5-1-2(第361話) ファーリを黄の国に置いていった理由
「・・・アヤト、ちょっといい?」
「ん?なんだ?」
「ヤヤ達にファーリを預けたのって、ヤヤ達のため?」
「・・・なんだよ。分かっていたのか」
俺達は今、白の国に向かっている。黄の国の首都であるキハダを出たばかりなので、まだ黄の国内にいると思う。
そして、さきほどイブが質問してきたのは、俺がファーリをヤヤ達に預けた本当の理由である。誰にも言わず、俺の独断で決めちまって申し訳ないと思っていたのだが、俺の思惑がばれていたのか。
「ザッハの強さは申し分ないし、ギルドのランクでも証明出来ている。だが、もしもの事がある。それに、ファーリはヤヤ達に懐いていたからな。ヤヤ達に預けた方が幸せかな、なんて考えただけだ」
ばれてしまったので、俺は正直に答えた。
「大方、そんなことだろうとは思っていましたよ」
「リーフまで聞いていたのかよ・・・」
思わず俺は頭を掻いてしまう。ちょっと恥ずかしい。
「でもま、全員は聞いていないだろうから大丈夫・・・」
と思い、周囲を見たのだが、
「「「・・・」」」
全員、聞いていた、らしい。
(恥ずかし!!??)
俺はしばらく、牛車の隅で頭を伏せ、顔を見られないようにした。
ちなみに、この牛車の中にはレンカ以外全員いる。
え?それじゃあ誰が牛車を動かしているかって?当然レンカです。
レンカの体が魔力なため、形状を自由自在に変更可能とのことであった。それで俺は閃いたのだ。
こいつに魔力を供給しておけば、車みたいに勝手に進んでくれるんじゃね?と。
結果、大成功でした。しかも、車よりも超快適である。
車はハンドルを持たないと運転出来ないが、レンカは違う。レンカには自我があるからな。ハンドルがなくとも勝手に進行してくれるし、道も間違える事はないだろう。さらに、牛車内にほとんど揺れが無いときたものだ。ここにきて、牛車のスペックが俺達の快適な旅に好影響を与えたのかもしれないな。さらにさらに、道中に出てくる弱い魔獣なら、勝手にレンカが倒してくれるのだ。もうね、警戒せず全員昼寝していても問題ないくらいには快適なのですよ。
まぁ、自動運転が出来るようになり、人工知能で運転が出来る時代なので、それと比較すると・・・正直、人工知能でもレンカでもどっちでもいいんじゃないかと思ってしまう。だが、魔獣を自動的に討伐してくれるのは嬉しい。地球には動物はいるが、魔獣はいないからな。当然、地球の車には魔獣を討伐する機能なんて搭載していない。搭載している車と言えば・・・戦車か?
(そうか)
レンカは、とても乗り心地が優れている戦車なんだ。確かに、レンカは魔獣を討伐する時、砲身に形状を変化させて、魔力の塊を魔獣にぶち込むんだよな。魔獣の遺体もいつの間にか回収しているし。ほんと、優秀な道具であり仲間でもあるレンカには感謝だな。
「それでお兄ちゃん。白の国で見つける魔道具ってどんな魔道具なの?」
ルリが俺に聞いてきた。どんな魔道具、か。
「俺も詳細は知らん」
「え?」
え?とか言われても・・・。俺だって詳細は知らないんだから仕方がないじゃないか。
「デベロッパー作の魔道具が白の国にあることはこの魔道具で分かったんだが、それしか分からないんだよ」
俺はレーダーみたいな魔道具をルリに見せる。これには、魔道具のおおよその位置が点となって表示しているのだが、それだけなのである。どんな形をして、どんなこう顔を秘めている魔道具なのかがまったく不明なのである。
「それにしても、この牛車の中にクロミルさんがくつろいでいる光景ってあまりありませんでしたよね」
モミジはクロミルを見ながら話を振る。
「それは確かにそうだな。クロミルにはいつも世話になっていたからな」
これまでずっと牛車を引っ張ってもらっていたからな。今度からその役はレンカに任せ、俺達はいざと言う時に対応出来るようにしておこう。
「いえいえ。自分がやりたくてやらせていただいたまでです」
クロミルはいつも謙虚だな。
「クロミルお姉ちゃん。今までありがとうなんだよ~お礼にいい子いい子してあげる~♪」
と、ルリはクロミルの頭をナデナデする。クロミルは「きょ、恐縮です」と返した。心なしか、クロミルの顔が赤く見えるのは・・・夕日のせいだろう。
今は夕方じゃないけどな!
・・・俺は一体、何を考えているのだろうか?
まぁいい。
「それでレンカ、この道を真っすぐ進めば、白の国に着くんだよな?」
俺は確認のため、レンカに話を振る。
「はい。リーフ殿から話はそう聞いています」
「分かった。レンカはそのまま引き続き進んでくれ」
「了解です。ちなみに、一応魔力の補給をお願いしたいのですが、よろしいですか?」
「分かった」
レンカは魔力を消費して色々なことをしていくので、魔力が完全に切れる前に俺が魔力を補給しなくてはならない。他の人の魔力でもいいんじゃなかと思ったのだが、
「アルジンの魔力が一番いいんですよね~。ですのでお願いします」
と、レンカが言ってきたので、俺はレンカの要望に素直に答える事にしたのだ。今こうして快適な旅が出来るのは、レンカによるものが大きいので、これぐらい許容すべきだろう。レンカに魔力を譲渡した後、
「ありがとうございます、アルジン。後、これらがさきほど狩った魔獣達です。もしかしたら食べられるかもしれませんので回収しておきました」
「あ、ありがと・・・」
本当にレンカは優秀だな。俺はつくづく思った。
そして、旅はまだまだ続く。
次回予告
『5-1-3(第362話) おでん作り』
白の国に向かう途中、彩人は屋台で食べたおでんを思い出し、再現しようと思考し、料理を始める。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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