4-3-23(第353話) 心を持った魔道具、レンカ
「ち!」
「人間如きが!一瞬で死ね!」
俺の攻撃がデベロッパーに届かない。負けるつもりはないが、勝利への道が見えないな。俺は負けられないってのに!
「人間だろうが魔獣だろうが関係ねぇ!俺がお前に勝つんだ!」
俺の剣が届かないのなら、剣じゃなければいい。
(届け!)
神色剣を神色鞭に変形し、デベロッパーめがけて振る。
「ふん!」
デベロッパーは楽々避けやがった。やはりこの程度の攻撃は躱すか。
(なら、)
俺は【結界】を複数展開し、【結界】にデベロッパーが衝突するように設置する。
「この程度の小細工で、我が止められると思うな!」
だが、デベロッパーは【結界】程度で止まらないようだ。俺の【結界】がデベロッパーの蹴りで簡単に砕かれていった。
「!?」
デベロッパーが杖を俺めがけて振る。その振りを躱し、デベロッパーめがけて、変形した神色剣を振り下ろす。
「!?ちぃ!」
「この程度で我を倒せると思ったのか?目の前の敵の情報を正確に分析出来ないとは。人間とはなんとも無能な種族である!」
「!?」
デベロッパーは俺の心臓めがけて杖で刺そうとした。その攻撃を躱そうと行動したが、わき腹を貫通してしまう。
(やっぱ殺しに来てるな。それに、)
俺だけじゃあデベロッパーに敵わない。やはりレンカに力を借りるとしよう。
「レンカ、やつの動き、よく見たか?」
「え?あ、はい」
「そうか。それじゃあ頼みがある」
「なんですか、アルジン?」
「今からレンカには、俺の足となって、やつの攻撃を躱し続けて欲しい」
「!?そ、そんなこと、今の私には出来ません!必ずアルジンの体に傷が・・・!?」
「死ななければ問題ない。それに多少心配したっていい。今のお前の力が必要なんだ。だから、頼めるか?」
「・・・分かりました。その代わり、どうなっても知りませんからね!」
レンカはそう言った後、俺の背中に変化が訪れる。俺の背中から羽が生えた。
(この羽、魔力で出来ているな。もしかしなくてもレンカだな)
俺が考えていたのは、足に魔力を纏い、レンカが勝手に動かす、みたいなことを想像していた。この方法だと、俺の攻撃手段は手だけに限定される。
だがレンカは、俺の背中に羽を生やした。これにより、俺の攻撃手段は手だけでなく足も使えるということだ。レンカのやつ、俺の想像以上の働きだ。このレンカの働きのどこが欠陥品なのだろうか。
「欠陥品との会談は終了したか?」
「欠陥品?お前の目は節穴なのか?こいつは欠陥品じゃないぞ?」
まぁ、一言余計だったり、お節介だったりと、人間味溢れてちょっと邪魔だと思ったこともある。けど、そのお節介が本当に嫌だったわけじゃない。
「ならそれは一体なんだと言う?」
「そんなの、簡単さ」
俺は剣を構え、デベロッパーめがけて走る。デベロッパーは、俺が射程距離に入ったのか、杖で俺の体を貫こうとする。
(!?)
デベロッパーの攻撃は、俺に届くことはなかった。レンカの翼が躱したからである。俺は間髪入れず、デベロッパーに剣で攻撃する。
「とても有能で、俺達を大切に思ってくれる優秀な道具さ」
「!?」
俺の攻撃が当たり、デベロッパーが俺を睨む。
さぁ、ここから反撃と行こう!
俺とレンカが協力してから、俺達がデベロッパーを圧倒し始めた。これも、レンカが回避に、俺が攻撃にそれぞれ集中しているから、より優れたパフォーマンスを発揮できているのだろう。
「どうだ?これでもまだ、レンカが欠陥品だと言えるのか?」
俺は、息切れをし始めているデベロッパーに声をかける。
「・・・ふむ。もしもの時のために力を加減していたのだが、やめだ」
「!?」
まさかこいつ、手加減していたというのか!?今の俺は全力全開なんだぞ!?
「【無色気】」
瞬間、デベロッパーの雰囲気が変わった。まさか本当に今まで手加減していたというのか!?
