホットケーキって本当に美味しいよね~♪まるで神が作ったみた~い♪」

「おいおい。それはいくらなんでも言い過ぎじゃないか・・・」

「神・・・あ」

「ん?どうかしたのか?」

「アルジン、私、神関連で思い出したことがあります」

「神関連で思い出したこと?」

「はい」

 一体何を思い出したのだろうか?

「確か、無魔法に適性がある者達が強過ぎて、一時期このような呼ばれ方をしていました」

 神の末裔、と。

 レンカのこの言葉で、全員が押し黙る。

「確か、あまりにも強くて、まるで神を相手にしているかのようだと表現し、そう呼ばれていたかと」

「神の末裔、ねぇ・・・」

 俺、そんな奴と何度も戦ってきたんだけど?神みたいな神聖さを一切感じられなかったんだが?そういえばレンカは強さの部分を神と例えていたな。

(つまり、俺も神みたいに強い、ということか?)

 ・・・ないな。俺が強いのはこの世界に来てから少し感じているが、俺は俺自身のことを神だとうぬ惚れるつもりはない。少なからず、地球にいたころの俺では牛車を引っ張って歩く、なんて芸当は出来なかったことだろう。

「今後、ヌル一族を相手にする時は気を付けるとするよ」

「そうしてください。アルジンだって一人の人間なのですから」

「…そうだな」

 こうして俺のことを心配してくれなんてあまりなかったな。地球では家族しか俺の身を心配してくれなかったな。

 え?他にも多くの人間がいるんじゃないかって?そりゃあいるだろうよ。親戚とか友人とか親友とか赤の他人とか色々。だが、家族以外は俺の敵だった。俺が陰キャだと分かると、いじめの対象にされ、冤罪もかけられたな。俺が不登校になった理由の一つだ。

 それから、自然と無魔法、ヌル一族に関する話題が焼失し、別の話題になった。

 さらに俺達は白の国へ向かうため、どれほどあるか分からない距離を詰めていった。

次回予告

『5-1-8(第367話) キメルム』

 レンカから無魔法について話を聴いた後、彩人達は歩みを止めずに進み続ける。そして、遠方にボロイ町が見える。その町に入ろうとすると、奇襲を受けてしまう。奇襲を仕掛けてきた者は、自らをキメルムと名乗る。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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