4-3-29(第359話) 出国と別れ
そしていよいよ、出国の日となった。
「ヨヨちゃーん!」
「ルリちゃーん!」
ルリとヨヨは共に泣き、抱いていた。二人とも、この別れを悲しんでいるんだな。俺としては、そんなに別れるのが辛いなら残ってもいいと思うのだが、
「それは絶対に嫌!ルリはお兄ちゃんの妹なんだよ!?」
と、分かるような分からないような理由を断言してきた。冷静に考えても、俺の妹だから一緒に行く?よく分からん。なのでこれ以上考えないことにした。みんなも、ルリ程ではないが、別れを名残惜しそうにしていた。
「みなさま、大変お世話になりました」
クロミルはヤヤ達3人全員に、社交辞令みたいな挨拶をした。
「リーフお姉ちゃん、いままでありがとうなんヤよ」
「ヤヤ、またいつでも教えてあげますからね」
ヤヤとリーフは向かい合い、手を固く結ぶ。
「イブお姉ちゃん。今までありがとう」
「…ん。今度会える時を楽しみにしている」
ユユとイブは向かい合い、笑顔を見せあう。
「クリムお姉ちゃん!また会いに、きてね?」
「もちろん!」
クリムは右手を挙げた。その後、ヨヨは思いっきり右手を右手でたたいた。いわゆるハイタッチだ。
「ニャー・・・」
ファーリは、みんなとの別れを惜しむように、それぞれの足に頬を擦りつけていた。
「また、会いましょうね」
モミジは、ヤヤ、ユユ、ヨヨの3人を同時に抱きしめる。そういえばモミジ、結構お店のことを手伝っていたからな。俺以上に、ヤヤ達と別れる事が辛いのかもしれないな。
「「「うん・・・」」」
ヤヤ、ユユ、ヨヨはモミジの抱擁を受け入れたみたいだな。モミジが望むなら、この国に残ってもらってもいいと思うんだが、それは出来ないんだよな。俺とモミジが一定以上離れると、俺の生命が維持出来なくなり、俺が死ぬんだそうだ。数キロ離れていても問題ないらしいのだが、それ以上はまずいそうだ。なので、今回の旅には付いてきてもらうつもりだ。俺、残酷な人間じゃないよな?しょうがない、よな?俺の命のためだから仕方ない、よな?
「もう行っちまうのか?」
「ああ」
ヤヤ達だけでなく、ザッハも見送りに来てくれたみたいだ。俺達を見送るためと言うより、妹達の付き添い、という意味合いの方が強そうなのは気のせいだろうか。
「まだお前らには恩を返しきれていないのに・・・。なんだか勝ち逃げされるようで釈然としないな」
「なら、もう二度と自分の妹達を失わないようにすることだな。またこの国に来るからさ。その時は美味しい飯でもご馳走してくれよ」
俺は右の拳をザッハに向けて突きつける。ザッハは俺の行動の意味が理解出来たらしく、
「ああ。だから必ず来いよ」
ザッハは俺の拳に向けて、右拳をくっつける。こういうこと、一度やってみたかったんだよな。地球ではやる機会なかったからな。こうやって友人と拳をくっつけ合うの。
(友、人?)
俺はこいつ、ザッハを友人だと思ったのか?きっかけはなんだろうか?そもそも、友人の定義って何だろう?
・・・駄目だ。友達について考えれば考えるほど分からん。この件については保留にしておこう。
「それじゃあ、行こうか」
「「「はい」」」
みんな、俺の後を付いて来ようとした。
「「「・・・」」」
そんな中、ヤヤ達3人の悲しそうな顔が見えてしまった。
(・・・ふぅ)
俺はある考えを言う事にした。
「そういえば、ヤヤ達にお願いしたいことがあったんだった」
俺はともについて来ようとしていた角犬、ファーリを持ち上げる。
「ニャ!?」
ファーリは驚いているみたいだが、今は無視しよう。
「ファーリの世話、お願いしてもいいか?」
「え?ど、どうして?」
「ファーリにはもっと強くなって欲しいんだ」
俺はザッハの方を向く。ザッハは俺の意図に気付いたのだろう。
「分かった。これで少しでも恩を返せるのであれば」
ザッハは俺の案に乗ってくれたようだ。よかった。
「ザッハにファーリの特訓をしてもらうとして、普段の世話はヤヤ達に任せたいんだ。こいつは賢い。だから、急な敵襲にも対応できるだろうし、ある程度の言葉も理解できるだろう」
「ニャン!」
俺の言葉を肯定するかのように、角犬は鳴いた。
「だから、頼めるか?」
俺は角猫をヤヤ達に近づける。
「ヤヤ達はいいけど、ルリちゃん達はいいの?」
俺が後ろを向くと、ルリは泣きそうになっていた。
(やっぱ辛いか)
ルリにとって、ファーリには特別な思い入れがあるのだろう。何せ、生まれた時に立ち会ったからな。ヨヨのことも、友達のように接していたものな。別れが辛いのも・・・分かるのだろうか?
(あれ?)
よく考えてみれば、俺には親しい友達がいなかったから、友達と別れる辛さなんて知らないぞ。・・・まぁいい。
「・・・分かったんヤよ」
「ユ。みんなでお世話すユ」
「ルリちゃん!いつでも帰ってきてね!ヨヨとファーリちゃんが待っているから!」
「ニャン!」
ルリはこらえきれず、涙を流してしまった。俺は出来るだけ紳士に努め、無言でルリにハンカチを渡そうとしたのだが、自分の腕で拭ってしまった。俺の先読みが無駄になったな。
「うん!絶対、また来るね!」
「それではみなさん、乗ってくださいね~」
俺はレンカの指示の元、牛車に乗り、ヤヤ達に手を振りながら、キハダを後にする。
「みんな~!またね~!」
ルリは特に大きな声で、ヤヤ達に言葉をかけた。
「みんなも~!また会おうね~!」
ヤヤ達も声をかけてくれた。中でも、ヨヨが一番別れを惜しんでいるようだった。
(さて、行くとするか!)
次なる目的地は白の国だ!
(目的は魔道具の回収だが、少しくらい飲み食いしてもいいか)
ひとまず、白の国にどんな食い物があるのか楽しみだな。
次回予告
『5-1-1(第360話) 会話を盗み聴く者』
白の国のとある町。その町で、ある者達は、白の国に入国しようとした者達、彩人達の会話の一部を盗み聴く。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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