4-3-27(第357話) 魔道具の件とこれから
あれから俺はと言うと、中年男性と言われる年まで寝続け・・・ていたことはない。睡眠日数は2日となった。起きた時、
「お兄ちゃん!?お兄ちゃーん!!」
と、ルリに思いっきりハグされたことを鮮明に覚えている。そして、息が出来ず、死にかけたことも鮮明に覚えている。ルリの胸、ほとんどなかったなぁ。再び目が覚めたら、
「お兄ちゃん、やり過ぎてごめんね」
と、しおらしくなっていたので、俺は許すことにした。誰にでも間違いはあるので仕方ないのだ。2度目の目覚めから少し経過し、イブ達も俺が寝ていた部屋に来てくれた。みんな、俺の状態を気にしてくれたので、俺は思わず泣きそうになった。何せ、俺みたいなボッチを気にかけてくれたんだぜ?感動ものじゃないか。
それで泥棒の件なのだが、俺がデベロッパーと戦った日から、一度も泥棒の被害件数は0件と報告を受けた。これで、今まで泥棒をしてきたのはデベロッパーであるという可能性が高まったな。まぁ本人が自白していたので、疑う余地は一切ないのだが。
森の奥にあった洞窟内の魔道具の件なのだが、
「これ、どうする?」
ザッハが洞窟から出る前に回収してくれていたらしい。何でも、俺に所有権があるらしく、ザッハは俺に魔道具をどうするか聞いてきた。俺は持っていたレーダーみたいな魔道具を起動させたところ、一つを除き、目の前にあった。どうやらここにある魔道具が、デベロッパー作の魔道具なのだろう。魔道具にも色々な形があるんだなぁと思いつつ、魔道具を見ていた。これらの魔道具、一体どんな効果があるのだろうか?もしかすると、あのゴーレムを製造する魔道具があるのかも?・・・俺は何だか怖くなり、
「いや、俺はいらない。みんなのために使ってくれ。だが、取り扱いにはくれぐれも注意してくれ。最悪、死人が出るかもしれないからな」
俺は所有権を放棄することにした。
「?いいのか?これを売れば希少価値がついて高く売れそうなのにな」
・・・なんだと?これを売れば金がもらえるのか?それも、希少価値がついて、高額で売れそうだと?
「それじゃあやっぱ売ることにするわ」
俺のこの一言で、
「「「・・・」」」
全員、俺に冷たい視線を送っている気がした。きっと俺のことをこう思っているだろう。
(((こいつ、現金だなぁ)))
と。まぁ俺も自覚はしている。あのタイミングで売るなんて言ったら、誰もが俺の事を金にがめつい人間だと認識することだろうな。俺、地球では一般市民だったからな。お金はいくらあっても困らないからな。
「・・・そうか。とりあえず俺が代理で金額の方をかけあっておくよ」
「ああ。よろしく頼む」
ザッハが俺の代わりに売買価格について話し合ってくれるらしいので、一任することにした。これで依頼の方は一件落着・・・ではなかった。
なんでも、あの森の奥にある洞窟の調査を再度行ってほしいと追加で言われたらしい。報酬金額が増えると言っていたらしいが、もう一度あの洞窟まで足を運ばなくてはならないのかと思うと嫌になるな。俺がちょっと憂鬱になっていると、
「そういうと思い、私達が、彩人が眠っている間に調査を進めておきましたよ」
「…ん」
「既に報告しましたので、依頼は完了しましたよ」
とのことだった。そうか、リーフ、イブ、クリムの3人が再度調査に言ってきてくれたのか。それは良かった。俺は3人の調査結果を簡単に聞いた。
内容を要約すると、何もなかった、とのことだった。
最初に行った時、ザッハが洞窟内にあった魔道具全て回収していたらしいし、それも仕方ないのかもしれない。そういえば、デベロッパーはあの洞窟でどうやって生活していたのだろうか。食は・・・あ。森に自生している木の実や野生動物でも食って生活していたのか。そう考えると、デベロッパーも結構世捨て人に近い生活を送っていたんだな。俺は3人にお礼を言い、これでようやく依頼は完了し、泥棒の件が解決したのだな、と安心した。
(あ)
そういえば忘れていたことがあった。
それは、魔道具の回収である。もちろん、ここにある魔道具のことではない。白の国に流れたデベロッパー作の魔道具のことである。さっき魔道具を探すための魔道具を起動したのだが、やはり一つだけ別場所にあった。デベロッパーは白の国にあると言っていたが、どんな形の魔道具なのか、まったく分からないんだよな。あいつ、とんだ置き土産を置いていってくれたものだ。このレーダーみたいな魔道具を使えば見つける事が出来るだろうか。
(いや、見つけるしかないか)
見つけて回収しよう。デベロッパーが作った魔道具だ。どんなデンジャラスな機能が搭載されているか想像出来ないな。もしかしたら、国を楽々滅ぼすゴーレムが入っている魔道具かも?それはやばいな。
そういえば、首都に住んでいる人達はどうなのだろうか。何も変化なく、いつも通りに過ごしているのだろうか。だとすれば、ちょっと複雑だな。
変化なく生活しているという事は、首都が危機に晒されていないという事だ。これはとても喜ばしいことなのだろう。
その反面、俺の頑張りが市民に届いていないのかと思うと、ちょっと切なくなってしまう。俺の頑張りが無駄だったんじゃないのか、そう考えてしまう。
(俺って馬鹿だな)
まるで、平和であることに不満を持っているようで不純だ。平和であることを純粋に喜ぶべきなのにな。
(さて)
怪我を治し次第、次の目的地を目指す準備でも始めるとしよう。
もちろん、次の目的地は白の国だ。白の国に向かうために、色々な準備をしないとな。
まずは、自身の体を完全回復させることから始めよう。
後は・・・、
(ねむ)
ひと眠りしてから考えるとしよう。今回の依頼で俺が一番頑張り、傷だらけになったからな。数日寝て過ごしても文句は言われないだろう。
それじゃあ、今後の英気を養うために、今は眠るとしよう。
お休み。
次回予告
『4-3-28(第358話) 冒険者達の黙らせ方』
彩人は白の国に向かうため、その報告をギルドに行った。その結果、彩人は冒険者達から反感を買ってしまう。その後、ギルドマスターからある提案をされ、彩人はその提案をのむことにした。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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