「レンカ、気合いを入れ直せよ」
「は、はい!」
俺とレンカは気合いを入れ直し、デベロッパーと相対する。
「ほらほら~。この程度ですか~?この程度で私に勝とうなど、無知の極みです、よ!」
「ぐ!?」
「アルジン!?」
デベロッパーはさっきとは比べものにならないくらいの速度で俺を殺しにかかってくる。その攻撃を回避しようとしても間に合わず、俺は防御の構えをとる。それでも間に合わず、デベロッパーの攻撃を防ぎきれずにもらってしまう。
「さ、さっきまでの戦いは本気じゃなかったってか?」
「ええ。ほんの余興です」
「余興、かよ」
俺達は余興にあんな必死になっていた、ということなのか。なんか悔しい。
「それにしても、やはり欠陥品は欠陥品でしかないようですね」
「!?」
「どういうことだ?」
「簡単です。使えない道具など、ゴミでしかありません。その上、心と言う無駄な気候を備えていて。ゴミ以上にゴミです」
「・・・」
「それに比べ、」
そう言い、デベロッパーは何か上に投げた。投げられたものは大きくなり、ある形を形成していった。形成された形は、見覚えのある形だった。
「私が作り出したこのゴーレム達は実に効率的だ。私の命を忠実に守り、行動する。心を搭載したどこかの欠陥品とは似ても似つかん代物だ」
「「・・・」」
「その上、欠陥品より全能力を素晴らしく向上させた。私の能力を完全再現・・・とまではいかなったが、かなり再現出来たと言えるだろう。それに比べ貴様らはどうだ?」
「「・・・」」
「欠陥品を・・・なんだったか?とても有能で、俺達を大切に思ってくれる優秀な道具、とか言っていたか?それが今ではどうだ?」
「「・・・」」
「私が少し本気になっただけで全身傷だらけで魔力もかなり消耗している。その状態で私に勝てると言いたいのかね?」
「「・・・」」
・・・。
「レンカ。今までよく頑張ってくれた」
「あ、アルジン?」
「少し休み、見ていてくれ」
俺は息を細く吐き、呼吸を整える。
「心にどれほどの力が宿るかを!」
まず俺は、1対目のゴーレムを拘束した時と同じように拘束しようとする。
「遅いわ!」
だが、俺の魔法の発動速度より、ゴーレム達の移動速度の方が早かったらしく、【空縛】が空撃ちとなってしまった。そして、ゴーレム二匹の拳が俺の体に、入らなかった。
「・・・【魔力障壁】か。だがその程度で、」
「隙を作れれば十分だ!」
俺は、二匹のゴーレムの隙を見逃さず、【空縛】で拘束する。そしてさっきと同じようにゴーレムを水の中に入れ、その水に【粘性】を幾重にも【付与】し、粘性を強める。その外に火の牢、氷の牢、樹木の牢、雷の牢で閉じ込める。
「さぁ?これでお前の自慢の魔道具達もしばらく動けないぞ?」
「ち!」
「さぁて。これから語らせてもらうぜ?」
俺は再び剣をデベロッパーに向け、走り出す。もう俺とあいつとの実力差でびびってたまるものか!
分かっていたはずだ!最初から俺とデベロッパーの間には、埋められない力の差が現在開いている。けどそんなもの、メイキンジャー、パラサイダーと出会ってから分かっていた。その時から自分の実力を認めていた。それでも引くわけにはいかない!
(俺の大切な道具を、仲間を貶されて黙っていられるか!)
俺みたいなボッチにも家族以外に大切なモノが出来たんだ。その大切なモノを守るため、助けるためにも今、俺はこいつをぶっ飛ばす!赤の他人からどれだけ自己勝手な理由だって思われようと構わない!行くぞ!
俺はデベロッパーと戦いながら、語っていく。
「こんなものか、デベロッパー?」
「・・・何だと?」
俺の言葉に相当驚いたのか、デベロッパーの動きが一瞬止まる。俺はその隙にデベロッパーを殴り飛ばす。
「メイキンジャーやパラサイダーはこんなものじゃなかったぞ?」
俺は出来るだけ挑発気味に話を進める。
「あいつらは、お前の魔道具にはないモノを持っているから強いんだ。そのモノが何か分かるか?」
「死ね!人間風情が!」
俺は、デベロッパーが持っている杖から繰り出される攻撃を剣で受け流す。
「心だよ」
メイキンジャーやデベロッパーに強い志があるか分からない。それに、強さだけで言えばメイキンジャーやパラサイダーに匹敵するだろう。さっきと発言内容が異なっているだろうが、無理もない。何せ俺は嘘を言ったから、当然発言内容もおかしくなるだろう。ならどうして俺は嘘を言ったのか?俺は自身の嘘に対し、デベロッパーからのある返しを期待しているからだ。その返しによってはきっと、レンカを救う事になるだろう。俺が期待している
「ふざけるな!そんな欠陥如きで、強くなれるわけないだろうが!」
デベロッパーは叫ぶように反論した。
「!?」
デベロッパーの反論内容を聞いた俺は、耐えられなかった。デベロッパーの杖を体を受け、デベロッパーの動きを封じる。
「貴様!己の体で我が武具を・・・!?」
そして、神色剣を神色拳に形状変更させ、拳に纏わせる。纏わせた拳で、デベロッパーを力強く殴りつける。思いっきりぶん殴って吹っ飛ばし、一言。
「てめぇ!レンカの事を、自分が作った魔道具のことを忘れるんじゃねぇよ!!」
俺の、
“あいつらは、お前の魔道具にはないモノを持っているから強いんだ。そのモノが何か分かるか?”という質問に俺は“心だよ”と自答した。その回答に対し、俺は、
“心を搭載した魔道具だって作ったわ!”
