5-1-3(第362話) おでん作り
まだ黄の国を出てから数日。
(暇だ)
やることが特になく、暇になった。考える事ややるべき事が色々あるのだろうが、忘れた。俺は、都合の悪いことは全て忘れる主義の男なのである!
とはいえ、何もせずに1日を終わらせるのはどうなのだろうか。もしかしたら何もせずに数日、数週間、数か月と過ごしていくかもしれない。
(それはいくらなんでも不味いな)
なんという無駄だ。時間を捨てているみたいだな。
ということで俺は、やるべきことを一つ考えた。
(黄の国で食ったおでんの再現だな)
それは、黄の国にいた時に食ったおでんもどきの再現である。
まず俺は昼間の内に、おでんについて調べた。他の人達は・・・寝ていたり、黄の国で購入したトランプもどきで遊んでいたり、何か色々している。俺もこれから腕に搭載している検索機能を使っておでんを調べるのだが。
(ふむふむ。なるほど)
おでんは煮物料理の一種、という捉え方でいいんだな。材料は大根、卵、コンニャク色々だな。地方や家によってもおでんって微妙に違うんだな。牛スジがはいっていたり、味噌味のおでんだったり。少なくとも俺の家で食っていたおでんは、牛スジは入っていなかったし、味噌味ではなかったな。
(味付けはまずシンプルにしてみるか。とすると、次はおでんに入れる材料か)
大根、卵、コンニャクは確実に入れるとして、他に何か入れようかな・・・
(はんぺんとか餅巾着、ゴボウ天も入れておきたいな)
アイテムブレスレットに入っていただろうか。後、厚揚げも食いたい。地球では結構食っていたな。作り方は一切知らんが。
(やば)
厚揚げのことを考えていたら、急に食いたくなってきたな。リーフ、厚揚げの作り方を知っているかね。
(出汁については・・・まぁなんとかなるか)
昆布っぽい食べ物があるから、これで出汁がとれるだろうし、黄の国の滝付近で採集した茸からも美味しい出汁が出る。
(ひとまず、夜になったら、アイテムブレスレット内の食料チェックから始めるとするか)
俺はこれから作るおでんの味を思い出しながら、地球で食べたおでんの味を思い出していた。
一方、
(((何考えているんだろう???)))
彩人以外、彩人の変な笑顔、雰囲気にドン引いたり、疑問を抱いたりしていた。
時刻は経過し、夜。
「「「お休みー」」」
「お休み」
当番制で夜の見張り当番を変えている。そして今日は本来、俺とモミジの番なのだが、モミジに無理を言って、独りで見張りをすることにした。独りで見張りをする理由はもちろん、夜通しおでんを作るためである。レンカは道具なので睡眠しなくても活動し続ける事が可能と言っていたが、休んでもらっている。いざと言う時に動けないのは困るからな。それに日中働いてもらっているから、見張りまでさせるのは気が引けるというものだ。もちろん、急な敵襲にも対応出来るよう、対策はしている。
まず、周囲に【結界】を複数展開し、【粘性】の付与も忘れない。これで万が一、敵襲を受けたとしても、この【結界】達が防いでくれることだろう。
(ついでに、【防臭】も付与しておくか)
おでんを作る際、少なからず美味しい匂いを発しそうなので、その匂いで魔獣達がこの近辺に群れないようにするためだ。どうでもいいが、【防臭】って、料理の美味しい匂いも防いでくれるのだろうか。料理の匂いっていい匂いと悪い臭いがあるからな。
いい匂いというのはもちろん、スープカレーとかドライカレーとかシーフードカレーとかが発する匂いだ。
悪い臭いというのは、焦げ臭いとかクサヤとかが発する臭いだ。
いずれも、俺がそう思うだけで確定というわけではない。中にはカレーの匂いが臭いと感じる人がいるだろうし、クサヤの臭いを、「もう最高!私、この臭いを毎日嗅いでいないと死んじゃう!!」と言う人がいるかもしれないからである。
ちなみに、いい匂いの例がカレーばかりなのは突っ込まないで欲しい。匂いを発する料理について考えたが、カレーしか思いつかなかったんだ。
「まずは出汁の準備だな」
3パターン用意しておくか。
1つ目は、昆布のみ。
2つ目は、茸のみ。
3つ目は、昆布と茸の混合。
これらを試し、どれが最も美味いか検証してみるとしよう。
「さて、と」
出汁をとっている間に、下ごしらえをするとしよう。
本来、美味しい出汁をとるには時間がかかる。下手したら半日以上かかることがある。やはり、美味しいものを作るにはそれ相応の手間が必須、ということなのだろうか。なので俺は、出来るだけ時短で出汁をとれる方法をチョイスした。
それは何故か?
時短した方が楽だからですが何か?
というわけで、レッツメイク出汁!
・・・出汁の英語って何?スープ?まぁいい。
・・・。
「ふぅー」
こんなところか。
今、俺の手元には3種類の出汁が存在している。
「それぞれ味見してみるか」
俺は昆布のみの出汁、茸のみの出汁、昆布と茸の出汁を飲み比べた。
「・・・」
味見の結果、昆布と茸の出汁が最もいいんじゃなかと思った。もちろん、昆布のみの出汁も茸のみも出汁も美味かった。なので、勘で決めた。舌で判別出来ないのだから、勘で決めるしかないじゃないか。顆粒出汁が近所に売っていれば、味の比較が出来るんだけどな。ここは異世界。近辺にコンビニやスーパーはないのだ。
「よし」
次は下ごしらえした材料を投入だ。卵、コンニャクもどき、餅巾着もどき、大根、チクワブっぽい練り物等、おでんの具を大量投入した。
これで後は、味がしっかりつくまで煮込むだけだな。
「ん~♪」
それにしてもいい匂いだ。思わずつまみ食いしたくなってしまう。
「・・・誰も見て、ないよな?」
もう我慢出来ない!俺はたまらず、手でつかみ取ろうとする。
「おっと。流石に手を突っ込むのはまずいな」
流石に衛生上まずいので、箸をアイテムブレスレットから取り出し、
「いただき!」
俺はおでんの鍋に箸を突っ込もうとした。
「ん?」
その時、視線を感じた。
「まさか・・・!?」
俺はもしもの可能性を感じ、リーフ達が寝ている牛車近くを見る。
「良かった」
リーフ達の様子はいたって正常だった。なら、今も感じているこの視線は一体・・・?俺はふと、周辺を見てみる。
「・・・」
すると、【結界】の外に何かいた。
次回予告
『5-1-4(第363話) 視線を向けた者』
料理をしていた彩人は、視線を感じた方角を見る。するとそこには、人間とかけ離れ、宙に浮いている生物がいた。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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