という突っ込みを期待していた。ようは、俺が今所有している魔道具、レンカの存在に気付いてほしかったのだ。それなのに奴は・・・!
(自分で作った魔道具のはずなのに!)
急上昇していく怒りが、俺の体に巡り始めていく。
「てめぇは、他の人には作れない魔道具を作れるかもしれない」
「来るな!【創造・槍】!」
デベロッパーは空中で槍を形成させ、俺の方へ飛ばしてきた。俺はその槍を片っ端から拳で撃ち落とす。
「【創造・剣】!【創造・矢】!」
他にも剣や矢を形成し、飛ばしてくるが、全て拳で撃ち落とす。
「は!?貴様、その目!まさか、【四色気】ではなく、【六色気】だと!?既にその域に達しているというのか!?あり得ん!絶対にあり得ん!」
「流石の貴様でも、これは破れないだろう!【条件結界】!」
デベロッパーは【条件結界】を展開した。条件については分からないが、そんなことは関係ない。俺は思いっきり拳を振ろうと動き続ける。
「「・・・」」
「貴様1人でこの【条件結界】を破れると思うなぁ!?」
「なら、3人ならどうです?」
「何?」
俺の後ろから声が聞こえた。後ろを振り向いていないから姿は分からないが、声質からしてメイキンジャーだろうな。
「おそらくデベロッパーの【条件結界】の条件は、無魔法に適している3人が同時に触ることパラね?」
「な!?」
「なら簡単です。我々がこの者に協力すればよろしいだけです」
「貴様ら・・・!」
「それでは、」
「行くパラ」
俺、メイキンジャー、パラサイダーの3人が【条件結界】に触れたからか、【条件結界】がいとも簡単に砕け散った。
(そういえば、洞窟の入り口も同じように割れたな)
そんなどうでもいい思考が一瞬よぎったが、そんなことは後で考えるとしよう。
「だが、心は道具じゃねぇんだよ。そのことを考えてレンカを作って捨てたのか?」
「あ、あいつが悪いのだ!私に作られた分際で横から口を挟み、私の生活様式に口を挟み続け、目障りこのうえなかったのだ!」
「それは、お前を思い、お前の体を心配しての言葉だったんじゃないのか?お前を本当に想っていたからこそ、自分が悪役になってでも口にしたことに気付かないのか?」
「そんなのは詭弁に過ぎない!そのような可能性もあったという確率論ではないか!?」
「お前は間違えたんだ。心を作るという重さを。心を搭載したことに伴う責任の重さを。そして、心に関する可能性を考慮していなかったことが、」
俺は怒りとこれまでの経験から、確実にダメージを与えられる振りをし、自身の拳をデベロッパーにぶつける。
「最大の、間違いだ!!!」
そして、デベロッパーを床に叩きつけた。床は衝撃のあまり凹み、大きなクレーターが出来上がる。
「ふぅ、ふぅ」
肩で息を整え、動かないデベロッパーにとどめをさそうと動き始める。
(まずはこいつを【空縛】で拘束して、と)
【空縛】でデベロッパーを拘束しようとしたら、
「そこまでパラ」
パラサイダーに【空縛】を破壊された。
次回予告
『4-3-24(第354話) 割り込んだことによる利益と忘却』
彩人はデベロッパー・ヌルとの戦いに割り込み、拳をくらわし、メイキンジャー・ヌルに一泡ふかすことが出来た。その結果、パラサイダー・ヌル、メイキンジャー・ヌルから有益な情報を得る事が出来る。だが彩人は、戦いに割り込んだことにより、ある魔道具の存在を忘れていた。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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